第201話 健司君頑張る!

「やっほっ。楽しんでる?」


「あ、先輩。はいっ!愛央先輩のお陰で。」


「うんうん。流石っ。」


「もうっ、なにそれっ!」


言いながらも星川先輩は、東原さんに向けていた笑顔よりも嬉しそうに悠馬さんの隣に立って腕をペシペシしてる。


「愛央なら優理ちゃんの緊張も直ぐに解せると思ってたけど、やっぱりだったなーっとね。だから、流石っ!ってね。」


「あ・・・なんか気を使わせたみたいですいません。」


「そんなんじゃ無いよっ。俺を筆頭に志保や清華だと、畏まるかな?って思っただけだしな。」


うーん・・・最初に星川先輩を充てがったのはそういう事だったんだ。

確かに星川先輩なら、相手の緊張も解せるし、馴染ませやすいよね。

この辺は、恋人達を良くわかってる悠馬さんらしいな〜。


「悠馬ってば、そんな意図あったの?そう言えば柚美ちゃん達の時にも・・・。全く!人を何だと!」


怒った様に見えるけどどう見てもいちゃついてるだけだよねこれ。


「かわいい・・・。愛央先輩が可愛い・・・っ。」


「ふぇ?!いきなり何ー!?」


「あぁっと、そのごめんなさい。逆月先輩とのやり取りになったら凄く可愛くなったので・・・ついっ。」


「なっ///んぅ〜〜///だって、それは、ねぇ?///」


「はいっ、可愛いっ!また今日も愛央に恋をしたな、俺。」


「うぅぅっ///私も毎日、恋してましゅっ///」


うわぁ〜顔真っ赤、めっちゃ可愛い、東原さんも星川先輩を見て顔真っ赤にしながら身悶えてるしっ。


「って、俺等の事は良いんだよ。こうやって優理ちゃんとも縁が出来たし、健司達とも知り合えたんだから改めてよろしくね?ほら、健司も!」


「は、はいっ!その、改めてだけど、その・・・。」


「はいっ!改めて・・・?」


「友達に・・・なって貰えます・・・か・・・?」


「そ、その・・・うんっ!宜しくね!稲穂くんっ!」


とても綺麗な笑顔で東原さんは俺のお願いを聞いてくれたのだった。


……………………………………………………………

SIDE 優理


はぁぁぁぁ、愛央先輩と話してたら逆月先輩も来て、稲穂くんも一緒で、先輩達のやり取りを見せられて真っ赤になってたら、稲穂くんから友達になって欲しいって言われて・・・。


「予想外な事が起こり過ぎてるよ〜・・・。」


「予想外な事って?」


私の呟きを稲穂くんが拾って話しかけてくる、というか「後は若い二人で、ごゆっくり・・・。」とか言いながら先輩達も居なくなるし、意識しちゃうじゃん、ただでさえ、色々配信とか見て、少し良いなって、先輩とのやり取りを見て更に良いなーって思ったもん、意識しちゃうじゃんー。


「今のこの状況ですっ。そりゃ、いずれは在学中に先輩達にも稲穂くん達にも関わる事あるかも?って思ってはいたよ?でもさぁ~・・・。」


「あ、あはは・・・初日からだしね・・・?」


「そうだよぉ・・・流石にこんなの予想外って言うか予想も出来ないよ・・・。」


「えっと・・・何かごめん?多分だけど半分位は俺のせいかも・・・。」


「別に怒ってる訳じゃ無いから大丈夫だよっ。それよりも稲穂くんの事、教えて?」


私の言葉に稲穂くんは嬉しそうな笑顔になって自分の事を話し始める。

元々の自分はどんなだったから始まって、ステイルで先輩に完璧に折られて、諭されて、家族とも和解して、努力した事。

夏の説明会で再開して認められて嬉しかった事、友達になれた事。

同じく夏のバーベキューに混ぜてもらって馬鹿騒ぎして楽しんだ事。

秋の学園祭での事、ライブ、冬はクリスマスパーティーに呼ばれて嬉しかった事、この一年であった事を本当に嬉しそうに楽しそうに話してくれた。

この時の稲穂くんは、子供みたいにはしゃいでて、可愛かった。


「あ・・・ごめん、何かずっと喋ってた。」


「んーんっ。聞いたのは私だし、稲穂くんがどれだけ先輩に、先輩達に感謝してる事、慕ってるのかが分かって良かったよっ。」


「何か・・・恥ずかしくなってきたっ///」


顔を真っ赤にした稲穂くんはとても可愛くて、こんな顔を見れただけでも、ここに来て良かったかな?って私は思った。


……………………………………………………………

俺の話の後は東原さんの話を聞いてる。

清蘭を選んだ理由は悠馬さんの事も大きいけど、それ以上に星川先輩達と進学校である事。

特に星川先輩に憧れているらしく、その理由も単純にらしい。


「強さ?」


「うん、星川・・・じゃない、愛央先輩って凄く強いでしょ?あの強さに憧れたの。」


「どういう事?」


「えっとさ、夏の事件は知ってる?」


「夏って言うと海での事?」


「そうそうっ!私ね、あの動画見て思ったんだ。」


「何を?」


「大切な人の隣に立つ為の強さを持つこと、大切な人と何があっても歩いて行く強さを持つこと・・・。」


東原さんは凄くキラキラした顔でこう続けた。


「その人の隣にずっと立って居たい!でも私は!!何も特別なものなんて持って無いし何かを解決する力もありません!だからこそっ!!隣に立ってる事を恥ずかしくなるような事はしたくない!自信を持って隣に立ちたい!目の前で大変な事になってるのを見て見ぬふりなんてしたくない!そんな事をしたら私はもう自信を持って隣に立てなくなる!だからっ!ってのを聞いて思ったんだ。私もこの人の様に強くなりたいってっ。」


「つまり、東原さんの目標は、星川先輩って事?」


「うんっ!そう言う事になるかなぁ~っ。稲穂くんが逆月先輩を目標にしてるのと一緒だねっ。」


「うんっ!凄い先輩をお互いに追いかけてるから大変だけど、頑張り甲斐あるよねっ!ところで・・・その・・・。」


「どうしたの?」


「えっとさ・・・さっき言ってた大切な人って言うのは・・・?」


「なになに~?気になるの~?」


俺の顔を見ながらにやにやといたずらっ子っぽい顔で俺に聞いてくる東原さん。

うん、可愛いっ!俺に少しは慣れてくれたのかな?って思うしそう言う顔を見せてくれるのは嬉しいし、ほんとに可愛いっ。


「か、可愛い・・・。」


つい・・・ポロっと本心が零れた。


「ふぇっ///いきなり反撃受けたしぃ~・・・。」


「ごめんっ。その素直な感想が出ちゃって・・・。」


「べ、別に良いけど・・・///えっと、まだ特に居ないよ?愛央先輩にとっての逆月先輩の立場の相手。これから見つけるかな?見つかると良いなっ。」


「そっか・・・そっかぁ・・・っ。」


それなら俺にもまだチャンスはある・・・よね・・・?


「兎に角!稲穂くんは逆月先輩を、私は愛央先輩を目標に頑張ろうねっ!」


その時の東原さんの笑顔はとても輝いていてすごく綺麗で、本当の意味で心を奪われたんだって後で気付いたんだ。


「ていうか!いい加減恥ずかしいからやめて!優理ちゃん!!!」


「「「「あはははははははっ!」」」」


あっち側から星川先輩の恥ずかしそうな声と皆の笑い声がステイルに響き渡った。


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「それでは、ご馳走様でした!」


その後、一頻り楽しんだ俺達は暗くなる前に迎えを呼んで解散になった。

勿論だけど・・・杉村、高梨、中本達のお母さん、お姉さん、妹さんが悠馬さんに会えた事で、一気にテンション上がった。


「ふぁ、ファンです!会えて嬉しいですっ!!!」


「ちょっとっ!水夏!何時の間に?!」


「陸兄ぃ~・・・尊敬する・・・。」


「「「本当にすいません、先輩。」」」


「気にするな、こうなるのは予想の内だしね。」


「「「もうっ!!!良いから早く帰るよ!!!!」」」


うわ~~んっっYouMaさまぁぁぁ~~!っとドップラー効果?を残しながら3人とご家族は帰って行きました・・・はいっ。


「えっと・・・私も帰りますね?今日は本当にごちそうさまでしたっ。」


「いきなり誘っちゃってごめんね。楽しんでくれたならそれで十分だよ。」


「はいっ!凄く楽しかったです!」


「なら、良かった。クラスは違うみたいだけど、健司と菜月の事、よろしくな?この二人さ、俺と近いって事で色々あるかもだからさ?」


「はい。折角こうやって知り合えたし、仲良くもなれたのでお願いされなくてもですっ!」


聞こえてるんだけどなぁ~・・・悠馬さんの気持ちは嬉しいけどさぁ~・・・もっと努力して頼りがい欲しいなぁ~・・・。


「それじゃぁ・・・ご馳走でした!稲穂くん!また学校でねっ!」


「ふぇ?!あっ!うんっ!お疲れ様ー!」


俺はいきなり声をかけられてテンパりながらも手を振りながら離れて行く東原さんに同じ様に手を振りながら笑顔でバイバイをしたんだけど・・・。

後ろからさぁ~・・・生暖かい視線がねぇ?すっごい刺さるんですよ・・・。


もうバレてるから良いんだけど・・・めっちゃ恥ずかしい・・・。


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