第247話 清蘭祭2日目 プロポーズ

えっと…これをこうして…こうだな。

おしっ!これで開始出来る!


「やっほー!みんな見えてる?今日は清蘭祭の二日目だよ!遊びに来てくれてる人も居るかな〜?」


スマホからの配信、学校での配信と言う珍しい状態にリスナーは驚いてるけど制服姿の俺を見たり後ろの景色を楽しんだりしてるみたい。


「えっと、今は外でのコンテストが終わって次のプログラムまでの空き時間なんだけど、ここで遣りたい事があって、皆に証人になって欲しくて配信を始めたんだ。」


:何ですか〜?

:しっかりと見届けます。

:何をするのかは分かりませんが頑張ってください!


流れてくるコメントを尻目に俺は行動を開始する。


「うん!皆ありがとう!それじゃぁ…菜月!頼んだ!」


「はいっ!任せてください!」


俺は菜月にスマホを渡して前を向く。


「皆に説明しておいていいからね?」


「分かってます。兄さん!頑張ってくださいっ!」


「おうっ!任せろ!」


それだけ言って俺は、菜月や皆から離れる。さて…次はっと…


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SIDE 菜月


「えっとー、今日はですね。先ほど兄さんが言った通り皆さんにある事の証人になって欲しいのです。」


画面を見ながらリスナーの皆さんに説明する私に、コメントが届く。

:何をするつもりなんですか~?

:菜月ちゃん!周り映して周り!


兄さんから受け取ったスマホをのぞき込むとコメントがどんどん届く。


兄さんから預かったスマホの生配信のコメントを見ていると…「菜月ちゃん!悠馬は?」、「悠馬さんは一緒では無いのですか?」、「あれ?何処行ったの?」と義姉さん達が戻ってくる。


「はい。少し席を外しています。ちなみに、配信もしてます。見えますか~?私の義姉さん達です!」


:ぉぉぉぅ?!YouMa様の恋人さん達?!

:うわぁ…やっぱり清蘭の制服姿可愛いっ

:流石はYouMa様の恋人さん達!!


義姉さん達を映すと勢い良くコメントが流れていく。


「あれ?配信って何で?!」


「これは…悠馬さんのスマホですよね?」


「菜月に預けてほんとに何処行ったの…?」


「大丈夫です。直ぐに分かりますよ。一応、皆さんにご紹介しますねー。いま、私の周りに居るのは兄さんと仲の良い人達です。主に兄さんからしたら後輩になるんですけどねっ。」


私はスマホを持ったまま、グルっと周りを映すと、稲穂さんと優理さん。向井さんと里香さん。中島くん達。柚美達と兄さんのクラスメイトの先輩達と皆が揃って居た。


:ほぇ~…流石はYouMa様だぁ~

:大人気!お友達の彼もいっしょに居るー!


「と、こんな感じで毎日ワイワイやってます!………うん、そろそろかな?」


「そろそろって?何が?」


愛央義姉さんが私に聞いてくる。

稲穂さん達も私に向かって不思議そうな顔をしている。


「お集りの皆様、逆月悠馬です。突然、舞台上に上がらせて頂いて皆さんのお時間を奪う事、謝罪いたします。」


「え?悠馬さん?」


「始まりましたね…皆さんもしっかりと見届けてください。兄さんの雄姿を!兄さんの格好いい姿をっ!………兄さん頑張ってください…」


私は兄さんのスマホを壇上に向けて、壇上の兄さんを見ながら、小声で兄さんを応援した。


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「俺が今日、この舞台上に上がったのには理由があります。その理由は、この場所でやりたい事があるからです。」


俺が舞台上に上がって発言するよりも前に俺の姿を確認した観客たちが騒ぎだしていた。


「ありがとうございます。皆さんの応援で毎日楽しく過ごさせて貰っています。」


本当に、きゃー!きゃー!大騒ぎになってるのは少し困るが…これだけの証人が居れば問題は無いな。


「ごめん、少し静かに。俺がここに立って居る理由を話したい。」


俺の言葉に観客達は少しの時間をおいて静かになってくれた。


「俺には3人の恋人が居るのは皆、知ってると思うけどその事で話があるんだ。それでっ!」


まだ始まってもいないんだからここで折れるな俺!


「先ずは…愛央!志保!清華!悪いけど…壇上に来てくれ。」


それぞれ、顔を見合わせた後に3人ともゆっくりと壇上に上がってくれる…


「悠馬?どうしたの?」


「どうしたんですか?私達を舞台の上にあげてなんて…」


「悠馬くん?何か緊張してる?顔が強張ってるよ?」


俺は学園祭でのイベントの後、舞台が空いてる時間を使って、恋人達を壇上に上げた。

ここから…俺の覚悟を…思いを…大切で誰よりも愛しい3人に…

俺は、真剣な顔で3人を見詰めて、言葉を紡いだ。


「あの日…受験の日に俺の世界は変わったんだ…それまで何処か現実的じゃ無くて…自分の事で精一杯で…灰色の世界だった。」


「私も、あの日に悠馬に会えた事は今でも色褪せない思い出だよ。」


一人目の女性…星川愛央…


「あぁ、俺の世界は、愛央に出会った事で世界に色が戻った。あの瞬間、愛央に出会った瞬間に俺は愛央に恋をしたんだ。」


「私もね?中学時代の事があって、頑張って勉強して受験して悠馬に出会った事で絶対に合格するって、悠馬と一緒に居たいって思ったよ。」


「ありがとう。実際に一緒に居てくれて、本当に嬉しかった。そんな愛央と一緒に過ごせば過ごすだけ、愛央に夢中になって…どんどん好きになって行って…そんな毎日が楽しかった。そんな愛央に俺は、気持ちを伝えたくてデートを申し込んで、デートして…告白して恋人になれて本当に幸せで毎日が楽しいんだ。」


「私も…私もそうだよ。悠馬と過ごす時間は毎日楽しくて幸せで…」


愛央は言葉を紡ぎながら涙声に…いや、目尻に涙が溢れて来てる。


「そして、同じ受験の日に志保とも出会った…俺の事を愛央と待っててくれた。」


「はい。私も受け付けで悠馬さんを見かけ、愛央さんと話している悠馬さんを見て・・・他の男子とは違う貴方に興味を持ちました。」


二人目の女性…天音志保…


「そうだったね。でも、俺は同じ日に志保と知り合えて嬉しかったよ。志保は何時も俺を守るような立ち位置に居てくれて俺も安心して色々と行動出来たよ。安心感が凄かったからな。」


「私は…そう言う立ち位置だと思ってますし、愛央さんと私は凸凹コンビですからっ。」


そんな事を言いながらも志保は嬉しそうな誇らしそうな顔をしてる。


「愛央は志保の誇りだもんなっ。」


「なっ///何で知ってるんですか…誰から…」


「さぁ?誰だったかな…でも、そんな風に言える相手が居る志保の事は羨ましいと思う位さ。」


そう…志保と愛央の関係はとても眩しくて羨ましい。


「俺も、志保にそう思って貰える様にこれからも努力するよ。」


「そ、そんな事しなくても悠馬さんは私にとって既にっ。」


「ありがとう。それならがっかりさせない様に頑張るよ。志保の時は大変な事があったね。」


「あの時はすいませんでした。私の過去の因縁で悠馬さんに大怪我をさせてしまって…」


「あれくらい何でも無いさ。大切な人を守れたんだからっ。」


「ですがっ!私は今でもあの時の事は…」


「志保の為に身体を張れて、志保の為に戦えたんだから良いのさ。そして、志保から気持ちを伝えられて受け入れて、本当に嬉しかった。」


「私も受け入れて貰えて幸せでしたっ。それからの生活も充実していて、悠馬さんの恋人になれた事は私の人生に於いても何物にも代え難い事でっ。」


「俺も同じだよ。あの時、志保の気持ちを受け入れて本当に良かった。そして…二人とは少し時期がズレるけど清華とも知り合えた。」


三人目の女性…伊集院清華…


「今にして思えば、勢いもあったんだろうけどあの人の中に良くもまぁ、飛び込んだよな俺。」


「うんっ。あの時の悠馬くんの背中は今でも鮮明に思い出せるよ。あの時から、悠馬くんはピンチに駆けつけてくる王子様だよっ。」


前から言ってるけど、王子様とかそんな立派な人間じゃ無いんだけどな〜…とは言え清華がそう思うのを否定する程でも無いんだけどさ。


「王子様とか前から言ってるけど少し恥ずかしいんだぞ?勿論、清華の王子様像を壊さない様にはしてるけど。」


「ふふっ。知ってるよっ。でも、そんな意識しなくても悠馬くんは私にとって世界で一番の王子様何だから変に意識しなくても大丈夫っ。」


「ありがとなっ。清華との連弾、早苗さんの関係で女子校に乗り込んだ事は大変だったけど、楽しかった。」


「あれも大変だったけど、私の親友でライバルの早苗を紹介出来たのは、良かった。」


「うん。俺も知り合えて仲良く馴れて良かった。そして、清華から告白された。」


あの日の清華は、赤い顔をしながら必死に俺に気持ちを伝えようと…伝えてくれて本当に嬉しかった。


「だって…愛央と志保が羨ましかっただもん。だから、喩え振られたとしても自分の気持ちに嘘は付けなくて、伝えようって必死で…」


思い出しているのか、清華も涙声になって来てる。


「うんっ。そんな清華だから、俺も他の男になんて渡したくなくて、清華の気持ちに応えたくて、清華が好きだから清華を受け入れた。」


「うんっ!うんっ!本当に嬉しかったんだよっ。私はっ!私は…っ。」


もう言葉にもならないって感じだな。


「あぁ、俺もだよ。そして、そんな三人と過ごす時間はとても楽しくて、幸せで、夏には泊まり掛けで海に行って、突発だったとは言え、愛央が過去とケリをつけた。

秋は、学園祭で大盛りあがりして、冬は、スキー旅行に行って、俺と清華が遭難したり・・・大変な事もあったけど、どれもこれもとても楽しくて幸せで、忘れられない記憶、思い出になった。」


本当に暇だなんて思う事も無くて、も経験の無い位に充実した時間だった。


「だから…だから、俺は…俺は…っ!」


「悠馬?」


「悠馬さん?」


「悠馬くん?」


それぞれが、当時を思い出しているのか目元に涙を湛えながらも、不思議そうに聞いてくる。そんな、三人を見ながら俺は言葉を紡ぐ。


「本当に、本当に何でも無い日常が大切で尊くて、この日常を守りたくて、続けて行きたくて…愛央と志保と清華とこれからもずっと、ずっと続けていきたい。だからっ!!」


俺は制服のポケットにいれていたを取り出した。

その箱を見た三人は揃って息を呑み、驚いた顔をしてこれ以上は開かないだろってくらい、目を見開いて、口元に手を当てながら俺を見る。


「これは、俺の覚悟の。これからも三人と俺の四人で何でも無い日常を過ごして行きたいと言う俺の覚悟の。」


俺が何を言っているのか、何をしようとしているのかを理解した三人は、静かに涙を流す。

それは、堪えていたものが自然に溢れるように、静かに、だけど確りと三人の綺麗な瞳から流れ落ちていく。


「まだ早いのは理解してる。

だけど、清華は来年には学校には居ないし俺達四人が、同じ学校で同じ制服を着ていられる内に、渡したかった。

今までも、これからも三人とを離さない。近い将来に訪れる未来の為にも。今日!俺達の関係を先に進めたいんだ。」


ぼろぼろと、愛央も志保も清華も大粒の涙が溢れる。

そんな三人を眺めながら…


「これから先の未来の為に、必ず訪れる未来の為に、愛央にも志保にも清華にも受け取って欲しいっ!」


それぞれの為に用意した箱の蓋を開けながら、それぞれに渡すと、震える手でしっかりと受け取ってくれる。


「これが、俺の覚悟の証。これから先も変わらずに一緒に歩いて欲しい。

楽しい事、嬉しい事があれば共に笑って、喜んで。

悲しい事があれば一緒に励まし合って…壁にぶつかったら一緒に乗り越えて…そうやって、絆を強めながら歩いて欲しいんだ。」


もう我慢なんて出来なくなってるんだと思う。

三人共、抑えては居るけどそれでも子供みたいにしゃくり上げながら泣いて、それでも最後まで聞こうと、俺の言葉を待ってくれている。


「だからっ!将来、俺と結婚してくださいっ!!俺のお嫁さんになってくださいっ!!」


ありったけの気持ちを込めて、最愛の恋人達に言葉を紡いだ。


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