第235話 翼の出会い

はぁぁ・・・俺はどうしようかな・・・?

健司は、自分の部活の事、俺もそうだけど・・・。

水夏は、結局コンテストに出るみたいだし、陸は映画に出ると・・・。


「俺だけが特に何もしてないんだよなぁ〜・・・。」


今日は休日。母さんに言われて買い物に付き合ってるのと、少しでも親孝行と思って荷物持ちもしてる。


「何かやらなきゃって気持ちはあるんだけど・・・何をしたら良いのかな・・・。」


先輩は「無理にやる必要は無いよ。本当にやりたいと思った事をやれば良いんだし、無理をするよりはやらなきゃいけない事を先ずはやれば良い。まぁ、陸も水夏も健司もクラス以外での事を見付けているから焦るのは分かるけどな。」と、言ってくれては居る。

でも・・・。


「はぁぁぁ・・・何か置いていかれてる気分なんだよなぁ〜・・・。はぁぁぁぁぁぁ。」


「うわっ!?大きな溜息・・・。」


どうやら独り言を言っていたみたいで、丁度通りかかった子に驚かれた。

その子は軽くウェーブのかかった茶色の髪を背中の真ん中位まで伸ばしてて、キリっとした目を瞬かせて驚いた顔をして俺を見ていた。


「ご、ごめん!驚かせたよね・・・。ほんとうにごめんっ。」


「ぁ・・・いえっ。こちらこそすいません。ついつい反応してしまって。」


「気にしないでっ!えっと・・・。」


こう言う時って何を話せば良いの?!悠馬先輩なら余裕で返すんだろうけど・・・。


「その、ごめんねっ。私ってば・・・。」


「えっと、もし良かったら一緒する?俺も母さんが来るまで待ってる感じだしもし良ければだけど・・・。あっ!俺は!杉村翼!清蘭高校の1年です。」


これで良いのかな・・・?間違えて無い・・・?


「えっ!清蘭の1年なの?!同い年じゃん!私は宮下玲奈です。あのさ、立花柚美、門倉千里、小河原涼って子は知ってる?」


「あれ?3人の事知ってるの?クラスメイトだよ。」


宮下さんは俺の向かいに座りながらそんな事を聞いて来た。


「そうなの?!私ね、中学の時に同じクラスだったの。私も清蘭を受験はしたんだけどねぇ~・・・駄目だった・・・。」


「そ、そうなんだ?!それは何て言うか・・・。その・・・。」


「あははっ。ごめんごめんっ。言われても困るよねっ!」


明るい子だなぁ~・・・何て言うか少しギャルっぽい感じもあるし・・・。

可愛い子だとは思うけどさ。


「いや、俺こそごめん。上手く返せなくて・・・。こう言う時、悠馬先輩なら上手く返すんだろうけどさぁ~・・。」


「?!悠馬先輩って・・・YouMa様の事だよね?仲が良かったり・・・?」


「あぁ、うん。クラスにさ稲穂健司って言う先輩と仲の良いやつも居るし、悠馬先輩の妹の菜月さんも居るから、初日から誘われてステイルに引っ張られてさぁ~・・・。」


俺は初日にあった事をついつい話してしまう。

あの日の事、ステイルで有名人が勢ぞろいしてた事、3女神とも話した事・・・本当に色々な事を話した。


「そっかぁ~・・・良いなぁ。柚美達もそんな事言ってなかったし!・・・ってそれは兎も角、何であんなに大きなため息ついてたの?」


「あ~・・・それは・・・。」


「ご、ごめんね!いきなり過ぎるよね!私ってば・・・ほんと・・・。」


下を向く宮下さん。うん、この子は遠慮なく来るけどちゃんと優しさもある。

うん、あれだ・・・俺はこの子みたいなタイプは好きだわ。


「あははっ。気にしないで、宮下さんのノリ?勢い?嫌いじゃないみたいだ。」


「そ、そう?その・・・ありがとっ。」


「えっとな?健司とか他の友達とかがさ。今度の学祭で色々とやる事決めててさ。クラスの出し物は勿論だけど、他にもやってさ。それなのに、俺だけ何も無くて・・・何かをしなきゃとは思うんだけど、何も無くて・・・皆に置いて行かれてる気がしてそれが・・・。」


「なるほどねぇ~・・・。置いて行かれるかぁ。私も分かるかな、周りの友達が先に進むのは嬉しいけど、置いて行かれる感じすると、寂しいし悔しいよねぇ。」


「そう!そうなんだよ!先輩にも相談したんだけど、無理にやる事は無いってさ、本当に興味持つことなら兎も角、そうじゃないなら、無理しなくて良いってさ。勿論、焦るのは分かるけどって言ってくれはしたんだけどね・・・。」


「なるほど。確かに分かるぅ~。」


うんうんと腕を組みながら神妙に頷いて同意してくれる。

なんて言うかこの子さ・・・気付くと気楽に話せるんだよな~・・・なんでだろ?


「翼?何してるの?」


「あっ!母さん!えっと・・・。」


ガタンっ!と宮下さんは直ぐに立ち上がって母さんに向かって頭を下げる。


「初めまして!宮下玲奈って言います!その、息子さんとは・・・何と言えば良いか・・・。」


「母さんの来る少し前にさ、俺のでかい溜息で驚かせちゃって。その流れで話し相手になって貰ってた。同じクラスの立花さんとかの話した事あるでしょ?その人達と中学の時に同じクラスで友達なんだってさ。」


「あらそうなの?柚美ちゃん達と・・・それなら安心ね。」


母さんの視線が和らいだ。宮下さんの見た目はギャルだから警戒したんだろうけど、ちゃんと挨拶も出来て礼儀正しいってのも分かってって感じかな?


「何かすっかり話し込んじゃってごめんね。お母さんも来たみたいだし私もそろそろ行くね。柚美達によろしくっ!そ・れ・とっ!偶には誘いなさい!って伝えておいてっ。」


それでは、失礼しますと、母さんに言って宮下さんは離れて行った。


「元気な子ねぇ~。まぁでも、礼儀はしっかりしてるみたいだし見た目で判断しちゃ駄目ね。」


確かにね。それはほんとにそうだと思う。


「何かさ、普通に話せたんだよね。相性良いのかな?なんてっ。」


「そうねぇ~・・・ギャルのコミュ力って言うのもあるんでしょうけど、もしかしたら、翼と相性良いのかもねっ。さっ!帰りましょう?」


「うん。大荷物だけど頑張る・・・。」


そう言えば・・・連絡先の交換忘れた・・・。ん-、学祭も来るみたいだしその時に会えたら聞いてみようかな?

もうちょっと色々と話してみたいって思うし。


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「え?玲奈に会ったの?」


次の日、教室で何時ものメンバーで雑談をしている時に昨日の事を思い出した俺は、立花さん達に、宮下さんの事を聞いてみた。


「そうそう。昨日さ、母さんの買い出しに付き合って、待ってる間に考え事をしてたんだけど、大きく溜息ついちゃって・・・それで丁度通りかかった宮下さんを驚かせちゃったんだ。」


「あ~・・・それなら玲奈から距離詰めて来たでしょ?」


「う、うん。別に嫌じゃ無かったけどね。それに俺から誘ったし・・・。」


今にして思い返せば・・・ただ単にナンパして一緒にお茶しただけじゃん・・・。


「ごめんねぇ~・・・誘われて特に断らないでどんどん来たのが想像できる。玲奈はコミュ力お化けだからなぁ~。」


「ん?その方がコミュ力お化けなのは取り合えず横に置いておいて・・・話だけ聞くと杉村くんがナンパして一緒にお茶しただけですよね?」


「うっ///」


ぐりんっ!っと菜月さんの言葉に反応した皆が俺を一斉に見た。

気付かれた?!俺も気付いて無かったけどさ!!!!


「確かに・・・玲奈の事をナンパしてお茶したのと変わらないわね。」


「翼もやるじゃん!」


「待って!そんなつもり無かったんだって!!!俺もついさっき気付いたんだよ・・・。ナンパしただけだってさ・・・。」


「うん、まぁ・・・そうだろうけどさ。女の子を積極的にナンパしてる翼ってのも想像出来ないしね。」


うんうんと、皆して頷いてるし・・・誤解されなかったのは良いんだけど、なんか納得出来ない!もやもやするんだけど?


「それで?連絡先くらいは交換したの?」


「してないよ?!別にナンパしたつもりも無かったし、話してる内に母さんも来たし、そんな暇も無かったし!」


「ほ~ほ~っ。そんな暇も無かったって事は暇があれば聞いていたって事ですなぁ~?」


ニヤニヤしながら門倉さんが突っ込んでくる!!


「そうね。今の言い方だとそう言う事よね?」


小河原さんも?!


「お?杉村くんおめでとー!」


「何が?」


俺が頭に疑問符を浮かべたまま門倉さんに聞き返すと俺に向けてスマホの画面を向けてくる、そこには・・・。


「えっと・・・教えていいよー。連絡待ってるって伝えてっ!・・・って?え?えぇぇぇぇぇ?!」


「はいはい!スマホだしてー!玲奈のふりっぺ教えるからねー。」


混乱した頭で言われたまま俺は自分のスマホを取り出してふりっぺを起動する。

それを受け取った門倉さんはパパっと宮下さんの連絡先を登録して返してきた。


「ぇ?いやいや!待って!待って!どう言う事?!」


「うん?ナンパしたのに連絡先の交換もしなかったヘタレのお手伝いだよ?」


いいかたぁ・・・。


「べ、別に頼んでないんだけど・・・「いらなかった?」・・・いや・・・連絡先の交換もしなかったなぁ~とは思ってたけど・・・。」


「なら良いじゃんっ。別に付き合えとかって言ってる訳じゃ無いし普通に交友関係広がるのは良い事でしょ?」


そうだけど!そうだけどさ!展開が早すぎるんだって!


「まーでも、良かったら連絡してあげて?玲奈も悪い子じゃないし、てか良い子だし優しい子だからさ。」


「そうね、見た目で誤解される事もあるけど、何の迷いも無く紹介出来るくらい素敵な子よ。」


それは母さんにちゃんと挨拶出来てたし、俺との会話中もだったから分かるけど・・・。


「もうー、千里が無理やりするから変になってるんじゃんー。杉村くんも変に畏まらないで偶に話したりとかで良いから、男子との接点も大事だしさ。あ!でも!彼女にするならなのは間違いないよ?脱いだらすっごいしっ。」


「ぶっ?!げほっ!げほっ!立花さん?!」


「ごめんっ。冗談は兎も角にして本当に良かったらで良いから連絡してあげてねっ。」


「わ、分かったよ・・・。一応、ありがとう。」


ぷっ。くっくっくっと健司も陸も水夏も必死に肩を震わせながら笑いを堪えてるし、菜月さんなんて楽しそうにニヤニヤしてるの全く隠して無いし!!!


はぁ・・・これ絶対、後で悠馬先輩とかに伝わって揶揄われるじゃん・・・。


「そういえば学祭も遊びに来るって言ってたし学祭デート出来るね!杉村くん!」


「それは、楽しそうだなぁ~・・・あっ!違うっ!違わないけど!違うからな?!」


「「「「「「「あはははははははっ。」」」」」」」


俺の言葉と反応に、遂に皆して我慢できなくなったのか教室中に笑い声が響いて、俺は真っ赤になって小さくなるしかなかったのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


玲奈の事覚えてる人いるかなぁ〜?一度出てるのですけどね・・・。

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