第108話 第16楽章 貴方は私の・・・

それにしても、本当に色々と上手く行って良かった。清華と早苗さんの連弾も思った通り上手く行ったしそれに・・・、愛央達と楽しそうに話してる清華を見て本当に思う。


「清華の笑顔、守れたし、大満足だな。」


何だかんだでこの世界に来て色々な事あったけどまだ半年も経ってないんだよな・・・。

内容が濃すぎて何年も立ってる気分だわ。


チリンチリーン♪


っと入店を告げる音が鳴ってそっちに顔を向けたら早苗さん達が到着したみたいだった。


「すいません!お待たせしました!」


「「お待たせしました!!」」


「いらっしゃいませっ!お疲れさまでしたっ!」


志保から始まり皆がそれぞれ声をかけながら健闘を称えあったりして、それぞれが席に着いて直ぐに志保と有希華さんが料理や飲み物を出してくれてパーティーの準備が整うのを見届けて声をかける。


「おしっ!それじゃ~今日の主賓である清華と早苗さんから一言どうぞっ!」


「「「清華?!?!」」」


「先ずは、私の不注意で楽譜が駄目になってしまってすいませんでした!そして、駆けつけてくれてありがとうございました!お陰で全て上手く行ったと思います!そして、こんな素敵な会を開催してくれてありがとうございます!」


っと早苗さんが先陣を切って言い始めて。


「えっと、今日は色々あったけど全部上手く行って本当に良かったです。その上こんな素敵なパーティーまで開催してくれてありがとうございます。こんな素敵な友達と仲間に恵まれて幸せだって感じてます。えっと・・・今日はたのしみましょうー!乾杯!!」


「「「無視するなー!説明しろーーーっっ!!!」」」


気にしたら駄目よそこは。俺もスルーしてグラスをチンッと鳴らして飲み物も料理も堪能し始めるのだった。


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SIDE 清華


私は今、地味にピンチだったりする。パーティーは滞りなく進んで皆が好きに食べたり飲んだり話したりしながら時間を過ごしてるけど遂に追及が始まってしまった。


「それで?悠馬が先輩を清華って呼び捨てなのはどうしてですか?もう告白したんですか?」


「そうならそうと教えてくれないと困りますよ?別に隠す事じゃないですよね?」


「えっとそのね?悠馬くんがそう呼ぶようになったのは理由があってね・・・。」


私は演奏会で何があったのか、何故そう呼ぶようになったのかを愛央ちゃんと志保ちゃんに説明していた。


「ふんむぅ~。そう言う事ですか。うまくやりましたね!」


「確かにうまくやりましたね。先輩にしては頑張ったかと。」


「志保ちゃん、地味に酷くない?」


「ふふっ。冗談ですよ。でも良かったですね、後は告白するだけです。」


うっ、確かにそうなんだけど、どのタイミングで言うべきか・・・。


「目標は達成したんですし後は伝えるだけだし難しくないですよきっと。それに悠馬なら受け入れてくれますよ。」


「そうかな・・・。流石に不安だよ。」


「大丈夫です。悠馬さんだって清華さんに言われて嬉しくない訳無いです。それに私達3人は悠馬君のお嫁さんになり隊ですからね!」


「あはは。うん、そうだねっ!うんっ・・・ちゃんと伝える。丁度、悠馬くんが一人で外に出たっぽいし行ってくるね。」


「「はいっ!ガンバですよ!」」


二人の応援を背中に聞きながら私は悠馬くんの後を追って外に出た、心臓はドキドキして痛いくらいだし顔も真っ赤になってるのも自分で分かるし声も出るか分からない位の状態だけど・・・・。

それでもこの気持ちを伝えたいと愛しい貴方に、私を救ってくれた貴方にどうしても伝えたいと気持ちを強くしながら、大好きな彼の背中に声をかけた・・・。


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「はぁぁぁ・・・、女子高にまで行く事になるとはな。いい加減落ち着いて過ごせると良いんだけどなぁ~。」


そんな事を呟いていると後ろから声がかかってそれは今日の主役の一人の清華なのは直ぐに分かった。


「一人で外に出てどうしたの?」


「ん?あぁ清華。清華こそどうした?愛央と志保と話してたろ?」


「うん、でも悠馬くんが外に出て行くのが見えたからどうしたのかなって思って追いかけてきちゃった。」


「あ~・・それは何かごめん。二人は?」


「な~に~?私だけじゃ不満ですか~?二人共、中で待ってるよ。」


「不満なんてある訳ないでしょ。清華みたいな美女に追いかけて貰えるなんて男冥利に尽きるってもんだ。」


俺の軽口に「そ、そっかっ///」っと口をもにょもにょさせながら照れてる清華に笑いそうになるのを我慢して声をかける。


「それで、わざわざ一人でなんて何かあったとかですか?」


「あ・・えっとね?話したい事があってさ。聞いて貰っても良いかな?」


「そう言えば上手く行ったら時間取るって約束してましたね。今で良いんですか?」


「うんっ。決意鈍りそうだし今でお願い。」


「決意?」


俺の質問に清華は赤い顔をしてるけど真剣な顔のまま・・・「先ずはありがとうっ。」っとお礼を口にしながら頭を下げて来た。


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SIDE 清華


「先ずはありがとうっ。」


私のお礼の言葉に悠馬くんはきょとんっとしてどう言う事?って顔してる。


「ありがとうって何に対してです?」


「あのね。私ってさ悠馬くんに出会う前から救われてるの。」


んん?っと完全に混乱した顔をしてる悠馬くんを可愛いなっと思いながら私は言葉を紡ぐ。


「何時の頃からか私の出す音には心が乗ってない、ただ奏でているだけでそれじゃ聞かせる相手に何も伝えられないって言われてたの。」


「ええ、それは聞いてますけど、それが?」


「うん、それでね?お母さんとも喧嘩したりで正直な所ギクシャクしてる部分もあったりでね。」


私の説明に悠馬くんは特に反応する事なく真剣に聞いてくれてる。


「そんなだったからさ正直な所もう限界かなって思ってた。ピアノは大好きだけど自分でも限界を感じていて全然、改善も出来なくて悩んでてさ・・・。」


当時の事を思い出しながら暗くなって来てる空を見上げながら言葉を紡ぐ・・・。


「その日も怒られてどうすりゃいいんだー!言われなくても分かってるわー!ってなってた所に優希からのフリッペでYouMaを知った。」


「うん。」


「悠馬くんの演奏を見て私は自分に足りないものは何なのか何を忘れているのかを何時から楽しいって思いながら演奏出来なくなったんだろうって自分に足りないものを見つけて最初の気持ちを思い出せたの。」


「最初の動画で俺は役に立ててたんですね。」


そう言って悠馬くんは嬉しそうな笑顔だけど何処か恥ずかしそうにしてる。


「うん、先ずはそれで私は救われた。そして自分でも演奏してみたい歌ってみたいって思えて・・・。頑張っちゃった。」


「凄かったですもんね。あの時の清華の美しさは未だに目に焼き付いてます。」


またそう言う事をサラっと・・・もうっ///


「ぁ、ぁぅ///ありがとっ///そ、それでねっ!長年の悩みも解決してお母さんともギクシャクしてたのも改善して・・・。そしてストリートでも悠馬くんに助けてもらった。」


あの時の堂々とした悠馬くんの背中は今でも思い出せる、ピンチに駆けつけてくれるおとぎ話の王子様の様な頼りになる背中を・・・・。


「そこからは連弾までしてあの時の連弾は私にとってずっと色褪せる事のない最高の思い出なの。」


「大げさって気が正直しますけど・・・。でもあれがあったから今こうやって清華と仲良くなれてるなら感慨深いものは確かにありますね。」


「そうだね。私もこんな風に男の子と仲良くなれるなんて夢にも思ってなかった。それだけでも幸せなのに・・・。でもね・・・愛央ちゃんや志保ちゃんを見てて思うの。」


「二人を見てて思う事ですか?」


「うんっ。二人共幸せそうだな~、いいな~ってどうしても思っちゃう。」


「いやまぁ・・それは清華だけじゃなく多分、学校の女子の殆んどが思ってるんじゃないかなっと・・・。」


少し気まずそうに指で頬を掻きながら明後日の方向を向いてる。


「くすくすっ。そんな気まずそうな顔しなくても良いじゃない。」


「ごめん。」っと照れながらこっちを向き直してくれて、本当に可愛いなって思っちゃう。


「そして・・・今日の事。悠馬くんが居なかったら、仲良くなれてなかったら早苗も私も上手く行かなかったのは間違い無いし、そんな時にお母さんが言ってたのを聞いたけど何も迷う事も無く駆けつけるって選択をしてくれたって、そしてまた私は悠馬くんに助けられた。悠馬くんは本当に凄いと思う、本当にたくさんの人を救ってるし色々と影響も与えたり出来ちゃってる。」


「それは本当に大げさです。俺はそんな大層な人間じゃないし間違いだって犯す事だってあります、その証拠に俺は志保の時に人を殺しそうになった。」


「うん、それは勿論分かってる。仮にそうなりかけたら愛央ちゃんが、志保ちゃんが、葵さんも菜月ちゃんも、当然、私も悠馬くんを止める。」


「えぇ、そこは俺も信じて信用しています。」って私の言った言葉に嬉しそうに返事してくれた。


「えっと少し話ずれちゃったけど・・・。知り合う前から知り合った後も・・・そして今日も、私は悠馬くんに助けられてるの。年上で情けないな~って思うけど・・・。」


「そんな事はないです。絶対に、情けないなんて思いませんし思ってません。」


「ありがとっ。そんな貴方だからっ!そんな悠馬くんだからっ!私はっ!」


そう言って立ち上がって少しだけ悠馬くんの前に出てクルっと振り向いて・・・。

胸の前で手を固く結びながら言葉を・・・自分の気持ちを・・・もう我慢も抑える事も出来ない思いを伝えるんだ・・・。


「清華・・・?」


不思議そうにしながらも私を見詰めて、私の次の言葉をじっと待ってくれてる・・・。だから・・・っ。だからっっっ!!


「私、私ねっ!悠馬くんが・・・好き・・・です。何時でも助けに駆けつけてくれる素敵な王子様の様な悠馬くんが、誰よりも大好きですっ!悠馬くんさえ良ければ3人目の恋人にしてくださいっ!」


単純な言葉で、それでもはっきりと私は気持ちを伝える事が出来たのだった。


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