終章 あの大空の果てを越えて

終章 春の時間

第207話 敵意

「俺と付き合ってください!!!」


「えっと、お気持ちは嬉しいんですけど・・・ごめんなさい。」


GWも過ぎて6月にも入るかと言う頃、男の子達も学校に少し慣れたらしく女の子達の事も良く見れる様になったのかこう言う事も増えてきたって話は私も聞いては居たけど実際に経験するとは思ってなかった。

だって・・・私にすら来たんだから・・・。


「そっか・・・ダメか・・・。」


「ごめんなさい。良く知らない人とはいきなり付き合うのは流石に無理です。」


「そうだよね!うん、ごめん。あのさ!やっぱり逆月先輩レベルじゃないと無理かな?」


「兄さんが理想ではありますけど・・・流石に兄さんと同じレベルとか同じような人が居るなんて思ってないのでそこは流石に・・・。」


そう逆月悠馬の妹である私、逆月菜月にまで告白イベントが降りかかったのです。


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その後、良ければこれからも話しかけて欲しいと伝えてその人とは別れました。


「はぁぁ・・・嬉しいけど、お断りするのは中々に堪えますね・・・。」


「菜月ー!終わった?」


「うん、終わったよ、千里。」


柚美と涼と千里の三人とはお互いに呼び捨てで呼び合う様になりました。

兄さん絡みで仲良くなりましたし、さん付けするのも遠慮しあってるようで良くないと言う事で呼び捨てにする様になったのです。


「それにしても、これで何人目?GW開けから続くねー。」


「えっと・・・5人目かな・・・。」


「うはぁ。多いねぇ~。男の子達も学校に慣れてきたって事で女子に目を向けられる様になったんだろうけど、菜月を選ぶあたり自分に自信持ちまくりだよねー。」


「ちょっと!止めてよ!兄さんは確かに凄いけど私は普通なんだから。」


「普通ねぇ~・・・。それだけ容姿も良くてスタイルも良くて何が普通なんだか・・・。ん-でもさー、ちょっと心配な部分もあるよね?実際。」


「心配って?」


「ん-ほら、あんまりこう言う事は言いたくないけど、20人中5人が菜月に来てる訳じゃん?菜月に告白した男の子を好きな女子から・・・とかさ。」


あぁ・・・それは確かに・・・。女子のそう言うのは、陰険だし私にだけ何かするなら別にだけど・・・。


「うん・・・。でもその場合だと相手が社会的に死ぬかも・・・。兄さんは私の事になると容赦無いし・・・。」


「あぁ・・・そうだよねぇ~。詩音さんの時とかそうだもんね。」


です。私と詩音さんが仲が良いからと言うだけで芸能事務所を潰した兄さん・・・。

いやまぁ・・・半分以上は相手の自業自得ですが・・・。


「流石に大丈夫っしょ。あの件を知らない人なんていないだろうしさ。」


だったら良いけど・・・千里と一緒に現場から離れながら私はそんな事を思うのでした。


「チッ・・・まただし・・・それにあいつばかりなんで・・・。」


やり取りを見ていた人が居ることに気付かずに・・・。


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次の日、兄さんと義姉さん達と登校して自分の下駄箱から上履きを取り出すと一枚の紙が入ってるのが見えた。

それを手に取り見てみると、そこには「コネ入学のくせに調子に乗りすぎ。自分ばかりモテるからって良い気になるなブス!」と書かれていて、私は言葉を失って棒立ちになってしまう。


「へぇ~・・・どこのどいつか知らねぇけど、良い度胸じゃん。」


「に、兄さん?!」


いつの間にか兄さんが後ろから覗いて居る事に気付かなかった私は驚いた声を上げてしまって・・・。


「悠馬?菜月ちゃん?」


「どうかしましたか?」


「あっ!いえっ!何でもっ!!!」


愛央義姉さんと志保義姉さんが私と兄さんの様子を疑問視した様な声で聞いてきて。


「よっとっ!・・・は?ナニコレ・・・。」


「清華義姉さん・・・。」


私の手から紙を抜いて内容を確かめた清華義姉さんが今まで聞いた事が無いくらいとても冷たい声でそんな事を呟いて・・・。


「あ、あの・・・。」


「取り合えず教室行くぞ。クラスメイトでは無いとは思うが確認だ。」


そう言った兄さんは無表情で清華義姉さんの手から奪った紙を持ったまま一人でずんずんっと1年の教室に向かって歩いていきました。


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ガラガラガラガラっ!


無遠慮にA組の扉を開けて兄さんは教室に入っていく。

玄関からここまでの道のり、さほど離れては居ないにも関わらず、兄さんとすれ違った生徒達は全員が全員揃って直ぐに道を開けた。

普段なら黄色い声が上がるのに今日は兄さんの表情に全員が怯えてザザッて感じで後ずさりしながら直ぐに道を開けた。

そして、そんな状況を一切に気にする事無く兄さんが教室までいって遠慮なく扉を開けて教室に入り既に登校してる生徒を見ながら教卓の前に立った。


「悠馬さん?!どうしたんですか?怖い顔して・・・。」


「「「悠馬先輩・・・?」」」


「ふむ、結構揃ってるな。取り合えず今居る奴らで良いわ。これを見ろ。健司、磁石。」


「え・・・?あ、はいっ!!!」


疑問の声を上げた稲穂くんも兄さんの雰囲気に困惑しながらも隅に付いてる磁石を取って兄さんに渡した。

そして、兄さんは黒板にっと音が鳴るくらいに紙を叩きつけて受け取った磁石で紙を固定して今居る人達に見えるように体をずらした。


「ぇ・・・ナニコレ・・・。」、「はぁぁ!?え?もしかしてこれ菜月ちゃんに?」、「あの、先輩、これって・・・?」


「菜月さん、これって・・・。」


「えっとね・・・。その・・・。」


「今朝、菜月の下駄箱に入ってた。犯人は分からんがお前らの中に居るか?居るなら名乗り出ろ。今なら少しシメるだけで勘弁してやる。」


「悠馬・・・それじゃ名乗り出れないって・・・。」


「流石にクラスには居ないと思いますよ・・・。」


「悠馬くん、落ち着いて・・・ね?」


義姉さん達が兄さんの傍に立って兄さんを宥めてる。


「あぁ、それは流石に分かってる、だから確認ってだけだ。」


兄さんの言葉に全員が顔を見合わせて、一つ頷く。


「誓って俺達じゃ無いです。」


「はい、菜月ちゃんの人柄はもう分かってますし、努力家なのも分かってます。」


「だね!このクラスで菜月ちゃんを嫌いな人は居ないって断言できます。コネ入学とかあり得ないし何も調子に乗ってないです。」


「モテるのはまぁ・・・確かにとは思いますけどそれも菜月ちゃんなら当然かなって感じだしね。てか、逆月先輩を始めとして星川先輩、天音先輩、伊集院先輩もだし他の先輩方もだけど、全部敵に回したでしょ・・・この人。」


「確かに・・・自殺志願者なのかな?仮にこの通りに思ってても普通出来ないでしょ。」


「み、皆・・・。ありがとうっ。」


「私等は味方だから安心して!」


皆の言葉に私は涙腺が緩むのを我慢できなかった。いずれはこう言う事もあるだろうとは思っては居たけど・・・思ってたよりもダメージを受けていたみたい。


「この一件、俺が預かるぞ、良いな?」


そう言って兄さんは私は抱きしめて顔を隠してくれて私が落ち着くように背中をポンポンしながら頭も撫でてくれる。


「で、でもっ!兄さんだけに・・・。」


「良いんだ。これも俺の責任でもあるだろうしな。怒らせたらどうなるか教えてやるよ。」


「お手柔らかに・・・。ここは学校なんですよ?兄さん。」


「私達も居るからね?菜月ちゃん。」


「そうだよ。大切な妹なんだから。」


「怒ってるのは悠馬さんだけでは無い事は忘れないでくださいね?菜月さん。」


義姉さん達も傍に来て私を支えるように触れてくれている。


「俺達だって悠馬さんと同じ気持ちなんだからね!」


「そうだよ!こんなの絶対に許さないし!」


「健司たちもありがとう、柚美ちゃん達もありがとう。学校だって事は分かってるから大丈夫だ、それと皆も疑ってすまなかった。菜月を頼む。」


「「「はいっ!」」」


クラスメイトが皆、真剣な声で頷いてくれて、嬉しくて私は兄さんの胸の中で静かに涙を流した・・・。


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