第182話 雪の道と王子様

「さって~・・・俺はお暇しますかね~。」


「うん?帰るのか?」


「帰っちゃうの?」


「お?何?何?清華ちゃん俺が居なくなるのさみし「さよならぁ~っ!」・・・ぉぅ・・。」


最後まで言わせずに途中でぶった切ったよ・・・この子・・・。


「まー、このまま居ても仕方ないし君達みたいな人に会えて楽しかったからね。それに、人じゃない俺がいつまでも居るのは良くない。寄って来られても困るだろ?」


「あ~・・・やっぱりそう言うのあるのか?」


「ある。マジである。ぶっちゃけ俺も困ってるっ!」


怪異は怪異を呼ぶ、力は力を引き付けるってやつかぁ~・・・。


「俺に救いを求められても困る!神様仏様じゃないってのー!頑張って成仏しろってのな?」


「な?って言われてもな?つーかこえーし!清華はそう言うの苦手だからやめろ。」


「おっとっ!それは宜しくないな!・・・うん、本当に会えて良かったよ。それと、ごめんね、色々と。」


「あーうん、もう良いよ。雪間さんの事も分かったしさっきまでは怖かったけど、普通の状態なら怖く無いしね。」


「奏・・・またな?」


「ぁ・・・おうっ!またな!悠馬!」


その言葉を残して雪間は、奏は俺達の前から消えていった。

最後に嬉しそうな顔を浮かべたまま。


「悠馬くん?最後のはなんで?」


「えっと、これは男同士にしか分からないと思うけどって貴重だからな。」


「あ・・・そっか・・・。」


「短い時間だったとは言え同じ空間に居て腹割って話したしもうダチかなーっとね。」


「うんっ。良かったんじゃないかな?最後、嬉しそうな顔してたし。」


「そうだなー。さってー!寝るか!流石にもう何も起きないだろうし何となくだけど・・・大丈夫な気がする。」


「なにそれっ。でも、何となく分かるかなっ。ん~・・・えいっ。」


清華が俺に抱きついて来て俺の顔を自分のおっぱいに押し付けて来る。


「えへへっ///また助けられちゃったね。本当にいつもありがとう。」


「んっ。俺からもありがとうなっ。一緒に居てくれて、一緒に戦おうとしてくれて。」


「当然だよ。私の王子様っ。」


「あぁ、そうだな。俺も同じだ、これからも君を守るよ。俺のお姫様。」


「うんっ///」


俺達は一緒に毛布に包まって横になる、そのまま話しながら過ごしていると何方ともなく気付けば眠りについて居た。


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ばたんっ!!!


「兄さん!!!無事ですか?!?!」


翌朝、俺と清華が寝ていると扉が思いっきり開き菜月が飛び込んで来た?!


「うわぁぁ!!びっくりした・・・何で居るの?」


「何でって!助けに来たに決まってるじゃないですか!!清華義姉さんもご無事ですか?!」


「無事だけど・・・救助隊は・・・?何で来てるの?!」


「そうだぞ!それで菜月まで遭難したら意味無いだろう?!」


「大丈夫です!救助隊の人達も一緒ですし!それに・・・。」


菜月の言葉の後に直ぐに複数の人が入って来て俺と清華の介抱を始めてくれた。

怪我や体調不良の類は無いとは言え一応の為に担架に乗せられて運び出されて俺も清華も驚きから声が出なかった。

だって、担がれた担架から見える景色はどう見てもおかしくて俺達の居た場所から恐らく落ちた場所?まで雪の壁?あの豪雪地帯で冬の間だけ作られるような雪の壁の道が出来ていて真っ直ぐと俺達の居た小屋まで来れるようになっていた。


「な、なにこれ・・・?」


「分かりません、でもこの道?のお陰で私も一緒に来れたんです。」


「これって一体・・・?」


俺が視線を回すと・・・居た・・・奏が居た。そして見てる俺に気付くと、両手を合わせて顔の前に持っていって・・・すまなかったと・・・。

そんな奏に俺は・・・腕を上げて拳を握り親指だけを立てて見せた。それを見た奏は、俺に応えるように奏も俺と同じ様に返してくれるのだった。


その後・・・俺達は念の為と言う事で病院に搬送されて検査された。

幸か不幸か俺も清華も何も問題も無く一泊の入院で次の日には皆の元に戻れたのだった。


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「いやっほぉぉぉい!!!」


俺はと言うと今日も今日とて滑りまくりで出来なかった分を楽しんでいた。


「兄さんー!!早いですってば!と言いますか、本当に身体は何ともないんですか?!」


「何とも無いよ。検査でも問題なかっただろ?」


「それは、そうですけど・・・。それに清華義姉さんもですけど・・・。」


「俺も清華もどっちも何ともなかったから大丈夫だよ。心配してくれてありがとなっ。」


「いえっ!・・・あの、ウザく無いですか?」


「へ?そんな訳無いだろ!いつも感謝してるよっ。菜月にも母さんにもね。」


「はいっ///」


「ほらっ!先に行ってる愛央達に追いつかないとだし行こうぜ!」


「はいっ!いきましょー!」


俺と菜月は勢いよく滑り降りて行く、お互いに笑顔のままでっ。


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SIDE 清華


次の日、皆の元に戻って来た私達は沢山、泣かれて心配されて無事を喜ばれてと大変だった。

凄い経験をしたって自覚はあるけど、悠馬くんが一緒だったから実の所、私はそこまで心配していなかった。

案の定、不思議体験ではあったけどお互いに怪我も無く終る事が出来た。


「それで、結局のところ何があったんですか?あんな事になって無傷で済むっておかしいですよね?」


「勿論、無傷だったのは喜ばしいですし、無事に戻ってきてくださって嬉しいんですけど・・・。」


「菜月ちゃんに見せられた雪の道とか説明付かない事多すぎですよね?!」


「あはは・・・。確かにねぇ~・・・。」


流石に秘密かな・・・言っても信じて貰えるとは思うけど、あの事は私と悠馬くんの秘密にしておきたいって思う。


「ん~・・・秘密っ!」


それだけ言うと私はサーッと滑っていく。


「ちょ?!清華さん?!」


「秘密って何ですかー?!」


そんな私の後ろを愛央と志保が追いかけて来るのを感じながら体験した事を思い出しながらあの、おかしなくんを思い出しては笑顔になるのだった。


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「はぁぁぁ・・・味噌汁うっまぁぁ・・・。」


「染み渡りますねぇ~。」


「悠馬も菜月ちゃんも年寄りくさいよ?」


俺たち兄弟の反応を見て愛央が突っ込んで来て、それを見て、志保も清華もくすくすと笑ってた。


「いいじゃんー冷えた身体には良いんだしさ。」


「ですですっ!義姉さん達だって同じでしょう?」


「まぁ~・・・ねぇ~?」


「否定はしませんけど。それはそれですっ。」


「それにしても、本当に無事で良かったわ。二人共。」


「葵さん、ご心配おかけしました。お母さんも有希華さんもごめんなさい。」


「清華ちゃんも無事で良かったわ。悠ちゃんはもっと考えて行動しなさい・・・、と言ってもそれで止まる悠ちゃんじゃないし、清華ちゃんの事は最初からそうだったわねっ。」


「あー・・・確かに兄さんはそうですねっ。知らなかった時すら飛び出しましたしっ。」


「・・・っ///あの時はっ///」


「あん時の事は言うなって・・・。考えるよりも先に動いたし・・まぁ、今回もだけど。」


「でも、悠馬くんは恥ずかしいかも知れないけど・・・私は嬉しかったんだ。あの時も、今回も・・・迷わずに助けに来てくれて、本当に嬉しかった。あぁ・・・この人は私の王子様なんだって・・・本当に思うからっ。」


そう言った清華の顔はとても綺麗で誰もが見惚れてしまうような顔だった。


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