第214話 俺に何が出来るんだろう?
SIDE 里香
カラカラカラ・・・。
「おはよう・・・。」
私が教室の扉を開けて中に入ると一度シーンっと静かになる・・・これが既に2か月、2か月前、私はこの学校の先輩でもあり学園アイドルでもある逆月悠馬先輩の妹である菜月さんに嫌がらせをして、怒らせた・・・。
結果、お昼の休憩を使っての公開処刑・・・、それ以来、私と話す人も居なくなり学校に来ても一日、一人で過ごしている。
私は静かに自分の机に座って、今日の授業の予習を始める、それ以外にする事が無い、あとはスマホを触ってるとかその程度である。
逆月先輩から言われた罰は、正に生き地獄だ・・・、表立ってのイジメや嫌がらせは無いけど、それでも学校と言う空間で居ない者として扱われるのは本当に堪える、これなら徹底的に嫌がらせを受けていた方がマシなのでは?とすら思ってしまう。
「別に、辞めるのを禁止はされて居ないけど・・・。」
だとしても、辞める気が起きない。
理由は、たった一つ・・・私の思い人でもある向井渚くんが居るから・・・、もう二度と私の思いが届く事は無いと分かってるけど、せめて近くで見ていたい、彼に恋人が出来ても・・・、せめて在学中くらいは・・・。
それだけは許してください・・・。そんな事を毎日、考えて過ごしている。
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SIDE 渚
今日もちゃんと深山威は登校して来た。
あれ以来、クラスでは居ない者として扱われてる・・・最初はイジメや嫌がらせに発展しかけたのも事実。
だけど、直ぐに皆が気付いた、同レベルになってしまうと言う事に。
だからと言って、不満なんかが無くなった訳じゃないし、絡む事で、逆月先輩を始めとした先輩達や他の生徒達に睨まれたくは無いと・・・。
その結果が、居ない者扱いに落ち着いた・・・。
「でも・・・これは何か違う気がする・・・。」
深山威もここ2か月ですっかりと
「渚!飯いこうぜー!」
「あ、うん。学食?」
「だな!もうちょっとで全メニュー制覇だし達成してやる!」
「もっと違う事に意識向けろっての・・・。」
クラスの男子達と固まって学食に俺は向かう。
チラっと深山威の方を見ると既に姿は無くて・・・いつも何処で食べてるんだろう?と気になっていた。
「なぁ・・・深山威っていつも何処で飯食べてるんだろ?」
「は?どうでもいいよ。」
「だな。つーか幾ら罰だとしても良く通学できるわほんと。」
学食でそんな事を話しながら俺達は昼を食べていたけど本当に何で辞めないんだろう?確か辞めるのを禁止はされて無かったよな。
「渚も余計な事気にして先輩たちに睨まれるような事すんなよ?逆月先輩を怒らせるとマジでえぐいもん。」
「ほんと思ったわそれ。深山威の時はあいつに対する怒りが先に来てたけど後々考えたら、ほんとエッぐい。」
「分かってるよ。でも・・・正直さ、あんな公開処刑にする必要あったのかな?って思うんだ。」
「それだけマジギレしたって事だろ・・・。」
いやまぁそうなんだろうけど・・・だとしてもさ・・・。あのやり方に疑問を持った俺はどうしても疑念が晴れなかった。
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~放課後~
キーンコーンカーンコーン
今日も一日が終わった、深山威は直ぐに鞄を持って教室から出て行った。
俺はそれを目で追っていると友人が話しかけてきた。
「おーい、渚!帰ろうぜ!」
「あ~・・・ごめん、俺はちょっと用事あるから今日は先に帰っててくれ。」
「用事?待とうか?」
「いや、どれだけかかるか分からないし先に帰ってていいよ。遅くなるなら迎え呼ぶしさ。」
そっか・・・それじゃ、また明日なー!っと友人達は帰って行ったのを俺は見送った後に教室を後にしてとある場所に向かった。
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SIDE 里香
はぁ・・・今日も何とか終わったけど向井くんが何度かこっちを見てくれていたなぁ~・・・。
ここ最近は良く私を見てくれてるのは流石に気付いてたし何かを言いたそうにしてるのは分かってたけど私から話しかける訳にはいかないから、結果的に無視する形になってる。
「ほんと、最悪じゃん私・・・。めっちゃ自己嫌悪・・・。」
それもこれも自分の浅はかな行動の結果だから当然の結果だし仕方ないんだけど・・・。
「それでもきっついなぁ~・・・。」
ほんと、もうやだ・・・そんな事を思いながら私は屋上の柵から下校する生徒、部活動をしてる生徒を眺めてた。
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~とある部室~
コンコンっと扉をノックすると直ぐに中からどうぞ~っと返答があって俺はそれを聞いて扉を開けて中に入る。
「お邪魔します。えっと・・・稲穂くん居るかな?」
「あれ?向井くん?どうしたの?」
今日はどうやら稲穂くんだけらしく一人で作業をしてたけど、俺が来た事で手を止めてくれた。
「いきなりごめん・・・こんな事言うのもおかしいって分かってるんだけど、少し相談に乗って貰えないかな?」
「相談・・・それって、深山威さんの事?」
流石、逆月先輩を目指しているだけあってこういう事は直ぐに察してくれたらしく俺は頷いて返答を待った。
「俺に何が出来るか分からないけど、まぁ良いよ。それでどうしたの?」
「ありがとう!えっとさ・・・見てられないんだ、深山威の事・・・。」
「深山威さんか・・・先に言っておくけど、俺は悠馬さん側だからね?」
「うん、それは分かってるんだけど・・・。そのさ、俺に何か出来る事あるのかな?って思ってんだ、最近。」
「てか、何をしたいの?」
俺は何をしたいんだろう・・・、どうしたいんだろう・・・?
「はぁ・・・決まって無いんじゃん・・・。そりゃ、確かに今の深山威さんの状況は良くないとは俺も思うけどさー。」
「だよな!!だからさ!だから・・・。」
俺は言葉が続かなくて顔を下げてしまう・・・。
「顔を上げろ!堂々としろ!」
「えぇぇ?!いきなり何?」
いきなり稲穂から強い言葉が飛び出て来て俺は困惑する。
「今のさ、俺が部活立ち上げる時に悠馬さんに相談したんだけど話してる内に恥ずかしくなって来て下を向いた時に言われたんだ。」
それが、どうしたんだろう?
「顔上げろ。立ち上げるって事は部長になんだから、堂々としとけ。諦めたくないなら胸張って顔上げろ。馬鹿にされようが否定されようが好きな事は好きな事なんだから、文句あんのか?!って堂々としとけってさ。」
それは何て言うかあの人らしいと言うか・・・。
「向井くんが深山威さんを好きかは別にして、何かをしてあげたい、今の状態をどうにかしたいって気持ちが間違いじゃ無いって思ってるなら、俺が言った事も間違えて無いんじゃない?」
確かに・・・稲穂くんの言う通りだと思う。
でも、何が出来るんだろう・・・?
「あのさ、稲穂くん。」
俺は悠馬先輩に繋いで欲しいと思って稲穂くんに話し掛けるけど・・・。
「無理ってか、嫌かな。」
「え?まだ何も言ってないんだけど・・・。」
「繋いで欲しいってんでしょ?それは、無理かな。最初にも言ったけど基本的に俺は悠馬さん側だから、別に向井くんと何かある訳じゃ無いのは分かってるけど、この程度すら出来ないんじゃ話にならないと思うよ?」
あぁ、確かにそれもそうか・・・。
でも、こう何となく話しかけづらいんだよなぁ〜・・・。
「う、うん。何とかしてみるよ。相談乗ってくれてありがとう。」
「んーん。頑張って!応援だけしか出来ないけど・・・。」
「おう!考えてやってみる!」
俺は気合いを入れ直して稲穂くんの部活の部室から出て行く、先ずは考えを纏める為にも屋上で風に当たろうかな・・・。
………………………………………………………
SIDE 健司
「お疲れ、稲穂くんっ。」
奥の部屋から東原さんを筆頭に、翼、陸、水夏がこっちに来た。
向井くんが来た時点で、皆にメッセージを送って待機してもらっていた。
「それにしても、健司に相談が来るとはな〜。ちょっと意外かな。」
「まーね。持ち掛けられた俺が一番、疑問持ったよ。」
「でも、悠馬先輩に繫いでもらいたいって思ったら一番の近道じゃないかな?」
「それはそうなんだけどねぇ〜・・・。理由がね。」
「確かに・・・。流石に私達でも難しいよ。今回のはさ。」
「だな。でも、向井の頑張り、報われると良いな・・・。」
そうだね・・・それはここに居る人達の共通の思いだった。
…………………………………………………………
〜屋上〜
ガチャ・・・ギィーと屋上の扉を開いて屋上に出た。
そこには既に帰ったとばかり思っていた深山威が居て、夕日に照らされた姿は神秘的で綺麗だった。
「・・・っ!」
俺に気付いた深山威は直ぐに屋上から去ろうとする。
俺はそんな深山威に反射的に声をかけてしまう。
「深山威!」
俺の呼び掛けに早足だった足は止まり・・・。
「何・・・?」
ただ、それだけを聞いてきた。
「ぁ・・・えっと・・・その・・・。」
駄目だ、何も出てこない・・・勢いだけで話し掛けてるんだから当たり前だ・・・。
「その、ごめん。何でも無いや・・・。」
「そっか・・・、うん。それじゃ・・・さよなら。」
そう言って深山威は、屋上を後にする。
でも・・・さよならは違うだろ!?
「深山威!!また明日な!!」
俺の言葉には答えないでそのまま屋上を後にするけど扉が閉まる瞬間。
「ありがと・・・。」
そう、口が動いた気がしたんだ。
「どうすれば良いのか分からないけど、それでもやっぱり・・・今の状態は間違えてる!!」
絶対に変えてやる!どうすれば良いか分からないけど・・・それでも!!
先ずは男子に相談かな、深山威の事だから聞いてもらえないかも知れないけど、何度だって聞いてくれるまで話してやる!
「待ってろよ、深山威。」
俺は放課後の屋上で深山威の消えていった扉を見ながらそう決めた。
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後日談と言いますか救済ストーリー開始になります。
全て完成してから一気に全部出そうかとも思いましたが文字数も多くなりますので出来たところからあげさせていただきます。
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