第105話 第13楽章 届いた救いの手

「悠馬さん!こっちです!」


伶佳さんが急いでくれたお陰でそんなに時間をかけずに学園にたどり着いた。

中等部の子に案内されながら直ぐに守衛と話したら「話は聞いていますので、こちらを首から下げてください。」っと許可証を受け取って首から下げた後に直ぐに校内に踏み込む。


「え?ねぇ・・あの人って・・・。」「何でここに・・・?」「YouMa様だよね?」「中等部の子?達が連れて来たの?何で?!」


流石に気付かれるか、まぁでも今は良い、先に清華先輩だ。


「コンクールやってる所まで頼む、間に合わなかったじゃかっこ付かないしっ。」


「この時間ならまだ大丈夫です、早苗先輩の出番はお昼前ですから十分です。」


コクリと一つ頷いて中等部の子達の後ろを着いて行く、その後ろから伶佳さんも一緒になって校内を進んでる。


「それにしても・・・。」


少しやり口がお粗末な気がしなくも無いが・・・その結果、スムーズに進むならそれに越した事は無いか・・・。


「はいはいーそこまでー!届けさせる訳には行かないんだよねー。」


考え事をして居たら少し距離が空いてしまって曲がり角を曲がって先に行ったあの子達を止める声が聞こえて来て足を止めた。


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SIDE 伶佳


「悠馬くん・・・?」


「静かにっ。あの子達には悪いけど少し様子見ます。」


逆月悠馬、清華を救ってくれた男の子、ずっと悩んでいた清華に知り合う前から答えを与えて、ストリートの時に助けて仲良くなってくれた子。


清華に話を聞いた時は何が狙いなんだろうって正直思っていたけど、愛央ちゃんと付き合う事になった時の配信、志保ちゃんと付き合う時の事件、そして今回・・・どれも一切迷う事も無く助けようとしてくれて今も清華の為にこんな所まできてくれてる。


「あんたらがこう動くのは想定済みなのよ!早苗に勝たれると困るのよねー、私が選ばれないのにあいつが選ばれる事自体おかしいってのに!」


あの子が犯人って事か・・・本当に何を言っているんだろう、早苗ちゃんは負けない様に努力したから選ばれたって言うのに、悠馬くんだって努力が分かったから提供したんだろうし、それなのに・・・。


「だからって楽譜を捨てるなんて!YouMaファンって言ってたのに恥ずかしくないんですか?!よく出来ましたね!?」


「偽物に決まってるでしょ!そんなのっ!大体にしてYouMa様に提供して貰ったとか大嘘まで吐いて!どんだけ卑しいんだっての!ありえねーし!あの時の喫茶店に居たのだって絶対違うし!ほんとありえない!早苗、程度が選ばれるとかあり得ないから!」


この子は・・・!・・・って悠馬くん?雰囲気が・・・。


「悠馬・・・くん・・・?」


「あぁ、すいません。いい加減、聞くに堪えないしあの子達も可哀そうだしあいつ・・・黙らせますね。」


それだけ言って、悠馬くんは、厳しい視線のままに二人を庇う様に前に出て、悠馬くんに気付いて、本人が居ると思っていなかったのか、口をパクパクさせながら動きが止まっていた。


「取り合えず話は聞いていた、お前は口を開くな、黙れ。君らもごめんな、反応遅くなってしまって怖い思いしたよな。」


一度、振り返った悠馬くんは二人の頭を撫でて二人を落ち着かせてるけど顔真っ赤になってるわこの子達・・・。


「「ぃぇ・・・///だいじょうぶでしゅ///」」


「なら良かった。・・・さって、お前が捨てたのか?お前が早苗さんの邪魔をしているんだな?喫茶店の時もそうだったが・・・本当に性根が腐ってるんだな!」


最初は静かに、問い詰める様に言いながらも次第に大きな声になって最後には怒鳴り声の様になってしまってる。


「悠馬くん・・・、気持ちは分かるけど怒鳴り声は・・・。」


「あぁ、そうですね。答える気も無いようですし時間の無駄だわ、こいつに構ってる暇も無いし無視して急ぎましょう。」


そう言って二人を引っ張りながら歩いて行く悠馬くんの後ろを私も着いて行く、少し歩いて直ぐに悠馬くんが振り返って一番のダメージを与えた。


「あぁ、お前の事、心底軽蔑するわ。俺さ〜お前みたいな努力もしないで文句ばかり言ってるやつって大っ嫌いなんだよね、人の努力も認めずに自分も努力もせずに奪う事だけに努力して、お前みたいなやつを人間とは認めない、さっさと山に帰れよ。」


悠馬くんにそう言われた彼女は膝から崩れ落ちて真っ白と言うか放心状態になってしまっているし、騒ぎを聞きつけて見に来ていた子達も悠馬くんも物凄く冷たい目を彼女に向けて居たのがとても印象的だった・・・。


…………………………………………………………

「ここです!ここでやってるんです!」


辿り着いた場所は音楽室、話によれば物凄く広いらしい。

扉の向こうから微かに演奏の音が聞こえてくるのを確認して、間違いないと、認識する。


「ありがとう、間に合ったとは思うよ。二人はさっきの奴が何かしないように監視するなり教師を呼んでくるなりして事情を説明して欲しい。」


「「はいっ!任せて下さいっ!!」」


「伶佳さんは一緒に中にですかね?」


「そうね、清華が居るし入っても問題は無いと思う。追い出されたらその時よ!」


「ですね、それじゃ・・・。」


俺が扉に手をかけるのと同時に二人から声がかかる。


「「あのっ!!」」


「どうした?」


「早苗先輩の事、宜しくお願いしますっ!」「お願いしますっ!!!」


「任せろっ!!」


それだけ言って俺は扉に手を掛け勢いよく開いて会場に乗り込んだ。


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SIDE 清華


他の人達の連弾が進んでいく、私も早苗も流石に少し焦りはじてるのがお互いに分かる。

このままだと間に合わない可能性もあるし・・・。


「ね、ねぇ?清華。」


「分かってる、分かってるけど待つしか出来ないし・・・。」


「それはそうなんだけど・・・。今の組が終わったら私達だし・・・さ。」


そう、もう手前まで来ているから良い加減届かないと私達は演奏すら出来なくなってしまう。


「お願い・・・悠馬くんっ。」


私の願いも虚しく演奏は終了し、私達の出番が回ってきてしまう。


「ありがとうございました、それでは次に工藤さんと伊集院さんのペア、お願いします。」


「あ、はいっ!・・・でも、えっと・・・。」


「早苗、こうなったらうろ覚えでもやるしかないよ。完璧には無理でも私達なら!」


「う、うん!そうだね!やれるだけやらないとね!」


私達は覚悟を決めてピアノの前まで歩き始める、早苗ののやつらなのか、ニヤニヤとしてるのも見えれば早苗のっぽい子達は心配そうな不安そうな顔をして居るのが良く見えた、早苗も少しだけ不安そうな顔をしてるけど何処かやってやる!って顔にも見える。


私も覚悟を決めて前を向いて歩き始めるのと同時に・・・っと扉を開く音が室内に響いて、それに続くように大好きな、絶対に聞き間違うこと何て無い声が私の耳を叩く。


「失礼しますっ。早苗さん、清華っ、遅くなってごめん。間に合ったよね?」


そこには、悠馬くんが、まるでお姫様のピンチに駆けつける王子様の様に堂々とした佇まいで立っていた。


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