第218話 後日談
「こらぁ!分量間違えてる!」
「ご、ごめん!東原さんっ!もっと容れた方が美味しいかと思って!」
「もうー!お菓子作りは化学反応なんだからアレンジは基本を覚えてからにしなさい!」
「は、はぃぃぃ!!」
「やれやれ。よーやるわ〜。てか優理ちゃんがきびしぃ〜。」
「あはは・・・ビシバシ教えてくれって言ったのは深山威さんなので・・・。」
「なるほどね〜。それにしても、良かったのか?健司。」
とある放課後、俺は健司達の同好会へと遊びに来てる。
そこには数日前から、参加を始めた深山威里香が優理ちゃんに、怒られながらも頑張ってお菓子作りをして居る姿があった。
「はい。東原さんが連れてきた時は驚いたけど、話を聞いたら流石に・・・。それに、俺も応援してあげたいですし。」
「まー気持ちは俺も分かるけどな。にしても、変われば変わるもんだな。」
「俺も悠馬さんに変えてもらった一人ですから深山威さんの気持ちも分かりますよ。」
深山威の理由は単純な話。
向井に手作りを食べてもらいたいって思いだけで参加を決めたらしい。
何でも、あれからちょくちょく一緒に帰ったり、放課後デートしたり、休みの日にデートしたりと、青春を謳歌してるみたいだ。
クラスメイトに関しては、徐々にではあるが、戻っているらしい。
当然の事ながら男子達は直ぐに折れた、志保にガチで怒られて、軽蔑するとまで冷たい目で言われて折れないやつが居るなら見てみたい。
向井に本気の土下座して慌てさせたらしい。
向井も向井で、自分もそっち側なら、同じ答えになってたと思うからと、直ぐに仲直りしたって話だ、と言ってもまだまだ、前みたいにはなれないらしいが、そこは時間の問題だろう?男同士なんてそんなもんじゃん?
「女子達も、深山威を許して、深山威も許してやり直しか・・・良く出来たな。特につるんでた奴とは完全に仲違いってより絶縁だったろ?」
「あ~・・・何でも泣きながら土下座して来たらしいですよ。」
「まじか・・・。」
「何でも、天音先輩と星川先輩みたいに中学からの同級生らしくて、天音先輩が言った親友は自分の誇りだって言葉で自分の馬鹿さ加減に気付いて・・・らしいです。」
「なるほど・・・ね。そうか・・・志保が愛央を・・・。」
誇りね・・・人間不信になって居た志保を暗闇から救い出した愛央、そんな愛央がイジメの対象になり、そんな愛央を支えた志保・・・共に過ごし共に戦い抜いた・・・。
「そうか。うん、嬉しいなそれは。深山威の友達も志保を見習ってこれから先は深山威を支えられたら良いな。」
「ですね。でもきっと、もう大丈夫ですよ。これからはきっと天音先輩の様に・・・。」
俺と健司は怒られながらも頑張っている深山威と怒りながらも笑顔で教えている優理ちゃんを見ながら静かに過ごしていた。
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「すいません!遅くなりました!」
それから少しして、向井がお菓子研究会に顔を出した。
「おう~、遅かったな。」
「いらっしゃいー向井くん。」
ペコペコと頭下げながら俺達に近寄ってくる向井・・・と言うのもだ・・・。
「何か悪かったな、大袈裟な事になって。」
「いやいや!俺の方こそ本当にすいません。もうほんと!色々!」
向井が家に帰宅して直ぐ、向井のお母さんと姉が発狂したらしい・・・。
大切な一人息子が、学校から帰ってきたら左頬を腫らして治療後付けて帰って来たんだから、当然っちゃ当然。
んで、その後・・・誰にやられた?!っと大騒ぎになり・・・向井を連れて学校に向かって、事情を聞いて、その勢いのまま逆月家にやってきた。
「俺の方も、母さんにガチ説教食らってた所にだったからなぁ~。」
「しかも、家の家族は相手が誰かも気付いて無かったって言う・・・。」
「めっちゃ驚いてたな!息子が怪我した!相手は?!逆月?!知るかぼけぇ!許さねぇ!って勢いだけで来て・・・。」
「俺から仕掛けてたって話も頭から抜けて・・・相手がYouMaで・・・逆月家・・・。」
「冷静になったら大慌てで土下座だったなぁ~。」
「そんな事になったんですか?」
「うん、もう顔真っ青になってたよ、家の母さんと姉さん。」
「そりゃぁ・・・なるだろうねぇ~・・・。」
ほんと、そんな感じだった、母さんも向井のところも「家のバカ息子が本当に申し訳けありません。」、「いえいえ!こちらこそ!バカ息子がとんでもない事をっ!」の繰り返しだった。
「お互いに同じ言葉で謝ってるの見て俺も向井も菜月も・・・何やってんだ?ってなってたしなぁ~。」
思い出して笑いながらそんな事を言う俺に健司も向井も苦笑いしてる。
「そりゃ、俺も思いましたけど・・・。実際、家みたいな一般家庭が大企業の息子に怪我させた何て・・・普通に真っ青になりますって・・・。」
「分からないでも無いけどさー。男同士なんてそんなもんだろぉ~。」
こう言う点は世界が変わっても変わらないんだなぁ~っと本当にしみじみと・・・。
「てか、俺よりも菜月をって方がやばいだろ?実質的な跡取りは菜月なんだしさ。」
俺のそんな言葉に俺等の話を聞いていた深山威が真っ青になった。
「た、確かに・・・。私、本当に何て事を・・・。」
ガクブルしながら真っ青な深山威を見て口滑ったな・・・と・・・。
「いや!ほら!二人は和解してるしな!菜月も気にしてないし!」
「そ、それはそうですけど・・・。」
「もうっ!悠馬先輩も里香を怖がらせないでくださいって!」
「ごめんって。優理ちゃん。深山威もごめんごめんっ。それで?出来たの?」
多少強引でも話をずらす!
「は、はい!あとは焼けるのを待つだけです。」
「そっか!そっか!お疲れ様ー。」
「ありがとうございます。でも、ちゃんと出来るかまだ不安です。」
「大丈夫だよ。分量も間違えて無いし問題無く完成するよ!」
優理ちゃんの言葉で少し安心したのかホッとした顔をしながらもチラチラとオーブンを何度も見てる。
「そんなに見ても完成は早まりません!」
「分かってますけどぉ・・・初めてだから気になるんですー。」
「分かる分かる。俺も悠馬さんのケーキ食べて衝撃受けて、自分でも勉強して作ってみて失敗の連続で・・・初めてちゃんと焼けた時はめっちゃ嬉しかったなぁ〜。何度も何度も様子を見に行ったりもしたしなぁ〜・・・。」
健司がやり始めた頃の事を思い出して懐かしそうな顔をしてるわ。
「そんな昔じゃねーだろ!って突っ込んだ方が良いか?」
「言われたらそうでした・・・まだ一年位何でした・・・。」
うむ、色々な事がありすぎて数年も立ってるような感じになってるが、まだ1年しか経ってない。
「さって・・・深山威のお菓子は持ち帰りになるだろうし、俺も久々に何か作るかな~?適当に使っていいか?」
「はい!勿論です!手伝いますか?悠馬さん。」
「良いから座って待っとけ。簡単なのだけどサクッと作るさー、小腹も空いたしな~。」
えっと・・・生クリームはあるしバターも蜂蜜もあるし・・・。
「小麦粉、卵、牛乳に砂糖もあるっと・・・。」
んじゃ簡単にホットケーキで良いかぁ~・・・。
俺はササっとハンドミキサーでメレンゲも作って小麦粉もふるいにかけて、牛乳と卵といれて混ぜ混ぜ・・・メレンゲもくわえてフライパンでじっくり焼いていく。
「ほいっと!完成~。小腹空いた分にはちょうどいいっしょ。」
俺の作ったホットケーキオンザホイップクリームを皆の前に並べると優理ちゃんも深山威も向井もついでに・・・健司もポカーンっとしてる。
「どうした?ポカーンっとして。」
「いえ・・・小麦粉でホットケーキって作れるんだなぁ~って・・・。」
「はい・・・出来るんだ?!ってなってます。」
「ホットケーキミックスの意味・・・。」
「俺も知らなかった・・・。流石、悠馬さん・・・。」
「お前ら・・・良いから食ってみろ。」
「「美味しいー!」」、「「うまぁ・・・。」」と、4人とも感動してるし・・・。
「健司は勉強不足だなっ!まぁ、がんばれっ!」
「うっす・・・。」
「ふふっ。悠馬先輩!後でコツ教えてくださいね!」
「はいよーっ。健司にでも作ってやれ。深山威は向井にでも作ってやれ。」
「は、はいっ///」
やれやれ・・・何にしても向井の頑張りが少しずつ報われてるのは良かった・・・。
これから先はどうなるかは分からないけどこの二人には頑張ってほしいし報われて欲しいものだ。
俺も少しの間だけでも二人と居る様にして許していると回りに見せるかね・・・。
それと・・・健司と優理ちゃんも・・・、そろそろ先に進んでも良いと思うんだけどなぁ~・・・健司はどうするつもりなんだか・・・。
そんな事を考えながら俺の作った物を美味そうに食べている後輩たちを見続けていた。
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SIDE 渚
お菓子研究会での時間を過ごした後、俺と深山威は一緒に帰宅していた。
あの一件以来、こうやって毎日一緒に帰っているのと、先輩達や、菜月さんを筆頭に1年の有名人組が俺達に絡んでくれるのもあって、クラスの男子とも少しずつ関係も戻って来てるし、深山威の方も仲直り?っぽい事にはなって、少しずつではあるけど、良い感じに戻って来ているみたいだし、いつもつるんで居た友達も天音先輩の言葉を聞いて、改心?したらしく泣きながら謝って来たらしいしな・・・。
「あのねっ!向井くんっ。」
「お?どうしたの?」
「これ・・・。」
深山威の手にはさっき完成したお菓子が入った包みがあって、それを俺に向けてた。
「えっと・・・?」
どんどん赤くなって行く深山威の顔を見て俺もさすがに理解・・・。
「貰って良いの?」
「う、うんっ///美味しくないかもだけど・・・良かったらっ///」
「あ・・・ありがとうっ!凄い嬉しい!」
「もうっ///大げさだよ・・・///」
「だって!嬉しいから!あ・・・そういやなんだけど、何でお菓子研究会に入ったんだ?実は疑問だったんだ。」
俺はこの際だと思って疑問だった事を聞いてみた。
「えっと・・・私さ。何にも出来ないんだよねぇ・・・。料理も苦手だしお菓子作り何てもっての他だしさ。」
「だったら・・・何で?」
「それはぁ・・・その・・・///向井くんに私の作った物を食べて欲しいって思ったから・・・///そのっ!ほらっ!好きな人に食べて貰いたいって思って・・・///」
「そ、そっかっ///でも、何で急に・・・?」
「実はね・・・天音先輩に少し相談したんだ。」
天音先輩に・・・?あれの後で・・・?勇気ありすぎね?
「先輩達のお陰でこうやって過ごせるようになったけど、向井くんに少しでも何かしてあげたいって思ったんだけど、さっき言った様に私は何も出来ないから、それを天音先輩に相談したら・・・手作りの料理やお菓子等から始めたらよろしいのでは?って言って貰えて・・・。それなら出来るかもって思ったから直ぐに東原さんに頭下げに行って・・・。」
そっか・・・そっかぁ~・・・やばい・・・めっちゃ嬉しい・・・。
「俺の為か・・・すげー嬉しい。ありがとう!」
「うぅぅぅ///と、兎に角!そういう訳ですぅ!///」
これ以上は赤くならないだろうって位、真っ赤になった深山威は照れ隠しなのかスタスタと歩いて行ってしまう。
「ちょっ!早い!早い!待ってってば深山威!折角だし、何処かで飲み物でも買って一緒に食べようよ!な?」
「向井くん!本当にありがとうねっ!私、これからもっと頑張るから見ててね!大好きっ!」
俺の言葉に反応して俺の方に向き直った深山威は夕日を背にして俺にそんな事を言ってくる。
まだ俺には答えは出せないけど絶対に見つけるから!だから・・・もう少しだけ待ってて欲しい。
そして・・・俺の方こそ・・・好きになってくれてありがとうっ!
心の中でそう言いながら俺は先を歩く深山威に追いついて隣に立って、一緒に歩いて笑顔の深山威を見つめ続けたのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
これにて、向井渚と深山威里香のお話はお終いになります。
深山威里香の救済話として、あえて二人を恋人にはせずにこれから頑張って行くという形にさせていただきました。
里香は向井渚に純粋な思いをぶつけて好きになって貰う為に努力をしていく、向井渚はそんな、里香を見て自分の気持ちは考えていくと言う形で終わらせました。
賛否はあると思いますが、こう言うのも青春の一幕だと思いまして・・・。
それでは、次の話でお会いしましょう!
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