第4話 ハイネス先生とモルモット
~Side 少年~
ハイネス先生との熾烈な問答から時が経って、ハイネス先生の部屋の中で僕は、ハイネス先生の監視下という条件下ではあるが、特に不自由になる事がない生活を満喫していた。
1部屋の中でどうやって満喫していたのか?だって?
実は、ハイネス先生の部屋の中には、見た目からは想像もつかない奇妙な装置があちらこちらにありましてな。それを先生に聞いては理解するだけで1日が終わるかのような濃い体験ができたのですよ。
なになに・・・聞きたい・・・ですと?
ふむふむ・・・それじゃあ一例を挙げてみましょう。
あれは、ハイネス先生が新しい完成品ができたと僕に報告してきた時でした・・・
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「少年よ!君に実験を手伝ってもらっていたものがついに完成したぞ!」
「博士!じゃなくて先生!ついにイカれた試作品の完成版ができてしまったんですか!?」
「イカれたなんてひどいな!?試作段階でも実用的な効果を出力していたはずだよ!」
「確かに便利でしたよ。その後が問題でしたけどね!?」
そう。実は先生が作るもの全般に言えることなのだが、先生が想定していた効果自体は十分に発揮されて非常に便利なんだけど・・・
欠陥的な副作用、デメリットを抱え込んでいるのだ。
塵ゴミまで吸い尽くせるけど、カーペットやカーテンまで吸い込もうとする掃除機とか、自分の髪型を思いのままにヘアメイクをしてくれるけど、強い力で髪を整えるせいで髪の毛を丸ごと抜き取られかねないヘアメイカーとか、どんな料理でも一瞬で作ってくれるがその日の気分で勝手に料理のメニューと出来栄えが変わる不思議グリルとか・・・
前者を聞けば凄いと思うが、後者を聞けばゾッとするでしょ?最後のグリルなんて、この前一週間ずっと1日3食激辛料理を作ってきたからね!?おかげで口がずっとヒリヒリしてたんだから!!そしてハイネス先生には激甘スイーツを作っていたというね・・・アンバランスすぎでは?
「いやーあれは我ながら見事だったよー。最近肩こりが酷いから貼るタイプのマッサージシートを作っていたはずなんだけどねー」
「そうですね!そう言っていましたもんね!だけど貼った途端に膨れ上がって爆発するマッサージシートなんて聞いたことありませんよ!!」
「そうそう・・・ぷふっ、あの時の君の顔ときたら」
「他人事みたいに笑わないでくださいよ!?耳元で爆発するんですからびっくりしますよ!?」
おかげでその後はずっと音が聞こえなくなっていたし、気がついたら音が聞こえるように戻っていたしで実に謎でしたが。
「まあまあ。前回の改善点も踏まえて形態を一新したよ。今回のものはシートタイプじゃなくて巻くタイプにしてみたよ」
「果たして前回の失敗はシートだからダメだったのか・・・そこからもう怪しいぞ」
「とりあえずやってみないことにはわからないさ。というわけでほら、つけたまえ」
「今回も僕が毒見役と・・・とほほ」
「つける場所は足、そうだね〜、ふくらはぎ辺りにしようか」
「はーい」
言われるがままに装置を自分の足に取り付け、備え付けの椅子に座り、楽な姿勢になる。
「後は何をすればいいんです?」
「特にないよ。装置自体が勝手に進行してくれるからね」
「ほうほう・・・それはまたハイテクですこと・・・お?」
少し時間が経つとふくらはぎから足全体に気持ちいい振動が加わっているような感触が得られている・・・気がする。
「今回は成功みたいですね、先生」
「当たり前だよ?何せ私は天才だからね!」
「天才だったらせめてもうちょっと穏便な副作用にしてくれませんかね・・・」
全体的に致命的になりかねないんだぞと心の中でつぶやいていたら・・・あれ?
「先生?なんか揺れていませんか?」
「わたしが、かい?いや、別段何も感じないが・・・」
「・・・もしや・・・つっ」
「ん?」
「いっっっっっっっっっっっっっっっっっっっったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!」
ピリッとしたと思ったら、ズドーンってなったんですけど!!語彙力どっか言っちゃってるんですけど!!
もしかしてあれですか?地面が揺れてると思ったら自分だけがすごく揺れてるやつですか?そいつは規格外だぜ!ハハッ!って言ってられるか!あっやばい足攣る!
「あっはっはっは!何だいそれは!間抜けな顔を晒した次は水揚げされてのたうち回るエビの真似かい?」
「いやっ!・・・ほん!・・・はず!・・・」
だめだ痛さで声が出ない。いやほんと誰か助けて!?
「みたとこ・・・の・・・きゅうか・・・きかく・・・だね」
なんか先生独り言始めちゃったし!?
って思ったら納得したような顔で近づいてきてはあっさりと装置を外してくれた。
「いや〜とても面白かったよ。随分と芸達者になったじゃないか」
「こちとら・・・大真面目・・・だった・・・んですけどね・・・」
息も絶え絶えにお返ししました。もう足がプルプルして生まれたての子鹿みたいなんですけど・・・
「なるほど・・・真面目にエビの真似をしたと。最高だよ!」
はっ倒していい?みたいな視線を送ると、先生も流石に空気を読んでくれたようだ。
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こんな感じのことが毎日何回も行われていたら、体がもたないし時間はあっという間に過ぎていくというものでしょうよ・・・とほほ。
それでも不思議なことにあのマッサージの後は、体が解れたのか、体が軽いように感じられた・・・何でだろう?
「おーい少年。そろそろご飯の時間だよ〜」
「ん?はーい」
とりあえず良いことに変わりはないからとりあえずこの疑問は置いておこう。
「今日のグリル君の気分によれば、今日の君の料理はまた辛いものらしいよ」
「えっ」
なぜに?そしてまた激辛・・・
「ちなみに私のは甘物だったよ」
「何だろう、この差別感」
もう辛いのは嫌!
〜Side ハイネス・フルマートン〜
「ふぅむ」
私は今、2つのデータを見て頭を悩ませている。
2つのデータというのは無論、件の少年についてだ。
身元が不明でありながら、当の本人もその情報を知らず、こちらにとっての敵か味方か判断をつけづらい存在なのだが・・・
それも前の会話で、仮初の信頼関係をおこうというわけになって、共に過ごす中で、私なりに彼、謎の少年の実態を調査しているというわけだ。
そこで、さっきの2つのデータだ。少年にはマッサージャーの試作品という体で彼につけてもらったマナ測定器が打ち出した2つのデータである。
マナというものは生き物全体が持つそのもの自体の強さみたいなものだ。それを測り知ることで彼の強さを推察してみようと思ったのだが・・・
結果は、装置自体の過剰反応による測定不能
一応補足しておくが、2つの装置、特に後に実施した装置なら並大抵の人間なら測定可能の範囲である。それですら測定不能という結果で終わっているのだから・・・
「少年・・・君は一体なんだというのかね?」
視界の端で緩み切った表情ですやすやと寝ている少年を覗き見る。
見ず知らずの人間が近くにいるのに、こうも警戒もせずぐっすり寝ているところを見ると、どうにも敵だと思えなくなってしまう。
・・・・・・
「仕方ない、あれを用意しておくとするか」
疑うようで、あまり気乗りはしないんだけど。
保険はかけさせてもらうよ、少年
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