第232話 悠馬の覚悟

~学園祭数日前の休日~


「すいません、お忙しいのに集まって貰って。」


「良いの良いの!悠馬くんが呼んでるって葵さんから聞かされた時は疑問だったけど、わざわざ私達を呼び出す位だから余程の事でしょ?」


「そうそう。志保達を抜いて私達だけを何て余程の事って思うもの。」


「それで、どうしたの?何か相談事?」


学園祭も迫ったとある休日、俺は数日前に母さんに頼んで愛央と志保と清華の親である、茉優さん、有希華さん、伶佳さんを呼び出した。


「皆さん。悠ちゃんの我が儘に付き合わせて仕舞って申し訳ありません。ですが、どうか悠ちゃんの話を聞いてください。」


母さんの改まった言い方と、一緒に頭を下げた菜月の姿に3人とも驚いた顔をしてるけど、これから話す事は真面目な話だし母さんも菜月もだけど俺自身もと言うのは理解してる。


「今日、皆さんに集まって貰ったのはですね・・・。今度の学園祭で俺はある事をと思ってるんです。」


「やらかしたい事?」


「はいっ。まだ早いと言うのは重々理解していますけど、来年には清華は高校生では無くなってしまうから、俺達が4人揃っての学園祭は今年が最後なんです。」


「それは勿論、分かるけど・・・?」


要領の得ない俺の言い方にすっかりと混乱してしまってる。

俺も、緊張してるからな・・・。

すぅ~、はぁ~・・・と一度深呼吸して、気合いを入れ直す。


「それで何ですが・・・学園祭の舞台で俺はある事をしようと思ってます。それは俺達4人が高校生で居られる今年にしか出来ない事で、時期としてはまだまだと言うのは重々理解しています。ですが・・・俺は愛央と志保と清華にこれを渡したいと思っています。」


3人の母親の前にそれぞれ一つの箱を置いた。

それを見た母親達は揃って息を飲む・・・。


「これで何をしようとしてるかは理解して貰えたと思いますが・・・敢えてしっかりと言葉にしたいと思います。」


言葉を一度切ってもう一度深呼吸をして・・・ハッキリと伝える。


「俺は、学園祭の舞台で3人にプロポーズをしたいと思っています。」


「本気で・・・?」


「確かに・・・早いわねぇ・・・。」


「それでもするのね?」


「はいっ。タイミングはまだ決めてませんけど、俺達4人が同じ学校の制服を着て居られる内に、俺が本気で愛央達とこの先も歩いて行きたいと思っているあかしとして、色褪せる事の無い思い出として、俺はプロポーズをしたい。だから・・・愛央達3人の親である皆さんに先ずは許可を頂きたいと思い、今日は忙しい中、集まって頂きました。」


俺の覚悟に3人とも息を飲んでるけど、それも一瞬の事で直ぐに親としての顔になる。


「はっきり言って、高校生の子供が何を馬鹿な事言ってるの?と言うのが正直な気持ちです。」


「そうね。娘の選んだ人が悠馬だと言う事は、私達からすれば行幸だとは思います。ですが・・・。」


いつもの、からへと変わる・・・これは子供としてでは無く一人の人間として相対すると言う意味だと思う・・・。


「結婚・・・いえこの場合は婚約ですね。そこまで将来の事を考えてくれているのはとしては嬉しいですが、社会にも出ていないが何を甘い事を言っているのか?そう思います。」


そりゃそうだ・・・俺だって親の立場なら同じことを思う。


「あのっ!兄さんは決して軽い気持ちで言ってる訳でなくて!」


「それは分かってるわよ。菜月ちゃん。」


少し厳しい空気に菜月の援護が入るけど、別に俺が適当な気持ちでは無いと言うのは流石に分かってくれてるらしい。


「茉優さん、有希華さん、伶佳さん。皆さんの気持ちは私にも分かります。仮に言い始めたのが悠ちゃんでは無く愛央達だったとしても同じ事を考えるでしょうしね。」


「ですね。娘が同じ事を言い始めたら怒るもの。」


「決して、適当な気持ちで言ってる訳ではありません。早すぎるって言うのも分かっています。それでも・・・愛央と志保と清華と3人と出会えたと3人と同じ時間を過ごした学園で、俺達が同じ学園に通える内にどうしても、思いを伝えたいんです。これから先も愛央と志保と清華とずっとずっと一緒に居たいし同じ時間を過ごしたいんです。だから・・・婚約をさせていただきたいっ。申し込む許可が欲しいんですっ。まだまだ子供だって事も、社会に出ても居なくて何も厳しさもしていないのも分かってます。それでも、真剣に俺は3人を愛しています。だから・・・だから・・・っ!娘さんを俺にください!!!」


もう土下座する勢いで俺は茉優さんと有希華さんと伶佳さんに頭を下げる。

それに倣って・・・菜月も母さんまでも頭を下げてくれている。


「3人とも頭を上げてください。悠馬さんの気持ちを疑ってなんて居ません。」


「少しだけ聞かせて欲しい事があります。」


俺は頭を上げる。3人の母親の顔をしっかりと見つめながら、言葉を待つ。


「生涯、娘を愛してくれますか?」


「生涯、娘を裏切りませんか?」


「生涯、どんな困難が降りかかっても障害があっても共に乗り越えてくれますか?」


「「「娘と共に幸せな家庭を築いてくれますか?」」」


「はいっ!一生涯、愛央と志保と清華を愛し続けます。裏切ったりなんてしません。どんな障害、困難が降りかかろうとも乗り越えてみせます。幸せにするなんて、傲慢な事は言いません、4人で納得の行く幸せな家庭を築いて見せます。だからっ!!」


「愛央をよろしくお願いします。」、「志保をよろしくお願いします。」、「清華をよろしくお願いします。」と茉優さん達が今度は俺達に向かって頭を下げた。


「ありがとう・・・ござい・・・ますっ。」


3人に認められた事にどうしても我慢が出来ずに俺の目から涙が溢れるけど、止める事は無く・・・絶対に期待に応えて見せると俺は改めて心を決めた。


「良かったですね。兄さんっ。本当に良かった・・・ですっ。」


「良かったわねっ。これで・・・後は・・・。」


「うんっ。実際にプロポーズをして・・・受けて貰えれば・・・。大丈夫・・・かな・・・?」


「大丈夫に決まってます!義姉さん達も兄さんと別れるなんて考えただけで駄目になる位ですもん。」


「そうよっ!あの子達が断る訳無いわっ。泣いて喜んでくれるわよっ。」


だったら良いな・・・。待っててくれな?絶対に伝えるからさ。俺達が揃って清蘭高校に居る間に・・・絶対に・・・!!!


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~生徒会室にて~


「改まってどうしたの?悠馬くん。」


俺は今、明日香会長達、生徒会組の前に一人で居る。

その理由は勿論の事、プロポーズに舞台を使わせて欲しいとお願いする為だ。


「実は、お願いがあってですね。」


「お願い?珍しいね?悠馬くんがそんな風に行ってくるなんて。」


「えぇ、まぁ。私的な理由のお願いなので・・・。」


「うん。それでどうしたの?」


「はい。実は・・・。」


俺は何をしようとしているのか、どうしてなのかを明日香会長達に説明する。

最初は怪訝な顔をしていたけど、話が進めば進む程、顔を赤くしたり羨ましそうな顔をしたりと反応が変わっていった。


「壇上でプロポーズって・・・っ///」


「それはヤバすぎっ///清華達、羨ましいぃ〜・・・っ///」


「しかも既に3人の親には了承をとって居るとかさぁっ///」


今回は生徒会役員側の菜月から、明日香会長達に一言入る。


「あの!叶えてもらえませんか?!兄さんは真剣なんです!私も最初は、早すぎて駄目でしょうと思いましたが、話を聞いてる内に力になりたいって思ったんですっ!」


菜月も何とか俺の希望が通る様に説得してくれてる。


「うんっ。別に適当な気持ちで言っている訳じゃ無いのは分かってる。個人的には全然オッケーかなっ!別に何時間も使うわけじゃ無いんだしね。」


「うんうんっ!羨ましい妬ましいが先に来るけど、折角、舞台があるんだから使わない手は無いよね!!」


「そ、それじゃぁ?!」


「勿論!協力するから思いっきりヤラカシて!!こんな素敵なヤラカシなら幾らでも協力するよ!!!」


「ありがとうございます!!まぁ・・・とは言え振られる可能性もあるんですけどね・・・。」


「アナタハナニヲイッテイルノカ・・・。」


会長の呆れた様なカタコトに、俺を抜いた部屋の全員が頷いた。


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~舞台の上にて~


「悠馬?どうしたの?」


「どうしたんですか?私達を舞台の上にあげてなんて・・・。」


「悠馬くん?何か緊張してる?顔が強張ってるよ?」


俺は学園祭でのイベントの後、舞台が空いてる時間を使って、恋人達を壇上に上げた。

ここから・・・俺の覚悟を・・・思いを・・・大切で誰よりも愛しい3人に・・・。

俺は、真剣な顔で3人を見詰めて、言葉を紡いだ。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


ここから少し場面や時間が行ったり来たりします。

すいません!!

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