第172話 作戦会議?
そして次の日、俺と菜月は待ち合わせの時間の前に昨日の喫茶店で待機していた。
適当に注文を済ませて時間を潰していると、詩音さんとマネージャーだと思われる人が来店して、店員の案内の元、俺達のテーブルに来た。
「すいません、お待たせしました。」
「初めまして、奏 詩音のマネージャーをしている
「初めまして、逆月悠馬です、それとこっちは妹の菜月。こちらこそ本日はお忙し中ありがとうございます。」
先ずはご飯でも食べましょうっと二人を席に着かせて注文を済ませ届くまでの間に世間話をする。
「それにしても詩音から話を聞いた時は驚きましたよ・・・まさかあのYouMaと知り合って居て話があるから会えないかと言われてると聞いた時は。」
「あはは・・・まぁそこは・・・。こちらこそ驚いてますよ?俺みたいな子供からの呼び出しにこうも簡単に対応して戴けるなんて。」
「それだけこちらも切羽詰まってるって事だと思って頂ければ・・・。」
「まぁ・・・そうでしょうねぇ~・・・。押し付けられる違約金も数億程度じゃ済まないでしょうし詩音さんの活躍を考えたら。」
「まーまー!難しいお話は後にしましょうよー!お腹も空いたままじゃ良い考えも浮かびませんってっ!」
「そうだな・・・先ずはご飯だな!」
菜月の頭を撫でてると詩音さんも星谷さんもかっこうを崩して届いたご飯に舌鼓をうつのだった。
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そしてお会計を終わらせた後、俺達は店を後にして星谷さんの車に乗せて貰い一先ずの目的地である我が家に向かい、母さんの出迎えの元、リビングで一息つく事になる。
「さて・・・それでは改めてですが本日の目的を話したいと思います。」
俺の仕切りに誰も違和感を持つことも無く静かに頷いて続きを促して来る。
「では、先ずこれを見て貰って詩音さんと星谷さんに精査をお願いします。」
俺が出した計画書を受け取った二人は一度、母さんを見る、母さんはそれに頷くだけで特に何かを言う事は無い。
その姿を確認した二人は俺の出した計画書を開いて読み進めて行く。
最初は難しい顔をして居た二人は徐々に驚きの顔に変わり真剣な顔で最後まで読み進めた。
「あの・・・これは本気で・・・?」
詩音さんが直ぐにそんな事を呟く。
「さぁ?それが本気になるかどうかは詩音さん次第ですよ。それと・・・。」
「私ですね?」
「ええ、悠ちゃんの計画通りに進めるには星谷さんの協力が不可欠になります。勿論、裏切るなら裏切るで構いませんよ?その場合は違う手を打つだけなので。」
母さんが社長としての顔を出してハッキリと告げる。
「それと、詩音さんには実質的に拒否権はありませんが、かと言ってこの通りにしろとは勿論ですが言いません。その場合は・・・分かりますよね?」
「はい、私には後がない、これを断れば・・・待つのは破滅だけ・・・。」
「その通りです。星谷さんに関しては母さんが協力は不可欠と言いましたが俺からすれば正直な所、居なきゃ居ないで構わないんですよ。代わりのマネージャーを用意すれば良いだけなので・・・。」
「兄さん・・・言い方・・・。」
「いえ、構いません。実際の所その通りなので。なので、それを加味して答えを言わせて頂きますが・・・乗らせてください。」
「良いの?九羅華さん。これだと今の事務所を辞める事になるんだけど・・・。」
「良いの。もうあの社長には付いていけないし詩音を見捨てるなんて選択肢は私には無いわ。どれだけ一緒に頑張って来たと思ってるの。」
「ぁ・・・ありがとう・・・。」
うん、良い関係性だね、腐ってるのは社長だけかもしれんけど気に入らんのは変わらん。
「それじゃその計画書通り進めるって事で良いですね?」
「「よろしくお願いしますっ!!」」
「それじゃ・・・母さんのお願いして良い?」
「ええっ!少し席を外すわね。」
母さんを待つ間に二人は計画書を頭に叩き込むかの様に真剣に見続けている。
「これは・・・。」「でも・・・。」「詩音に出来るかな・・・?」等などぶつぶつと話してるのを菜月と二人で待っていた。
「ごめんなさいね。直ぐに来てくれるそうよっ。」
「そっか、それなら続きは来てからって事にしようか。」
「あの、疑問なんですけど、何で家で何ですか?普通なら会社でとかになるのでは?」
「あぁ、理由は簡単ですよ、スパイって言うか裏切者を出さない為です。何処で誰が聞いてるか分からないので、それと分かるとは思いますけどこの計画はバレたらそこで終わります。なので・・・詩音さんが表舞台に出るまで水面下で進めるのが一番なんです。」
「で、でも!そんな簡単には・・・。」
「俺の見立てでは早くて一か月ですね。詩音さんの頑張りは勿論ですけど星谷さんの頑張りも必要になります。そして準備が済んだら思いっきりメディアに出て貰ってクソ社長の目論見をぶっ壊します。」
まぁ、それと・・・菜月じゃ無いけど、事務所ごとぶっ潰すのも面白い。
「あ、あはは・・・クソ社長って・・・っ。ぷっ、くくっ、ふふっ。」
「こらっ!詩音、笑ったら失礼でしょ!一応お世話?になってたんだしっ!ふふふっ。」
「九羅華さんだって笑ってるし!お世話に疑問符付いてるじゃないっ!」
二人してツボに入ったらしくお腹を抱えながら大笑いしてる。
まぁでも、笑えるようになったのは良い事だし、美人の笑顔からしか取れない栄養素もあるしねっ。
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「お待たせしました。お邪魔します。」
それから少しして、玖美子さんと夏凛さん、そして陽依里ちゃんも一緒になって訪れた。
「お久しぶりです、今日はいきなりですいません。」
「いえいえ、悠馬さんからのお話なら無理してでも時間はあけますよっ。」
「ありがとうございます、それで何ですが、こちらに居る二人が今回の話のメインでもある奏 詩音さんは知ってますよね、こちらがマネージャーの星谷 九羅華さん。」
「初めまして、ご紹介に預かりました、星谷です。」
「お久しぶりです、よろしくお願いします。」
「夏凛さんもありがとね、無理な話なのに通してくれて。陽依里ちゃんもありがと。」
俺はそれぞれにお礼を言いながら、詩音さん達に渡した計画書を雪村家にも渡して見てもらう。
玖美子さんは直ぐに社長の顔になって精査を始め夏凛さんと陽依里ちゃんは俺と計画書を驚いた顔で何度も見てる。
「これを悠馬さんが?」
「母さんからも意見は貰いましたけど大体は俺が。」
「すご・・・。」
「悠馬さんすごぃ〜・・・。」
「ありがとっ。それは兎も角にして、どうです?初期投資は大きいかも知れませんが恐らく数年で逆転するかと思いますよ?」
「確かに、詩音さんが歌手やタレントとしてデビューすれば直ぐに話題にはなるでしょうけど・・・。」
「やらせてもらえませんか?!どんな仕事でもします!歌でも踊りでもバラエティでもなんでもやります!お願いします!!」
思いっきり頭を下げる詩音さん、甘ったれるなって言う俺の言葉が効いたのか真摯に玖美子さんにお願いしてる。
「それと、あのクソ社長の言っていた奏詩音のタレント化をこちらでしてしまう事であっちの目論見を潰します。予想になるんですが、アレの目的は奏詩音の道具化でしょうね。」
「道具化?」
「考えても見てください、やり方おかしいでしょう?いくら売れてるモデルと言っても違約金を押し付けてクビにして何事も無く終ると思います?」
「あ・・・そっか・・・。詩音さんが訴えてしまえば何もかも終わるんだ!!!」
「そう、詩音さんが勝てなくてもこんな事を平然とする事務所と社長が居る事務所にこれから誰が所属したいと思う?」
「確かに・・・昔ならいざ知らずSNSとかで一気に拡散されて終わるよね?仮に生き残ったとして話が聞こえなくなったとしても誰かが所属しようとしたら知ってる人が教えるか、回りが調べるからバレる。」
「ん~・・・?兄さん、それじゃーこんな回りくどい事する意味ってあるんですか?」
「ただ単に終わらせるならやる意味なんて無いよ。だけど敢えてこの流れに乗ってやるのさ。」
「何故です?意味は殆んど無いですよね?正直、裁判に勝てなくても違約金を押し付けて来るのは無くす事も出来るのでは?」
「出来るだろうね。でもさ・・・腹立たないか?それと菜月の言う通りに終わらせたとしてその後の詩音さんの道は?」
「あっ!そっか・・・その後が無いんですね。だから・・・。」
「それと星谷さんにはやって貰いたい事があります。」
「やって貰いたい事ですか?」
「えぇ。先ずは・・・。」
そこから俺の作戦を説明して、星谷さんにはやって貰う事を教えて行く。
「まーこんな事言っても・・・雪村の了承が無いと意味は無いんですけどね~。」
っと、俺はヤレヤレって感じで力を抜いてソファーにゆったりと座りながら玖美子さんを見る。
そんな俺と同じ様に夏凜さんと陽依里ちゃんも自分の母親を強く見詰めてる。
「ふぅ・・・そんな目で見ないでよ二人共・・・。正直に話しますと、詩音さんの所属していた事務所の社長は色々と問題になってるんですよねぇ~、それと事業部を立ち上げたのは良いんですが所属タレントを探すのも低迷しているので今回の話は渡りに船でもありますから、詩音さんさえ良ければこちらからもお願いしたいです。勿論、一緒に星谷さんもお願いします。」
「あ・・・ありがとうございますっ!」
こうして一応ではあるが詩音さんの所属先も決まったのだった。
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