第196話 健司の入学式
「「「菜月ちゃん!!」」」
「菜月さん!?」
「柚美さん、千里さん、涼さん、おはようございますっ。同じクラスで嬉しいですっ!」
うわぁ〜、友人ばかり固まってる・・・これは流石に意思を感じるなぁ〜・・・。
「稲穂さんも、おはようございます。改めてよろしくお願いしますね。」
「あ、うん!こちらこそよろしくです!!」
さっきのきゃーきゃー言われてたのは何だったんだろ?菜月さんに黄色い声は上げないよね?
「な、なぁ・・・稲穂。」
「うん?どうしたの?」
「名前で呼んでるけど・・・か、か、彼女・・・とか?」
高梨くんの疑問は他のクラスの子達も同じ疑問のようでこっちを見ながら俺の言葉に集中してるのが、分かる。
「違う違うっ!俺なんかじゃ釣り合わないって!彼女は、悠馬さんの妹さんだから名前で呼ぶのを許してもらってるだけだってっ!!逆月だと自分も反応しちゃうからって事で!」
「そ、そっか・・・そういう事か・・・って?!今何ていった?!」
「さ、ささ、さささ、逆月先輩の妹さん?!マジで!?」
「いや、何をそんなに驚いてるの?菜月さんも有名だよ?」
「いや、だって!名前くらいは聞いた事あるけど!」
「こんなに可愛いなんて聞いてない!!」
本気で驚いてるみたいで大声で可愛いって言ってる。
「ありがとうございますっ。同じクラスになれましたし、これからよろしくお願いいたしますね?稲穂さんとも仲良くなれてるみたいですし、兄さんとも絡むかもしれませんし。」
「は、はい!こちらこそ!!」
俺達の会話を立花さん達と話しながらも聞いていた菜月さんは俺達の方を向いてそんな事を笑顔と共に言ってきた。
「3人とも顔真っ赤だね・・・。」
「いやだって・・・あの笑顔は反則・・・っ///」
「そうだよっ///」
「むぅ〜私達の時は赤くなったりしなかったじゃんー3人ともー!」
門倉さんが余りの対応の違いに文句を言ってるけど立花さんも小河原さんも同じ様に頷いてる。
「あっ!いや!照れてなかった訳じゃ無いからな!単に稲穂と友達になりたくて意識がそっちに全開だっただけで!3人も可愛くて綺麗だし!」
「「「ほっほ〜?そーなんだー?」」」
「ニヤニヤと意地悪な顔してるよ?3人とも。」
ごめーんっ!っと3人が笑いながら話すと誂われたと気付いたみたいで男子3人もガックリとしてるのを見て、これなら仲良くやって行けそうだなって思った、そんな朝の一コマだった。
……………………………………………………………
「それでは。続きまして、新入生代表挨拶にうつります。」
あの後、チャイムの少し後に担任の先生が現れて簡単な自己紹介を受けてから、俺達は入学式が行われる講堂に向かった。
その講堂はあの夏の日、学校説明会が行われた講堂であの日の事を思い出しながら、俺は入学式を熟していた。
「新入生代表、
「はい!」
名前を呼ばれた女生徒は緊張しながらも静かに背筋を伸ばしたまま、ゆっくりと壇上に上がっていく。
「はぁぁ〜・・・。」
「稲穂?どうした?」
俺は完全にその姿に見惚れてしまって声をかけられても反応出来ずにずっと東原さんを目で追っていた。
「
壇上で話し始めた彼女の声はとても綺麗で、可愛らしさの中にも美しさがあるかの様な声。
腰まで伸びている黒髪は艶もあり遠目で見ても綺麗だと言うのが良く分かった。
「本日はこの様な式を・・・。」
「だめだこりゃ〜完全に見惚れてやがるわこいつ。」
「新入生代表に選ばれたことは嬉しく思いますが、昨年の点数を超えている訳では無いので、正直なところ、少し不満です。」
可愛らしく頬を膨らませながらそんな事を言う彼女の
「というか、逆月先輩の点数を超えるって満点以外無いしそら暫くの間は更新されないだろ。」
そう思う。アレを超えるってほんとに満点以外は無理だしね。
「新入生代表、東原優理。」
ぺこりっと頭を下げた彼女は優雅に壇上から降りていく。
俺はそんな彼女の一挙一投足に視線をずらせずに眺め続けた。
「・・・?」
視線を感じたからか、彼女は俺を見てくれて、にこりと、一つ笑顔を見せてくれて・・・
「・・・っ///」
俺は一気に顔を赤くして視線を反らしてしまった。
「稲穂?お前まさか・・・。」
「ち、ちがっ!そんなんじゃ!」
小声で否定の言葉を咄嗟に出したけど、にやにやとしながら俺を見て、分かってる分かってる!って顔してる!
「俺は別に何も言ってないけどな〜?」
「このっ!」
「ほらほら!騒いだら怒られるぞ?」
「くぅぅ、後で覚えとけよ・・・。」
はいはいっと適当に流されてぐぬぬぅとしていたけど式が進んでいく。
「それでは、続きまして、在校生、男子代表挨拶。」
「「「「?!?!」」」」
「ねぇ?稲穂くん、在校生の男子って一人だよね?」
「うん、悠馬さんだけだよ。」
「菜月ちゃんは知ってた?」
「それは勿論です。だから朝も一緒に来ましたし。」
「もしかして、教室まで?」
「はい。ですから、来ているのを結構な人数が知ってますよ。」
そうかぁ〜・・・菜月さんが教室に入る前の黄色い声は悠馬さんが居たからかぁ〜・・・。
「ぇー、それなら一緒に来てくれたら良かったのになぁ〜。」
「流石にそれは不味いですよ。まぁ、私も気持ちは同じでしたけど。」
「逆月悠馬くん。よろしくお願いします。」
「はい。」
呼ばれて返事をした悠馬先輩は堂々とした立ち姿で壇上に上がっていく。
その姿はあの日の説明会の時の悠馬さんと同じで本当に堂に入った姿だと感じた。
「皆様、先ずは入学おめでとうございます。こうして、皆様と同じ
悠馬さんの言葉を誰もが聞き逃さないとするかの様に真剣な顔で聞いているのが見えた。
「女子生徒の皆様、とても狭い門をくぐり抜けての合格、本当におめでとうございます。皆様に会えた事、嬉しく思います。」
はぅっ、ぁぅぅぅっと言われた言葉は全員に向けてだけど、胸を抑えながら熱い視線を悠馬さんに送っている女子も沢山だ。
「そして、男子諸君。共学校とは言え、在校生はこの俺だけにも関わらず、この学校の門を叩いてくれた事、心から感謝しています。」
悠馬さんが居るからですよ、今年、入学した男子はその言葉こそが何よりも嬉しいのは多分、俺だけじゃ無いはず・・・
「そして、心して欲しい。来年度からの男子の数が増えるか否かは君達に掛かっていると言う事を。」
え?俺達に?悠馬さんが居ればそれだけで男女共に集まるのでは?
「いきなりこんな事を言われても、分からないと思う。だから今は頭の片隅にでも止めておいて欲しい。君達が今年度、この学校を選んだのは
あっ、そうか・・・、そりゃそうだよね・・・と他の男子からの声が俺の耳にも届いた。
悠馬さんが居ても問題しか無かったら許可、何て出ないよね。
「だから、君達の行動の全てが来年度の入学数を決めると、清蘭高等学校の看板を背負っていると言う事を意識して過ごしてくれる事を願います。」
そんな悠馬さんの言葉に俺は自然と背筋が伸びた。そうだ、俺の俺達の行動でこれからのこの学校の未来が変わるんだ。
努力を怠らず、人にやさしく誠実に過ごすことが俺達の責任なんだ。
「さて・・・硬い話はこの辺にして・・・。」
あれ?悠馬さんの顔が・・・。
「正直さ、こんな事言われても実感何て湧かないよな〜!」
なっ!?・・・っと、悠馬さんの言葉に感動や意思を固めていた男子、自分たちにも当てはまると思っていた女子・・・皆が皆、口をあけてポカーンっとしてる。
「だからさ!細かいことは考えないで先ずは学校に慣れよう!色々な事を考えるのはそれからさ。」
悠馬さん・・・確かにそうかもだけど・・・。
「そして、部活、遊び、恋に勉強・・・俺達は大忙しだぞ?願わくば、在学中に男子も女子も掛け替えのない仲間を友を・・・そして、愛する人を見付けられたら幸いです。」
は、はは、そうだよね。
俺達はこれから大忙しなんだから先ずは環境になれること、それからだよね。
悠馬さんの話は続く、自分が昨年度に何をしたのか、何があったのか、それは共に校内で過ごしていないと分からない話。
その結果が今なのだと、今年の入学数を決めたのだと・・・だからこそ、最初に来年度は俺達、新入生にかかっているのだと話したみたい。
「以上で、挨拶を終わらせていただきます。ご静聴ありがとうございました。」
そうして悠馬さんは壇上から降りていく。
最後に俺の方を見て笑顔と、ウインクを一つくれて、降りていったのだった。
「東原さん、逆月くん、素敵な挨拶をありがとうございました。続きまして・・・。」
そして、
と言っても、悠馬さんの笑顔とウインクで大半の人は式には集中できて居なかったみたいだけどね・・・。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
おっと〜?新しい女の子の名前が出てきたぞっと・・・。
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