第10章 健司の時間

第195話 変わった男子代表の健司

俺には、憧れている先輩が居る。

その人と知り合った時は・・・うん・・・思いっきり怒られた。

俺も母さんも姉さんも3人揃って思いっきり怒られて折られた・・・。

その結果、母さんと姉さんとは和解することが出来て俺も変わらないと駄目だと分かった。

確かに悠馬さんの言っていた通りで、俺は只々甘えていただけだった。

俺がこうして人間らしい生活を送れるのは全て、母さんや姉さんを始め世の中の女性たちのお陰だった。

それが分かってからの俺はひたすら努力した。

悠馬さんに言った自分の夢の為、それを叶える為の勉強、健康になる為の勉強、母さん達に迷惑を少しでもかけない為の健康的な生活。

人が聞けば何を当たり前の事を言ってるんだ?って言われるかもだけど、俺はしてこなかったんだ。


そして俺は憧れの人に少しでも近づく為に今日から同じ高校に通う。


これが第一歩、この校門を潜ったら、俺の高校生活が始まる・・・悠馬さん・・・貴方の背中は遠いけど・・・それでも俺は!


「ちょっと!健司!何してんの!早く来なさい!あんたが来ないと始まらないでしょ!」


「はいっ!!姉さんごめん!直ぐ行く!」


とほほ・・・こういうところ直らないな〜。もしかして俺って尻に敷かれるタイプなのかなぁ〜・・・?


……………………………………………………………

クラス分けを見て立花さん達の名前があって、俺はガッツポーズ!

しかも去年の悠馬さんと同じA組!!声を上げなかった自分を褒めたくなりながら、自分のクラスの扉を開いた。


扉が開いた音で中に居た人の視線が俺に集まって少し気圧されるけど直ぐに見知った顔があって、一安心。


「皆、おはよー!これからよろしく!」


事前に悠馬さんに相談していた通りに俺はハッキリと挨拶。


「おー!稲穂くんー!おっはよー!よろしくね!」


「おはよ!これからよろしく!」


「おはようございます、稲穂さん。改めてよろしくお願いします。」


「こちらこそよろしくね!他の皆も!!」


俺の挨拶に直ぐに立花さん達が反応してくれて他の教室に居た人たちも声をかけてくれる。

そして・・・男子も俺の他に3人も居る!


「えっと、稲穂だっけ?お前凄いな〜、物怖じしなくて。」


「そ、そうかな?これでもかなり頑張ってるよ。えっと・・・。」


「っと、わりぃ!俺は杉村すぎむら つばさ、よろしくな!」


「こちらこそ!稲穂健司だよ、少ない男子同士よろしく!そっちの二人もこっちに来なよ!友達になろう!」


「あ・・・うん!ありがとう!高梨たかなし りくです。」


「声かけてくれて助かった。ほんとにありがと!僕は中本なかもと 水夏すいか、水に夏って書いてすいかだよ。」


「これからよろしくね!早速だけど連絡先の交換しようよ!駄目かな?」


「「「勿論大丈夫!」」」


こうして同じクラスの男子と直ぐに打ち解けて話し始めたところで俺と仲の良い立花さん達も紹介して俺達の高校生活はスタートしたのだった。


…………………………………………………………

その後、続々とクラスに人が集まってきたところで杉村くんが話題を振ってきた。


「そいや、稲穂は気付いた?クラス分けのところで何だけどさ。」


「気付いたって、何に?」


「俺達の他にも16人も男子が居るんだ。」


「あぁ!見た!見た!各クラス4人で分けてあったよね?」


高梨くんが杉村くんの話題に答えてくれたけど俺はそこまで見てなかった。


「僕も見たよ。以外に少ないな〜って思ったもん。」


中本くんも気づいてたみたい・・・。


「そこなんだよ。正直さ逆月先輩の事があるからもっと居てもおかしく無いだろ?それなのに、たったの20人何だなって思ったんだ。」


「確かにそう言われると少ないかも?話を聞いて俺達の他にそんなに居るんだ?って最初は思ったけどさ。」


「恐らくですが・・・。」


俺達のそんな会話を聞いていた、小河原さんが何かの答えがあるのか前置きをしながら予測を話し始めた。


「今年はテストの意味合いが強いのでは無いでしょうか?」


「テスト?」


「はい、去年一年間で悠馬先輩が過ごして気づいた事、気になった事等から準備はしていたのでしょうけど、いきなり希望してる人数を受け入れるのは不可能だと判断した。」


「なるほど・・・それはありそう。男子掲示板でも話題になってたけど今年は俺も!俺も!って声が沢山あったし20人程度なんてのはあり得ないよね。」


「確かに!最初はめっちゃ叩かれてたよね、逆月先輩。」


そう、悠馬さんは最初はマジでたたかれていた。

女に媚びを売るダサいやつとか、情けない雑魚とか良いことだけ言ってる偽善者とか・・・。

正直なところあの日、までは俺もそう思ってた。


「でもさ、この一年で凄い変わったよね?それだけ沢山の事をやったって事なんだけど、どんどん意見変わって行ってさ。表に出始める男子も増えて、逆月先輩みたいになりたい!って人もどんどん増えた。」


そう、あの人に憧れてるのは俺だけじゃない、聞いて無いけどここに居る3人も多分・・・。


「それと、希望者の素行調査もしたのではないかと?特に夏の説明会の事もありますしね。」


「あ~・・・稲穂が怒鳴ったやつ?」


「はい、あれです。私達も見ていましたけどあの一件で騒いだような輩は弾いたのでは無いかと。」


「それはあるかもね。それと、多分だけど逆月先輩に憧れてる人を優先したのかも?」


「何でそう思うの?」


「えっと・・・///恥ずかしいんだけどさ、面接の時に何で希望したのかを聞かれて、理由の一つに先輩に憧れてるって、少しでもあの人みたいになりたいって思ったからって言ったんだ・・・僕。」


「あぁ・・・似たような事は、俺も言ったわっ///」


「俺も・・・///」


「3人共やっぱり憧れてるんだね。俺もだけど。」


やっぱりそうだった!


「それにさ、逆月先輩の影響受けて変わった男子の代表だよね。」


「そうだなー。逆月先輩の次にって言ってもいい位にこの学校じゃ稲穂も有名じゃん?」


「いやいや!悠馬さんの次にってのは言い過ぎ!!!確かに悠馬さんに誘われて色々やったりもしたし、そこそこ有名にもなってるけど・・・。」


そう、一緒に遊びに行ったりは勿論だけど夏のバーベキューの事、学園祭での事とかでそこそこ有名になってるのは俺も分かってる。


「悠馬先輩の次に有名なのは、愛央先輩!志保先輩!清華先輩!だよね!」


うんうん!清蘭の三女神とも言われてる星川先輩達が悠馬さんの次に有名な人達なのは間違いない。


「あぁ・・・あの人達も綺麗だよなぁ~・・・。」


「分かるっ。憧れの女性達って感じ。」


「逆月先輩の隣に居る時の3人が一番きれいだよね!」


やっぱり男子でも憧れてる人もいるんだなぁ~・・・。

俺も知り合いじゃ無ければそっち側だろうしなぁ~・・・。


「えっと!話がずれたから戻すけど、他のクラスだったんだけど、俺と一緒に面接した子も居てその子も先輩に憧れてるからって言ってたんだ。」


「おぉ~・・・って事はそう言う理由も選ばれた一つかもしれないな~・・・。」


偶然だとは思うけど・・・流石に教師もそれでは選ばないんじゃないかな・・・?


「そうですね・・・恐らくですが、選考基準の一つには確実に悠馬先輩の事があるでしょうから、もしかした有り得るかもしれませんね。」


そんな事を話し合って居たら廊下がガヤガヤとさっきよりも賑やかになってる事に気付く。


「あれ?何だろ?何かさっきよりもうるさくなって無い?」


「だねー、きゃーきゃー黄色い声も聞こえるね。」


これってさ・・・もしかして・・・。


「ねぇ・・・もしかしなくてもさ・・・これってさ・・・。」


「立花さんもそう思う?」


「稲穂くんも・・・?」


「あっ!私も分かったかも・・・。」


「私も分かったわ・・・。」


門倉さんも小河原さんも分かったらしいけど、それに比べて杉村、高梨、中本は分からないみたいでクエッションマークが頭に浮かんでる。

ガラガラっと扉が開いた音がして皆が視線を向けた。

そこには・・・。


「皆さん!おはようございます!これから宜しくお願いしまーーーすっ!」


とても素敵な笑顔で話題の逆月悠馬先輩の妹でもある逆月菜月が立っていた。


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