ルスト・マノリア

橘 菜雪

序章 邂逅

第1話 突然の出会い

  〜Side ???〜


オルキナ王国の城下町において、嘘か誠か、奇妙に交わされる噂話があった。


ある人曰く、突然姿を表したダンジョンがあるとか。


ある人曰く、そのダンジョンは格別な程の魔力を放っているとか。


ある人曰く、そのダンジョンは万人を拒み、未曾有の財物を秘めているとか。


事実として、そのダンジョンが一風変わったモノであることは外から見ても、触ることを戸惑うほどの無垢のような輝きを放っており、その輝きは地上に存在するダンジョンの中でも目にすることが稀なほどの強さである。


ダンジョンとは、言い伝えによれば、地より生まれる力<マナ>の集合体だとされている。生まれたマナが局所的に集中し、膨大なマナ同士の結びつきによってダンジョンが形成される、と。また、ダンジョンの輝きの強さは、ダンジョンが形成される時に集まったマナの量、すなわちダンジョンが持つマナの量によって決まるため、輝きが強いほどダンジョンの格が上がるわけである。


そんな中、奇妙な輝きを持つ特別なダンジョンであったが・・・





「グォオオオォオォアアァアァ・・・」



ドスンと重い音を鳴らして大柄のモンスターが倒れた。



「「「はぁ・・・はぁ・・・」」」



大きな音が止むと、それとは違う3つの呼吸音が聞こえてきた。



「やっと・・・倒れたわね・・・」



「やっと・・・本当にやっとよ・・・もう」



「あ゛あ゛あ゛あ゛ーもう疲れたぁぁぁーこんちくしょー」



若い3人の冒険家たちによって攻略されてしまった。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



  〜Side ???〜



モンスターが力尽きて、緊張が解けたせいか、3人が各々の思いを吐いた。



「これで晴れて一人前・・・ってことで良いのよね?」



「あぁ・・・向こうが出してきた条件をそのまま飲んだんだ。文句は言わせねぇさ」



「それにしてもラッサムのおじさんも過保護というか用心深いというか・・・頑なに私たち独り立ちを許してくれなかったよね〜。こんな条件まで用意してさ」



「コラっおじさんって呼んじゃダメよ、ナミア。でも本当にね。もしかしてだけど無理難題をだして諦めさせようとしてたり・・・」



「かもなぁルナ姐。会って一言目が安否確認のラッサムさんのことだ。あり得るぜ」



「だけどそんな打算を見事打ち砕いてしまった、さすが私たち。イェイ」



ずいぶんと緊張が緩んだようだが、ダンジョンの最奥に住むとされるダンジョンの核となるモンスター、コアモンスターを倒したため、これ以上モンスターが出現しないのである。



冒険家たちがいくつか言葉を交わしていると、コアモンスターだったものから光が霧散していくのが見えた。



コアモンスターのみならずモンスターは、マナの塊であるマナシードを核にしてマナを使い肉体を生成しており、その核であるマナシードが貯蓄できるマナを使い切り、力尽きると、体内のマナが解放され、光を放ちながら霧散するのである。



「さて、消滅も確認したし、討伐証拠のマナシードを回収しましょう」



マナシードを回収して、早く休もうと考えていた冒険家一行だが・・・



「あら?」「なんだ?」「ありゃ?」



想定していなかったことが起きた。



「なんかコアモンスターの割に小さくねぇか?」



「コアモンスターもあれだけ強かったのにこのサイズ・・・変ね?」



あれだけ強かったのだから、さぞ大きなマナシードを持っているのだと踏んでいたのだが、実際に出てきたものがちょっと強いくらいのレベルのモンスターのそれ程度のものだったために、不満が漏れた。



「ふっふっふー・・・甘いねルナ姉シヴァ兄・・・サトーのハッチミシロップ漬けくらい甘いよ。ただでさえ規格外なダンジョンでコアモンスターだって規格外なんだから、マナシードが1個とは限らないでしょ?」



と言い、コアモンスターをガサゴソ漁る冒険家のうちの一人。



すると



「あ!ほらあったぁーーーーーーっあ?」



思いっきり引っ張って取り出してみると、また想定していなかったことが起きた。



「これ・・・黒い模様が見えるんだけど・・・」



「どれどれ・・・本当ね」



本命のマナシードが出てきたと思ったら、今度は黒模様入りのマナシードが出てきてしまった。



「なんでこうも変なものしか出てこねえんだよ!」



「私も黒い模様が入ったマナストーンなんて聞いたことがないし・・・ルナ姉は?」



「私も同じくね・・・とりあえず、素材もマナシードも取れたってことで帰還しましょう」



他二人も同じく賛成と言いかけたところで



ピキッ



「「「えっ」」」



またまた想定していなかったことが起こった。



「おいおいナミアさんや 何もシードを握りつぶすことはねぇですやい。相変わらず怪力がすぎまブへッ!?」



「相変わらずデリカシーがないわね!このクソ兄貴!私は何もしてないよ!マナシードが勝手に割れて・・・ってなんか光ってる!?」



「ナミア!それを離して離れて!」



「う、うん!」



黒模様のマナシードを放って距離を取る3人。



するとマナシードの放つ光の強さがどんどん増し・・・







ドサっという音を残し、光が落ち着いた。



「な、なんだってんだ本当によ・・・えっ」



「眩しかったわね・・・えっ」



「うぅー目がチカチカするー・・・えっ」



「「「ええええええぇぇぇぇぇぇえええ!!???」」」



今日いちばんの驚きかもしれないが、それもそのはず。



さっきまで珍しい黒模様入りのマナシードだったものが



















幼い黒髪の子どもになったのだから。

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