第Ⅳクエスト_最弱魔王は死にかける

第Ⅳクエスト_最弱魔王は死にかける


 「よう?久しぶりだな~お前ら」

 「...カ、カイン...ど、どうして...」

 「クラウド、ラヴィーを連れてみんなと避難を」

 「フィオナ、分かった。行こうラヴィー、ラヴィー?ラヴィー!」

 「!!ごめん..クラウド。行くわ」


 フィオナの指示でクラウドとラヴィーはこの場から離れようとしたが魔王カインがそれを許さなかった。


 「おい..誰が逃げていいって言ったよ。なあ?クラウド」

 「これは束縛魔法シルシアです!この場に縛られこの場から離れることは出来ません」

 「そ、そんな...」

 「...全員その場から離れないように。クレア、サポートをお願いします。クラウド、ラヴィーを頼みます。ラヴィー、大丈夫です。私たちが魔王カインを倒します」


魔王カインは余裕そうに笑いフィオナ達を見下ろしていた。魔王カイン...今の俺で勝てるのか?俺はいずれこいつと戦うことになる。でも...見たらわかる。こいつは強い。魔王バトルロワイアルで優勝するとは言っても勝てるのか...勝て...その時俺は目の前に魔王カインの拳が迫っていることに気が付かなかった。


 「クラウド!」

 「え...!!」

 「避けてクラウド!」

 「おせえよ!」


フィオナの叫び声で気づいたが魔王カインの拳は避けきれず吹っ飛ばされた。


 「クラウド!」

 「うぐ...」

 「しっかり!クラウド!!」


ラヴィーは吹っ飛ばされたクラウドの所に駆け付けたが意識がなく重傷だった。助けようとしたが魔王カインが後ろに来ていた。ラヴィーは短剣を出して構えたが震えていた。


 「ほう?奴隷が俺に刃を向けるのか?」

 「ち、違う...私は奴隷じゃない!」

 「奴隷は奴隷だ。いくら人間がっても奴隷であることに変わりはない。その左腕の印がそうだろ?クラウドに教えてやれよ。魔王の奴隷になった人間の末路ってやつを」

 「私は...奴隷なんかじゃ...」

 「まあいい。俺の目的は勇者フィオナじゃなくそこの魔王だからな」

 「え...クラウドが?」

 「そうだ。おい起きろクラウド!」

 「乱暴しないで!クラウドはあなたに吹っ飛ばされたことで重傷だし気絶してるのよ」

 「そんなの知るか!」


魔王カインは気絶したクラウドの胸倉を掴みラヴィーは止めようとしたが殴られ吹っ飛ばされた。魔王カインはクラウドを揺さぶり起こそうとしたが中々起きないクラウドに苛立ちクラウドを何度も踏みつけた。ラヴィーは止めるため何度も立ち上がるが吹っ飛ばされる。


 「やめて...クラウドを殺さないで..」

 「うるさい!奴隷のくせに指図するな!」

 「うぐ...」

 「貴様がから先に始末してやる。死ね!」


魔王カインはラヴィーを左手で掴むと握りしめた。ラヴィーの悲惨な声が辺りがに響く。


 「ほらほらどうした~!さっきの元気はどうでした?奴隷ーほらほら喚けよー」

 「あがっ...あああああああああああああああああああ」

 「クラウド、早く起きなくていいのかー?お前の仲間が死ぬぞ」


魔王カインはもう片方の手でクラウドを掴み握りつぶした。


 「く、クラウド...そんな...」

 「案外あっけないなー。俺の期待外れか...あれはまぐれだったのか。俺の唯一の脅威はお前だと思ったのだがな。どっちにしろ好都合。これで俺の脅威は去ったわけだ。これで思う存分殺せるって訳だ」

 「クラウドが脅威...」

 「さて...おしゃべりもここまでだ。死ね」

 「まさか...ここまでなんて...でも悪くない...最後にフィオナ達たちと出会って...あんたに助けられたから...ありがとう...クラウド」


 ラヴィーはそう言うと目を閉じた。


(もう悔いはない。家族を殺された呪いたい人生も皆と出会えて変われたし、なによりあんたに会えたこと..最初は泣き虫で最弱な魔王なんて聞いたことがなかった。魔王なのに優しくて気づいたら心を許してた。だから嬉しかった。魔王バトルロワイアルにあんたが出て優勝してくれるって、魔王カインはを倒してくれるって言ってくれたこと...可能性は低くてもあんたに賭けてみたくなったの。だから...クラウド、例え私が死んでもあんたは生きて...魔王カインを倒して...魔王バトルロワイアルを勝ってね。)


 「奴隷...何がおかしい?」

 「魔王カイン...あなたの負けよ」

 「我の負けだとこの状況で何を言う。クラウドは死に貴様も死ぬ。仮に貴様らが助かってもクラウドが居なければ貴様らの星は消滅だ。どのみち助からない。我が掛けた束縛魔法シルシアは勇者とクレアとかいう性霊術師の二人のみだ。これをつく方法は我が死ぬか解くしかない。お前たちはつんでいるのさ」

 「つんだのは魔王カイン、あなたよ」

 「何を言ってる。この状況でお前たちの勝機は無い」

 「勝機はある。あなたが良く知ってるでしょ?私はバトルメイドだって」

 「まさか...貴様あれをやるのか!」

 「逃がさない。魔王カイン」


ラヴィーは魔王カインが自分を離そうとしたがラヴィーは自分の流した血と持っている短剣を使い自分ごと魔王カインの腕を指して固定した。


 「貴様!離せ!奴隷が!」

 「絶対に..離さない!タイミングバッチリだ...雨が降ってきた」

 「雨だと!いかん...離せ!」


中央都市に雨が降り注いだ。魔王カインは焦り腕に刺さった短剣を解こうとしたが中々解けない。雨が降ったことに喜んだラヴィーはとある魔法を発動させた。突然ラヴィーと魔王カインも足持ちに巨大な魔法陣が現れる。


 「貴様ああああああああああああああああああ!」

 「魔王カイン...私たちの因縁もこれで終わり...一緒に心中しよう」

 「この!死ね!貴様!奴隷がああああああ!」

 「絶対に離さない!」

 「フィオナ!あとを頼むね」

 「待ちなさいラヴィー!その魔法は!」

 「ダメです。ラヴィー!」

 「さようなら皆...バイバイ...クラウド」

 「やめろおおおおおおおおおおおおお!」

 「魔力...解放...」


魔王カインは最後の抵抗にラヴィーの顔をひっかいたがビクともしなかった。ラヴィーは魔法で動けないフィオナたちに叫んだ。ラヴィーは笑いながらそう言うと魔法を発動させた。フィオナ達は止めようとしたが間に合わず魔法が発動し大爆発が起こった。


 「ラヴィーー-----!」


 フィオナの叫び声と共に一瞬激しい光と共に皆は衝撃で吹っ飛ばされた。ラヴィーの魔法でフィオナたちにかけられた魔法は解けたが爆発の衝撃が強く耐えるのが精いっぱいだった。爆発から数分後にフィオナとクレアはラヴィーの安否を確認するため探したが見つからない。


 「ラヴィーが見つかりません、フィオナ」

 「ラヴィー..」

 「あの爆発は一体?ラヴィーはどうしてあんなことが出来たのですか?」

 「これがラヴィーが生かされて魔王カインに奴隷にされた理由です。あなたは魔力の結晶と言われた一族ラビリンスを知っていますか?」

 「魔法の結晶の一族ラビリンスというのは聞いたことがあります。人でありながら魔王と対等に魔力を貯蔵しその魔力を行使することができるという一族ですよね」

 「そう..ラヴィーはその一族の長の娘だった。一族の中でも一番魔力を貯蔵する力が高くなかでも爆発魔法トキシアが得意だった。そこを魔王カインに狙われたんだ。当時ラヴィーはまだ幼くてその力を使えなかった。使えなくて奪うことは出来る。そのせいでラヴィーは奴隷にされたんだ」

 「それがラヴィーが奴隷にされた理由だったんですね」

 「一度奴隷にされ奴隷の印を押されたらその人間は人間以下の扱いを受け苦しむことになる。私はその制度を変えたい。しかし...魔王をころさないとこの印は解けない。酷い呪いだよ」

 「...もしかして先ほどの爆発はラヴィーさんの爆発魔法トキシアですか!」

 「いや、十中八九...ラヴィーの体内に貯蔵している魔力を放出したんだと思う」

 「そんなことが可能なんですか?」

 「...可能だ。でも...それをしたら...!!」


瓦礫の中から魔王カインがでてくてフィオナたちは武器を構えたが魔王カインは重症で戦う気がなかった。


 「はあはあはあ...クソ!奴隷のせいで興ざめだ!クラウドは死んだ!邪魔な奴隷も死んだ!これで貴様の星は終わりだ!勇者フィオナ、貴様たちは消滅して死ぬ。せいぜい死ぬまでの恐怖を味わうがいい」


と言い飛び去って行った。


 「フィオナ...私たちはこれから一体どうすれば」

 「...皆を集めてクレア。後のことは私が話しを..!!」


 フィオナが話している時に後ろから音がして二人は振り向くと瓦礫の中からラヴィーと死んだはずのクラウドが出てきた。


 「ラヴィー、クラウド...生きて...」

 「フィオナ...あとはよろしくね」


フィオナはクラウドに肩を貸しているラヴィーに近づいた時に、ラヴィーにそう言われた。ラヴィーの体はひかり消えかかっていた。


 「ラヴィー...あなたは...」

 「......」

 「ま、待って!」


フィオナはラヴィーの異変に気付き触れようとしたが触れようとした瞬間にラヴィーに触れることが出来なかった。


 「...ありがとう」


ラヴィーはそう言い残して泣きながら笑って消えてしまった。


 「...ラヴィー」

 「そんな...ラヴィーが...」


 ラヴィーが消えた直後に中央都市は激しい豪雨に見舞われた。まるでラヴィーのことを嘆いて泣いているようだった。数時間後、クラウドは目を覚ましラヴィーの死を知った。




ここはどこだろう。真っ暗で何も見えない...俺は死んだのか?体思うように動かなかった。誰かの叫び声が聞こえる気がすると思えば体が温かい光に包まれるような感覚がした。この優しい温かさの正体は一体なんだ...ぼんやり上を見上げると光がこちらに向かってきた。


 「クラウド...」


俺の名前を呼んで手を差し伸べてくる。俺はその手を掴むと暗闇が無くなり真っ白い空間に変わった。一体何が起こっているかは分からない。光の主はよく見るとラヴィーだった。


 「ラヴィー?どうしてここに?」

 「こっちよ。クラウド」


ラヴィーは優しそうに俺を呼ぶと真っ白い空間に立たせてくれた。


 「ありがとうラヴィー。ここはどこ?」

 「...」

 「ラヴィー?どうしたの?」


いくら聞いてもラヴィーは答えず悲しそうにこちらを微笑むだけだった。


 「どうしたの?何かあったの?」

 「...」


何も言わないラヴィーに困惑しつつ辺りを見るとラヴィーの後ろに白い橋が見えた。そこに行けば何かが分かるのかもしれない。するとどうしてもあの橋を渡りたくなり、ラヴィーに声をかけ、橋へ行こうとするが止められた。


 「ラヴィー?どうしたの?あの橋に行かないと」

 「クラウド...あんたはあの橋を渡っちゃだめ」

 「どうして?」

 「渡るのは私だけでいい」

 「どういうこと?よくわかんないよ!」

 「分からないの...クラウド...ここがどこなのか?」

 「え?どこなんだここ?」


俺はラヴィーにそう聞くとラヴィーには泣きそうな顔をした。


 「ごめん...私...あんたを助けたのに...あんたを連れて行こうとするなって...許されることじゃないけど...ごめん...ごめんなさい」

 「謝らないでよラヴィー。よくわかんないけど一緒にここからでようよ!」

 「あんたならそう言ってくれると思ってたわ。最後に伝言いい?」

 「伝言?いいけど?」

 「皆に伝えて...今までたくさん助けられたし迷惑もかけてごめんなさい。皆と過ごした日々はとても楽しかった。悔いはないって」

 「分かった。絶対みんなに伝えるよ」

 「...クラウド、これからあなたは魔王バトルロワイアルで多くの悲劇を知ることになると思う。挫折しそうな時は悩まず思い出して...あんたは一人じゃない、皆がいるってこと」

 「分かった。ありがとうラヴィー!」

 「...時間だ」

 「時間?」


ラヴィーがそう言った時急に体が重くなり動けなくなる。するとラヴィーは橋の方に向って歩き出す。俺が呼び止めるとラヴィーは立ち止る。


 「ラヴィー!待って!」

 「...」

 「クラウド...私ね。あんたに賭けてみたくなったの?最初は魔王なのに最弱で泣き虫って聞いて驚いたわ。今までの魔王は残虐で酷い奴らばっかりで信用してなかったの..だけどあんたは違った。あんたにいつの間にか心を許してた...あんたが魔王バトルロワイアル出て優勝するって魔王カインを倒すって言ってくれたこと本当に嬉しかったの。だから...可能性は低くてもあんたに賭けてみたくなった」

 「ラヴィー...」

 「あんたには魔王カインを倒す力がある」

 「でも...俺は弱くて...」

 「今はそうかもしれない...けどあんただって魔王なんだよ。魔王は一人一人が他の魔王に負けない秘めた戦力を持ってるの。あなたはまだそれが覚醒していないだけ。現に魔王カインの天敵はあんただけ」

 「魔王の秘めた...力...」

 「そう。あんたならきっと勝てるよ。じゃあ...私はもう行くね」


ラヴィーはそう言うとまた歩き出した。俺は嫌な予感がした。もう二度とラヴィーに会えないような嫌な予感が...そう思うと体を無理やり起こしラヴィーも元へ走る。橋を渡りきったところでラヴィーは振り返った。 


 「ラヴィーー-----!」

 「クラウド...あんたはまだこっちに来ちゃダメだからね」

 「ラヴィー...なんだこれ...うわあああああああああ」


 

振り返ったラヴィーは泣いて微笑んでいた。ラヴィーのその言葉を最後に俺の足元は無くなり深い闇へと落ちていく。


 「ラヴィー!」


ラヴィーに向かって手を伸ばしたがその手は届くことは無かった。最後に見たラヴィーは幸せそうに笑っていた。


第Ⅳ.Ⅱクエスト_最弱魔王は涙する


 「ラヴィー!」


 俺は目を覚ますと治療室で寝かされていた。俺に気づいた回復術師は直ぐにフィオナを呼びに行き直ぐにフィオナがやってきた。


 「クラウド、目を覚ましたんだな」

 「ああ、なあ?フィオナ...ラヴィーは?ラヴィーはどこにいるんだ?」

 「...クラウド、辛いだろうが着いてきてほしい」

 「どこへ行くんだ?」

 「来たら分かる」


俺は不安な気持ちと嫌な予感を抱えながら案内された場所は霊安室だった。


 「ラヴィーはこの中にいる」

 「!!」


俺は一目散に中に入ると石碑が立ち石碑には【気高き少女ラヴィーここに眠る】と文字が刻まれ傍にはラヴィーの身に着けていたペンダントが掛けられていた。俺の予感は当たってしまった。俺はその石碑を見てその場にしゃがみこんだ。


 「嘘..だろ...なんで...」

 「あの魔王カインの襲撃でラヴィーは自分の命を犠牲にして皆を助けたんだ」

 「そんな...」

 「明日...ラヴィーの追悼の儀を行う。辛いだろうが君も出席してくれ」


 俺はその後どうやって帰路についたのか覚えていなかった。フィオナにラヴィーの死を知らされてから気づけばもう半日が経っていた。森に住む動物たちも察したのか俺を慰めてくれた。結局たいして眠ることができなかった。次の日_ラヴィーの追悼の儀が行われ多くの者たちがその死を労った。俺は何もできずただ見ているだけだったが追悼の儀とは死者が安らかに眠るために安らぎの花・ペチュニアを送る儀式のことだ。


 「ラヴィー...」

 「クラウド」

 「え?フィオナ...」

 「君の番だよ」

 「俺の番?」

 「そう、追悼の儀は初めてかい?なら、私と一緒にしようじゃないか」

 「いいのか、フィオナ」

 「いいよ。私の真似をするんだよ」


俺はフィオナの真似をしてペチュニアの花を添えて手を合した。少しでもラヴィーが安らかに眠るように..俺とフィオナが最後だった。本来ならこの後死体を焼き残った灰を石碑に埋葬するがラヴィーは死体がなく、変わりに炎を灯すことになった。中央都市の大広間に大きな炎が上がり俺はそれを見上げた。


 「炎があんなに上に上がっていく」

 「綺麗だねクラウド」

 「...フィオナ」

 「どうした...クラウド?」

 「俺...炎がこんなに綺麗だって知らなかった...」

 「そうだね...綺麗だ」

 「俺さ...心のどこかでこれは夢なんじゃないかとか...現実じゃないって思ってた。逃げてたんだ俺...この世界に来て...魔王クラウドになって...何なんだろうってずっと考えてた。馬鹿だよな...俺。そんなことを考えたって意味ないのに...分かってたのに..」

 「...クラウド」

 「俺は...何もできなかった...最弱魔王って言われてても...何とかなると思ってた。皆を助けられるって勘違いしてた。現実は違う。俺は弱い...最弱で..泣き虫で..目の前にいた傷ついて助けを求める一人の女の子すら助けることが出来ない!俺に力があればあの時だって助けられたはずなんだ!なのに...俺は助けるどころか助けられて...ラヴィーは...死んだ...死んじゃったんだ!」

 「クラウド...ごめんね」


フィオナはそう言うと後ろから俺を抱きしめた。俺は抱きしめられて涙があふれて止まらなかった。


 「なんでフィオナが謝るんだよ。フィオナは何も悪いことはしてないだろ?俺が...俺が全部悪いんだ」

 「それは違うよ、クラウド」

 「でも!」

 「あの時...私は魔王カインにかけられた魔法のせいでその場から動けず何もできなかった。目の前で君たちが戦って傷ついていたのに何もできなかったんだ」

 「フィオナ...」

 「悔しいよ...私は勇者なのに...仲間を守れない。助けられない。目の前で仲間が死んでいく...こんな残酷なことはない。この中央都市の広場で追悼の儀を行うのはもうこりごりだ」

 「俺ももうこりごりだ。ラヴィーで最後にしたい。誰かが傷つくのは嫌だ...フィオナ、信じてもらえないかもしれないけど俺...ラヴィーにあったんだ」

 「ラヴィーに会った?」

 「目を覚ましたら見知らぬ暗闇にいたんだ。でも明るい優しい光が上から降ってきたんだ。その光が俺に手を伸ばしてくれた。俺はその手を掴むと暗闇から真っ白い空間に変わったんだ。声を聞いて光の主がラヴィーだってわかったよ。でもいくら話しかけてもラヴィーはいつもみたいに返事を返してくれなくて悲しそうに笑うんだ」

 「気づいたらラヴィーの後ろにある白い橋を見たらそこに行きたくなったけどラヴィーに止められた。橋を渡るなって言ったラヴィーが橋を渡ると地面が崩れて俺は深い闇へ落ちたんだ」

 「嫌な予感がしたんだ。ラヴィーと二度と会えないような嫌な予感がした。ラヴィーの所に行こうとしたけど間に合わなかった。目を覚ます前にラヴィーに伝言を託されたんだ。信じたくなくて目を覚ましたらラヴィーはいなくて死んだと知ったんだ」

 「そうか...」


俺はフィオナに伝言を伝えフィオナは黙って聞いていた。


 「ありがとうクラウド。あなたがラヴィーの言葉を聞いてくれたから知ることが出来た」

 「ラヴィー...こちらこそありがとう」


フィオナは炎は見上げ小さな声で言った。


 炎を見ながらラヴィーのことを思い出す。ラヴィーとは短い付き合いだった。最初は仲良くなれないと思ったけどラヴィーの抱える心と過去の傷を聞いてラヴィーの優しさと強さを知った。そしてラヴィーと約束した。魔王バトルロワイアルで優勝して魔王カインをぶっ飛ばすと約束した。俺が約束すると言った時、ラヴィーは驚いていた。俺に初級魔法を教えてくれた。俺は何もできなかったけど何度も教えてくれたし、また特訓する約束をしたのにな...この思い出が最後になるとは思わなかった。


 「もうすぐで炎が消える...」

 「これで追悼の儀は終わる。けどラヴィーが消える訳じゃない。ラヴィーはいつまでもここにいる」

 「そうだな、フィオナ」


フィオナは胸に手を当てて言う。俺も同じように手を当てた。炎は綺麗に燃え尽き追悼の儀は終わった。俺は最後にそう言い手を合わせた。


 「今までお疲れさま...ゆっくり休めよ。ラヴィー」


 (どうか...ラヴィーが安らかに眠れますように...)



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