第134話 私が成長して強くなれる理由

SIDE 愛央


あの後、無理やりに終わらせたお詫び?お礼?のつもりなのか悠馬はレディースの人達と写真撮影をしてるのを尻目に私は過去にケリをつける為に大嫌いなやつらに向き合った。

私を心配してか、志保さんと清華さんも直ぐ後ろについていてくれてる・・・。

悠馬も写真撮影しながらもこっちをチラチラと気にしてくれてるのが分かるから、私の胸の中は暖かい気持ちのまま向かい合う事が出来た。


「えっと・・・そのさ・・・星川・・・。」


「何?助けて貰っておきながら文句でもあんの?」


「いや、その・・・。」


「言いたい事あるならハッキリ言ったら?てか、助けて貰っておいてお礼の一つも言えない訳?」


普段なら特に何も言わなくても絡んできて好き勝手言ってくるのに真面に言葉も発する事が出来なくなってるこいつらにイライラしてくる・・・。


そんなこいつらを前にして横から、スッと志保さんがいきなり前に出て・・・、グイっと胸倉を掴んだ。


「いい加減にはっきりと話しなさい!見下していた人に助けられて何の意味も無いプライドが砕けましたか?!自分が無価値だとようやく気付きましたか?!」


わぁ・・・志保さんがブチ切れてる・・・。


「あ、天音・・・苦しい・・・。」


「志保さん、もう良いよ。こんなやつらの相手なんて時間の無駄だもん。悠馬連れてもどろーよ。」


「愛央さん・・・。分かりました。折角の時間が勿体ないですもんね。」


「いこっか。愛央が無事で良かった。悠馬くんーもどろー!」


「そっち終わった?悠馬。いこっ。」


「あぁ、終わったよ。もう良いのか?」


悠馬の言葉に私は笑顔で頷いて志保さんと清華さんと一緒に悠馬の所に戻ろうとした。


「星川!まって!おねがいっ!待ってください・・・。」


はぁ・・・。私も言いたい事あるし最後に聞くだけ聞いておこうかな・・・。


「何?」


「そのさ、助けてくれてありがとう・・・。それと、色々ごめん・・・。」


「私もありがとう、それとごめんなさい・・・。」


「ありがとうと、ごめんなさい。星川って凄いんだね・・・。」


「私は・・・っ。」


あれ・・?言いたい事が・・・出て来ない・・・。

文句?嫌味?怒り?憎しみ?恨み?色々な感情が自分の中で渦巻いて・・・助けないで見殺しにした方が良かったんじゃって思いまで出て来る・・・。


「愛央・・・。」「愛央さん・・・。」


志保さんと清華さんが心配げな声で呼んでくれてる、今までの恨みを全部吐き出すのは簡単だしそれをすれば今はスッキリするかもしれない・・けど、その後に私は悠馬の隣に立てるの?

さっき言った事は本心なのは間違い無いけどだからって恨みが無い訳でも消えた訳でもない・・・。

私は、無意識に悠馬の事を見た、そしたら悠馬は何も言わずに私をジッと見詰めてくれていてその目から「愛央を信じてる。」って言葉にしなくても伝わってきた。


・・・っ。うんっ、大丈夫っ。悠馬の隣に立つためにも自信を持って立ち続ける為にも・・・私は・・・私はっ!


「私は、あんたらを絶対に許さない。

私の中学生と言う時間を奪ったあんたらをどれだけ謝られようとも絶対に許さない。

だけど、今の私は、悠馬の隣に立ち続ける為にもその事には捕らわれないっ。

だから、あんたらが本当に後悔して改心するって考えてるなら二度と私にした様な事をこれからの人生で誰にもしないで、誰かを守る側に回って!

そして、私の他にもやってた人達、全員に謝罪して回って、言葉なんて要らない!これからの行動で全部、証明して!」


はぁはぁはぁ・・・。言った、言ってやった!・・・あれ・・・?身体の力が・・・。


「おっと・・・。よく頑張ったな、偉いぞ。」


「悠馬・・・?」


気付いたら私の涙を隠す様に悠馬が自分の胸に私を抱き締めてくれて「頑張ったな、偉いぞ。」って言いながら撫でてくれてた・・・。

自分でも気づかなかったけど、泣いてたんだ私・・・。


「うん、星川の言う通りにするよ。私らが馬鹿だった・・・。」


「どれだけ罵られても殴られてもするよ。」


「んじゃ、もう良いな。3人共戻ろうぜ。」


「はいっ。戻りましょ!」「うんうんっ。続き続きー!」


二人が悠馬の声に明るく答えてくれて私も悠馬に手を引かれてそのまま歩き出したんだけど暫く歩いてあいつらから見えなくなった辺りで悠馬が私に背中を向けて突然しゃがみこんだ。


「ほらっ。乗れよ愛央。」


「え?いやいや!大丈夫だよ!歩けるもん!」


「良いからっ。頑張ったんだからな。」


「えっと・・・でもぉ・・・。」


「愛央さん、悠馬さんがこう言ってるんですしここは甘えるべきでは?」


「そうそう!甘えちゃいなってっ!」


「本当に良いの・・・?」


「勿論だ。皆も心配してるだろうし早く戻ろう。」


私は悠馬の背中に覆いかぶさると悠馬はそのまま私をおぶってくれて、直ぐに歩き出して・・・。


「しっかり捕まってろよ、眠かったら寝て良いから。良く頑張ったな。愛央は強くなった。」


そうなのかな・・・?私は強くなれたのかな?強くなれたとしたらそれは・・・悠馬のお陰だよ。


「悠馬が居たから、居てくれるからだよ。私が強くなれたとしたら・・・。」


ぎゅって首に回した腕で抱きしめながら私が強くなれるのは貴方が居るからだと言葉にした想い以上に伝わる様に・・・。


「それなら、俺も同じだ。愛央が居てくれるから俺は何でも出来るし何処までも強くなれる。勿論、志保も清華も同じだ。」


「うんっ、そうだね。志保さん、清華さん、悠馬、私の4人なら何でも出来るよね。出来ない事何て無いよねっ!」


「そうですね。私達なら何でも出来ますよ。それは私も感じています。」


「私もだな~・・・。本当に出来ない事何て無いって思ってるよ。」


皆同じ気持ちだったんだ、嬉しいな。

私は悠馬にだけ聞こえる様に耳元で、「大好きっ」と心からの気持ちを伝えたら悠馬も「俺も大好きだぞっ。」って直ぐに言ってくれて私は嬉しくて笑顔になるのを止められなかった。


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すぅ・・・すぅ・・・っと俺の耳元から愛央の寝息が聞こえて来た。


「寝たか・・・。本当にお疲れ様だったな。」


「寝ましたか、愛央さんももう大丈夫でしょうね。あいつらも二度と絡んでくることも無いでしょうし。」


「解決して良かったよ本当。まぁ、でも最初の悠馬くんの恐ろしさったら・・・。」


「うっ・・すまん。本気で殺意沸いてしまったから・・・。」


「気持ちは分からなくも無いですが私も怖いと思ってしまいました・・・。」


「二人共本当にごめんな。っとそうだ、志保。」


「はい、何でしょう?」


「あっちに連絡して寝室の準備して貰っておいてくれ、このまま愛央を寝かすよ。」


「あぁ、うん。それが良いね、心身ともに疲れ切っただろうしね。」


「うん、多分起きないだろうし、戻った時に声出されて起こされるのも可哀そうだしな。」


俺達はその後特に何かを話す事も無かったけど特に空気が悪くなったわけでも無くゆったりとした時間が流れてて、それは突発だったとは言え物凄く頑張った愛央の為の空気だった。


本当にお疲れ様、愛央。


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