第2話 「村の問題」
「まずは食料問題ですね。 これが解決しない限り、この村に未来はありません」
俺はハッキリと告げる。
今俺は、ソニアさんとガレアさんの3人で話している。
ガレアさんは村長だし、重要なことを話しておいた方がいいだろう。
「食料問題ですか…」
ガレアさんが呟く。
「見たところ、この村には家畜は無しで、食料が手に入る手段は畑か狩りしかないわけですよね」
「そうです。元気な頃は釣りなどもしていましたが、雨が降らなくなり畑が枯れ、次々と病に倒れ始めたので…」
ソニアさんが悲しそうに言う。
だから食料が取れずに村が崩壊しかけたと…
本当に危険な状況だったんだなぁ…
「雨が降らないから畑が枯れたと言っていましたね。この村に水路はないのですか?」
「「すいろ…?」」
ソニアさんとガレアさんの声が重なる。
え…まじ…?その知識もない感じか…
「えっと、水路というのは、人工的に水を流す為の物です。 簡単に言うと、村に新しく小さな川を作るイメージですね」
「「村に川を…!?」」
「はい。そうすれば毎日長い距離を往復しなくても、いつでも水が使えます」
「なんと素晴らしい…その水路というのはどうやって作るのですか?」
ガレアさんが聞いてくる。
幸い俺はこういう事を調べるのが好きで、専門家には劣るが知識がある。
俺はガレアさんから紙とペンをもらい、簡単に書いた。
まず村と川を書き、その間に水路になる場所を書く。
「この部分が水路です。で、この水路に川の水が流れるようにします。ですが平面だと水が流れないので、この水車と呼ばれる物を作ります」
俺は出来るだけ細かく水車のイラストを書いた。
「この水車は水の力で周り、水を持ち上げます。そしてその持ち上げた水が水路に流れて人工的な川が出来るという仕組みです」
俺が言うと、2人は口を開けてポカンとしている。
んー…説明分かり辛かったかな…次はもうちょっと分かりやすく…
「なるほど…!そんな物があるのですね! この部分に水が溜まって…なるほど…」
ソニアさんがぶつぶつと呟く。どうやら理解をしてくれたらしい。
「で、材料ですが、主に木材を使います。と言っても、濡れても大丈夫な丈夫な木材が好ましいですね」
専門家がいないから本格的な水車は作れないが、水を持ち上げるだけなら出来るだろう。
村に水路が出来ればやれる事は広がるしな。
「分かりました。では早速やってみましょう」
ガレアさんが言う。
「待って下さい。水車は必要とは言いましたが、最優先は食料です。
なので、食料調達と、水車作りの2グループを作りましょう」
「なるほど。確かにそれはそうですな」
「当分は水車に必要な気を切り倒す作業になるので、食料調達班と共に山に行きます。
食料調達班は山で山菜や木の実、そして川で魚取りをお願いします。資材調達班は、とにかく木を切って下さい」
2人はふむふむと頷く。
皆が元気な内にある程度基盤を作らないと、今度こそ詰んでしまう。
村には小さな子は2人いたが、その他の人達はまだまだ動けそうな人ばかりだった。
全員で力を合わせれば、なんとかなるだろう。
「では早速、村の人達に伝えに行きましょうか。こういうのは村長の口から言われた方が納得すると思うので、ガレアさんお願い出来ますか?」
「分かりました」
俺達は、村の皆を集め、ガレアさんが先程俺が話した事を皆に伝えた。
最初は皆不安そうだったが、話を聞いて行くと目がキラキラしてきた。
「最後に、この知恵を授けて下さったヨウタ様だ」
「えっ」
「ささ、ヨウタ様、皆に一言お願いいたします」
ガレアさんが言う。
ま、まじ…?
「えっと、ヨウタです。 確かに知恵は授けましたが、これが完成するかどうかは皆さんの頑張り次第です。俺が出来る事は精一杯するので、皆さんも一緒に頑張りましょう!」
そう言うと、村の皆はおーー!!!と声を張り上げた。
良かった上手く行った…
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その後は、早速準備に取り掛かった。
今は、手が空いている者は食料調達に向かい、建築の知識がある者と、ガレアさんとソニアさんと俺は水車の事を話し合っていた。
俺はまた紙にいろいろ書いて行く。
「まず、水車の形はこれです。 そして部品ですが大きく分けて、
水を持ち上げる板、回る所、軸になる棒、水を受けて水路に流す物の4つですね。まだ細かい部品はありますが、それはまた次に」
正式名称を言っても混乱させるだけだから、あえて分かりやすい説明をした。
絵付きだったから、言葉だけよりは理解出来る筈だ。
「なるほど…こういう仕組みなんですな。 では木材は丈夫かつ水に強いものの方が良いでしょうな」
建築の知識がある…えっとギランさんが言う。
さすが知識があるだけあって理解が早い。
「そうですね。そして、水を持ち上げる板は全て同じ長さにして下さい」
そう言って全てを説明し終える頃には、夕方になっていた。
もうすぐ食料調達班が帰ってくる頃だろう。
お、噂をすれば帰ってきた。
食料調達班の人達は、大量の山菜と木の実、そして魚を持ってきた。
これは凄い。
魚は無理だとしても、他の物は備蓄出来るかもな。
それぞれの家に配分し終わり、俺達3人は自宅へ帰ってきた。
「久しぶりのちゃんとしたご飯だね!お父さん!」
「そうだな、それも全てヨウタさんのおかげだ!ヨウタさん、本当にありがとうございます」
そう言って2人は頭を下げてくる。
もう今日だけで何回感謝されるんだ俺は…
「もう大丈夫ですよ。それより食べましょう?」
3人でいただきますと言い、魚を食べる。
え、美味っ!?なにこれ!塩なんてふってないはずなのに塩ふったみたいな味するし…!
油は乗ってるし!
「えっと、ヨウタさん?どうしました…?あ…もしかしてお口に合いませんでしたか…?」
ソニアさんが心配そうに聞いてくる。
「いえ!とても美味しいのでびっくりしちゃってました!」
そう言うと、ソニアさんとガレアさんは心底安心したような表情になり、そのまま食事を続けた。
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ご飯を食べ終えた後、俺は1人で外に来ていた。
空には綺麗な星空が広がっている。
日本のように排気ガスなんて物はないから、綺麗に星が見える。
「隣、良いですか?」
突然、後ろからソニアさんの声が聞こえた。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
ソニアさんが俺の横に座る。
いやぁ…本当見れば見るほど可愛いなマジで。
村人もそうだったけど、この世界の人は顔が整いすぎてる。
「ヨウタさんは、どうしてそんなに私達を気にかけてくれるんですか?」
「え?」
「いえ!頼み込んだ私がこれを言うのはおかしいですよね!ごめんなさい忘れて下さい」
「は、はい」
気にかける理由か…たまたま初めて会ったのと、行く当てが無かったのが理由だが、確かに断ろうと思えば断れた。
水車の事だってそうだ。
自分でも分からないな。
「私今、すごく楽しいんです。 シガナ村の皆と協力して、新しい事に挑戦してて、これからどうなるのかな?って。
前までは未来に希望なんて持てませんでしたけど、今は明日が楽しみなんです」
そう言って、ソニアさんは笑う。
「じゃあ、尚更水車作り頑張らないとですね」
「はい!力仕事でもなんでもやります!」
「ははは、流石に女性に力仕事は任せられないかなぁ」
「あ!ヨウタさん私の事甘くみてますね!こう見えても私、結構力強いんですよ?」
「本当ですかぁ?」
「本当です!なんなら力比べしてみますか?」
そう言ってソニアさんは手を前に出す。
いいだろう。
ソニアさんは、思い切り俺の手を握る。
俺の手の骨がミシミシと可愛くない音を出しそして
「いたたたたたたたた!!!ぐあああ!!」
ソニアさんがパッと手を離す。
「どうですか?」
「力仕事はソニアさんにお任せします」
ソニアさんはめっちゃ怪力だった。
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