第9話 プロギングイベント開催!
「皆さん、A市100周年イベントのプロギングの件ですが、先日A市と打ち合わせをしてきた際に、A市側からOKが出ました。環境に対する関心を喚起することもできるので、とてもいい企画ですねとお褒めいただきましたよ」
安田が報告に来た。
100周年イベントがA市内のつつじ丘緑地公園で開催されるため、プロギングをするコースはA市が公園内で計画をしてくれるそうだ。
いよいよA市100周年イベント当日。
つつじ丘緑地公園にジャングルジムのA市案件メンバー全員が集まっていた。つつじ丘緑地公園は多くの人で賑わっている。
様々なエリアがあり、焼きそば、たこ焼き、チョコバナナ、わたがし、りんご飴……お祭りのように出店が出ている。
メインステージではA市市長による挨拶が行われていた。A市のゆるキャラの着ぐるみもいて、子供達がキャーキャー喜んでいる。
ジャングルジム企画のプロギングは、A市のスタッフやジャングルジムのA市案件以外の社員達もスタッフとして来てくれている。
プロギングのスタート時間、勇樹達はスタート地点にいた。参加希望者の人達が30人ほど集まっている。親子連れや大学生ぐらいのグループ、年配の参加者もいた。
「皆様、プロギングにご参加いただきありがとうございます。今回は競技の要素はなく、皆さんでゆったり走りながら、交流を楽しみながら、目についたゴミを拾っていきましょうというものです。速さを競うものではないので、逸れることはないかと思いますが、一応コースの途中でこのTシャツを着たスタッフがいますので、分からないことがありましたらそちらのスタッフに聞いてくださいね。時間は大体30分ほどで、軽めのものを予定しておりますので、お子さんでも安心かと思います。大きなゴミ袋を10枚用意してありますので、適当に10人の方がゴミ袋を持ってください。軍手はこちらに人数分ありますので、取りに来てください」
安田が説明をし、プロギングが始まった。
初対面の参加者同士も、ジョギングしながら談笑している声が聞こえてくる。
「どちらから来られたんですか?」
「私はA市の○○町です」
「プロギングの経験はあります?」
「初めてなんです」
走りつつ、目についたゴミを拾う。空き缶・ペットボトルやらマスクやらタバコの吸い殻が目につく。たまにおかしなゴミも落ちていて、靴下や野球のボールが落ちていて拾った人が笑ったりしていた。
ゴール地点に到着し、30分にしては沢山のゴミが拾えた。
「今までこの公園に来ても、こんなにゴミが落ちてるなんて気にしてなかったです」
「なんかゴミ拾いって、探しながら歩いてるとだんだん宝探しみたいな感覚になってきて楽しかったです」
「地球にいいことをしてるって思うと、自分の心もきれいになっていく感じがしました」
参加者の皆さんが嬉しい感想をくれる。
こうして、ジャングルジム企画のプロギングは終わった。
次の日の月曜日、ジャングルジムのA市案件仕事場ではプロギングの話題で盛り上がっていた。
「おはようございます。昨日はお疲れ様でした」
安田が笑顔で入ってきた。
「プロギング、大成功でしたね」
邦恵が安田に言う。
「皆さんのおかげで大盛り上がりで、評判もよかったです。A市の方からも、すごくよかったと言っていただけましたよ」
最初は、年齢も性別も今までの経歴もバラバラな6人が1つの仕事をすることでまとまりがなく、ギクシャクすることもあったが、この半年間で様々な経験を共有し、1つのチームとしての一体感が生まれた。
勇樹はここで働くことがとても楽しくなっていた。A市案件のみんなだけではなく、ジャングルジムの他の部署の人達とも話したりする機会が増え、この会社自体が好きになってきた。
以前の仕事では、会社が好きだとか、仕事が好きだなんて思うことは全くなかった。ただただ辛いだけだった。そう考えると、この会社での仕事は勇樹にとってとても貴重なものとなった。
9月ももうすぐ終わる頃。すっかり秋になり、まだ暑い日もあるが街の空気が涼しく変化してきた。
「今日がジャングルジムの最終日だね」
綾菜がみんなに言う。
「なんだか寂しいなぁ……」
奏太が寂しそうな表情をする。
A市案件の仕事は全て終わり、今日は片付けをするだけだ。
そして、夕方からは安田、勇樹、相川、邦恵、奏太、綾菜、さくらと、A市案件に関わった社員2人で打ち上げをすることになっている。
夕方、仕事を片付けた安田と2人の社員がやってきた。
「では皆さん、打ち上げ会場に向かいましょうか」
打ち上げ会場は、ジャングルジム近くにある居酒屋の個室だ。
「乾杯〜!」
9人で乾杯をし、この半年間の出来事を話しながら振り返った。
相川と綾菜が揉めたこと。さくらが来れなくなったこと。桜ヶ丘パークマルシェに出店したこと。安田と奏太と勇樹がランニングを始めたこと。A市100周年イベントでのプロギングのこと……
「この半年間、本当に色んなことがあったなぁ〜」
勇樹は改めて半年間の自分の変化を実感した。
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