第180話 小屋での一幕

「雪・・・止まないね・・・。」


「そうだなぁ~・・・。これは朝までコースかな?まぁでも、一人じゃ無いし避難場所もあるし、そこまで悲観しなくてもかな?」


「そうだねっ。悠馬くんと一緒だしねっ!」


「取り合えずだけど、保存食?っぽいのは見つけたから少し食べさせて貰おうか?一食、二食抜いても問題は無いけど、場所が場所だし食べれるなら食べるべきだと思う。」


「うん。申し訳無いけど食べさせて貰って、後で謝ろうっ。」


俺と清華は避難した小屋に残されていた保存食に手をつける。

味はまぁ・・・あれだけど無いよりは良いしお茶もあったからそれだけでも助かるってもの。


トントンッ!


「あれ?今・・・。」


トントンッ!トントンッ!


「やっぱりだ!誰かノックしてる!救助かな?!」


「いや、この天候で来れる訳無い・・・。俺が出るから下がってろ。」


「駄目だって!悠馬くんの言う通りなら危ないかも知れないのに下がって居られないよ!私も一緒に行く!」


「分かった・・・でも、後ろに居てくれよ。清華を守るのは俺だ。」


「う、うんっ///」


全く・・・決意の籠った目で見られたら、断れないっての・・・。

俺は清華に置いてあった武器になりそうな物を持たせたまま扉に近づく。


「誰だ?」


「あ・・・すいません。明かりが見えたので誰かいるのかな?って思って。この雪で戻れなくなってしまっていたから・・・。」


男・・・?こんな場所で・・・?


「そうか・・・取り合えず入るか?外に居たら死ぬぞ?」


「はい。いれて貰えると助かります。」


俺は清華と手を繋ぎながら扉に手をかけゆっくりと開けるとそこには、雪にまみれた俺と同じくらいの歳の男の子が立って居た。


「うわぁ・・・声からもしかしてって思ってたけど本当に男の子だ・・・。」


「えっ!女の人?!凄い綺麗だ・・・。」


「・・・取り合えず入ってくれ・・・。俺は逆月悠馬、こっちは伊集院清華。俺の大切な恋人だ。」


「えっ?!恋人さんなんだね・・・。えと俺は・・・雪間せつま みなとって言うんだ。よろしく、逆月くん、伊集院さん。」


「あぁ、とりあえずはよろしく。」


「うん、宜しくね?」


雪間と名乗った男を俺達は迎え入れ、同じ様に救助が来るか、雪が止むまで一緒に時間を潰す事にした。


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SIDE 清華


何だろう?この人の違和感。

雪間さん、悠馬くん、私の順番で座ってるけど気付くと目が向こうに向きそうになる。

こわい・・・男の子を見てこんな気持ちを持つなんて無かった訳じゃ無いけど、なんだろう?暴力的な事で怖いとかじゃなくて存在が怖い、直ぐ傍にいる事が怖い・・・。

何となくだけど悠馬くんも少し警戒してるしこの人の存在自体がって、存在感?とでも言うべきかそこにある事、居る事がオカシイ、そして恐ろしい・・・。


「清華。」


「ぁ、うん?何?」


そんな事を考えていた私に悠馬くんから声がかかって悠馬くんを見つめた。


「今の内に少しでも寝ておきなよ。火とかは俺が見ておくからさ。」


「で、でも・・・。私だけ・・・。」


「良いから、状況が状況だし体力の温存の意味も込めてな。」


何となくだけど悠馬くんから、有無を言わさない感じがする。

雪間さんの視線が私に向いてるのも気付いてるっぽい?だからこそ、私が寝ることで悠馬くんを一人にはしたくないんだけど・・・。


「ほらっ。俺よりも清華の方が疲労はでかいんだし、救助が来ない場合は自力で戻らないとだし、回復の意味でもな?」


そう言って悠馬くんは私を無理やり横にして膝枕をしてくれる。

恥ずかしいけど、嬉しいのも事実で思っていたよりも疲れていたのか、私は自分の意思とは別に意識が落ちて悠馬くんの膝の上で直ぐに寝息を立て始めた。


…………………………………………………………

「さって・・・お前何者だ?」


俺は清華が寝息を立て始めてから少しして雪間湊と名乗ったやつを睨みながら問い詰める。


「何って?自己紹介したじゃんか。もう忘れちゃった?」


「そんな事を聞いてるんじゃねーよ。今ここにいることがオカシイから聞いてんだ。」


「へぇ・・・オカシイって?君達と同じく遭難してる一人の男だけど?」


「先ず、そこがオカシイんだよ、中には俺みたいに外に出るやつも居るだろうよ?それは否定はしねぇ。だが、今この場所では別問題だ。」


俺の話を何処か面白そうに興味深そうに聞いてやがる。


「俺は今日、お前を見てない。宿でもゲレンデでもな。そして、すれ違いで顔を合わせることが無かったとしても、と言うで動いてることが有り得ねぇんだよ。男子の数が少ないんだから、雪山で一人で動かせる何てことあり得ねぇんだ。もう一度だけ聞くぞ?お前は何者だ?・・・いや、何なんだ?」


「・・・クククッ・・・アハハッ。うん、凄いね君!全くさー、好みの女だけ迷わせる筈だったのに、何の躊躇いもなく追いかけるんだもんな〜。マジで目を疑ったわ。」


「んだとぉ?お前まさか・・・清華だけを狙って・・・?」


「当然!お前もさー女なんて幾らでも取り替えが効くだろ?追いかけて一緒に遭難するとか馬鹿過ぎねぇ?」


「はぁ・・・お前が何者でも良いわ。今ので分かった。」


「は・・・?何が分かったんだい?」


「とても寂しい奴だって事、誰からも本気で心から愛された事が無いって事が分かったよ。」


「な、なんだと・・・?」


「事実だろ?女なんて幾らでも取り替えが効くなんて言葉が出て来るんだ。正解だろ?なぁ?雪男さんよ。」


「黙れ・・・。」


「清華はお前には渡さねぇ。たとえここで死んだとしても刺し違えても清華は守る。」


「だったら・・・やってみろよ!」


ガバっと俺の首を掴んで持ち上げて来る。


「ぐっ・・・。はっ?!どうした・・?図星つかれて・・・キレたか・・・?」


ぎりぎりと俺の首を絞めつけて来る雪間を睨みつけながらも俺は決して諦めずに睨みつけ続ける。


「口だけは達者だな?絞められて何も出来てないじゃないか。」


「お前こそ・・・それだけか?俺を・・・殺すならとっくに出来てるはずだろ?なのに・・・手を下しきれて・・・ねぇーじゃ・・・ねーか。」


ギチっと俺の手を掴んでる雪間の手を俺も力いっぱい握りしめて爪を突き立てながらお互いに睨みあっていると、流石に清華が目を覚ました。


「ぇ・・・?な、何してるの?!悠馬くんから手を離して!!」


その言葉と共に清華が雪間に体当たりして突き飛ばした後に俺を庇う様に俺と雪間の間に立ちふさがった。


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