第5話最弱魔王死にかける

「五話 最弱魔王死にかける」

 「よう?久しぶりだな~お前ら」

 「...カ、カイン...ど、どうして...」

 「クラウド、ラヴィーを連れてみんなと避難を」

 「フィオナ、分かった。行こうラヴィー、ラヴィー?ラヴィー!」

 「!!ごめん..クラウド。行くわ」

 フィオナの指示でクラウドとラヴィーはこの場から離れようとしたが魔王カインがそれを許さなかった。

 「おい..誰が逃げていいって言ったよ。なあ?クラウド」

 「これは束縛魔法シルシアです!この場に縛られこの場から離れることは出来ません」

 「そ、そんな...」

 「...全員その場から離れないように。クレア、サポートをお願いします。クラウド、ラヴィーを頼みます。ラヴィー、大丈夫です。私たちが魔王カインを倒します」

魔王カインは余裕そうに笑いフィオナ達を見下ろしていた。魔王カイン...今の俺で勝てるのか?俺はいずれこいつと戦うことになる。でも...見たらわかる。こいつは強い。魔王バトルロワイアルで優勝するとは言っても勝てるのか...勝て...その時俺は目の前に魔王カインの拳が迫っていることに気が付かなかった。

 「クラウド!」

 「え...!!」

 「避けてクラウド!」

 「おせえよ!」

フィオナの叫び声で気づいたが魔王カインの拳は避けきれず吹っ飛ばされた。

 「クラウド!」

 「うぐ...」

 「しっかり!クラウド!!」

ラヴィーは吹っ飛ばされたクラウドの所に駆け付けたが意識がなく重傷だった。助けようとしたが魔王カインが後ろに来ていた。ラヴィーは短剣を出して構えたが震えていた。

 「ほう?奴隷が俺に刃を向けるのか?」

 「ち、違う...私は奴隷じゃない!」

 「奴隷は奴隷だ。いくら人間がっても奴隷であることに変わりはない。その左腕の印がそうだろ?クラウドに教えてやれよ。魔王の奴隷になった人間の末路ってやつを」

 「私は...奴隷なんかじゃ...」

 「まあいい。俺の目的は勇者フィオナじゃなくそこの魔王だからな」

 「え...クラウドが?」

 「そうだ。おい起きろクラウド!」

 「乱暴しないで!クラウドはあなたに吹っ飛ばされたことで重傷だし気絶してるのよ」

 「そんなの知るか!」

魔王カインは気絶したクラウドの胸倉を掴みラヴィーは止めようとしたが殴られ吹っ飛ばされた。魔王カインはクラウドを揺さぶり起こそうとしたが中々起きないクラウドに苛立ちクラウドを何度も踏みつけた。ラヴィーは止めるため何度も立ち上がるが吹っ飛ばされる。

 「やめて...クラウドを殺さないで..」

 「うるさい!奴隷のくせに指図するな!」

 「うぐ...」

 「貴様がから先に始末してやる。死ね!」

魔王カインはラヴィーを左手で掴むと握りしめた。ラヴィーの悲惨な声が辺りがに響く。

 「ほらほらどうした~!さっきの元気はどうでした?奴隷ーほらほら喚けよー」

 「あがっ...あああああああああああああああああああ」

 「クラウド、早く起きなくていいのかー?お前の仲間が死ぬぞ」

魔王カインはもう片方の手でクラウドを掴み握りつぶした。

 「く、クラウド...そんな...」

 「案外あっけないなー。俺の期待外れか...あれはまぐれだったのか。俺の唯一の脅威はお前だと思ったのだがな。どっちにしろ好都合。これで俺の脅威は去ったわけだ。これで思う存分殺せるって訳だ」

 「クラウドが脅威...」

 「さて...おしゃべりもここまでだ。死ね」

 「まさか...ここまでなんて...でも悪くない...最後にフィオナ達たちと出会って...あんたに助けられたから...ありがとう...クラウド」


 ラヴィーはそう言うと目を閉じた。もう悔いはない。家族を殺された呪いたい人生も皆と出会えて変われたし、なによりあんたに会えたこと..最初は泣き虫で最弱な魔王なんて聞いたことがなかった。魔王なのに優しくて気づいたら心を許してた。だから嬉しかった。魔王バトルロワイアルにあんたが出て優勝してくれるって、魔王カインはを倒してくれるって言ってくれたこと...可能性は低くてもあんたに賭けてみたくなったの。

 だから...クラウド、例え私が死んでもあんたは生きて...魔王カインを倒して...魔王バトルロワイアルを勝ってね。

 「奴隷...何がおかしい?」

 「魔王カイン...あなたの負けよ」

 「我の負けだとこの状況で何を言う。クラウドは死に貴様も死ぬ。仮に貴様らが助かってもクラウドが居なければ貴様らの星は消滅だ。どのみち助からない。我が掛けた束縛魔法シルシアは勇者とクレアとかいう性霊術師の二人のみだ。これをつく方法は我が死ぬか解くしかない。お前たちはつんでいるのさ」

 「つんだのは魔王カイン、あなたよ」

 「何を言ってる。この状況でお前たちの勝機は無い」

 「勝機はある。あなたが良く知ってるでしょ?私はバトルメイドだって」

 「まさか...貴様あれをやるのか!」

 「逃がさない。魔王カイン」

ラヴィーは魔王カインが自分を離そうとしたがラヴィーは自分の流した血と持っている短剣を使い自分ごと魔王カインの腕を指して固定した。

 「貴様!離せ!奴隷が!」

 「絶対に..離さない!タイミングバッチリだ...雨が降ってきた」

 「雨だと!いかん...離せ!」

中央都市に雨が降り注いだ。魔王カインは焦り腕に刺さった短剣を解こうとしたが中々解けない。雨が降ったことに喜んだラヴィーはとある魔法を発動させた。突然ラヴィーと魔王カインも足持ちに巨大な魔法陣が現れる。

 「貴様ー---!」

 「魔王カイン...私たちの因縁もこれで終わり...一緒に心中しよう」

 「この!死ね!貴様!奴隷がああああああ!」

 「絶対に離さない!」

 「フィオナ!あとを頼むね」

 「待ちなさいラヴィー!その魔法は!」

 「ダメです。ラヴィー!」

 「さようなら皆...バイバイ...クラウド」

魔王カインは最後の抵抗にラヴィーの顔をひっかいたがビクともしなかった。ラヴィーは魔法で動けないフィオナたちに叫んだ。ラヴィーは笑いながらそう言うと魔法を発動させた。フィオナ達は止めようとしたが間に合わず魔法が発動し大爆発が起こった。


 「ラヴィーー-----!」

 フィオナの叫び声と共に一瞬激しい光と共に皆は衝撃で吹っ飛ばされた。ラヴィーの魔法でフィオナたちにかけられた魔法は解けたが爆発の衝撃が強く耐えるのが精いっぱいだった。爆発から数分後にフィオナとクレアはラヴィーの安否を確認するため探したが見つからない。

 「ラヴィーが見つかりません、フィオナ」

 「ラヴィー..」

 「あの爆発は一体?ラヴィーはどうしてあんなことが出来たのですか?」

 「これがラヴィーが生かされて魔王カインに奴隷にされた理由です。あなたは魔力の結晶と言われた一族ラビリンスを知っていますか?」

 「魔法の結晶の一族ラビリンスというのは聞いたことがあります。人でありながら魔王と対等に魔力を貯蔵しその魔力を行使することができるという一族ですよね」

 「そう..ラヴィーはその一族の長の娘だった。一族の中でも一番魔力を貯蔵する力が高くなかでも爆発魔法トキシアが得意だった。そこを魔王カインに狙われたんだ。当時ラヴィーはまだ幼くてその力を使えなかった。使えなくて奪うことは出来る。そのせいでラヴィーは奴隷にされたんだ」

 「それがラヴィーが奴隷にされた理由だったんですね」

 「一度奴隷にされ奴隷の印を押されたらその人間は人間以下の扱いを受け苦しむことになる。私はその制度を変えたい。しかし...魔王をころさないとこの印は解けない。酷い呪いだよ」

 「...もしかして先ほどの爆発はラヴィーさんの爆発魔法トキシアですか!」

 「いや、十中八九...ラヴィーの体内に貯蔵している魔力を放出したんだと思う」

 「そんなことが可能なんですか?」

 「...可能だ。でも...それをしたら...!!」

瓦礫の中から魔王カインがでてくてフィオナたちは武器を構えたが魔王カインは重症で戦う気がなかった。

 「はあはあはあ...クソ!奴隷のせいで興ざめだ!クラウドは死んだ!邪魔な奴隷も死んだ!これで貴様の星は終わりだ!勇者フィオナ、貴様たちは消滅して死ぬ。せいぜい死ぬまでの恐怖を味わうがいい」

と、言うと飛び去って行った。


 「フィオナ...私たちはこれから一体どうすれば」

 「...皆を集めてクレア。後のことは私が話しを..!!」

 フィオナが話している時に後ろから音がして二人は振り向くと瓦礫の中からラヴィーと死んだはずのクラウドが出てきた。

 「ラヴィー、クラウド...生きて...」

 「フィオナ...あとはよろしくね」

フィオナはクラウドに肩を貸しているラヴィーに近づいた時に、ラヴィーにそう言われた。ラヴィーの体はひかり消えかかっていた。

 「ラヴィー...あなたは...」

 「......」

 「ま、待って!」

フィオナはラヴィーの異変に気付き触れようとしたが触れようとした瞬間にラヴィーに触れることが出来なかった。

 「...ありがとう」

ラヴィーはそう言い残して泣きながら笑って消えてしまった。

 「...ラヴィー」

 「そんな...ラヴィーが...」

 ラヴィーが消えた直後に中央都市は激しい豪雨に見舞われた。まるでラヴィーのことを嘆いて泣いているようだった。数時間後、クラウドは目を覚ましラヴィーの死を知った。

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