第102話 第9楽章 ちょっとだけやり返す早苗

SIDE 早苗


「それじゃもう来週に迫った校内コンクールに関してですが、皆さんの準備はどうでしょうか?連弾の相手と演奏する曲は決まりましたか?」


先生の言葉に選ばれてる代表者はそれぞれが頷いてる、私も同じように頷くだけにして大丈夫だと意思表示をしながら改めて音楽室内を見渡してみて思う。

清蘭も大きいらしいけどこっちもかなりの広さだと思う、流石にエスカレーターの女子校、一年生も居れば中等部の子達も居ても余裕がある教室って凄すぎない?って思う。


「大丈夫そうですね、それじゃそれぞれ何をするか教えてください、先ずは3年生から・・・。」


3年から順に連弾の相手の報告と何を演奏するのかを先生の用意していた紙に書いて行って私の番になった。


「えっと・・・工藤さんは・・・えっ?!これ・・・本当に?」


「はいっ!間違い無いですよ。」


「いやでもこれは・・・。」


「先生、工藤さんは何て書いたんですか?」


その質問に先生は私に視線を送ってくる、言っても良いかって事だろうし私はコクリと頷いて了承の意を示すと話し始めた。


「工藤さんの連弾の相手は伊集院清華さん、そしてソロで弾く曲は・・・YouMaのリフレイン・・・。」


「「「は?・・・えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ?!」」」


「ちょっと?!どう言う事よ!伊集院清華ってあの伊集院清華でしょ?!私達と歳も変わらないのにコンクールを総なめしてる子!何でそんな子が・・・?!」


「ってそっちも凄い事だけどYouMaのリフレインって何よ?!どうしたらそうなんの?!」


うん、思ってたよりも大騒ぎになっちゃった、清華はこの界隈じゃ有名だから当然として、流石に悠馬さんのリフレインは誰も想像してなかっただろうしね。


「確認だけど本当にここに書いてあることであってるのよね?工藤さん。」


「ふざけんな!何であんたに!あんたが!」


あの日に私に絡んで来た先輩が私の胸倉を掴んで責めて来るけど私はひるむ事も無く皆にも聞こえる様に話す。


「手を離してください、清華は私の親友で幼馴染みたいなものなので、話したら協力してくれる事になりました、リフレインに関しては悠馬さん本人にお願いして楽譜を提供して貰ったからです。」


「そ、そんな・・・。」


「いきなり胸倉を掴む何て何を考えてるの?!直ぐに離れなさい!」


先生の言葉に「うっ・・・。」っと、それだけ言って私を離した先輩は気まずそうな顔をしながらも離れて行く。


「兎に角、私はそれで行きますのでお願いしますね、先生。」


「えぇ、分かりました、頑張ってくださいね。」


「あぁ、そうだ、先輩。あの日に先輩を止めた男の人居たじゃないですか?」


それがどうした?って顔で私を見つめてきてるのを確認した私はハッキリとあの男の子の正体を教えてあげることにした。


「あの人、悠馬さんですよ、良かったですね?憧れの人に腕を掴まれて。」


「ぇ・・・ぅ、嘘だよね・・・?」


「本当です、本当に悠馬さんです。私も信じられなかった位ですけど本物でしたよ。それと、先輩には呆れていました。」


ガックリとマジ落ち込みしてるのを見届けて自分でも性格悪いなーっとは思うもののこれくらいの意趣返しは許してもらえるよね?っと誰に聞くわけでも無いけど何となく思う。


「あ、あの!あの!早苗先輩っ!」


「うん?どうしたの?」


「YouMaさんに会ったんですか?!どうでした?!やっぱり素敵な人でしたか?!」


そのまま答えても良いけどここは少し遊んじゃおうかなっ。


「ん-・・・噂はやっぱり噂かな~当てにならないって感じだね。」


私は少し影を作ってそんな事を言ってみる。


「ぇぇぇ・・・早苗先輩のその反応ってまさか・・・。」


「ちょーショック・・・。」


「他の人とは違うって思ってたのに・・・。」


くっ、くくくっ・・・もう無理・・・。素直過ぎて可愛いっ、こんなの我慢するの無理っ。


「って・・・早苗先輩?」


「あはははっ。ごめんごめん、ちょっと揶揄っちゃったっ。」


「「「ちょっ?!先輩?!」」」


「ふふっ、ぷくくっ。うん、でもまー噂は当てにならないのは本当よ。だって、もっと素敵だったもんっ!」


笑いを堪えた事で目に涙を貯めながら話を聞いて来た子達に本当のことを話しながら私は何があったのか何を話したのかを話しながら慕ってくれている後輩たちとの時間を楽しむのだった。


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「それでどんな感じなんですか?先輩。」


「ソロでの演奏はもう大丈夫だと思う、連弾の方も多分、大丈夫かな。」


「それなら良いんですけど、何事もなく終るならそれに越した事は無いですしね。」


「そうだねぇ~、早苗は頑張ってるしほんとに上手く行って欲しいな~・・・。」


「早苗さんもそうだけど清華先輩にも俺は上手く行って欲しいです、友人の為に他校のイベントまで手を貸すんですから早苗、清華コンビで早苗さんじゃ無いけど見返して欲しいなって思いますよ。」


俺と愛央、志保、清華先輩と薫と揃って今日は音楽室にお邪魔する事になって向かっていた、遊びにおいでっと誘われたのもあるし薫からのお願いで、結構弾ける様になったから見て欲しいって言われたのもあるそんな訳で揃ってお邪魔する事になった訳。


「「お疲れ様です~。」」


「「「お邪魔しまーす。」」」


俺達は揃って音楽室に入って直ぐに清華先輩と俺の二人は揃ってピアノの方に歩いて行き先ずは軽く連弾をして周りを楽しませるのだった。


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SIDE 清華


「次は、薫かな?」


「ん?薫ちゃんにも教えるの?」


「大分弾けるようになったから見て欲しいって言われてね。おーいっ!薫~、先輩と交代だー。」


俺の言葉に愛央や志保と話してたのを切り上げて嬉しそうにこっちに来た薫と入れ替わりで清華先輩は愛央達の方に歩いて行った。


ふぅう・・・胸がどきどきする・・・。

何度経験しても慣れないな~・・・。一緒に同じこと出来るのは嬉しいしやってる時は大丈夫なんだけどねぇ~・・・。


「ぁぅ・・・。ミスった・・・。」


「気にしない気にしない。その部分抑えながら繰り返し練習していけば問題ないさ。」


悠馬君が薫ちゃんのあの大空の果てまでを後ろから見ながらミスったところの教えたりしてるのを見て居る、その光景を見ながら周りを見渡すと他の部員も目をハートにしながら悠馬くんを眺めていた。


「あれじゃかおるん集中できないでしょ・・・・。悠馬ってば分かってやってるのかな?」


そう悠馬くんってば後ろから抱きしめるような形で薫ちゃんに手を重ねて一緒になって弾いているのだ、あんなの私だってされた瞬間に意識飛ぶ自信ある。


「だよね、薫ちゃん凄いな~・・・「いえ。」・・・んぅ?」


「意識飛んでますよアレ。意識無いのに指だけ動いてますね。器用と言うべきですかね?」


あ、本当だ。白目向いてるのに悠馬くんが手に触れてるから指だけが鍵盤叩いてる。


「悠馬ー、やりすぎ!やりすぎ!かおるんの意識飛んじゃってるよ~!」


「えっ?!ええっ?!?!なんで?!」


いやいや・・・何でって・・・、私だってなるよそんな状態だったら・・・。後ろから密着して手まで握って一緒に演奏したらなるに決まってるでしょ・・・。


羨ましい・・・・私にもしてくれないかなぁ~・・・、絶対意識飛ぶだろうけど後ろからぎゅってされたい!なんて事を思いながら薫ちゃんを介抱するのだった。


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