第119話 説明会って何だっけ?
「それでは改めまして。一年の逆月悠馬です。本日、急遽ではありますが司会進行を務めさせて頂きます。よろしくお願いします。」
そう言って悠馬先輩はスッと綺麗に一礼をしたんだけど、かっこいいと言う言葉も出てこずに見惚れるしか無かった。
回りは回りで憧れの人の登場でざわざわと騒ぎ出しうるさくなってきて・・・。
「やばぃ、かっこよすぎる。」「凄いわね・・・孕みたい。というか声だけで孕みそう・・・。」「何言ってるのお母さん。気持ちは分かるけど。」
回りは回りで見惚れる人欲望ダダ漏れな人も沢山湧いてるところに会長さんがスッと前に出てきた。
「先ずは先に一つだけ注意点を、悠馬くんが壇上に居るからと言って騒いだり大声を上げたり、ましてや、壇上に駆け上がる、登る等の行為はお辞めください。見つけ次第退場となりますのでご留意ください。」
その言葉を聞いて全員が全員ピタっと黙り込んだ、それも当然のことで会えないと思っていた憧れの人が目の前に居て同じ空間に居るのに追い出されるなんて事になれば目も当てられないのは当然だからだ。
「あ、あはは。ということなのでお気をつけくださいね。それでは始めさせて頂きます。先ずはお手元のパンフレットをご覧ください。」
うぅぅ・・・。指示に従いたいっ!従いたいけどっ!目の前に憧れの男性と憧れの女性達が揃ってるのに目を外さないといけない・・だとっ?!
「えっとぉ〜パンフレットを見てくださいね〜?」
うっ!悠馬先輩が困ってる!後ろにいる3女神も苦笑いしてるし・・・。
ふと、友人二人を見たら二人共私を見ていて3人で頷いて気合いと根性で視線を手元のパンフレットっと言う名の悠馬写真集に向ける・・・。
くぅぅ、辛い!きつい!でも!でも!ファンとして憧れの先輩達を困らせるわけには・・・・っ!
そんな私、私達の葛藤などいざ知らず悠馬先輩は続きを話し始める。
「良かった。ポツポツと見てくれる人が出てきましたね。それでは、先ず我が校の理念について・・・。」
そこから丁寧な説明を順番にしていって・・・。
「秋には修学旅行、学園祭等の行事もあります。と言ってもどちらも俺はまだ未経験なんですけどね?そんな俺がこんな事言っても説得力無いですけど楽しいらしいですよ?」
ドッと笑いが起きたり、確かに一年生だからまだどちらも未経験だよね!っとボソボソと話し声が聞こえたり、所々に笑いをいれながら真面目に楽しく進行していく。
「では、次に部活動に関してのページをご覧ください。詳細は省きますが・・・。載っている活動以外にも同好会に分類される部も多数存在します。入学した際には確りと吟味してくださいね。」
っと説明を聞いていたら隣から「えっ?!」っと聞こえてきたから反応して、稲穂君の方を向いたら驚いた顔をしていた。
「あ、その、ごめん。俺の持ってるパンフレットっと内容が違うのが見えて驚いちゃって。」
「そうなの?」
「うん、ほら。こっちは各部の部長さんだったり綺麗な人だったりだよ、モデル。」
どれどれ?っと見せて貰うと確かに私達の持ってるものと書いてる内容は同じでもモデルになってる写真が違った。
「本当だ。もしかしてだけど男女で分けてるのかも?私達のは全部悠馬先輩だもん。」
「あぁ、悠馬さんならそれくらいのサービスはしそうだ・・・。ごめんね、ありがと。」
そう言ってまた自分のパンフレットに視線を戻して説明の続きを真剣に聞き直しているのを見て私も集中することにした。
そして・・・。
「では、ご清聴ありがとうございました、これにて説明会を終了とさせていただきます。」
えっ?!もう?!
そう思いながら設置されてる時計を見ると長針が2周して実に2時間もの時間が経って居た。
「最初に少しトラブルがあり予定時刻を超えてしまいましたが、長い時間にお付き合い戴きありがとうございます。お疲れさまでした。明日の模擬授業もあるとはいえ本日のお帰りにも十二分にお気を付けください。それではこれにて失礼させていただきます。」
これが一瞬の出来事って言うんだなっと実感した・・・、先輩の説明が開始したと思ったらすぐに終わりを迎えてしまって、でも実際は2時間経っていて・・・・。
こんなに夢中になって時間の感覚が無くなる何て初めての経験だよ・・・。
そして、そう思ってたのは私だけじゃ無いみたいで周りからも・・・・。
「ちょっ?!2時間たってる?!」「そ、そんなぁ?!まだ・・・まだぁぁぁ・・・。」「もう、お別れなんですか・・・・?」「い、行かないでくださいぃぃ。」
っと開始して直ぐに生徒会長さんの注意があったのにも関わらず皆が皆、声を出して私だって同じ事を思ってるけど・・・でも・・・でもっ!!
「う、うぅぅぅ・・・。」
隣の千里も涼も私と同じ気持ちらしく叫びだすのを必死に、唇を噛みしめながら我慢してた。
でも、でも!今も困ったように笑いながらも手を振りながら袖に下がって行く悠馬先輩とやれやれって苦笑いしてる星川先輩達の姿を見るとこれ以上の負担はかけられない、かけるのは絶対にダメだって思う。
「…ッ。」必死に我慢してる私の頭の中は明日は会えますか?もし入試に失敗したら二度と会えない?そんな思いが浮かんでは消えてを繰り返しても抑え込んだ。
そして・・・遂には袖に消えて姿が見えなくなって・・・。
「あぁ・・・そんなぁ・・・。」「明日も会えるか分からないのに・・・。」「すっごい喪失感がぁ・・。」
これは本当に学校説明会が終わった後なの?って雰囲気が講堂に充満していく。
「本当、罪な人だな~俺の目標の人は・・・。」
私達の隣から、稲穂くんからそんな言葉が飛んで来たのを私達は反応して揃って稲穂くんも見る。
「あ、えっと。俺さ、前に会った事あってその時に迷惑かけて思いっきり怒られたんだよね。その後に悠馬さんの考えとかに感化されてあの人の様になりたいって思う様になったんだ。」
稲穂くんはそう言って悠馬さんが下がって行った壇上の袖の辺りを眩しそうに見ている。
「だから今日もさ、あいつらの勝手がどうしても許せなくて悠馬さんの居るこの学校で問題起こすやつらが嫌でさ、それで怒鳴り声上げちゃったけど悠馬さんはスマートに解決しちゃうんだもんなぁ~・・・本当に凄いよ。」
確かに、YouMa先輩は怒鳴り声を上げる訳でも無く静かに解決してた、確かに大声は出したけど、あれは位置とタイミング的にどうしても必要な行動だったのは分かってる。
「うん、確かに凄い人だよね。今日で本当に実感した。」
千里も涼も私の言葉に静かに頷いて居て私達4人の間に静かな時間が訪れたんだけど、いつの間にか稲穂くんが苦笑いしてる。
「ん?どうしたの?稲穂くん。」
「まだ残っててくれたんだね、良かった。」
はぃ・・・?私達の後ろから声が聞こえて振り向くとそこには星川先輩がいつの間に居て・・・。
「え?星川先輩?どうしたんですか・・・?」
「えっと、私達に何か御用でしょうか?」
涼が代表して星川先輩に聞いてくれたんだけどその理由が・・・。
「4人共これから時間ある?良ければ着いて来て貰えないかな?」
「えっと・・後は帰るだけなので大丈夫です。二人は?」
「私達も大丈夫。だよね?柚美。」
「えっと、俺も大丈夫です。」
私達が同意を示したのを見届けた星川先輩が直ぐに胸元でパンっと手を叩いて合わせた後に続きを話してきて・・・。
「良かった。それなら私の後に着いて来てね。」
そう言って身体を反転させて歩いて行ったのを見て私達も慌てながらその後姿を追いかけたのだった。
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