第234話 その映画の名前は・・・

「よしっ!いくか!」


コンコンっ!と扉をノックすると中から「はーい!どうぞー!」と声が聞こえてきて俺は緊張しながら扉を開ける。


「失礼します!1-A所属の高梨陸って言います!映画の役に参加させてもらえませんか?!」


俺は、ミス?ミスター?コンテストの張り紙の他に貼っていた演劇部と映画部の合同の張り紙に意識がいってそればかりを見ていて、やってみたいと思ったのもあって、「少しでも興味持ったらやってみろ。」と言う悠馬先輩の言葉通りに演劇部の扉を叩いた。


「もしかして、張り紙を見てくれたの?」


「はい!それで興味を持ったので!」


悠馬先輩が言っていた、同じ後悔するなら試しての方が良いと・・・その言葉に俺も凄く納得できて、出来る出来ない、向き不向きはともかく、チャレンジしてみよう!と思ったんだ。


「あれ?高梨くんって稲穂くんのお菓子研究会に入ってなかった?」


同じ一年だと思うけど男子が俺に言ってくる。


「うん。でも健司くんには伝えてあるし、大丈夫!」


「そっかそっか!男の子の役が足りなかっから助かるよ!先ずは入って入って!今日の所はこの台本を読んでやりたい役を考えてくれれば良いからね!」


「はい!ありがとうございます!隅の方で読んでますので俺の事は気にしないでください。」


台本を受け取った俺は部室の隅に移動して受け取った台本を読み進める事にした。


………………………………………………………

〜〜陸が来る前の部室〜〜


「さて、全員しっかりと読んできたかな?やりたい役は決めてきた?」


部員はそれぞれで声を上げているのを確認しながら、先ずは主要では無いキャラクター達をそれぞれの希望を聞きながら決めていった。

そして、残るのは主役の男の子、ヒロインの女の子、その友達達や後輩女子、主人公の親友の男の子等である。


「それじゃ、後は主要なキャラクター達何だけど・・・やりたい人いるかな?」


シーーーンと、一気に静まり返る。

まぁ、そうだよね・・・悠馬くんのシナリオの主要キャラ達を熟す・・・主人公は勿論、ヒロインもサブヒロインもとても難しい。


「一年生の男子には主人公回りをやって貰えると助かるんだけど・・・。」


私の言葉に、一年生は難しい顔をしてる・・・。


「いや、あのですね?双海先輩。経験が無いから無理とかって理由では無いんですけど、それを抜きにしても主人公も親友も俺達には荷が重すぎるかと・・・。」


「俺達しか男子が居ないってのは分かってるんですけど、これって逆月先輩の作品何ですよね?」


「うん・・・。そうだよ?」


「先輩の作品を演じられるのは嬉しいですし、尊敬もしてるんですけど・・・。」


「うん、難しいなんてレベルじゃ・・・。いやまぁ・・・ボロ泣きはしたんですけどね・・・。」


「だよねぇ~・・・。」


「親友のキャラクターならやれるかも?とは思いますけど・・・。」


「後は狂人かな?ここら辺ならまだ・・・。」


「だね、狂人はゴミ男子を演じれば良いからね。モデルはあっちこっちに居るし。」


言い方ぁ・・・いやまぁ~、清蘭の女子から見たら悠馬くんみたいな男子がメインのイメージになってるけど、基本的にはゴミが多いからね・・・言ってる事は分かるけど・・・。


「親友枠もある意味、普通に演じればまぁ・・・。先輩とA組の稲穂くんのお陰で何となく分かるしさ。」


「だね、だからこそ・・・主人公が・・・。先輩みたいな人を演じないと駄目って事でしょ?最低でも。」


「それを考えるとね・・・。難しいよね・・・。この中に悠馬組の人も居ないしさ。」


「そこだよな。せめて近くに居る人が居れば少しは・・・だけど・・・。」


そうこの主人公の役は過去を乗り越え新たに進むと言う単純な内容ではあるものの、絶望から這い上がる強さを表現しないといけないのが一番のネックだ。


「ん・・・いっその事、悠馬くんに出てもらうとか?」


「それが出来れば一番早いんだけど・・・多分無理って言うか、そんな時間取れないんじゃないかな?既にあっちこっち走り回ってるし悠馬くん。」


去年の使いまわしのイベント関係とかライブの事とかミス?コンとかほんとに忙しく走り回ってるから、流石に主演してくれとは言えないし、頼んでも断られると思う。


部員全員で頭を悩ませていると「コンコン」と部室をノックする音が響いて反射的に「はーい!どうぞー!」と返事をして来訪者を迎え入れたけど・・・その相手がまさかの悠馬組の男の子だった。


------------------------------------------------------------

「ぐすっ・・・。えっと、すいません・・・。ささっとですけど、読み終わりました。」


「早いね!それでどうだっかな?やりたい役はあった?」


「あの・・・図々しいとは思うんですけど、主人公の蓮夜をやらせてもらえませんか?」


「うぅぇ?!マジで?」


「はい!出来るかは分かりませんけど、話を読んで思ったんです。蓮夜を演じたいって!」


こっちとしては助かるけど・・・。


「部員を差し置いて主人公かよ?!とは思うんですけど・・・。駄目ですか?」


「えっと・・・私は願ったり叶ったりだけど・・・。」


部長さんは部員になってる男子をチラ見してる。まぁ、そこは気になるよな。ぽっと出の俺がいきなり主役やらせてくれと言っても。


「ん?あぁ、俺等の事は気にしないで大丈夫ですよ。先輩。」


「さっきから言ってますけど、無理ですもん。俺達に主人公は。」


「やりたいって人が居るなら応募で来てくれた人でも問題は無いです。」


「・・・って事らしいけど、本当に良いの?」


「はい!やらせてください!!」


「皆もそれで良い?」


「大丈夫です!これで決まったね!」


その声を皮切りにあっちこっちで声が上がる。

それを見ながら俺も絶対にやり切ると気合いを入れ直した。


------------------------------------------------------------

SIDE 陸


「夜分遅くにすいません、神代です。有希那さんを迎えに来ました。・・・っと・・・。」


俺は自室で参加する事になった映画の主人公のセリフを読み込んで練習を繰り返していた。


コンコンっ!コンコンっ!


「どうぞー。」


ノックの音に返事をして読み込んでいた台本をテーブルの上に置いて部屋に入って来た妹である、彩花あやかに一言。


「どうした?彩花。」


「どうしたじゃないよ・・・。何を一人で話してるの?残暑の暑さでおかしくなった?陸兄ぃ。」


それは、酷くないか・・・?


「ちげーっての!学祭の出し物で映画を撮る事になった映画部と演劇部の合同作品に参加する事になったからそれの練習だよ。」


「映画・・・って?何かの役で出るって事?あれ?稲穂さんのお菓子研究会に入ってるんじゃなかったっけ?辞めたの?」


「違うわ!単純に作品に出てる主要キャラクターの中の男の子役が足りなくて募集かかってたんだ。それを見て興味持ってさ。悠馬先輩も興味ある事には飛び込めって言っててさ、健司くんに話したらさ、良いよって言ってくれたから思い切って参加したんだよ。」


「ふーん・・・なるほどぉ~。」


そう言って彩花は俺がテーブルに置いた台本を手に取った。


かぁ~・・・。どんなお話なの?」


「ネタバレになるし・・・学祭も来るんだろ?その時に見れば良いじゃん。」


「それはそうだけどぉ~・・・。気になるし・・・。」


気持ちは分かるけどさぁ・・・まぁ、概要位なら良いか。


「まぁ、概要だけな?とある中学生の男の子と幼馴染の女の子が居て・・・。」


俺は簡単にだけど、概要を彩花に説明すると、彩花はどんどん目を輝かせて行った。


「ってな訳で、こんな話の主人公の蓮夜を演じる事になったんだ。」


「はぃ・・・?えっ?えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ?!?!?!端役じゃ無くて主人公?!?!」


「他にやりたがる人居なかったのと、立候補したのとでね。それと、そのシナリオを書いたのは悠馬先輩だよ。」


おぉぉ・・・妹の目が点になった・・・っ。

って言うか埴輪みたいになってる・・・やばい・・・笑いが我慢出来そうに無いっ!


「はぃぃぃぃぃぃぃ?!?!YouMaさんの作品?!?!えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ?!?!」


「ふっ。くくっ・・・あははははははははははっ!驚きすぎだろう?!」


俺の部屋に彩花の驚く声と俺の笑い声と・・・そんな俺を見て怒る彩花のうるさいくらいの声が暫く響いていた。


まぁ・・・母さんに「うるさい!」ってしっかりと揃って怒られたけど・・・。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

こんなに手を広げて書ききれるかな・・・俺w

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る