第Ⅲクエスト_最弱魔王は修行します
五年後に迫る魔王バトルロワイアルに参加することを決めた俺(魔王クラウド)は、この星を守るため修行することを決意したのだが...
「ぎゃふん!!」
と情けない声を出した俺はたったレベル1の女の子に吹っ飛ばされた。そう俺はめっぽう弱く初級魔法をくらい吹っ飛ばされるくらい弱かった。それもそのはず俺のレベルは1どころかマイナスだった。レベル-999で、レベル1にも満たない雑魚である。自分でも言いたくないが雑魚だ、雑魚雑魚だ。確かにこんなに弱かったらまあ...初級魔法でも吹っ飛ぶよな。困難で勝てるのだろうか...いやこんな後ろ向きな考えダメだ。やるって決めただろ、ラヴィーや俺に協力してくれているフィオナ達のためにも俺がそんな考えじゃどうする。やってやるんだ、勝ってこの星を守るために...
「まさか..あんたがここまで弱いなんて知らなかったわ」
「ごめんなさい」
「謝ることじゃないでしょ。私はあんたに賭けたんだから死ぬ気でやってもらわないと困るわ」
「ラヴィー...」
「何て顔してるのよ。それに考えても見て最弱と言われたあんたが勝ったら他の魔王たちはどんな顔するかしら。それに魔王カインの驚いた顔が見たいしね」
「そうだな。ラヴィー、初級魔法についていろいろ教えてくれ」
「分かったわ。まずは、初級魔法の中で基礎中の基礎から教えるわね」
「ああ、頼む」
魔王クラウドとラヴィーの様子をフィオナ達は遠くから見ていた。フィオナは黙ってその様子を見ていたが精霊術師のクレアが話しかけた。
「フィオナ、魔王クラウドとラヴィーが仲良さそうに話していますね」
「そうだねクレア。前は魔王ということで警戒していたし過去のことがあったからだろうね」
「言わなくてよろしいのですか、魔王クラウドに」
「言ってどうするんだい。彼を傷つけるだけだよ」
「そうですね。身勝手過ぎました、すみません」
「謝ることはないよ、クレア。私もまだこのことはクラウドには言ってないからさ」
クレアは魔王クラウドとラヴィーを見てため息をついた。魔王の奴隷になった人間が本来自由になれるはずがない。ラヴィーが自由になったのは勇者フィオナの存在もあるが一番は魔王クラウドだった。
「魔王カインとの約束ですよね。ラヴィーを自由にする代わりに魔王クラウドに呪いをかけると言うのは...」
「その約束は私とクレアだけの秘密だ。知ればラヴィーもクラウドも傷つくだろう」
第Ⅲクエスト_最弱魔王は修行します
**
それは昔の出来事だった。もう二度と思い出したくはない記憶だろう。勇者・フィオナは精霊術師クレアを連れて走っていた。はるか遠い山々で雨が降り注ぎ魔物たちが襲い掛かる。フィオナ達は雨に濡れることも気にせずただ走る。山頂に近づいた時誰かの叫び声が聞こえ慌てて駆けつけると悲惨なある様に戦慄した。辺り一面血で染まり多くの人間だけでなく魔物たちが死んでいる。
「フィオナ、これはいったいどういう事なのでしょう。私たちは魔王カインより奴隷にされた少女を助けるためにここにはせ参じました。しかし、少女も魔王カインもいません。一体何が起きているのです!!」
「私にもわからない。でも様子を見るに山頂付近で聞こえた声は少女の声だっだ。ここには少女の死体はない、ならば聞こえたあの声は一体...」
その時だった。再び少女の叫び声が聞こえてくる。叫び声を聞いたフィオナ達は急いで声のする方へ向かうとそこにいたのは気を失った少女と傷だらけの魔王カインだった。魔王カインは何かに呪いをかけており呪われたのが人間か魔物か確認することは出来なかった。魔王カインは呪った人物を踏みつける。
(呪いをかけられると呪いが定着するまで黒い霧でおおわれる)
フィオナ達は少女と呪われた人物を助けるため、魔王カインに攻撃した。
「ここです。あっあれは魔王カイン!!」
「あの魔法は
「分かりました。
「よし...魔王カイン、覚悟!!」
フィオナが二連撃で攻撃し両脚を切りつけると魔王カインはフィオナに気づいた。その隙に魔王カインから呪われた人物は奪い離れる。魔王カインは、フィオナに
「なぜ、我の力が聞かぬ」
「私は精霊術師です。いかなる魔王でも私の前では
クレアが唱えると魔法カインの足元から魔法陣が現れ金色に輝く光が魔王カインを包み込んだ。
「ぎゃああああああああああああああ」
と魔王カインは叫び暴れるが魔法陣は解けることはなく封印まであと一歩まで迫っていたが...完全には封印することが出来なかった。魔法カインは自身のオリジナル魔法・
「っ!!クレア」
「フィオナ、やられました。魔王カインはオリジナル魔法を使って彼女を操って...」
「術を解いて回復を...」
「なりません。私が今この術を解けば魔王カインを封印するのはもちろん、あの少女を助けることは出来ません。私の命をもって魔王カインを封印します」
「...図ったな。少女にあらかじめかけていたのか
「そうだ...油断したな、勇者フィオナ。我が封印してもあやつにかけた魔法は解けない。術を解く方法は、死のみだ。かけた者は己以外の人間を殺し、発動後は自ら死ぬまで終わらないのだ。仲間が死ぬか少女が死ぬかどちらが先かな?」
「...クレアに
「勇者はどちらを助ける?」
「私は...っ!!」
フィオナが動き出そうとした時だった。解けないはずの少女の魔法が解けたのだ。魔王カインも予想外の出来事に驚いていた。その力は呪いをかけれられた者から発せられていた。
「何故だ!!我が呪いをかけたのだぞ。呪われたものは自我を失い死ぬまで蝕まれるはずだ。力など使えるわけがない!!」
「フィオナ、これは...一体何が...」
「分からない。でも今の内だ...
「ありがとうございます。私もこのような力は知りません。魔王のオリジナル魔法を解くことができる者などいません。勇者でも不可能な事なのに...」
その力は聖なる力だった。勇者でも限られた者しか到達できないとされている力。フィオナはその力を初めて知り驚いた。心地よく幸せな温かい光があたり一面に広がっていく。その力はそのまま魔王カインを包み込んだ。クレアの魔法は解けたが魔王カインは聖なる力から抜け出すことが出来ず悶え苦しんでいた。
「何だこれは...我の力や魔力が封印されるなど...ありえん。今回ばかりは見逃してやる。もう奴隷もいらぬ。貴様は厄災だな、クラウド。貴様はいつか我が殺す」
そう言うと魔王カインは飛び去った。聖なる力の影響かいつの間にか空は晴れている。フィオナはクレアと少女の無事を確認し呪われた人物のもとへ近づいた。フィオナの力で黒霧を追い払うとそこにいたのは紛れもない魔王クラウドだった。
「魔王クラウド...まさかあの力はクラウドが」
「そんなはずはありません。魔王ですよ、魔王。魔王が聖なる力を使えるはずがな...」
「クレア、誰か来る見たい。隠れましょう」
眠る少女と共に隠れると動物たちが魔王クラウドのもとへ駆け寄り森へ運んでいった。後をつけた二人は森の奥まで行くと動物たちとともに眠る魔王クラウドを目撃した。しばらく様子を見ていたが魔王クラウドは動物たちと共に仲良く過ごしているだけであの時の記憶はなかった。
**
「不思議です。あの時のことは私とフィオナの秘密ですがなぜクラウドが聖なる力を使えたのでしょう?」
「それは私にも分からないがきっと...クラウドは私たちの誰よりも優しいのだろう。だから聖なる力を使えたのだと私は思うよ」
「そう信じたいですね」
クレアとフィオナが二人で話していた時だった。中央都市から大きな爆発音が聞こえてきた。フィオナは、クレア、ラヴィー、クラウドを連れて中央都市へと向かうとそこにいたのは魔王カインだった。
「久しいな...勇者フィオナ、そして魔王クラウド。我が復讐しに来てやったぞ」
と言った魔王カインは不気味に笑った。
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