第229話 おらぁ!男共!気張れ!
「はぁ、はぁ、はぁ。悠馬さん・・・もう・・・無理・・・です。」
「せん・・ぱい・・・そ・・・ろそ・・・ろ・・・。」
「きゅう・・・けい・・・。」
「もう・・・むり・・・で・・・す・・・。」
「死ぬ・・・まじで・・・死ぬ・・・。」
「お前らさぁ~・・・運動不足ってレベルじゃねーぞ?」
俺はスコップを地面に刺して手を置きながら手伝いに呼んだ男子連中に呆れた声を出す。
「そんな事、言われても・・・こんな作業する何て聞いてないですよ・・・。」
「お祭りで言ったろ?庭に池作りたいってさ。」
「言ってましたけど・・・。」
「実際に作るなんて思わないじゃないですか・・・。」
「本当ですよ・・・。てか、葵さんも良く許可しましたね・・・。」
あのお祭りの後、俺は母さんに提案を持ち込んだって訳。
勿論だけど・・・呆れられたし怒られたけど・・・何とか説き伏せた。
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「もう一回言って貰える?悠ちゃん。」
聞こえてるし理解してるじゃん・・・青筋浮かんでるよ?
「だからさ、庭の一角に池を掘っても良い?」
「ん・・・。はぁぁぁ・・・・。ナニ言ってるの?」
「だから、庭の一角に池を「そう言う事じゃ無く!!!」・・・ぉぅ?」
「どうしてそうなるのかを聞いてるの!!!」
「どうしてって・・・これだけ広い庭なのに池無いじゃん?それにお祭りで愛央がな?金魚を沢山捕ってたからさ~・・・。譲って貰って池で伸び伸びと育って欲しいなーって?」
「うん、頭痛して来たわ・・・。」
それは酷くない?そんなにおかしい事言ってるかな?
「はぁぁ・・・。だから言ったじゃないですか・・・。DIY超えてるし普通は思いつかないんですってば・・・。」
「駄目かな?コンクリートとか普通に買えるしさ。業者に頼まないで自分でやるし。」
「そう言う事じゃないのよ・・・そう言う問題を話してるんじゃないのよ・・・。」
何だってのさ~・・・。
「結局駄目なの?良いの?」
「駄目って言ってもやるでしょう?怪我だけは気を付けてやりなさい。」
「良いの?!ママ?!」
「だって・・・駄目だって言ってもやるでしょう?悠ちゃん。それなら許可出しての方がまだましでしょ?」
「よっしゃ!凄いの作ったる!!!愛央から金魚を分けて貰えなくても何か買ってきても良いしな!やるぞぉー!」
やる気出してデザイン考えたり材料を調べたりしてる俺を菜月も母さんも呆れた目で見てるけど・・・知った事じゃねぇ!作り切ってやる!
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「ん~・・・一番深い所で後30cmくらいかな?浅い所は今の位で良いか。」
「はぁ・・・はぁ・・・ぜぇ・・・ぜぇ・・・。ゆ、悠馬さん・・・。」
「ん?どうした?」
「まだ掘るんですか・・・?」
「浅いと野良猫とか野鳥とかに食べられちゃうし、冬の間の避難場所とか無くなっちゃうだろ。」
「土はどうするんですか・・・?」
「取り合えず、そっちの隅に寄せておいてくれ。後で考えるって言うか、家庭菜園にでも使うかな~。」
健司はまだマシだけど・・・陸も翼も水夏も渚もぐったりとして地面に寝転んでる。
「他に・・・はぁはぁ・・・やる事・・・ふぅふぅ・・・何です・・・か・・・?」
「取り合えず・・・お前らは一旦休憩しとけ!息切れしてんじゃねーか!つかぶっ倒れてるんだから、先ず休め!」
「「「「すいません・・・・。」」」」
全く・・・こいつ等は・・・。まぁ、しゃーないこんな作業なんてした事無いだろうし、普段身体を鍛えていたとしても、こう言うのはな。
「兄さんー!差し入れですよー!皆さんもー!」
「おう!ありがとう!菜月!」
「私達も居るよー!やってるねぇ~!」
愛央達も来たしその後ろからは優理ちゃんと深山威も居る。
お祭り会場では呆れた感じになってたのに、実際にやり始めたら興味津々じゃねーか。
「どんな感じですか?悠馬さん。」
志保が穴の中の俺を覗きながら聞いてくるけど、ぶっ倒れてる男子達の方は、菜月や愛央と清華が飲み物とかを配ったりしてるのを尻目に、優理ちゃんと深山威はそれぞれの彼氏の汗を拭いたり応援したりとイチャイチャしてやがりますなぁ~・・・。
「穴掘りは殆ど終わったかな?一番深い所で1,5mで一番浅い場所で20~30cm位の深さにしてある、徐々に深くなって行く感じでな。だから、後はガンガン叩いて少し固めて砂利を土が見えなくなるくらい敷き詰めて・・・防水セメントを塗りたくってかな~?」
「と言う事は・・・半分くらいですか?」
「そうだね。あぁ、後は排水とかも考えないとだし水草関係もだしなぁ~・・・。」
「あぁ・・・確かに排水系がありますか・・・ですがどうするんですか?まさか配管を掘り起こして繋げる訳にも行かないですよね?」
「流石にね・・・。それは色々な方面から怒られそうだしなぁ~・・・。ん~・・・。」
排水関係を忘れていた俺はどうするべきか頭を悩ませていると愛央が話しかけてくる。
「別に気にしなくても良いんじゃない?水草とか入れるなら酸素系も大丈夫だろうし水槽の掃除の時もそうだけど、水は入れ替えるでしょ?ある程度の水は残すだろうけど庭の端にマンホールもあるしあそこを開けて、捨てれば良いんだしさ。」
「そうですね!確かにそれで良いと思います。」
「酸素の供給に関しても今は確かソーラー付きの酸素供給機あるはずだからそれを幾つか設置すれば問題は無いか。うん、何にしても防水セメントを塗りたくった後は乾かさないとだし、一度水をいれてアルカリ成分抜かないとだしな。今日だけで何とかなるものでも無いし、休みの間に上手い事やる事にするよ。」
よっと!と勢いをつけて穴の中から俺は出る。
そんな俺に飲み物なんかを清華が渡してくれるのを受け取って、一気に飲み干した。
「ふぅぅぅ。何とか形になりそうだな。おし!もう少し休憩したら作業を再開するからな~?」
「「「「うっすっ!」」」」と男子達も休んだ事で元気が戻って来たみたいだな。流石は現役高校生男子って所だな。
「次は砂利を撒けばいい感じですか?」
「あぁ、そっちの作業を頼むよ。下の土が見えなくなるまでしっかりと敷き詰めてくれな。」
「ねねっ!悠馬!この始まりの浅い部分の真ん中にさ、少し盛って山にしてセメントで固めて、左右の部分には木の板とかで橋を架けて浅い部分でも隠れられる場所を作ったら良いかも。」
「ふむふむ・・・。確かにそう言うのも大事か・・・。うん!採用!」
「私達にも手伝える事ありませんか?先輩。」
「そうだな~・・・防水セメント作りとか砂利撒きとかかな?出来る事と言ったら。」
「あの土とか運んでも良いんですよ?」
「そう言うのは男の仕事だよ、優理ちゃん。気持ちは嬉しいけどねっ。」
結局のところ・・・男共だけじゃなく、女の子達も手伝い始めて総出で作る事になったのだった。
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「出来たぁぁぁぁ!!!」、「終わったぁぁぁぁ!」、「つっかれたぁぁぁぁぁ!!!」、「皆、お疲れ様!」、「これ絶対・・・筋肉痛だぁ~・・・。でもやり切った感!!!」、「夏休みの工作じゃないけど・・・皆でこう言うのやるの楽しかったです!」等など・・・。
「うん、皆お疲れ様!後は一晩乾かして、明日にでも水を一度張って・・・。」
「明日はホームセンターで追加の買い物ですね。」
「えっと・・・調べてみたけど、2か月放置って・・・水が腐るよね?」
「大丈夫だよ清華さん!セメントあく抜き剤ってのがあるのでそれを使えば良いんです!」
「ほえ~・・・そんなのあるんだ?それじゃー明日はそう言うのとかの買い物かな?」
「そうなるね。俺も多分明日は筋肉痛になってるだろうけど・・・健司達よりは酷くは無いと思うし。愛央達も予定無ければ付き合ってくれる?」
「勿論!一緒に行くよっ!」
愛央の言葉に志保は「当然です。」と、清華は「家庭菜園もやるんでしょ?そっちの買い物もしちゃおうよ!」と言ってくる。
「そうだな。取り合えず健司達もお疲れ様だな!このままシャワーでも浴びて飯食っていきな!」
「では、準備はお手伝いしますね。人数も多いですし手伝わせてください。」
「ありがとね、志保。うし・・・兎に角!家に入ろうか!」
健司達と優理ちゃん達と愛央達を連れて自宅に戻る。
男子連中は順番に軽くシャワーを浴びたりしてる間に、俺も外で軽く水を被って土を落としたり、しっかりと手を洗ったりした後に、志保と一緒にご飯作りを開始して、全員がさっぱりした後に殆んど完成したのを見て俺もシャワーを浴びる。
その間に、皆でテーブルに並べてたらしく、俺が出てくるのを待っててくれた。
「よし!皆コップは持ったな?それじゃ・・・。」
全員に飲み物が行き渡ったの見て、俺もコップを持って立ち上がる。
「今日は手伝ってくれてありがとう!お疲れ様!乾杯ー!!!」
「「「「「「「「「「乾杯ーーーー!」」」」」」」」」」
と、簡単なパーティーみたいになるのだった。
その後、次の日にはさらに必要な物を買ってセメントのあく抜きをした後にもう一度水を入れ直して一晩おいてと・・・簡単ではあるけど、ちゃんとした池を庭の一角に作り上げて、もう一度、集まって完成したのを見て・・・愛央が、金魚を持って来てくれたのを皆で池に放して・・・またしても大盛り上がりっ。
ちょっとした思い付きではあったけど・・・これも男子にとっても女子にとっても良い思い出になるのだった。
あぁ・・・思った通り、健司を筆頭に1年組は丸一日、筋肉痛で動けなかったらしいわ・・・やれやれっ。
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