第104話 第12楽章 救いの一手

チリンチリーンっ。


「いらっしゃまっ・・・伶佳さん?どうしました?何か焦ってませんか?」


入店を告げる音が鳴ったと思えばそこには少し焦った顔の伶佳さんが居た。


「ゆ、悠馬くん!良かった居てくれて!清華が!清華が!」


「ちょ、ちょっと落ち着いて下さい!清華先輩に何かあったんですか?」


「じ、実は・・・さっき、清華から電話があって・・・。」


前日に準備して置いていた、楽譜が破り捨てられて居た事、リフレインは無くても大丈夫だけど連弾用の方は無いと困ること、もし良ければ持ってきて貰えないか?って事だった。


「なるほど。持っていくのは良いとしても、俺は入れるんですか?女子校に。」


「そこは任せてください!!!」


「私達がお連れします!!」


「君等・・・そうか、君たちがいれば、入りやすいのか。・・・頼めるか?」


「「はいっ!!」」


それなら後は楽譜だけど・・・折角だしやらかすか?


「伶佳さん、連弾の楽譜って何を使うかって聞いてますか?」


「あ、えぇ!・・・いや、でも間に合わない・・・。」


何かがあるって事か、それならあれを出すしかないかな。

俺は直ぐにスマホを取り出して母親に電話をかける。


「もしもし、母さん?俺の部屋のPCに刺さってるUSBなんだけどさ、ステイルに持ってきてもらえない?出来るだけ急ぎで頼みたい。」


「USBを持ってステイルに行けば良いのね?任せて。」


「うん、待ってるからお願い。」


そう言って電話を切った俺は次に女の子達に話しかける。


「君達は必要な連絡とかがあるならしておいて欲しい。それと、志保!」


「PCとプリンターの立ち上げですね?分かってます。そんなに時間がかかる訳では無いですけど準備はしておきますね。」


「流石!頼りになるよ。後は母さんが来てからだな・・・。」


「ねぇ、悠馬っ。大丈夫なの?何かされたりする可能性だってあるんだよ?」


「愛央の心配は分かるけど、俺はやるよ。清華先輩は愛央にとっても、志保にとっても、勿論、俺にとっても大切な人です。そんな人が今困っている、そして俺にはそれを解決する方法が、手段がある。それなら・・・。」


「それなら?」


「やらないって言う選択肢はない。俺に清華先輩を助ける手段があるなら俺はそれをやる。仮にそれがどんなに危険な事だとしても。」


俺の言葉に愛央は俺の胸の中に飛び込んでくるのを俺は素直に受け止める。


「だから、信じて待ってろ。志保との約束じゃ無いけど俺はちゃんと戻ってくるから。」


「うんっ。信じてるからっ!だから頑張ってねっ!」


愛央の頭から背中までを撫でながら大丈夫だよ、心配いらないよっと言葉にしなくても伝わるように優しく撫でる。


「もうっ!愛央さんズルいですよ!」


戻ってきた志保が抱きついてる愛央を見てそんな事を言ってくるから俺は愛央を撫でたまま、片手を広げて志保を迎え入れると直ぐに志保も俺の胸の中に飛び込んできた。


「志保も信じて待っててくれ、必ず帰ってくる。」


俺のそんな言葉に志保は一言・・・。


「はい、ご馳走を準備して待ってますねっ!」


とても綺麗な笑顔でそう言ってくれたのだった。


…………………………………………………………

SIDE 清華


「もしもしお母さん?お願いがあるんだけど。」


「お願い?早苗ちゃんのお手伝いじゃ無かったの?」


「そうなんだけどちょっと問題がね・・・、それでステイルに行って悠馬くんに話して欲しいの。」


「ステイルに行けば会えるの?」


「うん、今日はそこで時間潰すって言ってたから居るはず、それでね・・・。」


私は何があったのか、悠馬くんに何をお願いしたいのかを母親に伝えて走って貰う事にした、連弾はお昼前だから間に合うはずだし、悠馬くんなら何かをしてくれるんじゃないかって不思議と思えた。


「って事でお願いね?お昼前が出番だけど出来るだけ早くお願いできればしたいの。」


「分かったわ、走っては見るからあんたは早苗ちゃんを支えてあげて、また後でね?」


ありがとうっと伝えて電話を切った後に戻ると既に始まっていて席に着くと直ぐに早苗が寄って来た。


「どうだった・・・?」


「取り合えずお母さんにステイルに行って貰って悠馬くんに話して貰う事にはしたからそれ次第かな・・・。」


「そっか・・・、間に合うと良いんだけど・・・。」


最初から最後まで迷惑かける事になっちゃったなぁ~・・・って早苗がぼそっと呟く。


「悠馬くんなら大丈夫よ、絶対に何とかしてくれるっ。」


「信用・・・んーん、信頼してるんだねっ。」


「勿論っ!何と言っても悠馬くんだからねっ。」


「工藤さん、貴女の番ですよ。」


「あ、はいっ!・・・行ってくるね、私のリフレインを奏でて来るからっ!」


頑張ってっ!っと早苗に声援を送って私は聞く姿勢になる、あれから練習を重ねた早苗のリフレインを一切聞き漏らさない様に・・・。


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SIDE 早苗


すぅぅ・・ふぅぅぅ・・・、椅子に座って鍵盤の前で一呼吸・・・。

あの日から毎日毎日、練習を重ねて譜面を見なくても完璧に弾ける様になったリフレイン、悠馬さんのでも清華のでも無い私のリフレインをこれから奏でると思うと凄い緊張する・・・。


「譜面は捨てられてしまったので置きませんがYouMaのリフレインを弾きます、ご本人とコンタクトを取って提供して貰ったので無許可ではありません、私の連弾の相手でもある、清華が証人です。」


私の言葉に周りの子、教師の全員が清華を見てる、清華も私が言ってる事が真実だと言う様にしっかりと頷いて周りに見せつけてくれた。


「そして、最初に言っておきますがこれから弾くリフレインはYouMaのリフレインとは違うと言っておきます、本人からも弾くなら自分のリフレインを弾いてくれと言われ必死に答えを探して見つけました。・・・いきます。」


♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪


私の指が記憶した通りに鍵盤の上で踊る、時に力強く、時に優しく練習の時以上の音を奏でてるって自分で分かる。

そのまま私は確かな手ごたえを残したまま演奏を最後まで終える・・・そして、っと盛大な拍手が私の演奏が終わるのと同時に部屋中に鳴り響くのだった。


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愛央と志保に心配いらないっと伝えながら待っていると母さんが急いだのか直ぐに来てくれて頼んでいたUSBを受け取った俺は志保と共に奥に引っ込んで直ぐに印刷を開始した。


「悠馬さん・・・これって新しい曲ですよね?練習も無しに連弾に何て幾ら何でも・・・。」


「あの二人なら大丈夫だ。それに、ふざけた事をした奴、した奴等を潰したいじゃん?」


「それはそうですけど・・・。でもっ。」


何かを言いたそうな志保を尻目に印刷を終えた楽譜を持って俺は戻るって伶佳さんに一言。


「伶佳さん、こっちは準備出来ました、お願いします。」


「直ぐに車を回して来るわっ!ありがとう!」


「お礼はまだ早いです、兎に角お願いします。・・・んでだ、まぁ・・・。」


「うんっ!」「はいっ!」


「行ってくるわっ。困ってるお姫様を助けにさ。」


タタっと二人共俺に近づいて来てそのまま両頬に・・ちゅっと二人揃ってキスしてくれて。


「「いってらっしゃいっ。がんばってねっ!」くださいねっ!」」


「君達も行くよ、こっからが本番だ。」


「「はいっ!行きましょう!」」


二人を連れて愛央と志保と母さんを背にしたまま俺は店を後にし、伶佳さんの車に乗り込んだ。


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今日中に後、一話か二話は行けるかも?

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