第171話 詩音の未来は・・・

「すぅぅ・・・はぁぁ・・・よしっ。」


事務所に戻った私は周りからの目も気にせずに真っ直ぐ社長室を目指した。


コンコンっ


「どうぞ。」


「失礼します。さっきはすいませんでした。」


「ん?あぁ、詩音ね。別にいいわ。それで?」


「はい、色々考えましたけど・・・。「あぁ、待って。先に伝えるけど契約は解除するから。」・・・え?」


「え・・・?」


「商品以外に興味無いから置いてる荷物持って出て行ってね。それじゃお疲れ様。」


「そ、そんな・・・。」


「あぁ、それと契約先との違約金の請求書も後で送るから支払い宜しく。それじゃお疲れ様ー。」


社長のその言葉に呆然としながら頭の中は空っぽになってしまって私は特に噛みつく事も無く事務所を後にした・・・。


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その後、気付いたら私は自宅へと戻っていた。

ふと、通知がある事に気付いてスマホを手に取ると、マネージャーが何度も電話をしてくれたみたいで沢山の履歴が残っていた。

フリッペにも通知があって、それを見ると、マネージャーから何とか動いてみるから軽率な行動はしないでね?って内容が届いていた。

それには、分かりましたとだけ返事をして他の通知を見る。


「これは・・・菜月ちゃん?えっ?!悠馬さんが連絡先を教えておいてって言ってたから教えます?マジで・・・?」


私は震える指で悠馬さんの連絡先を登録すると直ぐに、挨拶が飛んできて、やり取りを始めた。


:どうもーよろしくです!

:こちらこそ!

:菜月に頼んで教えておいてくれって言ったけど良く考えたら芸能人に何言ってるんだ?俺って思ってたけど大丈夫でした?問題あるなら消してくれて構わないですし俺も消しますので教えてくださいね。

:いえっ!絶対このままでお願いします!!!絶対に誰にも見られない様にバレない様にしますから!!!!

:ぇぇぇ・・・いやまぁ・・・詩音さんが良いなら良いんですけど・・・。

:はいっ!お願いします!えっと、それで何故急に?

:あぁ~あれですよ。話聞いたんで気になったのともし良ければ力になりましょうか?っと・・・。

:ぇ・・・?ぁ。いやでも・・・。事務所から契約切られてしまったので、もう・・・。

:詳しく

:え?

:詳しく話してください。

:あ、うん・・・実は・・・。

:へぇ~・・・気に入らねぇ。

:あの・・・?

:あぁ、すいません。それで何ですけど明日って時間あります?あるならマネージャーさん連れてちょっと来て欲しい所あるんすけど。

:あ、はい。私は大丈夫ですけど・・・マネージャーは・・・どうだろ?ちょっと確認してみるのでまた後で連絡しても良いですか?

:勿論です、待ってますね。

:はい、それじゃまた後で。


そうして、悠馬さんとの会話を終えた私は直ぐにマネージャーに連絡をして明日の昼過ぎからなら大丈夫と言う事になったのを改めて悠馬さんに連絡して今日、会った喫茶店で待ち合わせをする事にしたのだった。


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さって・・・マジで気に入らねぇなぁ~、潰すか?それとも鼻っ柱を折ってやるかね?取り敢えず母さんに話してあっちも巻き込むか。

やる事を決めた俺は直ぐにリビングに向かい母さんに事の顛末を話した。

途中から菜月も参加して詩音さんの話を聞いて直ぐに憤慨してもう事務所ごと叩き潰しましょう!!!!っと菜月には珍しく荒っぽい事まで言い始めた。


「取り合えず菜月ちゃんは落ち着いてね?それで悠ちゃんは何を考えてるの?大人の世界に首を突っ込んでやらかすのは学校でやらかすのとは違うのよ?」


「あぁ、それは分かってるとは言わないけど、中途半端は許されないのは理解してる。」


「それならどうして?詩音さんの事は可哀想だとは私も思うけど、それで悠ちゃんが関わるのは間違えてる事くらいは分からないの?」


「それも分かってる。だからただ助けてくれって事じゃ無くてさ、一つの提案があるんだけど・・・。」


「言って見なさい。」


「うん、最初はさ、母さんの会社で新しく事業部を作ってくれないかって言おうかと思ったんだ。」


「詩音さんを会社で雇って売り出すって事?」


「うん、そう。でも、母さんの会社だと下着メーカーだから毛色が違いすぎるのと詩音さんの元の事務所の社長の言ってた事?を考慮すると時間がかかりすぎると思ったんだ。」


「そうね。仮にだけど押し付けられる違約金を私の会社で受け持ったとしても新しく事業部を立ててってなるとかなりの長い時間、詩音さんへのギャラは払えなくなるわね。」


「そっか・・・芸能人は売れてその売り上げからお給料を貰うから最初の借金が大きすぎちゃうとノーギャラの期間が長くなっちゃうのか・・・。」


「まぁ、全くのゼロって事は流石に無いけどそれでも今までと比べるとどうしてもね?そこは生活水準を下げて貰うしか無いけど。」


「まーそこはね?んでさ、この間ちょっと夏凜さんに、聞いたんだけど雪村グループで芸能事業部を立ち上げてるらしいんだ。」


「あ~・・・玖美子さんが言ってたわね・・・後はもう所属してくれる人を探してる段階だって。」


「うん、そこに詩音さんを突っ込もうかと計画してる。違約金も雪村に払って貰ってその見返りに詩音さんに所属して貰うって流れ。」


はて?母さんと菜月が難しい顔してるぞ?


「悠ちゃん・・・自分が何を言ってるか分かってる?その言い方は詩音さんを商品扱いしてるのと同じなのよ?それに、違約金までお願いする何て何を考えてるの?」


「分かってるけど?それに関しては契約の段階で上手くやって貰うしか無いし雪村は俺に借りがあるでしょ?」


「兄さん・・・。」


「俺だってこんな言い方したくないけど現状だとこれ以外に無くない?違約金を本当に押し付けられるなら数億じゃ済まないでしょ?それこそ詩音さんが破滅するでしょ。」


「それはそうだけど・・・。雪村さんには話は通したの?」


「夏凜さんに詩音さんと別れた後に連絡しておいた。だから後は、明日、会った時に詩音さんにはマネージャーも連れて来るように頼んだ。」


「悠ちゃん・・・。」


「兄さん・・・。」


「んで、先ずはここに連れて来て考えを話すつもり。それでこっちの条件をのんだら雪村さんに来てもらって話す。」


そんな俺の考えに母さんは唖然とした顔をしたまま言葉を紡ぐ。


「そこまで考えてたの?と言うか玖美子さんはそれを了承してるの?」


母さんの疑問に俺は自分のスマホを母さんに見せる、そこには俺と夏凜さんのやり取りが出てて玖美子さんも了承してると書いてある。


「はぁぁぁ・・・分かった。それで?もっと考えてる事あるんでしょ?」


「勿論、ただのモデルじゃ何も変わらないし彼女に未来が無いのも同じ。だからさ・・・。」


「ちょっと・・・兄さん・・・本気?」


「悠ちゃん、どうしてそこまでするの?」


「理由は無いって言えば嘘になるけど・・・関わったからその責任を果たしたい。」


俺の話を静かに母さんも菜月も聞いてくれてる。


「それと・・・気に入らない。あの社長のやり口が・・・。」


ピリピリとした俺の空気に二人共少し、ひゅっと息を飲む。


「怒ってるのは分かった・・・好きにやりなさい。」


「良いの?ママ。大人の世界に幾ら兄さんとは言え、子供がこんな・・・。」


「こうなった悠ちゃんは、もう止まらないでしょ?それにね?子供のやらかしの責任を取るのは大人の、親の役目よ。だから、思いっきりやっちゃいなさい。」


「ありがとう、母さん。」


「ただし・・・中途半端は許しません。大人の世界に首を突っ込むならやり切りなさい、良いわね?」


その言葉に俺は確りと母さんの目を見て力強く頷く・・・そんな俺を見て母さんは満足そうに笑顔を見せてくれた。


「それじゃ・・・打ち合わせしましょうかっ!やる事は決まってるとは言え考えないといけない事は沢山あるんだしね?」


「私もっ!出来る事は少ないだろうけど私も力になる!」


「ありがとう!二人共っ!」


そうして俺達は明日以降に向けての話し合いを進めて行く。

見てろよ、クソ社長・・・。


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