第211話 3人娘(小河原涼)

「パパー!」


「お?涼?」


「おかえりなさいっ!!」


私はゲートから出てきたパパに飛びつき全身でパパを迎え入れる。


「おかえりなさい、尚也なおやさん。お疲れ様です。」


「あぁ。ただいま、宏美ひろみ。」


「私は~?」


「ふふっ。ただいま、涼。さぁ、帰ろうか。」


私とママ、そして・・・大好きなパパの3人でママの運転する車に乗り私たちは空港を後にした。


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~1-A教室~


「あれ?パパさん帰ってきてるの?」


「ええ!昨日だけどね、海外勤務が終わって帰って来たの。」


「ほぇ~・・・よく無事だったね?」


「本当に・・・もう毎日の電話が待ち遠しくて・・・。」


「相変わらず涼はパパさん大好きだよねぇ~・・・。」


「何よ?悪い?」


「別に悪くないって!良い事だと思うよ!」


今日は進学してからも数少ない3人でのお昼休憩の食事。

菜月は悠馬先輩と星川先輩達のところ、稲穂くんはA組の男子とB組の男子、東原さんと仲の良い女子達と一緒にご飯。

稲穂くんと東原さんの仲も傍から見ている分にはうまく進んでると思う。


そんな訳で今日は珍しく3人娘と揶揄される私達3人でのご飯である。


「ほぇ〜、小河原さんってお父さんが居るんだ?」


クラスの子が私に疑問を投げかけてきた。


「はい!表に出て私達、家族の為に頑張ってくれて居て、とても尊敬しています。」


「どんな仕事してるの?」


「外交官ですよ。昨日まで海外に行ってまして帰ってきたばかりなんです。」


「そっかー!外交官なんて凄いね!」


「はい!自慢の父です!」


私は笑顔でそう返事してクラスの子も一緒になってお昼の時間は過ぎていった。


………………………………………………………

「ただいま。」


学校が終わって直ぐに帰宅した私はリビングに向かう。


「おかえりなさい、涼ちゃん。」


「ただいま、ママ。パパは?」


「書斎に居るわ。」


「はーい。ただいまを言ってきます。」


私はパパの書斎に向かい扉をノックする。コンコンっと音に直ぐに反応したパパから「どうぞー。」と声がかかって私は扉を開けてパパの書斎に入った。


「ただいま、パパっ。何してるの?」


「おかえり、涼。これを見ていたんだ。」


パパのPCの画面に映っていたのは悠馬先輩の配信のアーカイブ。


「職場の方に報告に行ったんだけどな、その時に職場の子が教えてくれてね?見ていたんだ。涼の一つ上の男の子なんだね~・・・。」


「うん!YouMa様って言われて去年から騒がれてる!それに!先輩なの!」


「先輩?もしかして清蘭の?」


「そうだよ!去年の学校説明会で運よく私と柚美と千里は知り合えて仲良くさせて貰ってるのっ!」


「なんとまぁ・・・。それは教えてくれた子が羨ましがるだろうなぁ~・・・。もしかして、涼は・・・既にお付き合いしてるとか?」


パパは私にそんな事を言ってくる。その顔は心配気な顔と・・・何か・・・微妙そうな?顔をして居るのが分かった。


「お付き合い出来れば良いんだけど・・・先輩はもう恋人が3人居て・・・。」


「そ、そうなのか?既に3人も・・・。」


「調べれば出てくると思うけど、去年一年で沢山の事があって学校に通う生徒の憧れの的なの。3女神何て言われてるんだよ?」


3女神・・・パパは私の言葉に従ってYouMa 恋人と検索して出てきた結果を見て感心したかの様な顔で頷いていた。


「成る程。確かにこの可愛さ、綺麗さなら言われるだろうね。ましてや、これだけの事があってこんなに沢山の事があっても離れずに全員で乗り越えているならそうなるだろうねぇ。」


「凄いラブラブで誰も間には入れないって感じなの。」


そう、悠馬先輩と3人の先輩達の間にはあの人達を知れば知るほど、入り込むのは無理だとわかる。

でも、先輩の事を諦めたくは無いから今はゆっくりとでも仲良くなれたら良いと柚美と千里とも話していた。


「そっか。娘を取られると思うと良い気はしないが・・・頑張ってほしいとも思うな・・・。悠馬くんと言うのかい?」


「そうっ。逆月悠馬先輩。学校の内外にファンクラブもあるくらい大人気!」


「そうか。随分、慕ってるみたいだね。会ってみたいなぁ~・・・。」


「校内で嫌いな人は居ないよ?まぁ・・・怒ると物凄く怖いけど・・・。普段はとても穏やかで優しくて気も効いて頼りがいもあって、でも計算してるとかじゃなく素でやってるから後輩は男女問わず頼りにしてるかな。パパにも会って欲しいけど・・・どうかな?結構、忙しくしてる人だから、会いに行った方が早いかも?」


「ふむ・・・会いにかぁ~・・・ステイルと言う喫茶店に行けば会えるかな?」


「うん!明日にでも先輩に話しておくから、大丈夫だと思うっ!」


「それじゃー、週末に3人で行こうか。」


やったぁ!私は直ぐにママの所に走って行き、今週末はステイルで食事をすると言う事になったのをテンション高めで話すのだった。


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「パパさん?涼ちゃんの?」


「はい!この間、海外勤務から帰って来まして、職場の女性から悠馬先輩の事を聞いて興味を持って昨日、話したんですけど会ってみたいと言っていまして・・・。」


「成る程?会うのは良いけど・・・お父さんが居たんだね・・・涼ちゃん。」


「あ、はいっ!自慢の父です!」


「涼はファザコンだからねぇ〜。パパ!パパ!っていつも言ってるしぃー。」


「ちょっ?!ここでそれを言わないでよ!千里!」


「否定はしないんだね・・・涼ちゃん・・・。」


「うぅっ///良いじゃない・・・パパが自慢のパパなのは本当の事だし・・・///」


顔を赤くしている涼ちゃんと、そんな涼ちゃんをイタズラっぽい顔をしながら見ている柚美ちゃんと千里ちゃんを微笑ましく俺は見ていた。


「それじゃ〜、今週末はステイルに入るかな?大丈夫だよね?志保。」


「はい、勿論ですよ。母も喜びます。」


「じゃー私も良い?」


「私も!」


「お願いします。悠馬さんが入るなら手が足りなくなるでしょうから、助かります。」


「それじゃ、有希華さんに伝えておいてくれ、志保。涼ちゃん、待ってるからね。」


「はい!ありがとうございます!パパに伝えておきます!」


そんな大袈裟にしなくても良いと思うんだけどなぁ〜。まぁ、でも楽しみかな?世界を相手に活躍しているみたいだしね。

色々と学ばせて貰おうっと!!


…………………………………………………………

SIDE 涼


待ちに待った週末、私とパパとママの3人はお昼ご飯をステイルで食べる為に入店した。

とは言え、まだまだ忙しいタイミングなのは変わらずで先ずは普通に食事を取ることになった。


「はい!ご注文の品は揃いましたか?」


「大丈夫です、忙しいのにすいません。」


「良いよ良いよ!来てくれてありがとね!それと、初めまして、逆月悠馬です。涼さんには、菜月共々世話になってます。」


「ご丁寧にありがとう。父の尚也です。」


「母の宏美です。いつも涼と仲良くしてくれてありがとうございます。」


「いえ、こちらこそです。先ずはごゆっくりどうぞ。後でお邪魔させていただきます。」


そう言って悠馬先輩は離れて行った。


「礼儀正しい子だな。それに、宏美を見下した感等も無いし、言われている事に嘘は無いのか・・・。」


「そうね、多少大袈裟に言われていると思ってたけど、言われている以上に礼儀のしっかりしてる子みたいね。」


「もうっ。だから言ったでしょ?凄い尊敬できる人だって。文武両道で、入試も首席、昨年も常に学年トップで、驕ることも無いんだから。」


「分かった分かった。まぁ、でも確かに清蘭の入試の最高得点が大幅に更新されているのは分かっているし、それだけでも凄い事だよ。ふむ・・・逆月悠馬くんか・・・。」


運ばれてきた食事を食べながら、悠馬先輩の事を目で追っていると、動きに無駄が無いのが分かる。

それだけじゃ無く、お客さんに話し掛けられても嫌な顔もせずに対応して、笑顔を向けてる。


「あんなに話し掛けられてるのに動きに無駄が無いのね。器用と言うか何と言うか・・・仕事の邪魔するなって怒りもしないのね。」


「このくらいなら怒ったりしないわよ、先輩は。怒るのは、家族や友達、恋人に悪意が向いた時だもん。」


「それって自分の事は我慢しちゃうって事でしょ?そこは心配ね。」


あぁ、確かにそう言う部分はあるかもしれない・・・そう考えると色々抱え込んでるのでは?と心配になってしまう。

そんな事を先輩の動きを追いながら思った。


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SIDE 尚也


「お待たせしてすいません。中々、落ち着かなくて・・・。」


「いや、気にしないでくれ。それより、忙しいのに時間を作ってくれて感謝する。」


それにしても・・・この子は異常の塊だな・・・。

とてもじゃないが高校生には見えない、なぜそう思うのかと言えば自分とは違いすぎる。

自分がこの歳の時はこんなでは無かったからだ。


「ところで、尚也さんって外交官なんですよね?」


「うん、そうだよ。興味があるのかい?」


「興味が無いと言えば噓になりますけど、凄いなって思って。こんなで日本を飛び出して海外で活躍してるなんてそれだけで尊敬します。」


こんなね・・・。おかしな言い方だと思うのは私がおかしいのか?


「そうだね・・・宏美や涼には常に心配をかけていると思うが、私みたいな特に才能の無い人間が大切な妻と子供の為に頑張れると思えば、離れているのは寂しいが苦では無いよ?それに海外の人と話すのも関わるのもとても楽しいし、自分も成長できるからね。」


「成る程・・・。海外の文化や生活とかも学べますしね。俺には無理だと思いますけど、国の為に第一線で活躍してるのは本当に凄いです。同じ男としてもとても尊敬します。涼ちゃんが、自慢のパパだと言う意味が良く分かりました。」


自慢のパパか・・・娘にそう思って貰えるのはとても幸せだな。

それにこうやっていろいろな事を話して涼が、涼だけじゃ無く沢山の人がこのに夢中になるのが良く分かった。

一言、一言、そして行動の一つ、一つに優しさが込められている。

笑顔すらも純粋な笑顔、計算の無い笑顔を向けてくるのだから・・・。

この子なら、涼を任せても問題ないと本当に思う。


「ところで、悠馬くん。」


「何ですか?」


「涼の事、頼んだよ?君になら涼を任せても問題なさそうだ。」


「え?いや・・・何の話ですか?」


「ん?父親として、悠馬くんになら大切な娘を任せても大丈夫だと思ったのさ。」


「・・・・保留で・・・。今は3人の恋人と家族と自分の事で精一杯なので・・・。」


「くっくくくっ、あぁっ。それで今は構わないさ。覚悟が決まったら何時でも来てくれっ。」


苦虫を嚙み潰したかの様な顔の悠馬くんを見ながら私は静かに笑いながら、涼に無理を言って彼に会ったのは間違えて無かったと心から思った。

最愛の娘の傍にこんな素敵な男の子が居るならば、これからも安心して仕事も頑張れると思ったのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

3人娘にスポットを当てて少し話を書いてみようと思いました。

サブレギュラー的な立場の子達なので、ピックアップしないのもな~って思いまして・・・。

柚美と千里の家庭の話を続けて書きます。


それと、深山威里香と向井渚のアフターも書く事にしました。

コメントの方にも「気になる」、「救済が欲しい」、「アフターをお願いします」と言う声がありましたので、思いついていた話を書こうと思っていますのでお待ちください。

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