第106話 第14楽章 連弾

SIDE 清華


「悠馬くん!」「悠馬さん!」


「遅くなってごめんな。ちょっと手間取った。」


「手間取るって?」


混乱してる私を尻目に周りもいきなりのYouMaの登場を無言で見詰めながら皆が動向を見てる。

そんな周りの様子を無視して悠馬くんは私に近づいて来て・・・。


「はいこれ。二人の、早苗さんと清華の連弾用の楽譜。合わせる時間取れなかったけど目を通して。」


「えっ・・あっ・・はい。・・・って清華って////」


「ん?何か問題あった?清華は清華じゃん?それと、二人なら新しいのでも行けると思って全く違うのだけど持ってきた。」


「え?ぇぇ?ええええええ?!?!?!」「ちょ!マジで?マジ?!」「本物?本物?え?夢?」「え?YouMa様・・・?」「はっ?!何で?なんでぇ」「なななな、何でここにぃぃ?!」


回りの反応は完全に無視で私と早苗の手を取って・・・。


「丁度、出番だろ?二人なら初めての曲でもやれんだろ?」


そう言って笑顔で私と早苗に、そんな風に言われたら私の私達の返事は一つしかない。


「う、うんっ!やる!私と早苗なら余裕だよねっ!!」


「当然だし!私等の力見せてやりましょ!」


最大級の笑顔で悠馬くんから楽譜を受け取って私達は揃ってピアノの前に歩いて行く、私も早苗もどんな曲なのかってわくわくしてるのを全く隠さずにっ。


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ふぅぅ・・・何とか間に合ったか・・・。


「いきなりお邪魔してすいませんでした、お叱りは後で幾らでも受けます。ですので!今は彼女達に演奏をさせてあげてください!お願いしますっ!」


俺はそう言って思いっきり頭を下げる。


「頭を上げてください、演奏は勿論許可します。むしろこちらの不手際でご迷惑かけまして、申し訳ありません。」


「いえ、俺は特には・・・。取り合えず許可は取れたよ!二人共っ!思いっきりやっちまえっ!」


「「まっかせてっ!」」


その言葉の後に二人が顔を見合わせて深呼吸をした後に笑顔のまま・・・二人の指が鍵盤の上で踊り始めた。


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SIDE 伶佳


いつぶりだろう?あの子のあんなに楽しそうな顔、幸せそうな顔そんな顔で演奏してるのを見るのなんていつぶりなのか既に覚えてないくらい。


ピアノをやり始めたとき位の純粋な顔で一生懸命に鍵盤を叩いてる姿を見るのは本当にいつ以来なのか記憶に無いくらいだ。


そしてそれを簡単に引き出したのは間違いなく悠馬くん、彼の投稿を見て聞いて長年の悩みが簡単に解決したと思ったら、知り合って仲良くなった!だものね・・・。


「それにしても、あの子ったら私に気付きもしなかったわね。悠馬くんの事しか見えてないじゃない。仕方ないと言えば仕方ないんでしょうけど、清華からしたら自分のピンチに駆けつけてくれた白馬の王子様だものね。」


これはこれでまぁ〜、あの子を揶揄からかって楽しむ事も出来るし良いけど。

悠馬くんのおかげで清華との仲も改善して昔みたいに沢山会話出来るようになって、それに何よりあの子が毎日楽しそうで幸せそうで・・・今日だって何一つ、悩みも迷いもしないで決めてくれて。

本当にどれだけ感謝しても足りないんですよ?清華の王子様・・・、そんな事を私の隣に立って二人の演奏を聴いている悠馬くんに向けて心の中で思い続けた。


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SIDE 清華


踊る踊る、私の指が、私達の指が忙しなく鍵盤の上で踊り続ける、隣には大切な親友でライバルの早苗、少し視線をずらせば私達を確りと見てくれている大切な思い人の悠馬くん。


そんな人から提供された新しい曲を私と早苗は演奏している、練習も無しでこれだけ弾けるのはやっぱり早苗と一緒に弾いているからだと思う、普通なら絶対に上手く何て行かないのに私と早苗はずっと弾いていたかのように自分でも素晴らしいと思える演奏が出来てる。


どうしよう・・・この時間が終わって欲しくない位とても楽しいっ!今まで悠馬くんとした連弾と同じくらい早苗との連弾は楽しくて仕方ない、チラっと隣を見れば早苗も楽しそうな顔をとても綺麗な笑顔を浮かべてる。


私が見てるのに気付いたのかこちらを見てくれて目があった後、どちらからともなくコクリっと頷いて、フィナーレに向けて二人揃って弾き続ける。


そして、どんなに楽しい時間でも終りが来て最後の1音を叩いて音が消えるまで余韻に私と早苗は浸っていた・・・。


「はぁ・・・。」


凄く満足のいく演奏だった、今までのどの経験にも勝る最高の演奏だったって胸を張って言える。だって・・・ほら・・・?


パチ・・パチパチ・・・パチパチパチ・・・・わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!っと沢山の拍手と歓声が私達を迎えてくれたんだもん。


「あ、あはは・・・なにこれ?何で弾けちゃうの・・・?それに有り得ない位楽しかった・・・。」


「うんっ。早苗との連弾、最高に楽しかったぁ~・・・。これには、どんな歌詞が付くんだろう?悠馬くんの事だからとても素敵な歌になりそうで今から楽しみ・・・。」


「あんまりプレッシャーかけないでくださいよ、清華先輩っ。」


拍手と歓声が鳴り響く室内でこそっと何時もの話し方で声をかけてくれた悠馬くん。

嬉しいけど、でもねぇ?って呼ばれた以上はもう元の呼び方じゃ満足出来ないんだよ?


「もうっ。清華で良いのっ!先輩って付けたら返事してあげないんだからねっ。」


そう言って演奏が終わって私達に近づいて来たのを良い事に私は悠馬くんの胸の中に飛び込んだ。


「ちょっ?!先輩?!「むぅぅぅぅ。」・・・・清華・・・。」


「は~いっ!何かな~?」


「いやその・・・胸がですね?男なので精神的に来ると言いますか、勘違いしてしまいそうになると言いますか・・・。」


「勘違いじゃ無いよ?悠馬くんだからこんな事してるんだもんっ。」


「えっ?!それって・・・っ?!」


私はくすくすと笑いながら顔を赤くして焦ってる珍しい悠馬くんを眺めていたら早苗が声をかけて来る。


「あの、悠馬さん。ありがとうございましたっ!」


邪魔されたしぃ~・・・。


「いやいや、間に合って、上手く行って良かったです。演奏、最高でした!これならリフレインも聞きたかったですよ。」


「あはは・・・、何か照れてしまいます。でも、うん。本当に助かったし今までで一番楽しかったですっ!」


「全く・・・さっきまで死にそうな顔をしていた癖に現金だな~。」


「ちょっと!それ言わないでよ!間に合わなかったらって本当に焦ってたんだからね!」


全くもうっ!でも・・・上手く行って本当に良かったかな?これなら勝てなくても早苗も満足だろうしね、何かやっと肩の荷が下りた感じがする。

悠馬くんも私の肩をポンポンっとした後に少し離れていったのだった。


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やれやれ・・・何とかって感じだな、次は伶佳さんの事とあの中等部の子達も中に来ているし教師かな?に掴まれてあの馬鹿も中にいる。


「悠馬くん、改めてありがとうございました。」


「いえいえ、お店でも言った通り清華は俺にとっても大切な人ですからその人が困ってるなら迷うことなんて無いですよ。それに・・・。」


「それに?」


「ほら、あれ。凄い楽しそうな素敵な笑顔じゃないですか。あれを見れただけで十分です。」


「なるほど、貴方はそういう・・・だからなんですね。」


「だから?それはどういう・・・?」


「気にしないで下さい、それに何より私が言ったりしたらあの子に怒られちゃいますので。それはそうと、あの子ったら私も一緒に入ってきたのに全く気付きもしないで・・・もうっ。こらっ!清華!ちょっと来なさいっ!!」


「お母さん?!何時から居たのっ?!」


あっ、これ怒られるやつだわっと見てて苦笑いしか出なかった・・・・。


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