第100話 第7楽章 乗せる想いと思い
「えっと、いらっしゃい〜?で良いのかな?それと、私はただいまー。」
「多分?お邪魔します。」
「「お邪魔しますーっ。」」
あの後愛央と志保に事の顛末を話したら自分たちも行きたい!っとなったので朝に清華先輩に話しておっけーが出たことから揃って清華先輩の家に着いたら、先に到着していた早苗さんも一緒になってお邪魔した。
「愛央ちゃんと志保ちゃんも一緒に来たんだね。何か悠馬さんの関係者の前で演奏するの恥ずかしいな・・・。」
「気にしないでください、悠馬さんに着いてきただけと思っていただければ。清華先輩の家に来てみたかったっと言うのもありますし・・。」
「です!です!邪魔はしないので気にしないでくださいっ。」
家の奥からパタパタと足音が聞こえて来て直ぐに清華先輩にそっくりで綺麗な女性が現れた。
「清華はお帰りなさい、早苗ちゃんは久しぶりねっ、それと愛央ちゃんと志保ちゃんと・・・悠馬くんで合ってる?」
「初めまして、星川愛央って言います、清華先輩にはいつもお世話になってます。」
「初めまして、天音志保と言います、急にお邪魔して申し訳ありません。」
「逆月悠馬です、急な訪問ですいません、先輩には本当にお世話になってます。」
「ご丁寧にありがとう、母の
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その後、清華先輩の部屋に俺達は揃ってお邪魔、荷物を置いた後に先ずは早苗さんからって事で直ぐに準備をして演奏を開始したのを聞きながら眺めていた。
♪~♪~♪~♪~♪~♪
「・・・ふぅ。どうかな?」
何て言おうかなっと考えてると愛央が真っ先に話し始める。
「正直に言っても良いですか?」
「う、うん。お願い愛央ちゃん。」
「私は門外漢だから専門的な事は言えませんけど聞いてて思ったのはただ弾いてるだけって事です、悠馬が弾いてる時と比べると何も感じられないんです。」
「そうですね、それは私にも分かりました、聞きたいんですけど学校のコンクールに勝って留学に一歩近づきたいからって理由でしたよね?」
「うん、その為に悠馬さんの曲を使えればって、神曲って言われてるリフレインをって思って・・・。」
「本当に思ってますか?私も愛央さんと同じで門外漢ですけど早苗さんのリフレインからは何も感じ取れなかったんです、悠馬さんのリフレインは愛央さんへの愛が込められているのは分かりますよね?」
「そ、それは分かるけど・・・。私が悠馬さんへの愛が無いから弾けないって事?」
これは女性陣に任せた方が正解かもしれないな・・・。
「いえ、違います。大切なのはその部分では無いです。」
「うんっ。何も感じられない理由はそこじゃないですよ。本気度が感じられないんです、本気で目的の達成をしようと思って演奏してませんよね?」
「そ、そんな事?!本気で勝ちたいから清華に無理言って悠馬さんにお願いさせて貰ったんだから!」
「早苗、実際に聞いて私も思った、目的違うよね?悠馬くんへの気持ちとかそう言う事じゃ無く早苗が勝ちたい理由は留学への一歩の為じゃ無いでしょ。」
「な、何・・言って・・・。」
図星・・・いや、気付かないフリをしていたって所か?清華先輩の言う通りみたいだな。
「清華先輩、弾いてみてください。もう弾けるでしょ?」
「え?あ、うん。弾けるけど・・・。」
「その方が早いです。ほら、聞く事あるでしょ?剣士同士は剣で語るって、それと同じでピアニストならピアノで語ったほうが早いですよ。清華先輩と早苗さんならそれが出来ると思います。」
「・・・やってみる・・・。」
その言葉の直ぐ後に清華先輩はピアノまで歩いて行き早苗さんと交代して鍵盤の上でその指を踊らせる。
早苗さんは側を離れずに清華先輩の演奏を静かに聞いている、その姿は自分の中の気持ちを確認するかの様で音に集中するように目を閉じて聞いていた。
♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪
「えっと・・・どう・・・かな・・・?」
シーン・・・・っと部屋の中の誰もが声も出せずに居た、愛央も志保も早苗さんも・・・そして・・・俺も。
「何か暖かくなりました、清華先輩らしいリフレインだって感じました。」
「わ、わたし・・・私には・・・。」
まだ足りないか・・・?
「交代で、次は俺がやります。早苗さん聞いていてください。」
♪~♪~♪ずっと誰かを想う~♪~♪~♪
俺は先輩と変わって直ぐに演奏を始める、初めての曲に愛央も志保も清華先輩も驚いた顔をしてるけど声を出さない様に我慢しながら聞いてるのが見える。
♪~♪~♪優しい嘘ならきくよ〜♪だって~♪それが君の優しさ~♪~♪
♪~♪~♪どんな世界だって渡っていく~♪~♪~♪
俺の演奏の途中から早苗さんは座り込んで顔を抑えたまま嗚咽を漏らし始めたのを見て清華先輩が直ぐに駆け寄り背中を撫でながら
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SIDE 早苗
あぁ・・・馬鹿だ私・・・、自分の為に自分の下らない競争心の為に悠馬さんを清華を利用した・・・。
これじゃあの先輩達と同じじゃん、自分の心に嘘ついて・・・何がコンクールでの優勝だ、何が留学への一歩だ、全部!全部!ただの綺麗ごとじゃない!私は何時からあいつらの鼻を明かしてやろうって思ってたんだろう・・・。その為に親友を利用して、悠馬さんまで巻き込んで最低すぎるし大馬鹿だ・・・。
そんな私がリフレインを演奏しても望む結果も望むレベルにもなれる訳無いじゃん・・・リフレインは悠馬さんの愛央ちゃんへの想いが形になった曲、純粋な愛情が籠められてるからこそ、皆の心に響くし大人たちだって郷愁に浸ったりしてしまう、だから感動を呼び起こして沢山の人の心を掴んで離さないんじゃない・・・。
だめだ、涙が止まらない、自分が情けなくて悔しくてこの曲はリフレインは私には無理だ・・・。
悠馬さんが無理だって判断するの当たり前だし愛央ちゃんや志保ちゃんにだって分かってたんだ、それに・・・清華もっ!
私の事を宥める清華を見る、優しい顔、心配げな顔、そして・・・辛そうな顔・・・。
教えたくても教えたら意味が無いから我慢していたって顔してるのが分かる、私が清華の立場なら同じ事するしそんな顔しなくても良いのに・・・。
どれだけ周りに、親友に心配かけてるの私!私に出来る事しないと!私の夢は・・・留学して学んでプロになる事!
そして何より・・・親友に負けない事!清華を越える事!その為には・・・っ!!
私は、自分の本当の目的を気持ちを思い出すのと同時に涙を拭って静かに立ち上がる、清華も合わせて一緒に寄り添ってくれている温もりを感じながら・・・。
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「その様子だと答えは出たみたいですね。」
「うん、私は先輩達の鼻を明かしてやりたい、お前らなんてその程度何だって証明してやりたいって気持ちしか何時の間にか無くなってた・・・。それに本当は留学とか二の次で清華に負けたくない、清華に勝ちたい、清華を超えたいって気持ちの方が強いの、だって・・・清華は私の目標だからっ!」
「なら、もう一度どうぞ?今の早苗さんで今の早苗さんのリフレインを試してみて下さい。」
「でもっ!リフレインは・・・っ。」
俺は無言で頷いて早苗さんを椅子に座らせた後、側を離れ愛央達の場所まで下がる。
暫く考えていたのか意を決したかのように彼女の指が鍵盤の上で踊り始め、その音色は俺とも清華先輩とも違うある意味新しいリフレインと言えるような旋律だった。
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SIDE 清華
早苗が答えを得てそんな早苗が奏でるリフレインは私が悠馬くんへの気持ちを乗せて奏でた音とも悠馬くんが愛央ちゃんへの思いを込めて奏でた音とも違う、何処か力強さも感じるリフレイン。
それは早苗の想いがそのまま音になっているかの様な、私に負けないぞって強い気持ち、そして私や悠馬くんへの感謝の気持ちを感じる旋律。
ピアニストならピアノで語れば良いと言った悠馬くんの言葉の通りに口にしなくても伝わってくる強い想いと思い。
早苗はやっぱり凄い!早苗は私に勝ちたいと言うけど私だって早苗に勝ちたい、一歩、先に行った早苗に追い付いて追い抜いてやると気持ちを新たにして、早苗が親友でライバルで良かったと心から思う。
「でも、今は・・・良かったね、早苗っ。」
心からの賛辞を私の親友に贈りながら最後まで聞き続けた。
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