第221話 健司と優理
向井くんと深山威さんの一件から少しして、今はもう夏休み真っ只中になる。
あの二人を見ていて俺はこのままで良いのかな?と考えるようになった。
東原さんと仲良くは馴れたとは言え、切っ掛けを作ってくれたのは悠馬さん。
俺の力じゃ無いし、俺が何かをした訳じゃない。
その後は、確かに頑張ったけど、でも・・・。
「はぁぁ・・・悠馬さんと違って、自信無いからなぁ・・・。」
俺は部屋で一人でそんな事を呟く。
「それに、どう思われてるのかも分からないし・・・嫌われては居ないと思うんだけど、恋愛感情を持たれているかは分からないしなぁ〜・・・。でも・・・。」
会いたいな・・・。夏休みに入ってからと言うものフリッペで話すことをあっても一緒に出掛けたりはしてないから、会えて無いのである。
ピロンッ!と、俺のスマホから音がなる。
手に取り見てみると、悠馬さんから。
「えっと・・・明日の昼間か。」
悠馬さんからのメッセージは明日の昼間は暇か?と言う内容だったから俺は直ぐに、返事を返す。
「暇です。全然、付き合いますよっと・・・。」
折角だし、相談しようかな?星川先輩に告白した時とかどんなだったのかとか、気になるし。
俺は、明日の事を考えながら悠馬さんとのやり取りを繰り返して、予定を決めたのだった。
…………………………………………………………
〜とある喫茶店〜
次の日、姉さんに店の前まで送られた俺はお礼を行って店の扉をくぐる。
「いらっしゃいませ〜!お一人ですか?」
「あ、いや。待ち合わせで・・・。」
「健司!こっちだ!お姉さん、そいつはこっちにお願いします!」
俺が入り口で戸惑っていると先に来ていた悠馬さんが声をかけてくれる。
「すいません、お待たせして。」
「気にするな、早く来すぎただけだからな。」
悠馬さんの向かいに座って注文をして、水を一口飲んで、一息。
「にしても、めっちゃ暑いですね。」
「だな〜。これから夏真っ盛りだろうし更に暑くなるとか考えたくも無いわ。」
「確かにっ。まぁでも、痩せたからなのか、去年よりも楽に感じてます実はっ。」
「あぁ、それはあるかもな。」
そんな何でも無い話をしながら届いた注文を食べながら、今日の事を疑問に思っていた俺は聞いてみる。
「それでいきなりどうしたんです?いやまぁ、誘われるのが嫌とかでは無いんですけど・・・。」
俺の疑問に悠馬さんは顔つきを変えて確りと俺を見ながら聞いてきた。
「お前は優理ちゃんとどうなりたいんだ?このまま、唯の友人で良いのか?」
それは、俺が相談しようと思っていた事でもあり、悩んでいた事でもあって言葉に詰まり、直ぐには返答が出来なかった。
そんな俺を、悠馬さんは急かしたりする事無く静かに返答を待ってくれている。
数分?数十分?がたったかな?って時に、悠馬さんから更に・・・。
「分かってるとは思うが、優理ちゃんは人気あるぞ?俺ですら何度か告白されてるのを見た事あるからな。」
「えっ?!そうなんですか?」
「あぁ、マジだ。だから自分が一番仲が良いとか思ってると誰かに取られるかもしれないぞ?」
うっ・・・それは嫌だ。
彼女の笑顔が誰かの特別になるなんて・・・そんなのは・・・嫌だ!!!
「健司、お前はどうしたいんだ?」
「俺は・・・俺は!悠馬さんみたいに格好良くないし、自信だって無い。」
俺の弱気な発言を静かに、何かを見極める様に聞いてくれてる。
「俺なんかが東原さんの隣に立っても釣り合わないのは分かってます。でも・・・俺は彼女が好きです。誰にも渡したくありません!」
「そうか。それならやる事は一つだな?」
「はい!告白します!あ・・・でもどうすれば良いんでしょう?」
「それなんだが数日後にお祭りあるだろ?花火も上がるらしいしそこなんてどうだ?」
「良いですね!あ、でも夜ですよね?出歩けられなく無いですか?」
「今までならな?俺も行くし愛央達もだし菜月も柚美ちゃん達も誘ってる。後は陸と水夏と翼も誘う。だから健司は・・・。」
「東原さんを誘えば良いんですね!頑張ります!」
おう!頑張れ!と悠馬さんは笑顔で言ってくれる。
俺は嬉しくて、どうやって誘おう?!と悩み始める。
二人で店を後にして歩きながら相談してると、色々とアドバイスをしてくれて・・・。
「どうしたら良いのか分からなかったので、助かりますー!」っと、しがみついてしまったんだけど・・・。
「ギャァァァァ!?暑苦しいわ!!!」
叫び声と、綺麗な肘鉄を脳天に頂きました・・・。
いやまぁ、俺が悪いですけど・・・酷くないですか?めっちゃ痛すぎますよ・・・。
------------------------------------------------------------
〜優理の部屋〜
「ところで東原さんって稲穂くんとはどこまでいったの?」
ぶぶっと、飲んでいた麦茶を私は吐き出してしまう。
「うわっ?!」
「げほっげほっ!ご、ごめん!って里香が変な事言うからでしょ!!」
「別に変な事じゃないと思うけど・・・二人とも仲良いし友達としては気になるし恩人の二人だし・・・。」
恩人って大げさ・・・私達は何もしてないよ。
私は自分でも気付かずに自分と稲穂くんをセットで考えていた。
「別に里香が期待する様な事は何も無いよ。友達は友達だけど・・・。てか優理で良いっていつも言ってるじゃん。」
私の言葉に「分かってるけど・・・友達だと思ってるけど・・・何となく・・・。」とブツブツ言ってるけどそんな遠慮は要らないんだけどなぁ~こうやって部屋にも入れてるしさ。
「別に付き合ってるとかじゃ無いんだから何も特別な事は無いって。」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・。」
溜息デカいから!
「いやいや・・・東原さ・・・優理はさぁ~・・・。それなら質問変えるけど、どう思ってるの?」
「どうって・・・そりゃ〜・・・。」
夢に向かって一直線に努力している姿は凄いと思うし格好いいとは思う。
話してて楽しいし落ち着くし優しいしいいなぁ〜って思う。
悠馬先輩と話してる姿は子犬みたいで可愛いと思うし、男の子だけで楽しそうにしてる姿も可愛いと思うけど。
「稲穂くんって、優しいし、悠馬先輩と仲も良いし真剣な顔とか格好いいし、努力家だしで結構、人気高いよ?」
「そ、そうなの・・・?」
「そうなのっ!!お近づきになりたいけど、優理が居るからって遠慮してる子かなり居るんだよ?」
「えぇ?!初耳なんだけど?!」
「初めて言ったからね。先輩達とか優理まで話が行かない様に止めてるもん。それで?どうするの?」
「どうするって言われても・・・。」
分かんないよ・・・。
「ならさー稲穂くんが誰かに取られても良いの?今はひがしば・・・優理に向いてる優しさとか気遣いとか他の人に向けられても良いの?」
「それは・・・。」
里香に言われた事を少し考えてみる・・・あの日、入学式の日に話して先輩達とも知り合えて、その中で稲穂くんと沢山話して・・・稲穂くんの事を教えてもらって、私の事も知ってもらって・・・。
その後、中庭で私達に自分の夢を自信を持って話してる姿を見て私も力になりたいって思えて・・・。
「はっきり言うとさ・・・男子からしたら私等女子なんてより取り見取りな訳じゃん?けど、うちら女子は選んでる余裕なんて無いのが実情でしょ?」
「う、うん・・・。」
「逆月先輩達のお陰?で男子も好き勝手にとかしないし女子の事も尊重してくれるし私とかの問題は起こったけど、今は解決してるし校内の雰囲気も割と良いじゃん?そんな中で稲穂くんと優理の仲の事もあるし興味無いなら無いで教えて欲しいかなってね。そしたらアピールしたいって聞いてくる子にも大丈夫だよ?って言えるし。」
「ぇ・・・?待って!待って!それはだめ!!!」
「ん?駄目なんだ?稲穂くんって他の男子と違って、夢に向かって努力してる姿ってかっこいいしさ!他の1年の男子とは一線を画してるんだし、逆月先輩とも仲が良いし普通に人気あるよ?結構な子が狙ってるもん。」
ちょっ・・・聞いて無いし!駄目だから!!稲穂くんは私が!私のだもん!!
「ぁ・・・そっか・・・私とっくに・・・。」
「ん?それでどうなの?何がとっくに?」
「駄目だからね!私よりも先になんて絶対に駄目!」
「へぇ~・・・それは何で?」
「何でって?!先に仲良くなったのは私だもん!私だって!稲穂くんが夢に向かって一直線に努力してる姿が好き!優しい気遣いが好き!集中してる時の顔が好き!話してる時の笑顔が好き!だから!!!だ、だか・・ら・・・っ///」
自分が何を言っているのか理解した私は・・・一気に赤面してしまって・・・。
「へぇ~ほぉ~ふぅ~んぅ~。それでそれでぇ~?」
ニヤニヤと分かってるのに聞いてくるし!!!!
「そうだよ!気付いて無かったよ!!!私の中でこんなに大きな存在になってるなんて!!!好きだよ!稲穂くんが好きだよ!!文句あんの?!」
「無い無い!てかやっと気付いたね。見てたら直ぐ分かるのに本人が自覚無いからどうしようって思ってた。」
うぅぅぅっ///だって・・・自分が異性に好かれるなんて思えないんだもん・・・。
「まぁでも、それなら告白しちゃいなよ!優理ならイケるイケる!!」
「えぇ?!だって・・・稲穂くんは私の事どう思ってるのかとか分からないし・・・。」
「は・・・?本気で言ってるの・・・?」
「・・・え?」
私の言葉に里香は何言ってるのこの人?って顔を向けて呆れてた。
------------------------------------------------------------
SIDE 里香
優理の家からの帰り道、私はまっすぐに帰らずにとある人との待ち合わせ場所に向かっていた。
「こっちだこっち!」
「すいません!お待たせしてっ!逆月先輩!」
そう、今回のやり取りは実は・・・。
「変な事に協力させてごめんな。どうだった?」
「はいっ!上手くいきました!優理にはちゃんと自覚させる事出来ましたよ!そっちはどうでした?」
悠馬先輩のお節介なのだ。
「こっちも焚きつけた。健司もその気になってるから後は上手く行くように俺達で協力するだけだな。来るだろ?夏祭り。」
「はい、勿論行きますよ。優理からも誘いあると思いますし、無ければこちらから言います。」
「うん。それで頼むわ。どんな結果になってもやっと健司も・・・。」
てか、深山威の場合・・・向井から誘いあるんじゃないか?と呟いてるけど・・・そうなったら良いなぁ~・・・。
「さってぇー!後ちょっと付き合ってよ!お礼にご飯くらいおごるから行こう!」
「ええ?!そんな良いですよ!」
「良いから!良いから!ほら行くよ!」
その後、ステイルまで連れて行かれた私はこれからの事を話しながら色々と期待を膨らませていく。
「向井のやつも焚きつけるか・・・?まぁ・・・普通に誘うつもりではあるが・・・。」と言ってくれて居て先輩達と一緒には行くけど、向井くんから誘われたいなぁ~って・・・。
後は、稲穂くんと優理がうまく行くと良いなぁと、先輩達は勿論だけど、稲穂くんも優理も私にとっては恩人だから・・・二人とも幸せになって欲しいなって祈りながらゆっくりと帰るのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます