幕間3

第111話 変わった男の子

「えっと、こんなもんかな?」


俺はモールのお菓子の材料を扱ってる所で一緒に買い物に来た姉さんと離れて一人でお菓子作りの為の材料を買い集めてた。

こんな物まであるんだ・・・こうやって見ると色々な物や色々な種類があるのが分かる。


「えっと・・・姉さんはまだかな?こっちは大体揃ったしそろそろ帰りたいと思うんだけどな・・・。」


店から出た俺は店の前で一緒に来ていた姉さんを待っていた。


「やっほぉ!君はここで何してるの?暇?暇だよね?お姉さんと遊ばない~?」


「え?・・・あ、いや・・・人を待ってるのですいません。」


「またまたぁー!そんな見栄張らなくて良いってっ!折角こうやって会えたんだし遊ぼうよっ!てかそのままホテルでも良いよ?」


何だこの人・・・いきなりホテルとか無さ過ぎでしょ。


「いえ、本当に人を待ってるので他を当たってくださいっ。」


「他なんて居ない居ないっ!良いから良い思いさせてあげるからいこっいこっ!」


俺の手を取って無理やり引っ張って連れて行こうとされて流石にこれはと思い抵抗する事にしたんだけど・・・。


「ほんとに無理ですって!止めてください!」


「そうそう!私ねーYouMaと仲良いんだー!会わせてあげるから一緒に来てよっ!」


・・・は?・・・こいつ舐めてるのか?悠馬さんの名前出すとかふざけんな!


「離せよ!お前みたいなやつが悠馬さんと仲いい訳ねーだろ!悠馬さんがあんたみたいな奴と仲良くなる訳ねーよ!俺は実際に会って話した事もあるからお前の嘘くらい分かるんだよ!」


「チッ。良いから一緒に来いよ、黙ってヤラセろ~寝てれば終わるからさー。」


このぉっ!悠馬さんごめんなさい・・・俺っ!


「何してるんのあんた?!家の弟を何処に連れて行こうとしてる!」


「姉さん!」


「ごめんね、遅くなって。間に合って良かった。」


「チッ、マジで人待ちかよ。つーか姉とかめんどくさー。」


「そうですか、それでは一緒に来て貰いましょうか。」


「は?・・・げっ。何もしてないんだから良いじゃん!」


「良い訳なら事務所で聞きます、黙ってきなさい!」


「うるせー!離せー!」っと騒ぎながら俺は連れて行こうとしてた女は警備員に連れられて引っ張って行かれた。


「ふぅ・・・、もう少しで殴り飛ばすところだった・・・。」


「あそこまで良く我慢したね?」


「うん、でもギリギリだった。心の中で悠馬さんに謝ってたよ。」


「我慢できたんだから十分よ。それに、あの状況なら悠馬さんも怒らないと思うしね。」


そうかも知れないけど次に会えた時に恥ずかしくない自分で居たいから出来ることから変わらないとだし、悠馬さんならさっきの状況でも一人で何とでも出来ただろうしなぁ。


「うん、でもやっぱりね、次に会ったときにこんな事あって手を出してしまいましたってのは言いたくないし言えないし、これ以上、幻滅されたくないからさ。」


「恋する乙女かっ!全くもうっ。」


「確かに自分でもちょっと思った・・・。って、それは兎も角、姉さんの方は買い物は終わったの?」


「終わったよ、もう帰る?」


「うん、新しい器具使ってみたいから。」


それじゃ、帰りましょうかっと姉さんの言葉で俺達はモールを後にして自宅へと帰るのだった。


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チーンっ


オーブンの時間を告げる音が鳴って俺は中から焼き上がったスポンジを取り出して、思わずガッツポーズっ!


「やった!上手く焼けてる!」


綺麗に焼けたスポンジを眺めながらこれなら綺麗に作れるかもしれないと思いながら他の作業等を進めて初めて成功と言える物が出来上がった。


「後は上手く飾りつけとか出来れば・・・。」


俺は気合いを入れなおしてデコレーションを開始した。


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「ご飯出来たわよー。」


夜になって母さんの呼び声に部屋から出た俺は夕飯の後に驚かせることが出来るってわくわくしてるのを隠しながら食卓に着いて母親の作ってくれた夕飯を確りと食べた。


「ご馳走様、えっとさ、二人共まだ余裕あるかな・・・?」


「え、うん。まだ食べれるけどどうしたの?」


「良かったそれじゃちょっと待ってて。」


俺はそう言って自室に戻って部屋に設置してある小型の冷蔵庫からやっと納得のいく形になった物を取り出して食卓に戻る。


「これなんだけど・・・。」


「お?おぉ?おぉぉ?!」


「あら?あらあら?まあまあ?」


「何さ、その反応・・・、やっと納得の行く形になったから食べて貰おうと思ったんだけど?」


「「食べるっ!」」


「う、うん・・・それじゃぁ・・・。」


圧の強さに少し引きながら俺は台所に行って作ったケーキを切り分けてそれぞれの皿に装いながら姉さんと母さんの前に置く。


「えっと、それじゃ・・・食べてみて。」


「「いただきますっ。」」


二人は神妙な顔をしてケーキを一口・・・。


「どう・・・かな・・・?」


「うん、美味しい!」


「うんうん、美味しいわねっ!」


「ほんとに・・・?」


「うんうん、美味しいよ。でもまぁ美味しいだけかな。」


「食べれる美味しさって感じで商品として考えると全然ね。」


姉さんと母さんの遠慮無い感想にがっくりと落ち込んでしまう。


「落ち込まないでよ・・・あんたの夢はパティシエなんでしょ?それなら商品になるレベルにならないと駄目なんじゃ無いの?」


「あ・・・そうか・・・。上手く行って喜んでたけどそれじゃ駄目だよね。」


「駄目って事は無いけど目指す先はもっともっと先でしょ?やっとスタート地点に立てたんだしこれからよっ!」


「だ、だよね!・・・おし!これからも頑張るからまた食べて貰える?」


「「勿論っ!」」


二人共笑顔でそう言ってくれて俺は気合いを新たに入れなおす。


「それにしても・・・変われば変わるもんね・・・。」


姉さんが俺を苦笑いで見ながらそんな事を言ってくる。


「こらっ!そんな言い方無いでしょ?!」


「いやまぁそうなんだけど・・・でもお母さんだって思うでしょ?」


「そ、それは・・・。」


「確かに以前の俺ならキレて暴れてたよね、と言うかそれ以前にケーキ何て作ろうとすら思わなかっただろうし・・・。」


「そうそう!だから変われば変わるもんだなーって思って。」


確かに言われて思ったけど・・・。


「俺、変われてる?」


「大丈夫よ、ちゃんと変わった、それに成長してる。」


「自信持って大丈夫よ、このまま無理しないで努力し続ければねっ。」


二人の言葉に頑張らないとっと気持ちを新たにして次に悠馬さんと会えた時に恥ずかしくない自分で居ようと思うのだった。


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