第2話 謎の子ども
〜Side ???〜
突然姿を現した子どもに、冒険家3人は、口をあんぐりと開いたまま固まるしかなかった。
「えっ・・・なっ・・・どういうことなの?」
「ホントにもうなんなのよー!今日は驚きでお腹いっぱいだよー!」
「・・・マナシードから出てきたように見えたけど・・・そんなことってあり得るのか?」
少なくとも、マナシードに何か物を封印するなんて技術は、彼ら3人の周りでは前代未聞の代物だったようだ。
「って驚いている場合じゃないわ!急いで容体を確認しないと!」
「あっおいルナ姉!」
先ほどから身動き一つせずにぐったりしている子どもを見て、長身の女性が子どもの元へ駆け寄った。
「胸は・・・上下しているみたいね。呼吸はしているっと・・・あとは意識確認ね。君!君!大丈夫?」
女性が子どもの肩を揺らしながら呼びかけるが、子供からの反応がない。
「どうやら意識が戻ってねえみたいだな。どうする?この子も連れていくか?」
「そうね・・・ここで見つけた訳だし、身元が不明な以上、この子自身に聞くしかないから連れ帰って意識が戻り次第聞いてみましょう。シルヴァ、お願いね」
「おうよ!」
と言って、大柄の冒険家が子どもを肩に担いだ。
子どもの安全確保を優先するために、自分たちの拠点へと帰ることになった。
「ナミア・・・何も気を失っている子ども相手に警戒する必要はないだろ?お前すごい顔になっているぞ」
女性のうちの小柄な方の子は、謎の子どもの方を見て、なんとも言えない複雑な表情をしていた。
「でもシヴァ兄!そいつは得体の知れない存在じゃん!マナシードの中から出てくるようなやつだよ!?どう考えたって危ないよ!」
「ナミア・・・」
もっともな意見である。だが
「大丈夫だろ。なんたって・・・俺の勘が反応しないってのはそういうことさ!」
「出たわね・・・シルヴァの謎勘論理術・・・」
能天気さに両断されてしまった。これには他二名も苦笑いをした。
「それに・・・重ねて見えたんだよ」
「? 何を?」
「俺たちが強くなろうと決めた理由が・・・だよ」
「・・・そう」
少女の方はそういうと納得はしていないが何も言わず、という振る舞いを取り始めたので他二人も行動を開始する事にした。
「それじゃあ、今度こそ帰還するわよ」
「おうよ」「はーい」
今度こそ、何も起きずに無事に帰還できるようだ。
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〜Side 謎の子ども〜
懐かしい記憶を見ていた気がします。
明るく、光を灯してくれたあの日差し。
その日差しを受けて、輝き、潤いをくれるあの水流を。
撫でるように包み込んでくれた、あの風を。
その風に誘われて、心地良さそうに小躍りを始めた、楽しそうなあの大地を。
何よりも・・・
優しさに満ち溢れていた、僕に向けられていたあの顔を。
そして・・・
その記憶たちと僕の隙間に立ち塞がる、黒色の拒絶の線を。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
んんん・・・あれ?
目を開けて見渡してみたら、そこは白一色の雪原でした・・・てことはないけど、本当に真っ白な部屋だった。そして、僕はふかふかと柔らかいものに横倒しにされていました。
「――――あ゛あ゛ゲフッゲフッ」
あ、これやばいやつだ。喉が潤ってないから咳き込んじゃうやつだ。
なんてやっていると、ガタンと何か物音が立った。
すると、目の前の布幕のようなものが横に開かれて、不思議な装いをした方がお見えになった。
「おや〜?ようやく目覚めたようだね、少年。顔色は良さそうだとして・・・その様子だと水分が足りてないようだね。」
いやぁ察しが良くて助かりますよ〜綺麗なお姉さん。こんな喉じゃ声を出そうにも出せなくてしゃべられそうにないんですよ。
「それじゃ少年、口を開けるといい。あーんというやつをしてやろう」
あーん、という言葉に聞き覚えがないんですけど口を開ければ良いんですね、あーん
「水よ」
「あボばぼ!ぼぼぼがががが!?フガガがががガガ!??」
悲報 僕 初対面のお姉さんにいきなり水鉄砲をあーんされました。それもとびきり高圧のやつを。
「ング!ゲホッゲホッ・・・はぁはぁ・・・いきなり何をするんですか!?」
「いやなに、私は水をあげただけだよ?」
「花への水やりじゃないんだからもっと穏便なやり方がありませんかねぇぇぇ!?いや水やりでもあんな勢いのやつはダメですけど!もっと手心というものがあってもいいと思うのですが!?」
「お目覚め直後だというのに立派に元気なことで。生憎と私は合理性と効率性を重視するタチでね。逐一グラスに汲むという動作に苛立ってしまうから、こうやるのが手っ取り早いんだよ」
「自分が納得して自分にやるというなら僕も文句はありませんよ、ええ。ですがそれを他人にやるのはどうかと思いますよぉぉぉ!!?」
「前言撤回だ。あまりにも元気すぎる。もう出ていきたまえ。私も忙しいんだ」
ダメだこのお姉さん、聞く耳を持ってないみたい。ついている耳はお飾りなのかしら?
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