第241話 清蘭祭1日目 翼と玲奈1
コツコツコツ…ピタ…スリスリ…
コツコツコツ…ピタ…スリスリ…
困った…どうしよう…私は今、元々行くつもりだった清蘭祭へと行くために清蘭高校へと歩いてる…歩いてるんだけど…気付いたら…
な~お…と足を止めた私の足に子猫がスリスリしてくる…
うぅぅぅ…見捨てられないし、かと言って連れて行く訳にも行かないし…どうしよう…
この前にひょんな事から知り合った杉村くんから誘われたのもあって柚美達と会うのとは別の理由で清蘭祭に向かってるけど…流石に猫を連れて行く訳には行かないよね…
「はぁ…仕方ないなぁ~…」
ひょいと子猫を抱き上げたら抵抗する事も無く抱っこされる。
「何で逃げないのよ…あんた野良でしょ?」
にぃ~にぃ~とお気楽に子猫は私の胸元で鳴き声を上げる、可愛いけどさ…どうすれば良いの?
「ん〜…一度帰る?でもなぁ〜…柚美達に相談してみようかな…」
スマホを取り出して直ぐにフリッペを起動、校門まで迎えに来て貰えない?ちょっと頼みがあるの。と連絡してから私はまた、歩き出した。
…………………………………………………………
〜校門前〜
「玲奈ーこっちこっち!って何その仔?!」
「久しぶり!それがさぁ〜…着いてきちゃったの…得に何もしてないんだけどね。流石に放置する訳にも行かないしこの通り抱き上げても逃げないしでね〜、見て回ってる間、様子を見てて貰えたりしないよね…?」
「はぁぁ〜…相変わらず無条件で動物に好かれるんだ…ちょっと待ってね。」
私は直ぐにスマホを出して菜月に相談、明日香会長に聞いてからにはなるけど、そっちに向かうねと返事を貰った。
「今さ、クラスの生徒会に入ってる子に連絡したから、会長さんに確認してからこっちに来るって。」
「ありがとうっ!お前も静かに待ってるんだよう?」
にぃ~にぃ~と鳴き声を上げながら私の手にスリスリと…あざといなぁ…可愛いけどさ。
「ごめん、お待たせ!その人が宮下さん?可愛い仔抱っこしてるっ。」
うわぁぁぁ…この子って確か…YouMa様の妹さん…すっごい綺麗…どうしたらこうなるの?
「初めまして…宮下玲奈です。この仔の事なんですけど…」
「初めまして、逆月悠馬の妹、菜月です。同い年なんだからタメ口で良いよっ!預かるね!生徒会室で会長達が順番に見ててくれるらしいから、安心してねっ。」
「ありがとうっ!何か…着いてきちゃって…」
言いながら私は子猫を渡す。私達の話を理解してるとは思えないけど特に抵抗する事も無く菜月さんに抱っこされてる。
「後で迎えに行くからね?良い仔で待ってるんだよ~?」
なぁ~おと一声あげて菜月さんに連れられた子猫は私から離れて行くのを見届けた後に改めて柚美と向き合う。
「改めて久しぶり!てか、もっと声かけろしっ!」
「それ、私に言う?玲奈だって同じじゃんっ。」
「そうだけどさー!ところで千里と涼は?」
「二人とも中に居るよ。玲奈の事待ってる。そ・れ・と…」
ニヤニヤしながらこっち見てるし…こう言う時の柚美は碌な事しないし、碌な事計画してないんだよなぁ~…
「何をニヤついてるのさ。また碌でもない事でも考えてるんでしょ?」
「ぇ~…そんな事無いしぃ~?」
「別に良いけど…ところでさ…その…」
「な~に~?誰かをお探しかなぁ~?」
くぅぅぅ…やっぱり分かってるんじゃん!
「そうだよっ!杉村くんは?!」
少し顔を赤くしながら顔を背けながら私はあの日に知り合った杉村くんの事を聞いてみる。
「誘われてるんでしょ?ちゃんと杉村くんも待たせてるよ。」
「そ、そっかっ///それなら良いんだけど…///」
「ねぇ、一つだけ聞かせて欲しいんだけどさ。」
柚美が見た事も無い位の真面目な顔と声で私に向き合ってきた。
「好きとか嫌いとかそう言うのは抜きにして杉村くんの事、適当に相手してるとかは無いよね?」
少し睨みつける様に柚美が私に聞いてくる、こんな柚美を見たのは初めて…どう言う意味なんだろう?
「どう言う意味って言うかつもりで睨んでるのか知らないけど…別に適当に相手なんてしてないよ。出会えて良かったって思ってるし、今はこれからの時間を大切にしたいって思ってる。」
「そっかっ。ごめんね、変な事聞いて…聞けて良かった。」
「別に良いけど…何だったの?」
「杉村くんは、私達にとって、大切な仲間だし、友達なの。だから玲奈なら大丈夫なのは分かってるけど聞いておきたかったの。悠馬組の一員としてね!」
「そう言う事ね。それなら心配はいらないよ。男の子と仲良くなれるんだもん。それにさ~杉村くんと話しててね?感じたんだけど、凄く話しやすいし何でもない話でも楽しかったの。」
そんな事は今までも無かった、ギャルの見た目だから緩いと思われてるのか、外に出てる男の子達に偶にナンパもされたりもする。
だけど、話しても詰まらないし、下心しか見えなくて辟易していた。
そんな時に、杉村くんと出会って、こんな人も居るんだって本当に思ったし、一緒にいて息苦しく無くて、自然体で居られて…何でもない会話も凄く楽しくて…
「れーなー?もう着くよ?何考えてるのか知らないけど間抜け顔したままで会う所だったよ?」
「う、うっさいしっ!って!誰が間抜け顔よ!!!」
はいはい〜と、適当に流されながら1-Aの扉を開ける柚美…待った!今更だけど私も並ぶべきじゃない?
「ちょっ!私は並ばないとじゃない?!」
「ん?別に良いよー。私が連れてきたんだしそれに待ち合わせ何だからさ。ほら!行くよ!」
私の手を引っ張りながら中に入っていくけど…やっぱり少し…待ってる人の視線が痛い気がする。
「失礼しま〜す〜…」
私は少し小さくなりながら教室に入る。
それと同時に沢山の視線!!そうなるよねぇ〜…
「あ!玲奈だ!おひさっ!」
「久しぶりね玲奈。元気そうで良かった。」
「千里も涼もひさーっ!それと…」
「うん、あの時、以来だね。来てくれて嬉しいよ。」
「はぃ///」
真っ直ぐな反応に思わず赤面しちゃた…
「ほほーっ。」、「へぇ〜っ。」、「ニヨニヨっ。」
「ちょっ!何その顔!何か言いたい事でもあるの?!」
「「「べっつにぃ〜?」」」
くっそー!柚美達に見られたのは痛いなぁ〜!
「あはは…その辺で勘弁してあげて?俺はもう交代だから良かったら一緒に回って貰えないかな?」
杉村くんは天然なのかな?それともワザとなのかな?
「勿論、良いけど。その為に来てるし…」
杉村くんは着替えてくる!と言ってバックの方に一人下がっていった。
「その為に来てるだってー!聞きました?千里さんっ。」
「えぇ!えぇ!聞きましたとも〜、まさか玲奈からそんな言葉を聞けるなんてねぇ〜?涼さんっ。」
「もう!柚美も千里も余りイジったら可哀想よ?玲奈も頑張ってるだからっ!」
「くぅのぉ///あんたらぁ〜!」
「何?学祭を見る為に来てるんでしょ?」
「?!?!」
「あれあれ〜?何と勘違いしたのかなぁ〜?もしかして…」
「あぁ!そう言う事っ!杉村くんとの学祭デートの為に来てるのね!」
「〜〜〜っ///楽しみにしてたけど悪い?!」
「玲奈が怒った!開き直ったっ!!」
「悪くない悪くないっ!杉村くん良い子だからよろしくね〜?」
「良い子ってっ。確かに良い人だけどっ。」
「何よっ!別に良い…「あのさぁ〜…全部聞こえてて恥ずかしいんだけど…」じゃないっ!って…聞こえてたの…?///」
「そりゃ聞こえるよ…邪魔するのもアレかなって思ったけど、流石に恥ずかしくなって来たから勘弁してよ…」
「ごめんごめんっ。玲奈とのやり取り懐かしくて…」
「まぁ、良いけどさ。変わらずに仲が良いのは良い事だしね。それじゃ。宮下さんは借りて行くねっ。」
「はいはいーっ!頑張れ男の子っ!」、「また後でね玲奈。」、「いってらっしゃいー!」
「もうっ!行ってきますぅ…」
私と杉村くんは柚美達のニヤニヤとした顔に見送られながら期せずして学祭デートを開始するのでした。
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SIDE 翼
「えっと…それじゃ何処か優先で見たい所とかあるかな?」
教室から出た俺は早速、宮下さんに話しかけた。
「んとねっ!映画やってるんだよね?!それは絶対に見たいかな!てか!入口に戻ってチケット買わないと!」
「あぁ、それはそうだよね。俺も誘おうと思ってた!って事で…はいこれ!」
俺はポケットからチケットとキーホルダーを出して宮下さんに渡す。
「わわ!どうしたのこれ?!用意してくれてたの?!」
「うん…悠馬先輩がね?デートするなら使うと良いってね。見たいって言えばだけど!って言って渡してくれてさ。」
「やったぁ!めっちゃ嬉しいっ!キーホルダーも凄い欲しかったから嬉しい!」
ぴょんぴょん跳ねながら喜んでる宮下さんを見ると俺も嬉しくなるな。
「まだ時間あるし、先に何処か見に行ったりご飯食べたりしよっか?」
「うんっ!いこ!いこ!」
余程、テンションが上がってるのか宮下さんは俺の手を引いて歩いて行く…こうして俺の学園祭デートが始まった!
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