第240話 清蘭祭1日目 陸の学祭デート
「りーくーくんっ!」
「あ、先輩。」
「ごめんね、待たせちゃって。結構な問い合わせがあってさ。」
「問い合わせですか?」
「うんうん!思い出を乗り越えては販売しないのかー?って…」
「販売って…悠馬先輩に許可取らないと駄目でしょう?形にしたのは俺達ですけど、シナリオは悠馬先輩のですし…」
「ねぇ~…まぁ、そう言う理由でちょっと遅れちゃって…ごめんねっ。陸くんの方は大丈夫だった?」
「気にしてないから大丈夫ですよ。俺の方は…何て言うか…凄い事があったって言うか…」
「凄い事?何があったの?」
「実は…これを渡されまして…」
俺は星谷さんに渡された名刺を双海先輩に見せた。
「これって…雪村グループ芸能事業部所属、星谷九羅華…ぇぇぇぇ…スカウト?」
「ですかね?さっきまで詩音さんと星谷さんが居てですね。映画を見たらしいんですよ…それで名刺を渡されて…将来の選択肢の一つにどうか…って言われまして。」
「まじかぁ~…陸くん凄いね?芸能人になるの?」
「いやいや!そんな気は無いですよ?!てか!俺には無理ですって…人前に出てとかっ。」
「ん~…でも、今回の蓮夜の事を考えたら案外出来るかもよ?それにさ、将来の選択肢が増えるのは良い事でしょ?事務所の事とかが心配ならそれこそ悠馬くんに聞いてみたら良いと思うし。」
「悠馬先輩にですか?」
「うんうんっ。悠馬くんがってか、菜月ちゃんもだけど、雪村グループとか付き合いあるみたいだよ?どっちも大企業だからそれ繋がりでお互いの子供同士も、知り合いみたいだし、詩音が雪村グループの事務所に居るのも、表沙汰にはなってないけど悠馬くんが関係してるってのがもっぱらの話だしね。」
成る程…確かにそれなら…今度聞いてみようかな。
「分かりました。取り合えず今度、相談してみます。と言うわけで…そろそろ行きましょうか…?」
約束の学祭デート、2日間の空いてる日で構わないと言っていたけど、どちらも空いてると言われたのもあって、初日からする事になった。
学園祭デート…言葉にすれば簡単だけど…かなり大胆な誘いをしたよね俺…?
「は、はは、はぃぃ!!本日は!よろしくお願いしますぅぅ!!!」
「ちょ?!そんなに緊張しないでくださいよ…俺も緊張するじゃ無いですか…」
まぁ、そんな所も可愛いなとは思うんだけどさ…
「そ、そんな事言われてもね?!初めてだしね?!その……優しくして……ね?///」
「カハァ!!先輩それは駄目です……///」
顔を赤くして上目遣いで、そんな風に言われたらエッチな事考えてしまうわ!!絶対にワザとだろ?!今の!!
…………………………………………………………
SIDE 唯華
「ありがとうございます!感動してくれたなら良かったです!」
一緒に陸くんと校内を歩いて色々見てはいるんだけど…沢山の声をかけられてる。
いやまぁ…蓮夜をあれだけしっかりと演じたんだから当たり前と言えば当たり前だけど…私が居ないみたいに声をかけてくる人達は何なの?
全員が全員じゃ無いけどさぁ〜…最初に挨拶をした私の事も覚えていて声をかけてくる人はまだ良い。
「やれやれ…あからさま過ぎるのもどうかと思うけどなぁ〜…」
「あのあの!どんなタイプの女性が好み何ですか?!教えてくださいっ!てか、私とかどうですか!結構可愛いと思うしエッチな身体してると思いますけどっ!!」
はぁ?!何を聞いてるのこの子!そりゃ、好みは気にはなるけども!
「あ、あはは…俺なんかには勿体ないですよ。好みか…好み……」
ん?何か一瞬こっちを見たような…?まさか…ね。
「そうだな〜…優しくて思いやりがあって…」
当然だよね!基本だよね!
「責任とか凄いのに回りに見せない強さがあって…」
ふむふむ…それは確かに大事かも?
「だからと言って甘えない訳じゃ無くて頼る所はしっかりと頼ってくれて…」
なるほど…なるほ…ど?
「失敗しても笑顔で励ましてくれて…」
ほ〜ほ〜…確かに大事だね!私もした…よね?
「いつも側で支えてくれたり…応援してくれて…」
えっと…?もしかして…?
「歳はあんまり気にしないけど…でもこの場合は歳上が多いのかな…?」
2つとは言え私も歳上…
「頼りがいがあるのに上手く行くと泣きながら喜んでくれたりする位、感情も豊かな人で…」
待って!待って!私も良くそれは言われるんだけど?!本気で喜んでくれたりするから嬉しくなるっとかさ!
「それに、何より…一緒に居て楽しくて可愛いなと感じる人かな…」
ねぇ!待ってってば!間違いなくこっち見たよね?!勘違いじゃ無いよね?!自惚れるよ?私!
「そっかぁ〜、彩音とか有希那みたいな感じかぁ〜。確かにあのタイプなら好きにならない訳無いよねっ!」
その後、色々と話して満足したのか…話し掛けて来た人は離れて行って、また私と陸くんの二人になったけど…
「はぁ…失礼な人だったな…」
「ん?失礼って…?」
ちょっと、陸くんを見れない…私はおかしくない位の角度で話しかけた。
「だって、ずっと!先輩の事!見ようとすらしなかったですもん!一緒に居るのに!先輩が頑張ってくれたから、励ましてくれたから完成まで持っていけたのに!ほんとに失礼!」
「もう…勘弁してくだしゃい…///」
顔が赤くなるのを止める事も出来ずに私はボソボソと小声で反論するしか出来なかった。
「ふぅっ。ちょっと疲れましたね。」
「確かに。あっちこっちで声をかけられましたし、悠馬くんの気持ちと苦労が少し分かりました…」
「確かにっ。悠馬先輩は去年からこれ以上だったんでしょうし…凄いな…」
「校内であれば、私達も気を使って居たからそこまででは無かったと思いたいけど、外では遠慮とか、無かったでしょうしね。」
「そう言うの去年は分からなかったけど、今年になって先輩と一緒に居たりすると結構見るので、分かる気がします…」
「やっぱりか…もう1年以上経つんだから、いい加減に世間も馴れたでしょうに…」
「ほんとですよね…やれやれ。」
「お?陸?それに双海先輩?」
「あれ?ほんとだー。もしかしてデート?!」
「こんにちわ、先輩。星川先輩だけって珍しいですね?」
「今年は残念ながら、休憩のタイミングが別々になってな。折角だから個別でデートになったのさ。」
「なるほどねっ。去年は一緒に回って死体を量産してたのにっ。」
「死体って何です?」
「4人のラブイチャで糖分過多になって倒れた人が量産されて、保健室が戦場になったの。」
去年の事を思い出して私は思い出し笑い。
「そんな事もありましたねぇ〜…懐かしいねぇ〜…」
「そんな他人事みたいに言ってるけど当事者だからね?!」
やっぱり、悠馬くんとのやり取りは楽しい。
陸くんと居るのがつまらない訳じゃ無いけど、何処か特別感を感じちゃう。
「それじゃ私達は行きますね。デート楽しんでくださいっ。」
「愛央ちゃんもねっ!悠馬くんも色々ありがとっ!」
笑顔で手を振って別れる…悠馬くんと愛央ちゃんは、直ぐに腕を組んでくっついて歩いていくのをちょっと羨ましげに眺めちゃう。
愛央ちゃん、志保ちゃん、清華の3人が悠馬くんの隣に立つ事はこの学校の生徒は何も違和感を持たない、寧ろそれが当然なのだ。
だからこそ…
「良いなぁ~…」
私の口から自然と言葉が零れる。
「やっぱり…先輩も悠馬先輩が好きなんですか…?」
陸くんが少し寂しそうな顔で私に聞いてくる。
「えっと…憧れはあるよ?良いなって思ったのはね?」
「はい…」
「愛央ちゃんと悠馬くんの関係性かな…あぁやって、側に居てくっ付いても嫌がられないで同じ時間を共有出来る相手が居る事がね…良いなぁって思うの。」
私は二人が去っていった方を眺める、既に姿は見えないけど…いつか…いつか、私にも、愛央ちゃんにとっての悠馬くんみたいな相手が、出来るのかな…?
少し考えてしまって静かな時間が過ぎていく…そんな私を陸くんは見つめていて…
「双海先輩。」
「あ、ごめんっ!何かな…?」
「俺じゃ駄目ですか?先輩の側に居るのが俺じゃ駄目ですか?」
「えっ?!それは…どう言う意味で…?」
「勿論、星川先輩にとっての悠馬先輩って意味です。俺じゃ駄目ですか?」
「ぅぇぇぇっ///ちょっ///いきなりっ?!///」
いきなり過ぎて大混乱だよ?!そりゃ…確かにさっきの好みの話の時のは共通点多いなって思ったけどっ!!!
「いきなり過ぎでしたね、確かに…でも、嘘とか適当に言ってるとかでは無いので、今はそれだけ覚えておいてください。」
「は、はぃぃ///」
本当にいきなり過ぎるよぉ…///そりゃ、嬉しいよ?!嬉しいけどね?!
「さって、他の所を見に行きましょ!折角のデートですしね!」
「う、うんっ///どうしよう…何か恥ずかしくなってきたっ///」
「それなら、俺も頑張った甲斐がありましたね。ほらっ!行きましょ!」
平然と言ってくるのを少しもやっとしながら陸くんの顔を見ると、言葉とは裏腹に真っ赤になってて…何でも無い風にはしてるけど、そんな陸くんを見て思う…私の為に頑張ってくれたのが分かって凄く嬉しくて、幸せな気持ちになった。
「うんっ!///楽しまなきゃね!///」
私はそんな陸くんに笑顔で返事を返して、腕に抱きついて歩き始める。
「ちょっ?!先輩っ?!」
「何よ〜?///これが良いなぁ〜って思ってるのを叶えてくれるんでしょー?///ほらほらっ!///行くよっ!///」
「はいっ!///俺!頑張りますっ!」
恋愛初心者同士だけど年下男子が勇気を出してくれたんだから、応えなきゃ女が廃るってものです!
「ありがとっ///陸くんっ///」
そんな私の呟きは学祭の喧騒の中に消えていったけど…陸くんは何処か嬉しそうな顔をしていたのが印象的だった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
かゆ…うま…あま…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます