第2話最弱魔王は決意します(前編)
人は、死ぬと転生し新たな生をうけることが出来る。それは強大な力を授かった英雄か、はたまたヒロインと楽しいスローライフを楽しむ主人公なんて考える人も多いだろう。それは小説のような物語に限る話だ。仮に転生できたとしても普通なにかのお告げのような加護があってもいいはずだ。もしも転生したら強大な力を得なくてもいい、ましな転生ライフを送ってみたい。その考えは簡単に撃ち抜かれた。俺は、車に轢かれそうになった女の子を庇いあっけなく死んで転生した。しかし、俺が転生したのは、ゲームのキャラクター『MYクエスト』の泣き虫で最弱な魔王・クラウドだった。魔王・クラウドは、勇者・フィオナと和解し友人関係にありこの世界は、平和に満ち溢れていたが魔王シリウスによって平和は怯えかされることになった。
「我は、ある宴を開くことにした。その宴とは、魔王バトルロワイアルだ。優勝した者には我が一つだけ願いをかなえてやる。しかし、敗者の星は、我が自ら葬ってやる。死にたくなければ勝ち残れ。それでは、諸君らの検討を祈る」
魔王シリウスは、魔王によるバトルロワイアルは開催することを宣言した。魔王バトルロワイアルに負ければこの星は、消滅する。こうしてこの星を守る俺の転生ライフが始まった。
「二話 最弱魔王は決意します(前編)」
魔王シリウスの魔王バトルロワイアルの開催宣言がされてから既に一時間が経過した。俺たちはというと勇者・魔王合同会議室で議論を白熱していた。
「だから、何とかしないといけないでしょ!」
「そんな分かってんだよ。なんなら呪文でもかけてごまかすしかないだろ」
「そんなことをしたらすぐばれるわよ。相手は魔王だし、魔王以外が参加したなんてことになれば対戦相手の魔王にも、魔王シリアスにもその場で星ごと殺されるわよ」
「ならどうすんだよ!!」
「それをこれから考えてるでしょう!」
激しい意見のぶつかり合いが起き俺は彼らと止めようとした。
「あの~とにかく二人とも落ち着いて...」
「「あんたは黙ってなさい!!/黙ってろ!!」」
「はい!」
二人にこう言われてしまい思わず返事をした。確かに起こるのも無理はないだろう。いきなり魔王シリウスによってバトルロワイアルが開催されることになった。しかも魔王同士だけで必然的に戦うのは俺だけど、俺は魔王の中で最弱だ。俺が戦えば間違いなく負けてしまう。この星は、消滅してしまう。そうならないために皆焦って対策を考えているんだ。俺にもっと力があればこんなことになっていないのかもしれない。何もできないのか、俺は。心の中で悔しがっているとフィオナが俺の方に手を置いた。
「大丈夫だクラウド」
「フィオナ?」
「ねえ?フィオナはどう思う?このままじ私たちのこの星は、消えちゃうんだよ。なんとかしないと」
「落ち着いてラヴィー、エリオットも。確かに魔王シリウスの言う通り事態は、最悪だろう。しかし焦ったて何も始まらないだろう?魔王シリウスは、魔王たちによるバトルロワイアルを開催することを宣言した。これにはきっと意味がある。それに私は友を信じている。クラウドなら大丈夫さ。クラウドはどうしたい?」
「フィオナ?」
「君がもともと戦いを好まないことは知っている。それは君がこの星の誰よりも優しい男だからだ。私は、君の判断に任せる。戦うもよし戦わないことを選択してもいい。私達は君の意見を尊重する。」
「でもフィオナ、負けたら俺たち...」
「エリオット、ラヴィー!!聞いてくれ、頼むよ」
フィオナは、そう言うと二人は、納得して話に耳を傾けた。
「ありがとう二人とも。話を戻そうか、クラウド。君と私たちが初めて会ったことを覚えているかい?その時に約束したんだ。決して命あるものを傷つけないと。だから君には傷ついてほしくないんだ。君が前者を選んでも後者を選んでもそれは君のせいではない。だから君が責任を負うことも誰かが君を責めることもない。ゆっくり考えて決めてほしい。」
フィオナは、そう言うと会議室を出てしまった。フィオナがそう言った空気は軽くなった。
「これから考えないと...」
「なあ?クラウド」
「えっと確かエリオットだよね?」
「さっきはすまん。謝らせてくれ!!」
エリオットは、そういうと頭を下げて謝ったが、自身が納得できないと言って土下座をしようとしたので止めた。エリオットは、オレンジ色の短髪で青と白の道義を着ている格闘家だ。仲間思い出熱い性格のため時に突っ走る癖があるそうだ。エリオットは、正直に口に出す性格のため時々心に刺さることを言われたが打ち解けてきた。会議室には、俺とエリオットともう一人ラヴィーがいた。ラヴィーは、金髪にポニーテールの女の子だった。短剣を持ち、黒色のローブに緑色のタンクトップとデニムパンツをはいているバトルメイドだ。二人で話していた時ふとラヴィーがため息をして立ち上がった。
「行くのかラヴィー?」
「そうね。ここにいても変わらないし。ねえクラウド、お喋りもいいけどどうするか決めた?」
「それは...まだ」
「いい加減早く覚悟を決めなさいよ。戦う気ないんでしょ、そう言いなさいよ」
「ラヴィー、まだクラウドは決めていない。それにフィオナだって言っただろう?」
「なによ。クラウド、クラウドってそいつは、魔王よ。私たちの敵じゃない。仲良しごっこしておかしいわよ。魔王が何をしたのかあなただって知ってるでしょ!!」
「そうかも知れないが、クラウドがやったわけではないだろう?」
「っ!!」
怒ったラヴィーにエリオットは、頬を叩いた。俺は、どうすることもできずただ見ている事しかできなかった。よく見るとラヴィーは、泣いていた。エリオットは、叩いたことを謝ったがラヴィーは何も言わず会議室を飛び出した。
「エリオット...その」
「許してやってくれクラウド。あいつは、もともとこの星ではなく別の星から来たんだ」
「別の星」
「そう。魔王シリウスと同等の力を持つと言われている魔王がいる。その名も魔王カイン。こいつは、魔王で一番強いんだ。ラヴィーは、その星から逃げてきたんだ」
「だから魔王を恨んでるんだ。」
「ただ恨んでるんじゃない。かたき討ちと復讐だ」
「復讐?」
「そうだ。ラヴィーは目の前で親も兄弟も友達も目の前で殺されラヴィー自身は、奴隷にされていたんだ。俺たちは、魔王カインが不在の時を訪れた時ラヴィーを見つけて保護したんだ」
ラヴィーは、家族が埋葬されている墓地に来て手を合わせた。
「来たよ。皆、実はね...」
ラヴィーは、墓石に向かった今までのことを語っていた。語っているうちに涙が止まらなくなってうずくまってしまった。ラヴィーが泣いていると誰かの近づく足跡が聞こえてふと振り向いた。
「フィ、フィオナ...」
「ごめん。俺だよ」
「っ!!」
ラヴィーは俺を見ると嫌な顔をした。そうだよな。魔王に身内を殺されて奴隷にされたらきっと俺だって恨む。こういう時どうしたらいいのだろう。ラヴィーを見ると泣いて肩が震えていた。泣き顔なんて俺に、魔王なんかに見られたくないよな。俺は着ていたマントを外してラヴィーに被せた。
「なにすんのよ、大体なんでここが!!」
「ごめん。俺、ラヴィーのこと知らなくて...。俺は何も見てないから泣いてもいいよ」
「馬鹿!!だから魔王は嫌い...なのよ」
ラヴィーは泣きながらそう言うと大粒の涙を流した。俺は後ろを向いて彼女が泣き止むまで空を見上げていた。空にはきれいな夕日が上り綺麗だった。
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