第238話 清蘭祭1日目 詩音と九羅華の学園探検

SIDE 詩音


いやはや、何と言いますか‥‥凄い!の一言しか出ないよ。

さっきから、凄い!凄い!しか出てこなくて、語彙が死にまくってるし私。


「ねぇ、九羅華さん。これって高校の学園祭の規模じゃ無いよね?」


「そ、そうね…凄いとしか言えないわ…」


廊下のあっちこっちにデフォルメ悠馬くんのぬいぐるみが飾ってあって、そこからは悠馬くんのアナウンスが流れてるし、飾りも凄いし…


「と、取りあえず先に菜月ちゃんの所に行って、その後、悠馬くんの所に行ってぶらぶらして映画かな?」


「そうねぇ~…その流れにしましょうか。顔を出さない訳にも行かないもんね。」


そうと決まれば!と言う訳で私と九羅華さんの二人はずんずんと進みながら一路、1-Aを目指した。


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SIDE 1-Aスイーツカフェ


「ふう…やっと順番きた…流石に悠馬くんの妹さんのクラスだから人気凄いね。」


「そうね…詩音もお疲れ様、色々と。」


はぁ‥‥とため息を一つ、仕方ないとは言え‥‥サイン、握手、記念撮影‥‥


「芸能人の運命さだめね‥‥菜月ちゃーん!来たよー!」


「あっ!詩音さんー!いらっしゃいませー!」


笑顔で手を振りながらこっちに寄って来る菜月ちゃんに私も手を振り返す。


「九羅華さんもいらっしゃいませ!お久しぶりですねっ。」


「えぇっ!可愛い衣装ねっ。良く似合ってるわっ。」


「ありがとうございますっ///兄さんのデザインなんですよーこれっ。」


下はミニスカ、上は体のラインに沿ってはいるけど、ドレスっぽい見た目と袖にはフリル、胸元も空いてて谷間もばっちりっ!足元は足首部分が広めになってつま先が少し膨らんでるショートブーツ。


「確かに可愛いっ。流石に私は着れないけど、いいなぁ~っ。」


「えへへっ///兄さんに相談したらすぐにデザインを書いてくれて雪村家に手配を頼んで作って貰ったんですっ。」


「それじゃぁ‥‥凄いお金かかったんじゃ?」


「それがですねーっ!詩音さん達なら分かると思いますけど雪村グループの服飾部門にデザインの提供をして権利を手放すのを条件に無料で必要数作って貰ったんですっ。」


「あぁ!だからこの間、社内が騒ぎになってたのね‥‥」


「そう言う…それなら仕方ないですね。物凄く可愛いですし。」


「喫茶店とかイベントとか用ではあるけど良いもんねー。」


席に案内されて、スイーツを頼んで一息つきながらぐるっと見渡すと男子も居て、皆が皆、しっかりと着こんで決めていて良いお店に来ている様な感じになってる。


「美味しい…このレベルを学校の学園祭で…?え?プロ?」


確かにプロって言われても納得する様な味と見た目…これを高校生が…?


「ふっふっふっ。どうですか?我がクラスのスイーツはっ!」


「これって…?プロから仕入してるとか?」


「いえいえっ。普通にクラスの男子が作ってますよっ。稲穂健司くんって言う子が。」


「稲穂くんって、悠馬くんのお友達の?」


「ですよっ!凄いですよねっ!」


「凄い何て物じゃ…っこんな値段で食べるのが逆に申し訳ない位だよ。」


「ふふっ。ありがとうございます。稲穂くんに伝えておきますねっ。」


私と九羅華さんの二人はしっかりとスイーツを楽しんだ後に、菜月ちゃんや他の仲の良い子達、稲穂くんとか男子達と記念撮影をしてサインも残して次の目的の場所でもある2-Aに向かった。


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SIDE 2-A貴族カフェ


「おぉ~…ここが悠馬くんのクラスかぁ~っ。」


華やか!去年もカフェはカフェだったらしいけど、今年はコンセプトを合わせて優雅な時間を過ごせるようになってるみたい。

何と言ってもクラシックが流れて、店員の子もドレスを着てる。


「凄いけど…何処から用意したの?このドレス。」


ほんとだよ…こんなに沢山の衣装を借りてくるだけでも大変だったろうに‥‥


「とは言え凄く優雅で華やかな空間になってるし、皆、凄い大人っぽくて良いね。」


「あのぉ〜…芸能人の詩音さんですよね?」


「はい、そうですよっ。お邪魔しています。」


悠馬くんのクラスの子?が話しかけてきた。

笑顔で対応しながらも席に着いて一息。


「や、やっぱり?!え?何でここに?」


「驚かせてごめんね。悠馬くんと菜月ちゃんとは仲良くさせて貰ってるから、その関係で遊びに来たの。」


「ぇぇぇぇぇ…悠馬くんどんだけ…ってすいません!ご注文はお決まりでしょうか?」


「悠馬くんセットをお願いします。」


「私もそれで…お願いしますね。」


「かしこまりましたっ。少々お待ちくださいっ。」


「良い演奏・・・。凄い落ち着く。」


「そうね。でも何だろう?何となくだけど弾き方に覚えが…?」


「確かに。と言うか…悠馬さんの演奏じゃない…?」


九羅華さんの指摘を聞いて気付いた。確かにこの演奏は悠馬くんの演奏だ…


「お待たせしましたっ。ごゆっくりどうぞ…「ねねっ。」…なんでしょう?」


「この流れてる演奏って…やっぱり?」


「はい!やっぱり分かります?悠馬くんの演奏を録音したものですよ。凄いですよね…本当っ。」


「やっぱり…流石ねぇ…」


うんうん…と九羅華さんは頷きながら感心してるけど、確かにと私も同じ気持ちだ。


「ふふっ。それじゃぁ、悠馬くんの演奏を楽しみながら優雅に過ごしますかっ。」


「そうねっ。しっかりと優雅な時間を楽しんで、この後の映画に気合いをいれましょう。」


そう、予定通りに作成映画を見るけど…実はちょっとだけ不安……

だって、パンフレットの説明にね?シナリオ担当のところにね?悠馬くんの名前が確りとあるの……確かに生放送とかでも言っては居たけど‥‥


「それにしても、悠馬さんのシナリオ…大丈夫かな?」


「それはどっちの意味で…?」


「勿論、良い意味よ…?泣かないか…ってところだけね。」


「泣く事が前提なのね…」


「そりゃそうでしょ?悠馬さんよ?お笑い映画なわけ無いでしょう?タイトル的にも。」


「思い出を乗り越えて…だもんねぇ。」


悠馬くんが書いたシナリオ…それを演劇部と映画研究会が協力して完成させた作品。その上、主人公を悠馬くんのお友達の後輩が参加したと……


「楽しみだけど、確かに怖いねぇ。」


そんな事を九羅華さんと話ながら悠馬クラスで優雅な時間を過ごした。


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SIDE 講堂


そしてやってきました、映画が放映される講堂。

受け付けには既に凄い列が出来ていて皆の期待が凄いのだとそれだけで理解できた。


「ほんとに楽しみっ!YouMa様のシナリオ!」、「ご本人は出てないみたいだけどどんな話なんだろっ!」、「そこだけは残念だけど…」、「それは仕方ないってっ!去年もだけど今年も沢山の事をしてるみたいだし。」、「まぁねぇ…外の受け付けでお話出来ただけでも嬉しいしこのキーホルダーも欲しかったから本当に嬉しいっ!」


「うん、凄い期待されてるね…同じだから分かるけど。それに…入り口で貰ったのってキーホルダーだったんだ。」


私達は受け取るだけ受け取ってまだ中身を確認してなかった……


「まだ開けて無かったものね。帰ってからにしようと思ってたし。」


「期せずして知っちゃったねっ。」


まぁ、良いんだけどねっ。菜月ちゃんとかが持ってるのを見て欲しいなって思ってたし。


「あのぉ…詩音さんですよね?」


「あ、はいっ。そうですよっ。」


「やっぱりっ!ファンです!応援してます!」


「ありがとうございます。私も同じく今は映画を楽しみにしてるので、騒ぎはご勘弁してくださいね?」


「は、はいっ!勿論ですっ!YouMa様のシナリオを私も楽しみにしてるので……」


「だよねっ。私も楽しみなんだっ!悠馬くんから良かったら見てみてって言われてからずっとっ。」


「そうなんですねっ!お気持ちは分かりますけど…私もと言うか私達もですかね?この場合。少し前の生放送でも言って居てその時から楽しみで仕方なかったんですっ!」


「私も見たっ!見たっ!絶対に見ないと!って思って頑張ってスケジュール開けたくらいだもん!」


「私が…ね…」


隣の九羅華さんがボソッと呟く…だから、ごめんってば………


「確かマネージャーさんでしたよね?本当にお疲れ様です…本当にっ。」


「ありがとうございます。折角こうして見に来れたんですし、お互いに楽しみましょうねっ。」


「そうですね!それじゃ…お先に会場に入ります!ありがとうございましたっ。」


話しかけてくれた人を見送って私と九羅華さんも受け付けを済まして、中に入る。

指定された席に着いて、少し待ってると開始時間になるのと同時に、二人の生徒が壇上に現われた。


「皆様、本日はご来場くださりありがとうございます、演劇部部長、双海唯華です。隣は…「映画研究会部長の宮島めいです。」…これより演劇部と映画研究会の合同作品…思い出を乗り越えてを上映します。」


それぞれの部の代表が先ずは挨拶をするみたい。


「これから上映する作品のシナリオは、清蘭高校の誇りでもあり皆様はYouMaと認識している生徒が考えたお話を演劇部部員が演じておりますので、つたない演技の部分もありますので、ご了承ください。」


そう言って二人揃って頭を下げるけど、それは当たり前だ。

プロの役者が演じた訳では無くアマチュアの高校生が演じたのだから…

とは言え…悠馬くんの考えたシナリオと言うだけで私達YouMaファンからすれば、期待はうなぎ登りだ。


「それでは…私達の作り上げた映画をお楽しみくださいっ。」


そう言って壇上から下がって行く二人の生徒を見送り室内が少し暗くなり、映画が始まった…

最初から最後まで見て、思う…やっぱり悠馬くんはとんでもないと…

そして、そんな人が作ったシナリオを最後まで演じ切った彼等、彼女等、真剣に作り上げたそれぞれの部員達に私は畏敬いけいの念を持つ事になるのだった……


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