100万PV記念話 例え離れていても想いは何時も側に 

あっと言う間に3日間が過ぎていった。

今夜にも、観月の調べてくれた伝承を、俺達がこの世界に来た時と同じになる条件が揃う。

これで帰られないなら正直お手上げだから後は祈るしか無い。

少なくても、愛央達だけでも帰さないとな・・・。


「後、やり残したことは・・・。あぁ・・・あれがあったっけ・・・。」


あぁ!あれがあるな、これだけは絶対に忘れないでやらないとな。

俺が割り当てられてる部屋の机でをやっていると部屋の扉をコンコンっとノックする音が聞こえてくる。


「はーいっよ。どうぞー。」


「おはよう、るー君。何してるの?」


「ん、ちょっとやり残しをな。」


「やり残し・・・そっか、今夜だもんね・・・。」


「あぁ、今夜だ。上手く行くかは分からないし本当にこれが正解なのかも分からない。それに俺がどうなったとしても愛央達だけでも帰さないとな。」


「うん・・・。あのさ・・・昨晩はごめんね・・・。」


「あ~・・・うん。俺の方こそごめんな。」


「うぅん、私の方こそ、考えてみれば確かにるー君の言った通りだった。私が欲しいのは私とるー君の子供だもん。」


そう、昨晩に誘われたのだ。

でも俺はそれを断った、何故か?理由は簡単で蘭が欲しいのは流呵の子供であって悠馬の子供では無いから。


「俺の身体が元のままなら蘭の願いも叶えられたんだけどな、今はあくまでも悠馬の身体だから蘭の願いは叶えられないしさ。」


「うん、もう一度会えたって事で頭が一杯になってた、馬鹿だ私。」


「そんな事無いさ。気持ちも嬉しいしさ、正直なところ勿体無かったかな?って思ってる位だ。」


俺がヤレヤレって感じで戯けて言うから蘭も吹き出して変な空気も霧散した。


「まーでも、考えてみたら普段は10代の肌を見てるんだもんなー、こんなアラサー女の肌なんか見ても仕方ないよね〜。」


「そう言う言い方はヤメロー、蘭は魅力的だよ。だからこそ、俺を忘れろとは言わないからちゃんと幸せになってくれ。次にに俺が羨む位にさ。」


「うんっ。任せて!でも、るー君も同じだよ?次に会った時に私が羨む位に愛央ちゃん達と幸せになるんだよっ。」


「当然っ!任せろ!」


そうして、お互いに自然と指切りをして俺と蘭の関係の精算、蘭の気持ちの整理が何とか終わったのだった。


……………………………………………………………

SIDE 蘭


パタンっと、音を立ててるー君の部屋の扉が閉まる。

それと同時に私の目からは止めどなく涙が溢れてくる。

一応、納得したと気持ちの整理をつけたと演技してみせたけど、そんな訳無い・・・。

私と子供を作らない理由は確かに納得はしたしその通りだなと理解もしたけど、だからって、るー君を愛してる気持ちが無くなった訳じゃない。


「蘭義姉さん、お兄ちゃんとの話は終わった?」


「一応ね、多分だけどちゃんと送り出せるとは思う。」


「そんな顔で言われても説得力無いよ?」


「アハハ・・・だよねぇ〜?理解も納得もしてるのは本当だよ。だけど、だからって気持ちが無くなった訳じゃ無いから・・・。」


そんな私を観月は何も言わずにジーッと見詰めてくる。


「あ〜あ!私ってこんなに諦め悪くて女々しかったんだな〜!知りたくなかったよ!」


戯けて言う私に観月は凄く真面目な顔でこういった。


「それで良いのでは?ただの恋人程度なら別れたら簡単に気持ちは切り替えられますけど、婚約者だったんですし、これから先の長い人生を二人で歩いて行くと決めていた相手との別れなんですから、女々しくもなりますよ・・・多分?」


「多分?って何よっ!」


「だって経験ないですもん!多分?としか言えませーんっ!」


「ちょっ!観月!待ちなさいー!」


言うだけ言って歩きだした観月の後を私も追い掛け、気付けば私の顔も笑顔になっていた。


ありがとう・・・観月。


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SIDE 凜


今日が最後の日かぁ~・・・琉珂と一緒に居れられるのは今日が最後になる。

琉珂が憂いなく帰られるようにちゃんと送ってあげないとね、それとこの子達も・・・。


「あの凜さん、色々とお世話になりました、まだ帰れるって確定した訳では無いですけど。」


3人を代表して、愛央ちゃんが私にそんな事を言ってくる、本当に琉珂の選んだ子達は、蘭も込みで素敵な子達ばかりだ、だからこそ・・・。


「良いの、琉珂の恋人なら私からすれば、蘭と同じく義娘みたいなものなんだから、気にしなくて良いのよ。」


「だとしてもですよ、ありがとうございました。」


「まだ帰られるって決まった訳では無いですけど悠馬くんの予想通りならチャンスは今夜ですし、言える内にお礼は言わないとですし。」


「愛央ちゃんも、志保ちゃんも、清華ちゃんもしっかりしてるし礼儀正しいしほんと、琉珂の選んだ子は素敵な子ばかりねぇ~・・・。」


本当にそう思う、こんな素敵な子達が側に居てくれるなら私も安心かな?

本当は・・・蘭も観月も帰したく無いはず、私だってそうなんだからあの子達は猶更だろう、だけど帰さなかったら私達が感じた悲しみを向こうの家族に与える事になってしまう、それは駄目。

それをしたら・・・私は私を許せなくなる、それはきっとあの人だって同じはず、そして琉珂だって私の立場なら同じ選択をするはずだ、だって琉珂はあの最愛の夫とそっくりなのだからっ。

だからこそ、やり遂げないといけない、そうじゃないと・・・もう二度と、琉珂に顔向け出来ない・・・だから・・・。


「貴女達にお願いがあるの、琉珂をよろしくお願いします、嬉しい事、楽しい事があったら一緒に喜んで、悲しい事があったら皆で乗り越えて、これから先、沢山の苦難も壁もあると思うから、琉珂を悠馬を支えて一緒に乗り越えてあげて欲しいの。」


こんな事言わなくてもこの子達は分かって居るだろう・・・それでも、琉珂の母親として、最愛の子供の事を、最愛の子供が選んだ女性達にお願いするのだ、それだけが私に出来るだから例えこのお願いがになったとしても・・・。


「大丈夫です!悠馬の事は任せてください!流呵としても、悠馬としてもしっかりと支えたいと思ってます!」


「はい、愛央さんの言う通り悠馬さんは私達が支えます。絶対に後悔なんてさせません!」


「流呵くんとしても、悠馬くんとしても私達にお任せください!私達が・・・いえ、4人で必ず幸せになってみせます!」


「うん、愛央ちゃん、志保ちゃん、清華ちゃん、ありがとう。宜しくお願いします。」


「「「はいっ!」」」


3人の元気で真摯な答えと返事を聞いて私はこの子達なら大丈夫だと何故か安心できた、だから・・・後は私に出来るのは笑顔で送り出すことだ・・・。

それが何よりに辛いことでも最後は笑顔で・・・。


……………………………………………………………

それから、刻一刻と迫るに向けて俺と蘭、母さん、観月、愛央、志保、清華は時間の許す限り沢山の事を話す、それは何でも無い事だったり馬鹿な話だったりと笑い合ったり怒ったフリをして見たり沢山楽しんだ。


「そうだ!写真撮りましょう!」


「良いですね!帰る前の記念って訳では無いですけど折角、あり得ない出会いをしたんですから夢では無かった証拠を!」


「私達は確かに出会ったのだと言う証拠を形に残しましょう!」


「あぁ、確かにそれは良いかも。俺もこれが夢では無かったって証明は欲しい。」


「決まり!悠馬を真ん中にして先ずは集合写真を!」


「その後はそれぞれで固まったりしてかな?」


「ですね!さぁ!さぁ!早く撮りましょう!」


愛央や志保に清華が妙なノリで言ってくるけどそれもワザとなんだろうな〜・・・。

俺の為だって思うのは、流石に傲慢かな?でもこの気遣いは本当に嬉しい。


そうして、俺達は沢山の写真を撮る、俺と蘭、俺と母さんと観月、女性陣だけとか沢山の写真を俺達は撮影して沢山の記念を残す、その後は外に出て風景をバックにしたりと記念と記憶と足跡をしっかりと俺達は残すのだった。

そして・・・。


「そろそろだな・・・。こっちに来た時間と条件が揃うの。」


「うん、それと観月さんの調べてくれたこっちの伝承。」


「まさか、同じ内容だとは思いませんでしたね。」


「ただ、女神と神の差が気になるだけかな?」


「いや、それも問題ない。こちらの神がアレなら・・・。」


「アレ?何か心当たりあるの?お兄ちゃん。」


「まーね・・・。」


そう、あっちに渡った時に出会った神様、あの人がそうなら俺達は戻れる筈だ。


「ん〜〜?まだ話してない事ありそうだけど、この件には関係なさそうだしいっか。」


「時間だね・・・、何も変化無いかな?」


「いや、来た!」


あの時と同じ、雲が一気にはれわたり月が現れ・・・月光が湖に映る月に向かってゆっくりと伸びて来る。


「凄い・・・、綺麗・・・。」


「見て!光が!」


月光が湖の月に届くのと同時にその光が・・・俺達に向かって伸びて来る・・・。


「もしかして・・・行ける・・・?」


「多分そうだな。光が伸びて来てるしあの光が届いたら多分だけど道が開くんだろう。」


「じゃー・・・お別れ・・・かな?」


観月が俺達に向かってそう発するのと同時に皆の顔は悲し気に歪む・・・。

それを見た俺は・・・自然と言葉が零れる。


「俺は・・・やっぱり・・・。」


「悠馬・・・?」、「悠馬さん・・・?」、「悠馬くん・・・?」、「るー君・・・?」


「俺は、皆の事が好きだ・・・この世界に来て・・・帰って来てのこの三日間の思い出はかけがえの無いになった・・・。」


目の前が霞む・・・我慢しても涙で歪む・・・、決められた別れ、分かってた事なのに・・・。


「俺は、愛央達をちゃんと帰してあげたい、観月も蘭も母さんも助けたい・・・それに何より・・・皆と一緒に居たいっ。」


「るー君。」、「琉珂。」、「お兄ちゃん・・・。」


「それは。皆も同じ気持ちだよ。」


下を向いている俺の手を皆が持ち上げて来る、母さん、観月、蘭、愛央、志保、清華の温もりが伝わってくる。

皆も同じ気持ちなんだって俺にも伝わってくる・・・。

だからこそ・・・っ!


「だからこそ・・・ちゃんと帰らないとだめよ?琉珂。」


「うん、こうやってお兄ちゃんにまた会えたのは凄く嬉しかったしこの三日間はとても楽しくて幸せだった。」


「出来るならこれからも一緒に居たいのは私達も一緒。だからこそ・・・るー君がこのまま残ったら向こうの世界の家族が、友人が、仲間が悲しんじゃう。」


「私達が感じた悲しみを今度は私達が沢山生み出してしまう・・・。それだけは駄目。」


「そんな事になったら私達は自分を許せなくなるし琉珂に顔向け出来なくなってしまうから。」


「「「だから・・・ちゃんと、無事に帰るのっ。日常を取り戻す為にっ。」」」


こっちの世界の3人が土壇場で迷った俺の背中を押す様に言葉を投げかけてくれる。

それに続いて、愛央達も・・・。


「悠馬に付いて来てこの世界に来て・・・沢山のと出会えた。」


「悠馬さんの昔を聞いて生まれ育った世界を見てこの3日間はどれもこれもです。」


「この世界での思い出、出会いは沢山の満ちていたよ、悠馬くん。」


「「「だから、一緒に帰ろう?にっ。」」」


ははっ、ほんとに情けないな俺・・・、こんな所でこんな状況で皆に慰められてる。


「結局、一人じゃ何も出来ないのは変わらないな俺・・・、昔も今も皆に沢山のものを貰ってる。」


「そんな事無いよ?るー君のお陰でずっと、ずっと楽しかった、幸せだった。」


「今、こうやってここに立ってるのだって、琉珂に皆が協力してくれたからよ。」


「お兄ちゃんが思うよりも、私達は沢山の想いを沢山貰ったんだからっ。」


「あっという間の3日間だった・・・、でも、私達は結ばれてる。」


「私達がそれぞれの日常に帰ってもそれだけは絶対に変わらない。」


「世界を越えて紡いだ絆は絶対に無くならない。」


「だからこそ、この別れは怖くないの、愛央ちゃん、志保ちゃん、清華ちゃん・・・そして・・・琉珂。」


「別れは怖くない・・・だから・・・。」


「「「行ってらっしゃいっ!!!」」」


母さんと観月と蘭のその言葉を最後に俺達は光に飲み込まれて意識が消える・・・。

だけど、心配は無かった、俺達を包んだ光は全てを守るかのように暖かく優しい光だったからっ。


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