第98話 第5楽章 帰り道

SIDE 清華


私達はあの後良い時間になるまで過ごして4人揃って帰り道を歩いてる。あの後、帰ってきた葵さんから夕飯も食べて行きなさいっと言われたけど私達も家に連絡してなかったからそれぞれで用意されているだろうって事で今日はお断りして揃って帰る事にしたって訳。


「それにしても、悠馬って凄いですよねぇ~。」


「私はしっかりと話したのは今日が初めてだけどなんて言うか見てる世界が違うって感じたかな・・・。それに年下って気がしないってのも・・・。」


愛央ちゃんの言葉に確かにっと私も思う、もっと大人の人と話して居るかの様に感じる事も多々あるのだ。それと早苗の言ったように見ている世界が全く違うって一緒に居れば居るだけ感じ取れる。


「私が告白した時に私のお気に入りの丘の上での事なんですけどね?悠馬さんが遠くを見ていたんです、その目が何と言いますかもう二度と届かない場所、辿り着けない場所を見ているかのような目をしていたんです。私はその目を見てとても不安になりました、何処か遠くに行ってしまうのではないかっと・・・。」


「そんな事あったの?志保さん。」


「はい、凄く朧気おぼろげと言いますかこのまま消えてしまうのではないかっと。」


消えてしまうかもしれないって・・・言いながら空に手を伸ばして何かを掴もうとするかのような志保ちゃんを見ながら私は一つ気付いた、あぁだからこそあの約束なのかと。


「離れたくない、手放したくないからって意味も込めての約束だったんだね?」


私の言葉に志保さんはコクリと頷いた。


「それなら私達でしっかりと悠馬を捕まえておかないとですねっ!」


「えっと、私も?」


「何を当たり前の事言ってるんですか?私と志保さんと清華先輩の3人でですよ!」


「清華先輩も悠馬さんの事が好きですよね?一人の男性として。」


「むっ。やっぱり清華もそうなの?」


うっ・・・、早苗も気になってるって言ってるからあまり大っぴらに言いたくは無いけど、確かに私も悠馬くんの事は一人の男性として愛おしい。


「うんっ!それは間違いないよっ!!悠馬くんが好き。一人の男性として愛おしいって思うっ。」


「それなら言わないとですねっ。頑張ってくださいね、清華先輩。」


「そうなんだけど・・・タイミングがなぁ~・・・。それにほら、今私が悠馬くんの側に居れるのは愛央ちゃんのお陰なんだしさ。」


「それこそ気にしなくて良いんです!私だって自分の時に清華先輩に叱咤されて助けられてるんですから!」


「何か羨ましいな、歳の差って言っても一つだけどお互いに認めあって協力してっていうの、私も清蘭にすれば良かったって思うよ。」


「早苗と私も同じでしょ?」


「あ、うんっ。清華は親友でライバルで掛け替えのない大切な幼なじみねっ。」


早苗も同じく思ってくれていたんだ、嬉しい・・・。


「うん!私も同じだよ!」


「うぅっ///恥ずかしいこと言ったし!さっさと帰るよ!!」


「ちょ!待ってってば早苗〜!」


「「二人共待って下さいって!もうっ!」」


夕日に照らされてるのとは別に赤くなった早苗の後を追って私も笑顔で追いかける。

その後ろから可愛い後輩達が追いかけてくる・・・そんな何でも無い普通のありふれた帰り道でした。


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「それで?悠馬は本当に良かったの?」


「良かったって何が?」


「何って早苗さんにリフレインの楽譜を渡した事だよ~。」


「そうですね、渡す時に言っていた事も気になりますし・・・。」


「良いも何も協力しようって言ったのは愛央だろ?」


「それはそうなんだけど・・・。」


風呂も終わり後は寝るだけってなった時に今日の事を俺と愛央と志保の三人はハンズフリーで話していた。


「まぁ・・・決めるのは彼女だよ。」


「それはそうですけど・・・。思ったんですけど早苗さんが望むレベルでリフレインを弾くって事が出来るのかどうかが凄く疑問なんですよ、実は。」


「志保さん、どう言う事?普通に弾けるんじゃないの?」


「そうですね、のであれば練習を重ねれば大丈夫でしょう、清華先輩がライバルと言う程の方ですし。」


「ん?ん?」っとどうやら愛央の頭の上には疑問符が浮いてるようだ。


「志保は流石と言うべきかな?愛央はまぁ、分からないと思ってたけど・・・。」


「むむっ!馬鹿にしてるのかー!?」


「違うってっ。馬鹿にしてるとかじゃ無く愛央は分からないけど志保は分かるんじゃないかな?っと単純に思ってたのさ。」


「愛央さんは送られた人ですからね。」


「どう言う事??さっぱり分からないんだけどっ!」


「あーっとな、あの曲を弾くだけなら誰にでも出来るのは分かるよね?」


「うん、ピアノを出来る人なら弾けるよね。」


「そうだね、でも俺と同じようにってなると話が変わってくるんだ、あの曲は愛央に送るために愛央に俺の想いを伝える為に作って演奏した。」


「そうですね、奏でられる音の一つ一つに悠馬さんの愛央さんへの想いが詰まっています、だからこそ一音一音が感動を色々な風景や思いを呼び起こすんです。」


「あ・・・そっかっ///うん!そうだねっ!」


「そう言う事、早苗さんにはそれが無い。だから彼女の考えているレベルで演奏は出来ないだろうね。」


「うん・・・。人を誰かを愛する気持ちかぁ~・・・。」


「改めて言われると流石に俺も照れるなっ///まぁ、そう言う事だよっ///」


「良かったですねー愛央さん~。」


「えっ?!志保さん何か怖いんですけど・・・。」


拗ねたなこれ・・・、可愛いけどさ・・・。


「志保。」


「あ、はい?何ですか?悠馬さん。」


「好きだぞ、志保の事。」


「ぁぅっ///・・・私も好きですっ///」


「むぅ・・・。」


今度は愛央が拗ねるし・・・。


「拗ねるなって、愛央の事だって好きだよ。」


「はぃっ///私も悠馬が好きですっ///」


「全く、可愛い恋人さん達です事っ。愛央も志保も好きだよ、今までもこれからもずっとねっ。」


「「~~~っ///」」


全く、可愛い恋人さん達ですね~何て事を思いながら3人で眠くなるまでの時間を好き好き言いながら過ごすのだった。


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