第173話 準備完了

「違うっ!もう一度、最初からやり直し!」


「うわぁ~・・・良く続くなぁ~・・・詩音さんもあの子達も・・・。」


「まぁ、悠馬さんが手を貸すんですし中途半端は許されませんしね。」


「葵さんも良く了承しましたね?悠馬くんが大人の世界に首を突っ込む事。」


「悠ちゃんがね・・・本気で怒ってたのよね、私もこんな言い方はしたくないんだけど、一つの事実として今の悠ちゃんには商品価値があるから。詩音さんが商品扱いされて自分の場合も考えて重ねてしまったんでしょうね。」


「はぁぁ・・・商品扱いとかほんとに酷過ぎる、私でもキレますよ。」


今、俺は詩音さんの再デビューに向けての訓練を施している、素人の俺が何をしてるんだって感じではあるけど、詩音さんのデビュー曲になる楽曲は俺が提供する事になった。

それに伴って歌唱訓練は俺がするって事で休みの度、放課後の時間等を練習に充てて仕込んでいる。

折角だからバックダンサーも欲しいって事になったんだけど、それは以前から詩音さんがストリートでダンスをしてる友達達に声をかけて、今回の計画にも協力させてしっかりと秘密を守ると言う契約の元、行われている。


「悠馬ー、そろそろ休憩いれなよー。詩音さんもだけどお友達さん達も死にそうだよ?」


「あぁ、うん。そうだな・・・、それじゃ休憩いれるからしっかりと休んでくれ。」


は~~い・・・っと返事をした詩音組はそのまま床に倒れ込む様にしながら休憩?し始めた。


「お疲れ様です、悠馬さん。」


「おつかれ~、悠馬くん。」


「ありがと、まーでも俺はそんなに疲れてないし?」


「それにしても・・・間に合うのこれ?全然じゃんっ!」


「間に合わせるさ・・・死ぬ気でやって貰わないと困る。」


俺の言い方に愛央達3人も、母さんも苦笑いである。


「そう言えば悠ちゃん?あっちの方は進んでるの?」


「あぁ、星谷さんから連絡来て発言何かは保存できたそうだ。」


「そう、それなら後は詩音ちゃん達、次第って事かしら?雪村さん達の方も順調に進んでるらしいから。」


「そうだね、こればかりは死ぬ気で・・・いや、死んでもやって貰わないとだからな。」


「死んでもって・・・せめて生かしてくださいよ〜・・・。」


「お?動けるようになるまでの時間が短くなりましたね〜。良いことですっ。」


「もうっ!悠馬さんはっ。・・・あの、間に合うのかな?」


「間に合わせるんですよ。その為にこんな無茶してるんですからね、詩音さん達の頑張りを無駄になんてさせません。してたまるか!」


「はいっ。」


「んじゃ、次は歌の方行きますよ、清華~演奏お願いしても良い?」


「え、あっ!うんっ!勿論っ!」


そうして予定はまだ未定ではあるがデビューに向けてのレッスンが進んでいく、勿論、俺達だけじゃ話にならないので雪村で用意したプロの人達からのレッスンも受けて詩音さん達はどんどん、日を追う事に力をつけて行くのだった。


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SIDE 九羅華


ふぅ〜・・・あの話し合いから数週間、全部任せきりなのも問題だと言うことで違約金を何とか出来ないかを何度も社長に直談判をしていた。


「まぁ、何の成果も無いけど・・・。」


とは言え、悠馬さんから依頼された部分は順調に集まっている。

こうも、悠馬さんの思惑通りに進むなんてね〜・・・あの子は異常の塊よね・・・未来視でもあるのか?っと本気で思ってしまう。


「星谷さん、社長が呼んでます。」


「ありがと、直ぐに行くわ。」


はぁぁ〜、今度は何なのかしら?また厄介事?それともストレス発散?早く辞めたいわ・・・。


そんな事を考えながら社長室の前まで来て身嗜みを整えてっとノックをした。


「はい、どうぞ。」


「失礼します、何か御用でしょうか?」


「えぇ、まぁね。座って。」


社長に促されるままソファーに座る、さりげない仕草でポケットのボイスレコーダーを起動しておく。


「先ずは、貴女の担当していた詩音に関して何だけど、各社契約していた企業からの違約金の請求書を渡しておくわ。奏詩音に届けておいて。」


「はあ、本気で払わせるつもり何ですね・・・。」


「当然よ、商品の分際でこの私に逆らったんだから社会の厳しさを教えてあげないとね?まっ、これで破滅するなら、それは自業自得よ。」


くっ!我慢っ!我慢っ!


「とは言え泣きついてきたら考えてあげても良いけどね〜。その後は使えなくなるまで道具として使ってあげるだけだし?」


この!クソ社長!あーーーもうっ!!殴りたいっ!


「それで、貴女の次の担当なんだけどねー、まだ決まらないのよ。」


「そうですか、別に焦っては居ないので良いですよ?事務仕事は他にもある訳ですしね。」


「まーそうね、折角だし後続の育成をしてくれてもいいわ。」


「あぁ、それも良いですね、新人も増えていますし。」


「ええ、それでこれからなんだけど・・・。」


私のその後の社長の話を適当に相槌を打ちながら話を聞き流して話を終わらせる、勿論、詩音の事をという発言はしっかりと録音しておいた。

悠馬さんの依頼とは言え・・・これをどう使うつもりなんでしょう・・・?


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「おしっ!完璧ー!皆さんお疲れ様ですー!!」


「やったぁぁぁぁ!!」「頑張った甲斐あったー!」「大変だったけど楽しかったよね!!!」


自分達が覚えたものでこれから何が起こるのかを理解して最後まで歌って踊ってを完璧にやり遂げた皆の顔は満足そうな顔になってる。


「はいはいっ!まだこれからよ!ここからが重要なんだからね!」


雪村の雇ったプロのトレーナーから活が入って皆は少し落ち着いた。

その中で詩音さんだけは拳を握りしめたまま天井を見詰めている姿が俺の目に映る。


「どうしたんですか?詩音さん。」


「ぁ・・・いや・・・、うん。この一か月間、がむしゃらに練習して来たけど・・・やっとスタートラインに立ったんだなって・・・。」


「頑張ってましたからね。正直、無理なんじゃ無いかって思ってました・・・すいません。」


「んーんっ。正直な事言うと、私も本当に出来るの?って半信半疑だった・・・。」


「謙虚なのは良いことですけどね、もっと堂々とした方が良いと思う、これからこのチームを引っ張るリーダーは詩音さん何だから。」


「そうだよっ!詩音がリーダー何だからもっと自身持ってっ!」


「詩音に貰ったこのチャンスは絶対に無駄にしないっ!」


「詩音を舐めてるクソ社長の目論見に何て負けないよっ!」


「私等は詩音に着いて行くから!頼むよ、リーダー!」


「皆・・・っ!うんっ!頑張って沢山の人に恩返ししようっ!!」


どうやら詩音も気合いが入ったみたいだな。

これなら大丈夫だろう、だから後は・・・。


俺が、クソ野郎に爆弾を仕掛けてやるだけだ。


……………………………………………………………

SIDE 詩音の所属していた事務所


おかしい、詩音さんの1件から人が減って行ってる。

最初は詩音さんの後輩達、次は事務作業の人達、辛うじてマネージャーメインの人とタレントは残ってるけど、明らかに減ってきた。


「ふざけないで!!あんた!この業界で二度と働けると思うなよ!!」


「どうでもいいので、有給消化が終わり次第退職にしておいてください、もしも、ヤラない場合は出るところに出ますので・・・失礼します。」


また一人・・・今度は誰?


「って!?星谷先輩?!?!」


「丁度良かったわ、私は今日付けで辞めるから、今までありがとうね。」


「ちょっ?!ちょっ!?何でですか?!何が起こってるんです?!」


「ん〜・・・ごめんなさいね。教えてあげたいけど今はまだ無理なのよ、直ぐに分かると思うけどね。」


「ど、どういう事ですか・・・?」


「まぁまぁ、もしも辞めたくなったり、辞めて次の仕事の相談したいなら連絡頂戴ねっ。それじゃっ!!」


いやまって・・・どう言う事?本当に何が起こってるの??他の人達も星谷さんが辞める事に驚いてポカーンっとしてる。


混乱している私を他所に事務所の電話からトゥルルルルっと音が鳴り響いた。


「はいっ、お電話ありがとうございます。こちらは・・・。」


私は意識を切り替えて直ぐに電話に出て心底驚いた。


「ぇ・・・?えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ?!?!しゃ、しゃちょぉぉぉぉぉ!!!!」


まさかの予想すらしてない人からの電話で事務所に私の叫び声が響き渡るのだった。


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