100万PV記念話 epilogue
「帰れた・・・かな?」
さっきまであった手の温もりを忘れない様に胸元に手を当てて抱きしめる。
光に4人が飲み込まれた後に気付けば消えてしまっていた。
「多分?これ以上は分からないし帰れたと信じましょう。」
「うん、風邪をひく前に戻ろっか。」
観月の言葉の後に私達は誰とも無くロッジに向けて無言で歩き出す。
まるでこの出会いは夢だったのでは無いかと言う思いを持ちながらも確かな温もりと沢山の思い出がこの胸にしっかりとある。
「それにしても、不思議な体験と不思議な光景だったよねー。」
「そうね~、でも良かったのだけは間違いないわね。」
「ですね、取り合えず・・・寝ましょうか・・・もう遅いし?」
私達はそれぞれの部屋に戻る事にした、詳しい話は明日の朝にする事にして欠伸をしながら部屋に戻るのだった・・・だけど、私達は直ぐにもう一度リビングに戻ってくる事になる、それも大急ぎで・・・。
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「・・・さんっ!・・・いさんっ!・・・兄さんっ!!!」
「んっ?・・・あれ・・・ここは・・・?」
「愛央!起きなさい!」、「志保!起きてっ!」、「清華も起きなさい!!!」
俺達が目を覚ますと、俺の前には母さんと菜月、愛央の前には茉優さんと柚希さん、志保の前には有希華さん、清華の前には伶佳さんがそれぞれ居て俺達を見詰めてる。
「あれ?母さん?菜月?何してるの・・・?」
「あのねぇ~・・・何してるの?じゃないでしょう!何で4人共こんな所で寝てるの!!!」
「え・・・?」
その言葉に周りを見渡すと俺達4人は固まって湖の側のベンチで4人で固まってくっついて寝ていたらしい。
「そうか・・・帰ってきたんだ・・・。」
「はい?何を言ってるんです?兄さん。」
「ちょっと・・・、悠ちゃん大丈夫?」
「あぁ、うん。大丈夫っ。心配かけてごめんね。」
「葵さん、ごめんなさい。話してる内に寝ちゃってたみたいです・・・。」
「申し訳ありませんでした。私達がついて居ながら悠馬さんを一晩外に・・・。」
愛央も清華も志保も直ぐに謝ってくる、でも・・・本当の事は言えないから・・・こればかりは仕方ないか。
「待って、愛央達は悪くない。夜に外に出た俺は悪いから怒るなら俺だけを怒ってくれ。本当に心配かけてごめん・・・それと、母さん、菜月・・・。」
俺は二人を強く抱きしめる・・・。
「ちょっ!悠ちゃん?!こんな事しても誤魔化されないんだからね!!」
「そうですよ!一晩も外で過ごすなんて何を考えて!!!」
「・・・・ふぐぅ・・・ぐすっ・・・。ごめん・・・ごめんなさい・・・ごめん・・・。」
「ぇ・・・?悠・・・ちゃん・・・?」
「兄さん・・・?泣いて・・・?」
ごめんなさいと・・・唯々俺はその言葉を紡ぎながら、この世界の家族を抱き締めて混乱する二人を尻目に泣き続けるのだった。
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SIDE 蘭
「蘭義姉さん、お母さん・・・、これ・・・。」
そう言って私達の目の前に観月は一枚の手紙を出してきた。
「観月のところにも?私のところにも・・・。」
私も観月と同じように自分の部屋に置いてあった手紙を目の前に出して見せる。
「そっか・・・琉珂ったら・・・。私の部屋にもあったよ、私宛てと
「お父さん宛ても?こんな話しても信じないんじゃ・・・。」
うん、私もそう思う、お義父さんは割と現実主義者だし・・・。
「普通なら・・・ね?でも、琉珂の、琉珂からの手紙だもの、あの人は信じるわ。」
「そうかもねっ。お兄ちゃんの事、誰よりも大切に思ってるのはお父さんだもん。」
二人が言うならそうなんだろう・・・取り合えず今は読まないと。
““蘭へ““
この手紙を読んでいると言う事は俺はちゃんと帰られたんだと思う。
俺が帰って直ぐに読んでるのか、それとも先に進んでから読んでるのか、それは俺には分からない。
でも・・・どのタイミングで読んだとしても、蘭はしっかりと先に進んでるか進むことが出来ると思ってる。
えっと、何て言えば良いかな?俺も俺があんな事にならなければこれから先の人生を蘭と歩いて居たのは間違い無いし、それを目標にずっと頑張って来ていたから、こんな事になって本当に悪かったと思ってる。
それでも、今回の事で蘭に会えた事は俺が悠馬として生きて行く為には大切な事だと思ったし本当に会えて嬉しかった。
あっちの世界に行ってずっと蘭の事が気になって居たのは嘘じゃない、理由はどうあれ悠馬の身体を奪った俺が愛央達と幸せになって良いのか?このまま騙し続けたままで良いのか?って思いもずっとあった。
それが今回の事である意味において解決したって感じた。
でも、その結果として蘭にはまた別れるって言う悲しみを与えてしまった事はほんとにごめん。
って、何か謝ってばかりだな・・・二人で話した時に蘭が本当は納得も気持ちの整理もついて居ない事は分かってた、俺だって愛央達の事があるから一応ではあるけどそれなりに整理は付いたけどそれが無ければ無理だと思うし、帰るって選択もしなかっただろう。
でも、こうやってこの手紙を読んでるって事は俺は帰ったって事だろうしこれから先の人生はお互いにお互いの人生を歩く事に違いは無い。
約束したように、お互いに次に会った時にこんなに幸せになったぞ!って自慢出来るように頑張ろうぜ?俺も負けない様に頑張るからさ!
だから、ありがとう!とごめんを、蘭に・・・。
さよならは多分、言わないと思うからこの手紙でも言わないよ。
だから・・・またな!
““琉珂より““
ばか・・・ばかぁ・・・るー君のばか・・・。
こんなの頑張るしか無いじゃん!頑張る以外に選択肢無いじゃん!
一緒に幸せになろうって約束は守れなくなったけど、新しい約束をしたんだからそれは絶対に守らないとじゃんっ!
二人もぼろぼろと泣いてるのが見える、私の目からも涙が止めどなく零れて来る・・・。
頑張るから・・・私、るー君が居なくても頑張るから・・・絶対に忘れないけどちゃんと乗り越えて幸せになるから・・・だからっ!だからっ!ちゃんと見ててね?次に会った時に幸せになった私を見せつけてあげるからっっ!
「まったく・・・お兄ちゃんは・・・もうっ。」
「ねっ。琉珂ってば・・・全くっ。」
「二人のはどんな内容だったの・・・?」
「感謝とお礼と謝罪って感じです。」
「私のもそうね、親不孝でごめんって書いてる。そんな事無いのにね。」
「私のも謝罪とお互いに頑張ろうって約束守れなくてごめんって、新しい約束を達成しようって・・・ぐすっ。」
「新しい約束・・・?」
「うん、次に会った時にお互いにこんなに幸せになったと自慢し合おうって・・・。」
「そうですか・・・それならちゃんと守らないとですねっ。」
「うんっ。今はまだ辛いけど絶対に、この約束は守るんだっ。」
それが私に出来る事だから私にしか出来ないから・・・見ててね?るー君っ!!!
私はるー君からの手紙を読みながら決意を新たにして、ちゃんと前を見て約束を果たす為にも頑張るんだと、思いを強くもつのだった。
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「あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛~・・・・。」
「何をしてるんですか?悠馬さん。」
「いや・・・何て言うか今になって母さんと菜月を抱き締めて大泣きしたのが恥ずかしく・・・。」
「あははっ。確かに大泣きだったね~悠馬。」
愛央のツッコミを聞かない事にして湯船の中で天井を見上げながら唸った。
そう、俺達は揃ってロッジの風呂にぶち込まれてる・・・。
あの後、4人揃ってくしゃみをしてしまって、母親組に揃って風呂にぶち込まれた。
流石にこの状況でこの場所でエッチする気は無いけど、俺の悠馬くんがさっきから臨戦態勢なのは仕方ないと思う。
「えっとさ・・・?そのままで良いの?悠馬くんの悠馬くん・・・。」
「良いの!恋人達とお風呂に入って元気にならない訳無いんだから!」
「嬉しいけどっ///ちょっと気になる・・・///」
「良いから・・・っ!あっちでもしてなかったけど、流石に帰って来て直ぐには・・・なっ。」
「そ、そうですね・・・。無事に帰って来れたのは良かったんですけど蘭さん達は大丈夫だったんでしょうか・・・?」
「うん、流石に気になるね。」
「巻き込まれたりしてないよね?もしも巻き込まれてたら・・・。」
「3人の心配は分かるけど大丈夫さ、多分。それに手紙は残してきた。」
「いつの間に・・・何を書いたの?」
「親不孝でごめんって、沢山悲しませてごめんって、迷惑かけてごめんって・・・それとありがとうって今までと今回の事のお礼と・・・親父にも手紙書いて置いて来た。」
「そっか・・・。それにしても凄い体験したよねぇ~・・・。」
「ですねぇ~。ですが、良かったです・・・悠馬さんの過去も知れて違う世界も体験出来て。」
「誰にも話せないけどね?頭おかしくなったって思われちゃうしっ。」
「確かにっ!」っと3人が笑ってるのを眺めながらボーっとしてる俺に気付いて3人揃って近づいて来た。
「どったの?悠馬。」
「あーうん、ほら・・・最後に行ってらっしゃいって言われたろ?」
「はい、確かに言ってくれましたね。」
「あの言葉を言うのにどれだけ頑張ったんだろうって思ってさ。」
「何かさ、こんな事言うのもおかしいかも知れないけどさ・・・。私ね?嬉しかった。」
「嬉しいって?」
「勘違いかも知れないけどさ、応援して貰えた気がするんだ。」
応援か・・・間違えてはいないと思う。
「そうだね、凜さんから悠馬くんをお願いされたのもあるし、頑張りなさいよって応援された気がするね。」
「はい、何と言いますか・・・悠馬さんの家族だけあって素敵な人達でしたし、最後の行ってらっしゃいは私も応援されたと感じました。」
「応援か・・・本当に強いな~・・・俺も負けてられない。」
もっともっと強くならないとな・・・約束を果たす為にも・・・。
「ん~~~・・・っ!えいっ!!」
変な掛け声と共に愛央が抱きついてくる、それをマネして志保も清華も俺にくっついて来た。
「ちょ?!何?!裸で抱きつかれると流石にっ!」
「一人で頑張る事ないよ?」
「私達も居ます。一緒に強くなりましょう?」
「そうだよ?悠馬くんは一人じゃない、私達も居る。」
「他にも沢山の友達も仲間もいるんだから一人で強く成る事ないよ?」
「あぁ・・・そうだな・・・。俺一人で出来る事なんてたかが知れてるんだし、皆で強くなって・・・そして、幸せになるんだっ。」
「「「うんっ!」」」
俺はそのまま少しだけ泣き、愛央達の温もりに癒されながら帰って来れた事、再会できた事、あの3日間の思い出を胸に抱きながらこちらの世界で沢山、幸せになってまた、蘭に会えた時に思いっきり自慢するんだと気持ちを新たにするのだった。
こうして俺達が体験した不思議な経験は終わりを迎える、二度と出会えるはずが無かった人達との再会、自分の想い、蘭や母さん、観月の想い、愛央達の想いを改めて知りこの世界で生きて行く事を新たに決心する。
俺だけじゃ無く愛央達まで巻き込んだ女神様に関してはむかつく部分もあるけど貴重な経験をさせて貰えた感謝もあるし・・・まぁ、神のイタズラと思う事にしよう。
うん、俺も頑張るから、蘭も頑張れよっ!約束を果たす為にも思いっきり幸せになるから沢山聞いてくれ、そして聞かせてくれよ?また会えるのを楽しみにしてるからな?
そんな事を愛央達を抱き締めながら風呂場から見える夜空を見上げて思うのだった。
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はい!100万PV記念のお話しでした!
悠馬達の不思議体験のお話はこれで終わりになります、職場の移動とか色々と忙しくて作れなくて遅くなりまして本当に申し訳ありません。
長めの話になってしまいましたが楽しんで貰えたら嬉しいです、読んでくれてありがとうございます!
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