第242話 清蘭祭1日目 翼と玲奈2
「ぐすっ…ずずっ…うぅぅぅ…」
「はいこれ…使って…」
「ありがと…ごめんねぇ…こんなにボロ泣きするなんて思ってなかった…」
「大丈夫だよ。宮下さんだけじゃないし、俺も泣きまくったし…流石は悠馬先輩のシナリオだわ…陸は陸ですげー格好良かったし、陸にあんな才能あったなんてなぁ~…」
主人公の蓮夜を親友の陸が演じたってのは聞いていたけどあそこまでだなんてな…きっと才能があったんだろうな。
「んっ。もう大丈夫。はぁぁぁ…喉乾いちゃったし、何か飲みに行かない?」
「そうだね。ん~…折角だし2-Aいってみる?」
「YouMa様の所のクラス?行きたいっ!」
「じゃー決まりだね。一緒に行こうっ。」
俺と宮下さんは連れ立って2-Aに向かった。
すれ違う人すれ違う人が結構の割合で泣いた後があったり未だに泣いたりで、映研と演劇部の出し物は完全に大成功だなと感じた。
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「いらっしゃいませー!お二人ですね?お席にどうぞ。」
悠馬先輩のクラスメイトに案内されて優雅な空間の席に案内された。
「うわぁぁ…凄すぎ…貴族カフェってなってるけどドレス姿綺麗…めっちゃ大人っぽい…これで一つだけ年上って…色々自信失くす…」
「何て言うか…女性って凄いな…服装や化粧で子供にも大人にもなれるって分かるわ…」
「女の子はいくらでも変われるんだよ?なーんてねっ。でも、私もあんなドレスとか着てみたいなぁ~…あそこまで変身したら似合うかな?」
宮下さんのドレス姿…絶対やばいくら似合う…凄い高貴なご令嬢になりそう…
「う、うん…多分凄い似合うと思う…俺も機会があれば見てみたいかも…」
「じゃー着る機会があったら写真撮って見せるねっ!」
その機会があるのか、それまで付き合いがあるのかは分からないけど見せて貰えるならそれは嬉しいな。
「お?陸か、いらっしゃい。それと…宮下さんかな?」
俺たち二人が注文した物を悠馬先輩が持って来てくれて俺達に気付いて話しかけて来てくれた。
「戻ってたんですね。えっと…宮下玲奈さんです。」
「やっぱりか、柚美ちゃん達の友達だったよな?逆月悠馬だ、よろしくな。」
「は、はい!よろしくお願いします!!」
ペコペコと面白いくらい頭を下げてる…気持ちは分かるけどねぇ〜…
「悠馬で良いから呼び方。柚美ちゃん達の友達で翼とも繋がってるなら構わないから。」
「は、はい!悠馬先輩で!ありがとうございます!!」
ほいほーいと、先輩は離れて行って他のお客さんの相手をしてる。
まぁ…記念撮影とかだけど……
「はぁぁ…緊張した…」
「ぷっ。ふふっ。緊張したんだ?」
「そりゃするよ?!めっちゃ有名人だし憧れてるし…てか!笑いすぎっ!」
「ごめんって…いやさ…俺等もそうだったなぁ〜…って思い出してさ。宮下さん以上にガチガチだったかもな。」
「そうなんだ?まぁ…そうだよね。」
「うんうん。その後も家族から根掘り葉掘り聞かれて初日から疲れたの思い出したよ。」
「そりゃそうだ。私だってそうするし…」
「でも、その後はずっと楽しかったな。夏に皆で行ったお祭りとか海にも連れて行って貰ったし…すげーんだぜ?貸し切りのビーチとロッジでさ!めっちゃ楽しかった!」
「それは…羨ましいなぁ〜…それって去年の星川先輩の事があった所?」
「あぁ、そうだ。愛央が過去にケリをつけた場所だ。翼…喜んでくれてるのは嬉しいが少し声のトーンを落とせ。」
「あぁ…すいません…つい…」
やっちまったぁ〜…くそ恥ずかしい。
「落ち込みすぎだ。馬鹿垂れ!」
ガシガシと、少し乱暴に俺の頭を撫で回して俺から離れて行ったけど、何か子供扱いされた気がする…
まぁ…でも、何か兄貴って感じがして悪い気はしないかな…
「仲良いんだねっ。なんか兄弟みたい。」
「兄弟って…嫌な訳じゃ無いけどさ。ちゃんと先輩に追いつきたいな…」
健司じゃ無いけど俺だって先輩に憧れて進学したんだ…今までずっと引っ張って貰って、今だって…
「焦るな翼。俺に追いつきたいって気持ちは嬉しく思う。でもな?今の翼のままで良いんだよ。俺を目指すのを止めろとは言わない。でも、翼らしさを失くす様な事だけは駄目だぞ。」
「俺らしさ…今の俺のままで良い…はいっ、先輩の言葉を信じます。信じられないとかあり得ないですし。俺らしく、俺らしさを残して先輩に追い付ける様に頑張ります。」
「あぁ、それで良い。」
「って…何でニヨニヨしてるの?宮下さん。」
「え~だってぇ…ねぇ?」
言いながら周りのお客さん達を見る宮下さん。そんな宮下さんに同意する様に、周りもウンウンと頷いてる。
「あぁ~…恥ずかしい事言った…まぁ、でも…忘れんなよ?」
「う、うすっ///ありがとうございます。」
その後、ゆっくりと食事を楽しんで2-Aを後にしたんだけど…
「あれ?伝票…は?」
「ほんとだ…あれぇ?落ちたのかな?」
「翼ー、食い終わったなら席開けてくれー。お客さん詰まってるんよ。」
「あ、はい!でも伝票が…」
「俺の奢りだよ。はよ、デートの続きして来い。」
ほれほれと、先輩に背中を押されて俺も宮下さんも追い出された…
「うわぁ…ご馳走になっちゃった…後で、お礼言っておいて貰える?」
「勿論。俺も同じだし…取り合えず、次は何処に行く?」
「えっとねぇ~…」
宮下さんの言葉を聞きながら俺達はゆっくりとあっちこっち見ながらデートを続けるのだった。
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SIDE 玲奈
杉村くんとの学園祭デート。
正直に言うと私はモブオブモブだと思ってる。
中学時代だって、柚美と千里と涼の3人と仲が良かったから、それなりの立ち位置に居る事が出来たけど実際には何処にでも居るモブが私だ。
そんな私が…男の子と学園祭でデートしてるなんてね…しかもだ、世間で超有名人、沢山の女性と男性から憧れと恋慕を持たれているYouMaの後輩で、稲穂さんとも親友と言う男の子とだ。
普通にしてるけど、実際にはずっと緊張しっぱなし…しかも実際にYouMa様に会えたし悠馬と呼んで良いとまで言って貰えた。
それだけでも来た甲斐があると思うし杉村くんの沢山の顔も見る事が出来たのは本当に嬉しかった。
杉村翼くん…初めて会ったのは偶然だったけど、出会えて良かったと思えた男の子だ。
話すだけで凄く楽しいし、落ち着くし、凄く自然体で居られる相手だ。
多分…きっと…凄く相性が良いんだと思う…柚美達的に言うと、運命の相手かな?///
「ところでさ…今だから言っちゃうけど誘われた時からめっちゃ緊張してるのね?しかもさ…今だって凄く緊張してるんだよ?」
ずっと気になってた!会った時から全く緊張した感じがしないの!実は女の子馴れしてるよね?!そりゃね?柚美達を筆頭に星川先輩達の3女神、悠馬先輩の妹さんの菜月さんって言う美少女が普段から周りに居れば馴れるのかも知れないけどさ。
「いや…俺だってめっちゃ緊張してるよ?宮下さんを誘った時からずっとさ。今日だって久しぶりに会えて、誘いに乗ってくれて学園祭を一緒に回ってくれて楽しませられるかな?つまんないって思ってないかな?ってずっと気になってる。それに…」
そう言って杉村くんは手を私の目の前に出してきた…その手は小刻みに震えてる…?
「え?どうしたの…?」
「いや…緊張しっぱなしでずっとブルってる…情けなくてごめん…」
「情けなくなんて無いよっ!ありがとね…私の為にに頑張ってくれてっ!本当に来てよかった…凄く楽しくて嬉しい!」
「そ、そっか///それなら良かった…」
照れながら私を見てる杉村くんに私も何となく恥ずかしくなってくる。
にぃ〜にぃ〜と、子猫の鳴き声が聞こえてくる。
だけど、あの子は今は預かってもらってるはずだし…?
うわぁ?!子猫?!何処から!?何でさ!!精一杯走ってるの可愛いっ!と、あっちこっちから聞こえてきて私もきょろきょろしてると、私達に向かって走ってくるあの仔が居て、何で?と思ってる内にたどり着いた子猫が杉村くんの足にしがみついてそのまま登り始めた……
「おおう?!何だこいつ?!何処から来たんだ?!」
「あ!こらっ!駄目だってばっ!」
急いで剥がそうとしたけど無理矢理引っ張ったら制服に穴が空いちゃうしで、わたわたしてる間に杉村くんの胸元に落ち着いた。
「おぉぅ…?こいつは一体?てか、良く俺にくっついたな〜…」
「ご、ごめんね!その仔は私が連れてきたの!」
「連れてきた?何でまた?」
「学校に向かってる時に何か着いてきちゃって…無視する訳にも行かないし見捨てる訳にも行かないしさ…それで柚美に相談したら生徒会で預かってくれるって事になって…」
「成る程?その仔が何故かここに居ると…」
「そうなのっ!私って昔から何か動物に無条件で好かれる事多くてさ…それで、今回も…」
何故か分からないけど私は必死に説明しちゃったんだけど…そんな私の焦りを気にする事無く、子猫の相手をしてくれてる。
「羨ましいな〜何もしなくても懐かれるってさ。俺は駄目だからな〜。」
「そ、そうなの?そんな風に見えないくらい懐かれてない?」
「この仔が特別なんだろな。普段は威嚇されるわ…逃げられるわ…触れそう?って思えば噛まれそうになるわ…思いだしたら泣きたくなってきた…」
「あ、あはは…それは何と言いますか…ね?」
「良いよ良いよ。そう言う星の下に産まれたんだろうし…って…ふ、ふふ…あははははっ!」
「ど、どうしたの?!」
悲壮感を漂わせていたと思ったら何故か急に大声で笑い始めるし!!
「ごめんごめん!いやさぁ〜、今朝ね?何気なく見てた朝の番組で占いやっててさ。その占いで、猫が運命の出会いを運ぶでしょうって言ってたのよ。それを、思い出してさ!この事なのかなって思ってさ!そしたら、可笑しくなっちゃって!」
「う、運命の出会いって…///」
「まぁ、それは大袈裟に言ってるんだろうけど、こうやって宮下さんが連れてきた仔が結びつけてくれてるから案外当たってるのかもなって思ってさ。」
「な、なるほど…///それは何と言いますか…光栄で、ゴザイマスです…はぃ…///」
「何その言い方!とりあえず生徒会室に行こうか、今頃逃げた!って騒いでるだろうしね。」
「そ、そうだね…寂しくなったのかもだけど、ちゃんと待ってるんだよ〜?」
にぃ〜にぃ〜…と、分かってるんだか分かってないんだか、良く分からない反応を見ながら私達は生徒会室に向かう。
杉村くんは、嬉しそうに子猫とじゃれ合いながら歩く…そんな彼の横顔は何処か可愛くて私は目を離せなかった。
その後、改めて預けた私はデートを続けて沢山の思い出を作る。
翼くんが言っていた占いの話を真に受ける訳じゃ無いけど、こんな出会いも素晴らしいと私は思う。
そして…小猫は翼くんが引き取る事になった。
折角の出会いだし俺に懐いてくれる仔を手放したく無い、この仔を通じて今日一日でこんなに仲良くなった恩人?恩猫?だから最後まで面倒を見たいと言っていた。
私と一緒に考えた子猫の名前は勇希…最初に私に付いてきた事、怖かっただろうに人の多い学園内を走って私達のところに来てくれた勇気を称えて…私と翼くんを繋いでくれた大切な仔としてずっと…ずっと、私と翼くんの二人に可愛がられるのだった。
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