第213話 3人娘(門倉千里)
「さぁ!行くわよ!悠ちゃん!菜月ちゃん!」
「「いや、何処に?」」
とある、休日、俺と菜月は揃って母さんに突っ込む。
いきなり行くわよ!って言われても困る。
「良いところ!!」
「どこだよ・・・てか、愛央達と約束してんだけど?」
「勿論!連れて行くわ!」
はぁ・・・これは聞かないやつだな〜・・・。まぁ良いけどさ。
俺はスマホを取り出して恋人グループに連絡をする「どこに行くか分からないけど母さんが付き合って欲しいみたい。皆にも。」と送ると分からないけど分かった〜、もうすぐ着きます、葵さんはどこに・・・?と返事が帰ってきた。
「3人とも大丈夫だってさー、どこに?ってなってるけど。」
「分からないですけど義姉さん達も良いなら良いですよ。」
「やったぁー!それじゃ戸締まりして出かける準備!!」
いや、だからさ・・・何処行くの?マジで・・・。
………………………………………………………
〜とある酒造〜
母さんの運転する車(愛央達とも出かけるからと少し前にワゴン買った。)に俺達は乗り込んで「着いてからのお楽しみ!」と言う母さんに呆れながらも車に揺られて俺達は移動してる。
「よぉーしっ!着いた!ささっ!降りて降りて!」
「はいはい・・・。えっと?酒屋さん?」
「酒屋さんですね・・・と言うよりは酒造?」
「酒造だね。え?うち等来ていいの?」
「葵さん?未成年を連れてくる場所じゃないのでは?」
「ママ・・・何で連れてきたの?」
俺達、未成年組は当然の疑問を母さんに投げかける。
「え?別にお酒飲むわけじゃ無いし良いでしょ?別に未成年立ち入り禁止では無いんだし。」
いやまぁ、お酒以外のも勿論売ってるんだろうし見学が悪い訳では無いだろうし、そもそも保護者同伴だしな。
「ぇぇぇ、良いのかな〜?」
菜月の困惑顔を眺めていると中から店員さんが出てくる。
「これはこれは葵様!ご来店ありがとうございます。」
「あらあらっ!千春さん!わざわざ出迎えて頂かなくてもっ。」
「母さん、知り合いなの?」
俺の質問に母さんは嬉々として答える。
「うんっ!会社のね、お歳暮とかにここのお酒を包んだりもあってお得意様なの。それに私も好きなのよ、ここのお酒。」
「ありがとうございます。そちらはご子息とご息女ですか?」
「そうですよ、息子の悠馬と、娘の菜月です。それと将来の義娘の愛央と、志保、清華です。」
母さんの紹介に俺達は揃って頭を下げて挨拶。
「はて・・・何処かで聞いた覚えのあるお名前ですけど・・・。」
「兄さんはともかく私達もですか?」
「えぇ、ご子息はYouMaですよね?」
「そうですよ。俺の事は分かりますけど・・・?」
はてな?と頭を悩ませていた千春さんは、あっ!と何かに気付いた様で・・・。
「そうです!娘から良く聞く名前なんです!」
「娘さん?菜月や愛央も志保も清華も知ってるんですか?」
「はい!何と言っても皆さんの後輩に「お母さん、ここに居たんだ。あの商品なんだけどさー・・・って・・・ええ?!」・・・あら?千里も来たのね。」
「「「「「千里ちゃん?!」」」」」
俺達の後輩、菜月のクラスメイトの門倉千里がそこに居た。
…………………………………………………………
「何で先輩達と菜月が?」
「ママに連れられてね・・・そ言えば家は昔から続く酒造って言ってたね。」
「う、うん。菜月には言ったねそ言えば。」
あの後、母さんと千春さんは話があると言う事で二人で離れて行って俺達の事は千里ちゃんにぶん投げた。
「名前聞いてなかったからな、思いつかなかったわ。着いてのお楽しみとしか言われて無いしさ。」
「だったねぇ〜。驚かせようとしたんだろうけど、千里ちゃんまで驚いてるじゃん。」
俺達は奥に通され酒蒸し饅頭を食べながら淹れてくれたお茶を飲みながら時間を過ごしていた。
お酒だけじゃ無くお酒を飲む為のグラス、肴、お酒を使ったお菓子等も一緒に販売してるらしい、後はレストラン?ファミレス?喫茶店?みたいなのも敷地内でやってるみたいだ。
「あ、そうだ。悠馬先輩!ありがとうござました!」
「うん?何のお礼?」
「柚美の事です。」
「あぁ・・・別にお礼を言われる事はしてないんだけどなぁ~・・・。」
単純に思った事を好き勝手に言っただけだしな~・・・。
「何かあったんですか?悠馬さん。」
「ん-・・・本人の許可無く話す事じゃ無いから詳しくは言えないけど・・・。」
「あれですよ、天音先輩。悠馬先輩の言葉で柚美の迷いが消えたんです。あの子、稲穂くんと知り合ってからずっと自分の進路で悩んでいたんですけど、この間、悠馬先輩のお話で自分の進む道は好きに選んで良いんだって気付いたんです。」
言っちゃったよ・・・。あとで怒られても知らないよ?
「どう言う事?柚美ちゃんは何か悩んでたの?」
愛央と清華は頭にはてなマークで浮かんでるのが良く分かるけどこの二人は特に家柄的なものが無いからな。
「あぁ・・・そう言う・・・。ですが、柚美さんの家も特殊なんですか?」
流石に志保は分かったみたいだね。
「茶道の家元だよ。立花家はこの街の茶道の家元らしい。」
「なるほど・・・それならば確かに分かる気がしますね・・・とは言え私とは覚悟も責任の重さも違いますから完全には分かりませんけど・・・。」
志保の家も喫茶店をやって居るからな~・・・高校生にもなるとそう言うのも考えないと行けなくなるからな。
「天音先輩は決めてるんですか?」
「そうですね。私は継ぎますよ?」
あれま・・・もう決めてるのか志保。
「志保さんは決めてるんだねっ。」
愛央も聞いた事無かったのか関心しながら聞いてる。
「何と言いますか・・・私も去年までは考えていませんでした。」
「それなのに今年になって決めたの?」
清華が不思議そうに聞いてる。
「今年と言いますか、去年一年を過ごしてですね。」
「それって俺の影響?」
「はいっ。悠馬さんと知り合い、恋人になり、沢山の事を経験して沢山の時間を過ごして・・・私の淹れたコーヒーを、作った料理、お菓子を美味しそうに食べて、笑顔になって下さる悠馬さんを見て・・・いらしたお客さんの嬉しそうな顔を見て思ったんです。」
「何をですか?志保義姉さん。」
「私は私の作った物で笑顔になる皆さんを悠馬さんを見るのが好きなんだと。だから、喫茶店を継ぎ・・・そのっ///悠馬さんのお嫁さんになっても///」
うっ・・・顔真っ赤じゃねーか・・・言われたら俺だってなるわっ///
「続けて行きたいな~って・・・///」
「志保さん・・・恥ずかしい事言ってるって分かってるぅ~?」
愛央がニヤニヤと・・・清華も言葉にはしないけどニヤニヤと・・・っ。
「志保義姉さんはそこまで考えてるんですねぇ~?」
菜月もニヤニヤと・・・。
「いっ・・・良いじゃないですかっ///可愛いお嫁さんだって夢なんですからっ///」
期待した顔でこっち見るなっ///俺だって分かってるってのっ///
「その・・なんだ・・・志保の気持ちも考えも良く分かったよっ。今はまだ適当な事は言いたくは無いからはっきりとは言えないけど・・・。」
俺の言葉に志保も愛央も清華も期待した顔で俺を見てくる。
「しっかりと考えてるからさ。俺達4人の将来もさ。」
「はーいっ。期待してまーすっ。」、「良い事、聞いちゃったしぃ言ってないはもう通用しないからねぇ~?」、「ふふっ。二人とも悠馬さんをイジメてはだめですよ?」と楽しそうに話してやがるし・・・別に良いけどさ。
「取り合えずですけど・・・私にも少しは分かると言う事です。」
「うぅっ///見てるこっちの方が恥ずかしいですっ///」
「いっつもなんですよ?私の気持ちわかってくれました?千里。」
菜月は菜月で何か言ってるしさぁ~・・・。
「兎に角・・・私も柚美と同じですからね。その話を聞いて私も同じだなって思ったんです。だから、そう言う意味も込みでありがとうございます。」
茶道の家元の立花家、酒造の門倉家かぁ~・・・。
「何て言うか・・・凄い家の子達と仲良くなったもんだなぁ~っと・・・しみじみ・・・。」
「悠馬先輩がそれ言いますか?」
千里ちゃんは呆れ気味にそんな事言ってくるけど俺がどうのっての無いから特になんだよなぁ~。
「俺は気楽なもんだからな~。母さんが政略結婚推奨ってんならともかく・・・。」
「ですね、私には関係ありますけど、ママは無理に継がなくて良いと言ってますし実はそこまで重荷には感じてません。」
「そっかぁ~。私もだけど、柚美も菜月も将来の保険があるのは良い事だよね?」
「あぁ、そこだけは間違いないな。」
「てか・・・肩身狭いんだけど、私達・・・。私もだけど志保さんも清華さんも一般家庭じゃん。」
「た、確かにそうですね・・・。だからと言って・・・。」
「悠馬くんを好きな気持ちに嘘は付かないし付きたくない。」
「あぁ、俺も3人を手放す気は無い。これからも一緒だ。」
そう、仮に許されないなら俺は家だって捨ててやる。
「仮にそんな事になったら私だって味方します!」
ふんすっと菜月が握りこぶしを作りながらそんな事言ってくる。
「勝手に、私を嫌な姑にしないでっ!愛央ちゃん達3人はもう私にとっても娘みたいなものなんだから!」
おっと・・・流石に母さんも突っ込んできた。
「ママっ!いつから?」
「ついさっきよ・・・。全く・・・勝手に嫌な姑にしないの!」
「ははっ。そっちの用事は終わったの?母さん。」
「うんっ!良いもの買わせて貰ったから大満足っ!」
「さいですか・・・。飲みすぎないでよ?母さんに倒れられたら困るんだからさっ。」
「悠ちゃ~~~んっ!」
がばっと感極まった顔で俺に抱き着いてくるし!
「あぁ~・・・はいはいっ。健康で居てくれよ?母さん。」
「あ゛り゛がどう゛ぅぅぅぅぅ。」
泣くし・・・全く・・・・。
「あははは・・・っ。葵さんもその辺で・・・。」
ぐぅぅ~・・・と誰かの腹が鳴った・・・。
「小腹すいたな・・・確か飲食出来るところもあるんだよね?千里ちゃん。」
俺も千里ちゃんも腹が鳴った方はあくまでも見ない。顔真っ赤にしてるけど、見てない、気付いてない。
そういや・・・食ってるの俺等だけで愛央は食べて無かったな・・・饅頭。
「ありますよっ。せっかくですし、軽くでも食べていきますか?」
「それなら!私がご馳走するから皆で行きましょー!」
気付いてるじゃんっ///突っ込んでくれないのはそれはそれで・・・っ///と言ってる愛央はとりあえずスルーして俺達は千里ちゃんの案内の元歩いていく。
皆、好きに食べたい物を頼んで食事して・・・他のお客さんから声をかけられて・・・記念写真を撮ったりしながらその日は楽しんだ。
「まぁ・・・こんな休日もありか・・・。」
「どうしたんですか?兄さん。」
「何でもないよ。これ、持ってってくれ。」
不思議そうな顔をしてる菜月を撫でて、作った肴を渡して・・・。
と言うのも夕方に家に戻った後、早速お酒を楽しみ始めた母さんの肴を作りながら・・・
「まぁ、でも・・・いつもありがとうね、母さん。」
俺は沢山の感謝を込めてそう呟いたのだった。
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