第228話 想いを君に 貴方に

俺の突然の大声に東原さんだけじゃ無く、陸も水夏も翼も向井くんも驚いた顔をしてる。

勿論、立花さん達も驚いた顔をして俺を見ているけど、悠馬さんや、星川先輩達、菜月さんは笑顔で何処か応援してくれている様な顔をしているのが分かった。


「ど、どうしたの・・・?それに、優理ってっ///」


東原さん・・・いや、優理さんが俺が名前で呼んだ事に照れながらも怒る事は無く近づいてくる。


「いきなり名前で呼んだりしてごめん!でも!せめて今だけでも呼ばせて欲しい!」


「べ、別に普段も良いけど・・・っ///」


照れ隠しなのか、髪の毛をクルクルと指で絡めて遊びながら、上目遣いで言ってくるからあまりの可愛さに俺も赤面。

これから言う事を考えたらここで赤面してられないけど、それでもやっぱり優理さんの可愛さに赤面する。


「えっと・・・稲穂くん・・・?」


「俺は・・・俺は!あの入学式の日、壇上に上がる優理さんの姿に目を奪われて、堂々とした姿、窓から差し込む陽の光を浴びながら歩く優理さんの姿がとても綺麗で見惚れたんだ。」


「っ////////」


今までこんな事は言った事無かったのもあるけど、俺の言葉を聞いた優理さんは、それはもう首から上が真っ赤になってる。

それでも逃げたりせずにちゃんと聞いてくれてるのが嬉しい。


「その後、ステイルの前で会って、俺なんかを知っていてくれたのも嬉しくて!悠馬さんのお陰だけど、沢山の事を話せて優理さんを知れて、俺を知ってもらえて!本当にっ、本当にっ!あの時の沢山の顔が凄く綺麗で可愛くて俺なんかの話を聞いてくれて嬉しくてっ!!」


段々と感情が昂ぶってきて声が震える・・・。

目元に涙が溜まり始める。

まだ泣くな俺!俺がここで泣いても何の意味も!


「部活見学が終わって、俺が立ち上げる時にクラスも違うのに駆けつけてくれて!本当に嬉しかった!その後だって、四苦八苦してる俺を助けてくれて支えてくれて、どれだけ感謝しても、足りないんだ。」


俺の言葉をしっかりと聞いてくれてる・・・支離滅裂になって来てるのは自分でも分かってるけど、俺が何を言いたいのかは分かっているんだと思う。

だからこそなのか・・・その姿は、その綺麗な目からはポロポロと大粒の涙が溢れてて、何度も何度も指で拭ってる。それでも俺の話を最後まで聞こうとしてくれている。


「そして今日も!俺の為にそんなおめかしまでしてくれたって思ってるけど間違えてないと良いな・・・。俺を迎えにまで来てくれて手まで繋いでくれて、そんな優理さんにずっと惹かれていてっ!」


「っっっ////」


君が好きだと言う思いを込めながら惹かれていると必死に伝える。


「まだまだ、目標の人には届かないけど・・・そんな俺でも!優理さんを思う気持ちは誰にも負けない!」


やっと!やっとここまで!気張れ!稲穂健司!!ここからが一番大事だろ!まだ泣くな!!


「全然頼りにならなくて・・・向井くんに先を越された事にすら悔しいって思うくらい情けなくて、天音先輩に、ここまで連れて来て貰ってこんな風にお膳立てされないとダメダメな俺だけど!!!優理さんを好きな気持ちだけは誰にも負けないって!自信を持って言えるから!だから!!!」


もう指で拭う事も出来ないくらいぼろぼろ泣いてる優理さんが真っ直ぐに俺を見つめて来ていて・・・。だからそれに応える為にも俺は!俺は!!!


「俺は!!東原優理さんが!!好きです!!!俺と付き合ってくださいっっっ!!!」


ありったけの思いを込めて自分の気持ちを伝えた。


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SIDE 優理


もう我慢が出来なかった・・・。

稲穂くんの気持ちを聞いた後、私はあふれる気持ちのままにドンっと稲穂くんに抱き着いた。

そんな私を稲穂くんは、しっかりと受け止めてくれて・・・。


「私も、私も好き。ぐすっ、うぅ、里香に指摘されるまで稲穂くんが自分の中で大きくなってるって事にすら・・・すんっ、気付かない様な私だけど・・・。」


「好きです。優理さんが・・・誰よりも、好きです。」


すりすりと稲穂くんの胸板に顔を擦り付けながら私は稲穂くんにずっとくっ付いていた。


「稲穂くんは・・・何かじゃない。俺なんかって言ってたけど、絶対にそんな事無い。だって・・・!だって・・・!」


私は、自分の思いを必死に伝える。


「私ね?稲穂くんの頑張ってる姿が好き。夢に向かって必死になってるのが好き。悠馬先輩や、男の子達とふざけ合ったり笑いあってる姿が好き。真っ直ぐに真剣に頑張ってる姿が好き・・・。そんな風に頑張ってる稲穂くんがなんて言わないで・・・。私は、そんな稲穂くんが好きなんだから・・・。」


「うん・・・。」


「あの日、部活見学の日。自分の夢をしっかりと語っていた稲穂くんを私は手伝いたいって思った。この人の夢を応援したいって、この人の進む先をずっと見て居たいって思った。」


「うん。」


「だから・・・だから・・・私を稲穂くんの・・・うぅん・・・の恋人にしてくださいっ。これからも側で、支えさせてください。」


私も、健司くんと同じでぼろぼろとお互いに泣きながら抱きしめあったまま・・・お互いの思いを伝えあう。


「やっと・・・やっと言えたよ。優理さんに自分の気持ち・・・。」


「うんっ。私も言えた・・・。」


私達は静かに抱きしめ合ったまま時間が過ぎる・・・。それはまるで、お互いの温もりと思いを身体に刻むかのように・・・。

私達は自然と見つめあう。自分でも分かるくらい顔は涙でぼろぼろにはなってるけど、それは健司くんも同じで・・・。

スッと・・・私は健司くんを見詰めたまま目を閉じた・・・そしたら、健司くんは・・・。

私の唇に優しく、キスをしてくれた。


…………………………………………………………

「おめでとう。良かったな二人とも。」


「「ぁっ///」」


すっかりと二人の世界になってる所を邪魔するのは気が引けるが・・・自分達が全員の前で何をしたのかを思い出したのか・・・さっきとは違う意味で真っ赤になってる。


「邪魔して悪いけど、これ以上遅くなるのもな・・・?」


流石に邪魔にしかならないし無粋なのは俺も分かってはいるが・・・ね?時間も時間だしな。


「さて、降りるぞ。」


俺の声に新しい恋人組と、他の一年達と揃って着いてくる。

それにしても、健司も渚も上手く行って良かった。

お祭り会場に戻りながら連絡させていたのもあって、会場に着く頃には、何家かは迎えが来ていた。


「遅くまですいませんでした。」


迎えに来たそれぞれの家族に向かって頭を下げて無事に帰す。

深山威と渚のところも来ていて、手を繋ぐ二人を見てニヤニヤし始めたのを眺めてた。


「ちょっとぉ〜?渚ってば!こんな可愛い子と〜?」


「里香ってば!もう!彼氏居るなら教えなさいってば!!」


「良いだろ別に!今日から付き合う事になったんだよ!///」


「そ、そうっ!花火見ながら言われてっ!///」


「里香?!言わなくて良いからね?!」


「あわわっ///」


「ふっふっふ~・・・尋問・・・もとい!質問が色々あるしね~聞かせて貰わないとねっ!」


「里香も覚悟しておきなさいよ?根掘り葉掘り聞いてやるんだからっ!」


二人ともゲンナリとした顔をしたままそれぞれの家族に連れられて車に乗り込む・・・その前に。


「先輩!!!本当にありがとうございました!!!!」、「私も!ありがとうございました!!!」


「いやいや・・・何が?」


「沢山!沢山!迷惑かけたのにここまでしてくれて!沢山助けてくれて!」


「私もです!本当に迷惑かけたのに助けられて、仲間に入れてくれて!」


あぁ・・・それね・・・。


「さっきも俺と志保が言ったが、渚も深山威も自分達で勝ち取ったから今ここに居るそれだけの事だ。感謝は受け取るが、自分達の努力の結果だと言う事を忘れるな。そして・・・やっと繋がったんだからしっかりと温めて行け。」


「「はいっ!!!」」


そうして二人とも帰って行った。

それに伴い、他のメンツも帰って行って、残すのは俺と愛央達と菜月と・・・健司に優理ちゃん。


「優理ちゃん。」


「はいっ!何ですか?」


「健司の事、宜しくお願いします。」


頭を下げた俺にワタワタとしながらもしっかりとした返事で・・・。


「はいっ!向井くんと里香もだけど私達もこれから温めて行きますから!悠馬先輩達に負けないくらいラブラブになって見せますからね!!!」


「あぁ!楽しみにしてるよ。」


「天音先輩!大切な場所に連れて行ってくれてありがとうございました。」


「いえいえ。まぁ・・・これでも駄目でしたら流石に怒りましたけどね。」


「は、はいっ。俺もここまでして貰って何も出来なかったら、これから先も告白なんて出来なかったと思います。だから、ありがとうございましたっ!」


「稲穂さん、変わりましたね。本当にっ。」


「ぇ・・・?」


「とても格好良くなりました。今の稲穂さんは、悠馬さんに負けないくらい素敵ですよ。」


「ぁ・・・ぁぁ・・・ありがとう・・・ございま・・・すっ。」


志保の言葉で健司の目からまた涙が溢れ出す。俺も皆もそれには敢えて突っ込まずに・・・。


「よっしっ!帰ろうぜ!」


俺と菜月と愛央達はゆっくりと歩きながら「お休みー!」と言いながら、健司と優理ちゃんから離れて行った。


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SIDE 健司


「えっと・・・じゃぁ・・・私達も帰ろうか?って言っても迎えは来てるけど。」


「ぐすっ。そうだね。えっと・・・連絡するからデートして貰えるかな?」


「う、うんっ!待ってるからいつでも誘って!私も誘うし!」


「うん!その、改めてよろしくね?」


「うんっ!それじゃ、離れずらいけど・・・。」


「う、うん・・・。お休みね?」


「うんっ。おやすみなさいっ。」


ゆっくりとお互いに手を放して・・・名残惜しいと思いながらも俺達はそれぞれの家族の元に行く。


「健司くん!大好き!おやすみなさい!!!」


そう言って優理さんは迎えの車に乗り込んで、こっちを見ながら手を振ってる。


「それは・・・ずるくない?///」


俺も手を振り返して走って行く車を見送った。


「上手く行ったみたいで良かったねっ。さって!私達も帰りましょう健司。」


「うんっ。迎えに来てくれてありがとねっ。帰ろう!」


母さんの迎えの車に乗り込んだ俺は、今日の事を思い出しながら一人でニヤニヤしてしまう。


「全くっ。ニヤニヤしてないで色々教えなさいよ!あの子も楽しみにしてるからねー健司の報告っ。」


「うへぇ・・・姉さんしつこそう・・・。はぁぁぁ・・・。」


クスクスと母さんは笑いながら「諦めなさい?」なんて言ってるし・・・。

まぁでも・・・折角だし思いっきり惚気てやろうかな?普段から揶揄われてるし?偶にはやり返したいしね。


そんな事を考えながら、デートは何時にしようかな~?なんてこれからの事を考えながら自宅までの時間を過ごすのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

健司!おつかれ!よく頑張った!!!!

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