第181話 清き華
SIDE 清華
扉を開ける時に持っていた棒状の物で構えて雪間さんを睨みつける。
後ろには悠馬くんが咳き込みながらいる。
「やだなぁ〜!清華ちゃんってばそんなの向けないでよ〜!ちょっとした冗談なんだからさっ!」
「ふざけないで!!どんな理由があっても悠馬くんを傷つけるなら許さない!!」
「やだなぁ〜!男同士のじゃれあいってだけだってばっ!ね?そんな物は下ろそ?」
ギュっと強く握りしめて睨みつけながら雪間を見続ける。
「清華、下がれ。そいつの目的は清華なんだ。」
「嫌!悠馬くんのお願いでもそれだけは聞けない!」
そうだ。私は知り合った時から悠馬くんに助けられ続けてる。悠馬くんの優しさ、強さ、沢山の事に私は惹かれて恋をした!だからこそ私にとって掛け替えのない王子様なんだ!
そんな人が大変になってるなら私が守るんだ!!何も出来なくても盾にくらいなら私だってなれるんだから!
「はぁぁ・・・清華ちゃんを傷付けたくは無いんだよなぁ〜。コレクションの為にもさ。」
「気安く呼ばないで!!貴方に名前で呼ばれても嬉しくない!」
「俺と一緒に来なよ?今の美しさのまま保存してずっとずっと愛してあげるよ?」
「気持ち悪い事言わないで!私は貴方と何て行かない!私の心も身体も全部!全部!悠馬くんのものだ!」
「んぅ〜・・・そんなやつの何が良いのかねぇ〜?俺と来ればお互いにずっと若いままで居られるよ?」
「何度も言わせないで!私は貴方とは行かない!私の全ては悠馬くんの!私の王子様のものだから!!」
「そっかぁ〜・・・なら殺すか。手に入らないなら殺しちゃおうー。」
その言葉にゾクっと背筋に寒気が走った。
それでも!私は睨みつけるのを止めないで悠馬くんの前に!私の王子様の前に震える身体を気合いで止めながら立つ私の隣に同じく悠馬くんも立って、構えながら雪間を睨みつけていた。
……………………………………………………………
清華だけを前に出すわけには行かない、俺のことを王子様とまで言った清華に庇われるだけじゃカッコ悪すぎる。
それに、何より俺が王子様なら清華は俺のお姫様なのだから。
「戦うなら一緒にだ。相手が相手だ、死ぬかもしれないぞ?それでもやるか?」
「やるよ!それしか無いなら私は戦う!悠馬くんと一緒に!」
バンッ!バンッ!と窓や扉が開いて外の風と雪が中に押し寄せてくる。
折角、焚いた火も消えそうになってるし雪に意思がある様に纏わりついてくる。
「このまま凍らせて、清華ちゃんの首から上だけ残して悠馬を凍らせた後、目の前で砕いてあげるよ。何も出来ずに恋人が砕け散る姿を見せてあげるね?」
「何で!?何でこんな事するの!?」
「女なんて少し優しくすれば、つけ上がる、自分を好きだと勘違いする、そのくせ自分勝手でワガママで思い通りに行かなければ癇癪を起こす、殴る蹴るの暴力を振るう。こっちが下手に出てれば直ぐそれだ。そんな奴等でも見目麗しいのは居るからな、俺がコレクションして見た目だけは保存してやるのさ。清華ちゃんだって同じだろう?」
「ふざけんな。清華はそんなやつじゃ無い!清華は優しくて思いやりがあって自分の目標や夢の為に全力で努力してる!それに!俺の為に俺の隣に立つ為にも俺には見えない努力だってしてるんだ!」
「ゆ、悠馬くん・・・。」
「だから!お前が知ってる女と俺のお姫様を一緒にすんじゃねぇー!」
「うん。その通りだね、私を貴方の知ってる人と一緒にしないで!それに悠馬くんを貴方と同じにしないで!悠馬くんは自分がどれだけ危険でも私や回りの大切な人達の為に全力になれる人なの!そんな人だから、私も皆も悠馬くんに力を貸すし努力もするの!甘えて寄りかかるだけの人じゃない!貴方も貴方の周りの女性達の関係性と一緒にするな!」
俺と清華の叫びの後、沈黙が降りる・・・、雪間の雰囲気も先ほどの殺意を感じなくなっているし俺は、その様子に首を傾げる。
「はぁぁ・・・つまんない・・・。」
「は・・・?」
「つまんないよ。何なんだ君等?何でそんなに思い合えるんだよ?悠馬は数が少ない男だから大事にされるのは分かるけどさー。清華ちゃんはなんなん?どんだけ清いんだ・・・。俺の時代にも清華ちゃんみたいな清い華の様な子が居たら良かったのに・・・。」
すっかりと何故か意気消沈した雪間を俺も清華も静かに眺める時間が過ぎていく・・・。
「はぁぁ・・・。よっと、二人も座りなよ。もう襲う気無いし。」
「まぁ・・・殺意は感じないけど・・・取り合えず良いか・・・。」
よっこいしょっと俺も一応ではあるが反対側に座り込む、そんな俺を見て清華も俺の隣に座った。
「まぁ・・・なんだ・・・?俺の誘惑が清華ちゃんに効かない時点で分かってたんだけどね?ほんとびっくりだよ。」
「誘惑って・・・もしかして視線が雪間さんに行きそうになったのって・・・。」
「そうそうっ。普通はそれで俺に夢中になるんだけどねー?初めてだよ?こんな風に手も足も出ないとかさー、ほんとに惜しいわ・・・。」
「そんで?結局お前って何なんだ?」
「ん-・・・まぁ、あれだ。一応だけど言われてる雪男は俺だよ。でもねー、別にコレクションとかしてないんだよね。」
「どう言う事よ?都市伝説が間違えてるってのは基本だろう?」
「んじゃまー、軽く昔話でもしよっか?」
「そうだなー、朝までは少なくても動けないし雪間の昔話でも効かせて貰おうかな。」
「うん、何が本当で何が嘘なのか聞かせて。」
そして、雪間の昔話が始まる。
「俺がまだ人間だった時の話だけど、当時も男女比はあってね。俺にも婚約者が居てさ・・・。これでも良い所のおぼっちゃんだったんだぜ?昔はお見合いでそのまま会わずに結婚する時に初めて会うとかあったりでね。」
「授業とかで学んだけど本当だったんだ?」
「あぁ、俺はそれでも途中で会ったりとか婚前交渉とかしたりとかしてたんだけど男女比のせいでってのは良い訳になるけど婚約者以外にもそう言う相手居てさ。遊びまくってたんだ。」
「ん?昔って一夫一妻だったのか?」
「いや、そう言う訳じゃ無いから別に問題は無かったんだけど俺の婚約者がな?」
「うん?何かあったのか?」
「いやほら?今でも居るでしょ?貴方を殺して私も死ぬ!ってタイプ。」
「あぁ・・・。」
俺も清華もそれを聞いてげんなり・・・。
「それで殺された訳よ俺!」
「殺された訳・・・じゃねーよ・・・。」
「はっはっはー!それでまー!俺は祀られてさ?こんな存在になっちゃったって訳。」
「えっとぉ・・・?英霊じゃねーんだから・・・。」
「それな!何もしてねーのに!お陰で何百年も立ってるのに未だに存在してるんだぜ?勘弁してくれっての!でだ、俺の婚約者もその後、この山で自殺してさ、その頃には俺も精霊?って言えば良いかな?になっててさ、一応、親に決められた婚約者とは言え愛しては居たからさ。そんな最後を見せられて咄嗟に氷漬けにして保存してしまって、それをむかーーしに見られたって訳。」
「あぁ・・・それで話が広まっていつの間に自分の気に入った女を氷漬けにしてコレクションにしてるってなった訳か・・・。」
「ごめん、何か頭痛くなってきた・・・私。」
うん、清華の気持ちは俺も良く分かるわ。
「そうそうっ!悠馬の解釈で正解!」
「いや、待て。それなら何で清華を狙った?」
「あ、うん。それなんだけどさ・・・瓜二つなんだ・・・。」
「もしかして、私ってその婚約者に似てるの?」
「うん、もう瓜二つでね。それで・・つい・・・。」
「雪間・・・ちょいっ。」
俺は雪間に向かって手招きする、疑問符を頭に浮かべながら近づいてる雪間。
「ふんっ!「いってぇぇぇ?!」・・・これで許してやる。」
「おまっ?!マジで殴ったろ?!」
「当たり前だっ!むしろその程度で済んで良かったと思え!」
「くっそぉ~・・・。まーでも、さんきゅ。」
「もうっ。悠馬くんてば・・・。でも、ありがとう。」
「雪間の言った清き華って表現は俺も同意するわ。清華は正に俺にとっての華だからな。」
頬を押さえて痛がってる雪間と俺にくっついてる清華って構図で俺達の夜は更けていくのだった。
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