第179話 遭難

SIDE 愛央


「悠馬!清華さん!」


悠馬の声が聞こえてワザと転びながら止まり後ろを振り返るとルートをいつの間にか外れて滑り落ちて行く清華さんを追い掛けて悠馬が向かう姿が見えて叫んだ。


「兄さん?!清華義姉さん!!」


「駄目です!菜月さん待ってください!」


直ぐに板を外して追いかけようとする菜月ちゃんを志保さんが声を出して止めるけど菜月ちゃんは止まらない。


「だめ!落ち着いて!菜月ちゃん!!」


「でも!二人が!兄さんが!」


追い掛けたい気持ちは分かる。私だってそれは同じだもん。


「いっちゃだめ!それよりも下に降りて連絡することが優先!!」


「そうです!救助要請が先です!!」


「うぅぅ・・・分かりました!それならこれをここに!」


菜月ちゃんはストックを二本、悠馬達が消えた場所に差して目印?にしてから、外した板まで戻って直ぐに付け直した。


「急ぎましょう!止まらずに行きますよ!!」


「ちょっ!ちょっと?!ストック無しで良いの?!菜月ちゃん!?」


「ま、待ってください!危ないですって!!」


私と志保さんの声も気にせずにどんどん滑り降りていくのを私と志保さんは大急ぎで追いかける。


無事で居て!悠馬!清華さん!!


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くっそ・・・落ちた、清華に追いつこうとして間に合わずに一緒に落ちた。

清華は気を失ってる・・・幸いにも怪我は無さそう、俺も大丈夫。


「何処かに避難小屋でもあれば良いんだけどな・・・。」


とにかく移動だ、このままここに居たら死ぬ!

清華は背負うしかないな、流石にお姫様抱っこでの移動は無理だし起きるのも待ってらんない。


「落下地点の目印は・・・板で良いか。邪魔にしかならないもんな。」


俺は落下地点にスキー板を差して目印にした後、清華を背負い歩き出した、雪の中だからゆっくりにはなるけど・・・何処か吹雪をしのげる場所を見つけないとだ。


「頼むぜ・・・何かあってくれよ・・・。」


俺は清華を背負ったまま雪の中を歩く。


「多分、管理側とかのコースに落ちてると過程して・・・登るのが確実か・・・?」


吹雪いているし清華も背負ってるから進みずらいが・・・清華は絶対に助けるし守る。

俺が清華を助けるんだ!


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SIDE 菜月


「ママ!!!!」


あの後、猛スピードで私は下まで戻った、慣れてないとかそんな事は関係なしで戻って来て最後はわざと転びながら止まって直ぐに板を外して宿の中に戻ってママ達の所に急いだ。


「な、菜月ちゃん?どうしたの?悠ちゃんは?清華ちゃんは?」


「それが・・・。」


私の報告にママも清華義姉さんのお母さんでもある伶佳さんの顔が真っ青になる。


「そんな・・・清華は無事なの?!」


「悠馬が直ぐに追いかけたから多分・・・。でも!直ぐに救助とか人を出さないと!」


「そうです!お母さん!早く手配を!」


「そ、そうね!行ってくるから待ってなさいっ!」


有希華さんが直ぐに走り出して兄さん達の救助の手配に向かった。


「私も一緒に行きます。菜月さんのストックが目印だと言わないといけませんし。」


「うん。志保さんよろしく。」


愛央義姉さんの言葉に志保義姉さんが頷いて直ぐに有希華さんの後を追う。


「はぁぁ・・・。」


私は一先ず出来る事をした安心感からか力が抜けてしまい、椅子に座りこんでしまった。


「菜月ちゃん大丈夫?!」


「は、はい・・・何か力が抜けてしまって・・・。」


「うん。仕方ないと思うよ。まだ安心は出来ないけど取り合えず出来るのはここまでか・・・。」


ぎゅっと私と愛央義姉さんの手をママが握って来る。


「大丈夫・・・悠ちゃんと清華ちゃんは絶対に大丈夫・・・。」


「ママ・・・。」


「葵さん・・・。」


ママの手も震えてる・・・それでも気丈に振舞ってる、私達を見て伶佳さんも茉優さんも柚希さんも同じ様に上から手を重ねてくれる。

皆、心配と不安から震えながらも私達の為にしてくれてる・・・それなら・・・私も・・・。


「うん。兄さんだもん!絶対に大丈夫・・・。」


「悠馬がついてるんだから大丈夫に決まってるよ!」


私達は不安を吹き飛ばす様に大丈夫だと言い合いながら志保義姉さんと有希華さんが戻るのを静かに待つのだった。


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パチパチッ


あの後、何とか小屋を見つけた俺は清華を背負ったまま中に入る。

火を焚ける器具も場所もあってくれたお陰で何とか凍えずに済むようにはなった。


「作業部屋って感じか・・・。仮眠用だとは思うが毛布やらもあって助かったな。清華も落ち着いたみたいだし一先ずって感じか・・・。」


着いてすぐは俺もだけど清華も震えていてこのままだと不味い状態だった。


「ん・・・んぅ。・・・あれ?ここは?」


「あ、起きたか?痛いところとかは?」


「ゆうまくん・・・?うん、それは大丈夫だけど・・・って!!」


「それなら良かった。雪がクッションになったからかな?何とも無くてよかったよ。」


「ここは?!てかもしかして遭難?!皆は?!ごめんなさい!私のせいだよね!!」


すっかりと混乱した清華は起き上がって俺に詰め寄りながら聞いてくる。


「落ち着け。先ず、ここに関してだけど清華を背負って歩いていたら見つけた小屋だ。多分、スキー場の作業員の休憩場所とかだと思う。」


「う、うん・・・。」


「遭難してるのは間違いないけど、場所的に見つけてもらいやすいだろう。それに、愛央達は無事に降りたはずだしな。」


「そっか・・・皆が無事なら・・・でもごめんね

・・・。」


「俺が勝手に清華の後を追い掛けただけだから気にするな。」


「でもぉ・・・。」


ポンポンっと側に来た清華の頭を撫でる。


「俺も清華も無事だったんだから、これでごめんなさいは終わりな?」


「うん・・・。」


火に当たりながら俺と清華は静かな時間を過ごす。

コテンっと俺の肩に清華の頭が乗せられる。


「何か、こうやって二人きりの時間って久しぶりの気がする。」


「言われればそうかもな。何だかんだで側に誰かしら居たり回りに誰かは居たりだもんな。」


「うん。それは別に良いんだけど、それはそれとして今よりももう少し二人っきりの時間も欲しいなって思うのが本音かな〜。」


「それは俺も考えてた。日替わり?曜日かわり?じゃ無いけど帰ったら愛央と志保と相談しような?」


「うんっ!多分だけど二人も同じこと考えてると思う。」


「確かにな〜。四人でエッチするのも良いけど二人きりでゆっくりしたいのもあるしなぁ〜。」


「もうっ!そこの事じゃないよっ?!」


「分かってるってっ!そんなに顔赤くしなくていいだろっ。」


もうっ!もうっ!と、ポカポカと俺の胸を叩いてくる清華を抱きしめながら撫でてゆっくりとした時間を過ごしていった。


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