第190話 民間伝承

「そうそうっ!悠ちゃん、清華ちゃん、これを見てっ。」


「うん?何したの母さん。」


母さんが差し出してきた冊子を読むと郷土資料の写しだった。

それは、この地方に伝わる都市伝説、昔話、民話と言うべき内容・・・。

そう、奏の語った話が間違えて伝わっている内容だった。


「これは・・・間違えてます。」


「間違えてるって?どう言う事?」


「だって!雪間くんは!何人も犠牲に何てしてない!最初の婚約者が山で自殺したから凍らせて保存しただけで!何人も何人も犠牲になんてしてないから!」


「清華?どうしたの?」


「落ち着け清華。」


「でも!だって!悠馬くん!こんなの?!?!」


清華の気持ちは分かる、奏から聞いたと伝わってるでは全く違うのだから否定したい気持ちは分かるし、奏と話した俺達は真実を知る一部の人間として正さないといけないんだろう・・・でも・・・。


「奏は、望んでない。」


「それはっ!でも・・・。」


「俺達だけが知ってるってだけで充分だろ?奏だって広めてくれとは言わなかったし俺たち二人だけでも知ってるならそれで良いんだよ。」


俺と清華のやり取りに周りの皆は頭の上に???を浮かべたまま俺達を見詰めて来る。


「毎年毎年、被害者がーって書いてるけど、そんなニュース見ないでしょ?それとさ、雪男が氷漬けにして~ってのもおかしくね?」


「どう言う事?悠馬。」


「うん、簡単な話なんだけど・・・誰が確認してるの?」


「「「あっ!!!!」」」


「仮にだよ?雪男が本当に居るとしてさ。書かれている通り毎年犠牲者を出してるとしてね?氷漬けにして保存してるって誰が確認してるのよ?」


「「「確かに・・・。」」」


「そんでさ、本当に確認してるやつと、雪男がいるとしてさ?何で無事なの?」


「共犯者でもない限りおかしいですよね・・・。」


「んでさ、共犯で犯行に及んでいるとして・・・警察は何してるの?そいつらも共犯って事?」


俺が言う理論に誰も何も返答を返せない、回りで聞いてる他のお客さん、宿の人達の誰も反論できないで居る。


「さらに言うとさ。確認してる人が人間としても、雪男は氷漬けにする事が出来る力を持った人間、もしくは怪異って事でしょ?そんなんと関わって何で確認して戻って来れるのよ?」


「確かに言われると矛盾しかないわね・・・。」


「でしょ?だから、おかしいって言ってるのさ。まぁ・・・都市伝説とか民間伝承なんてそんなものかも知れないけど・・・。」


パチパチパチパチっ。


「お見事です!・・・っと、いきなり声をかけてすいません。私、この辺りに伝わってる様な日本中の伝承などを研究してるんです。」


「はぁ・・・それで、えっと・・・?」


「はい!私もこちらの伝承に違和感を覚えまして研究していたのです。そして!私も疑問に思った事に気付いてらっしゃったので、失礼だとは理解していますが、話しかけてしまいました。」


突然の出現に母さんを筆頭に周りが警戒を始めたけど、どこかのお偉い教授さん?と分かって少し空気が和らいだ。


「それでですね!どうお考えなのか聞かせていただいても宜しいでしょうか!!!」


「はぁ・・・まぁ良いですけど、こういう話ってのは元の話があるのは勿論として・・・ではどんな元があるのか?ってなりますが、恐らく過去に実際にがあったんでしょうね。」


「ですよね!ですよね!」


すっげーぐいぐい来るなぁ~・・・。


「最初の一人が居て、その人の関係者か、大昔の話なら、同じ村?の人が山で凍死して氷漬けになった事があってそれを片付けていたのを見た無関係の人間が雪男が女性を氷漬けにしていたって話を広めた、ってのはどうです?そして、時代の経過と共に氷漬けにして保存してるって話だけが広まっていった。山なんて季節関係無く死人が出るものでしょう?」


「確かにそうですね、最初の一人の行動が・・・。成る程なるほど・・・。大変貴重な意見ありがとうございました!それではっ!」


「嵐・・・かな?」


「確かに、嵐みたいな人でしたね・・・。」


確かに・・・なんだったんだ?ってレベルで嵐みたいな人だったな。


「ねぇ?悠馬くん・・・さっきの・・・。」


「あぁ・・・まーね?あの人なら辿り着くかもだしね。」


そう、そうすれば奏の事も広まると思うしあいつは望まないかも知れないけどそれでも少しくらいは・・・な?


------------------------------------------------------------

「ふんふん~♪」


「楽しそうだな?清華。」


「うんっ!お土産コーナーって見てるだけで面白くない?」


「うん、分かるけどねっ。」


俺と清華はお土産コーナーに来て色々と見ている。

菜月や、愛央達はお風呂に行ったし母さん達、大人組は部屋で飲んでるから二人きりだ。


「あ・・・これ・・・。」


「うん?どうしたん?」


俺は背後から清華の持ってる物を見ると、そこには・・・。


「絵?・・・この絵ってもしかして?」


「やっぱりそうだと思う?」


「なんだ、ちゃんと伝わってるんじゃんかっ。」


「だねぇ。雪間くんの言っていた人ってこの人だよね?」


「多分そうだね。時代背景考えたらおたふく顔で書かれて無いのはびっくりだけど、それだけちゃんと伝えたかったって事かも知れないな。」


そう、その絵は奏の言っていた通り清華にそっくりな女性が描かれている綺麗な絵だった。


「和服姿の清華って感じで良いなこれ。」


俺は絵を持ってレジに向かってそのまま購入した。


「買ったの?」


「うん。部屋にでも飾っておこうかなーって思ってさ。今回の経験の記念にねっ。それに、和服の清華って思えば猶の事ねっ。」


「それはちょっと恥ずかしいかも///でも、うんっ。これはこれで良いかもねっ。」


一緒に購入した絵を見ながら俺と清華は部屋に戻った。

愛央達も戻っていて俺の買った絵を見て、「清華さん?」って首を傾げていたのがとても印象的だった。


そうして俺達はバスで住んでる街へと戻る。


「またな・・・奏。」


「ぅぅん・・・。」


俺の呟きに清華が反応するかの様に声を出しながら俺の肩に顔を擦り付けて来た。

そんな清華の可愛い反応を見ながら、この冬の旅行で面白い体験だったけど怖くもある体験を清華として少し絆が強まったのを感じながら俺は物思いに耽る、俺の肩を枕にして可愛い寝顔を見せてくれている俺のお姫様の息遣いと温もりを感じながら・・・。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る