第85話 想いを貴方に

「いつつっ、まだ流石に力が入ったりすると痛むか・・・。」


「無理しないでくださいね?退院出来たとはいえ完治した訳では無いんですから。」


「分かってるさ。身体も鈍ってるしゆっくり行こうな。」


「はい、勿論です。」


日曜日、俺と志保はお出かけしてる、まぁ・・・デートだな。昨日のパーティーの終わり頃に志保に誘われたのだ「もし宜しければ明日は一緒にお出掛けできませんか?」っと・・・。

俺もそれには二つ返事でって訳には行かず直ぐに愛央に確認したら「志保さんなら良いよっ!」っとお許しも貰えたから一緒に出掛ける事になった。


そして、歩き出して直ぐに志保が俺に腕を組んで来てびっくりしていると志保が赤い顔をしながら俺に言ってきた。


「駄目でしょうか・・・?///」


「いや、構わないよ。このままいこっ。」


「はいっ///」


否定せずに認めると嬉しそうな綺麗な笑顔を志保は見せてくれたのだった。


その後ゆっくりと歩きながらモールの中を歩いてるけどなんつーか視線がな〜、やっぱボロボロだからか?


「う〜む・・・志保が悪く言われないと良いんだけどな、俺のこの状態のせいで。」


「その時はその時ですよ、気にしても仕方ないと思いますよ?」


「何か強くなった?図太くなった?」


「強くなったって事にしておいて下さい。図太くは何となく嫌ですっ。」


ごめんごめんっと志保に謝りながらゆったりとした動きで歩きながら色々と見て回る。

コーヒーの豆を売ってるお店や喫茶店で使えそうな小物が置いてあるお店、俺と母さんや菜月、愛央に志保と清華先輩ついでに、それぞれの家族が来店した時専用のカップとかも見て回った。


「皆と相談して今度は買いに来ようか、写真も撮るのも許可貰えて撮れたし実物って訳にも行かないけど判断材料にはなるよな?」


「そうですねっ。お店に皆さん専用のグラスが並ぶって何か楽しみですっ。」


「だな。ずらっと並んでいたらそれはそれで壮観かもね。」


その後、俺達は愛央の時のアクセサリーショップを見に行ったりして志保がどれを気に入るかの確認してって事でこそっと買って置いたりしながら志保とのゆったりとした時間を過ごしながらモールを後にして志保に連れられるままとある高台の上まで来ていた。


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SIDE 志保


そろそろですかね・・・、解決はしたとは言え流石に何があったのか何故こんな事になったのか、そして私が男子を苦手としている理由は話さない訳にはいかないですよね。

愛央さんにも「悠馬は聞かなくても気にしないと思うけど話しておいた方が良いんじゃないかな?志保さんもその方が少しは気も楽になるんじゃない?」っと言われてしまいましたし。


「こんな所あったんだな・・・。結構良い景色が見える、この街ってこんな風だってのが分かって風も良く通って良い場所だな。」


「そうですね、お気に入りの場所だったりします、私がこの街に来て暫く一人で居た頃に良くここに来ては時間を潰していたものです。」


「そっか。」


悠馬さんはそれだけ言って私の隣に並んだまま景色を眺めていました、その目は何処かここでは無い遠くを見ているような・・・?もう二度と手が届かない何かを見て居る様にも感じました。


「それで?俺をここに連れてきた理由もあるんだろ?」


「流石に分かりますよね。悠馬さんに聞いてほしい事があります。」


私の言葉に悠馬さんは特に何かを返す事は無くそのまま私の言葉を待っているようでした。何を言おうとしているのかは分かってるんでしょうしね・・・。


「えっと・・・どこから話すべきでしょうか・・・愛央さんから少し聞いて居るとは思いますが私が男性を苦手としている理由からですか・・・ね?」


「あぁ、少し聞いている、それはあいつが原因だろ?」


「はい、以前は白波の居る町に私たち親子は住んでいました、近辺と言うよりも町には白波家にしか男子は居なかったんです。ですので甘やかされて育ちました、結果、高学年になっても頭の中は3歳児、自分の思い通りに行かないと癇癪かんしゃくをおこして暴れる、ですが男子だからと言う理由だけで仕方ないと周りも甘やかしていました、当然のことながら自分の嫌な事はしない、嫌いなものは食べない、肥満で不潔で幼稚で、回りが男子だからと言う理由だけで持てはやすのは理解出来なかったんです。そして・・・それは当時の友人でもあった紗季には話していました。」


「あぁ、それで・・・か。」


「はい、白波は何故か避けていた私を好きだと・・・。ですのではっきりと好きでは無いと好きになる理由も無いと私は伝えました。」


「結果、癇癪を起こして大暴れ?」


「はい、教室はめちゃくちゃになり私が悪いと言う結末になりました。その結果、母まで責められるようになってしまい町には居られずに逃げる様にこの街に来たんです。その経験から私は男子何て碌な人間は居ない、子をなすのであれば母と同じく人工授精で構わないと思う様になりました。」


「そうなるだろうな、高学年の多感な時期にそんな経験をすればその答えにたどり着いても仕方ないと言うよりその当時に志保の周りにいたやつら、町のやつらも俺からすれば滅べと思う。」


悠馬さんはその言葉の後に本当に嫌そうな、嫌悪と言えるような感情を隠す事も無く唾棄だきすべき存在だとその顔にしっかりと表れていました。


「それは兎も角、何で俺は大丈夫なんだ?俺だって志保の毛嫌いする男だぞ。ましてや今回の一件で俺は暴力的な所も狂気的な部分も見せたり後から知るような事もしてる。志保からすればその辺のやつらと変わらないんじゃないか?」


「そうですね・・・最初に列に並んでるのを見た時は正直受験を受けるのも止めようかと思いました・・・悠馬さんが教員に連れられ列から外れた事を皆さんに謝り、愛央さんとぶつかった後に助け起こしてる姿を見なければ・・・。」


「あぁ~・・・あれね・・。」っと少し恥ずかしそうにしながら頬を掻いている姿は可愛いです。


「それを見てから悠馬さんは他の男子と違うのでは?っと思えて校門で待つっと言っていた愛央さんに無理やり付き合ってどうしても悠馬さんと話してみたくなったのです。」


「それで、あの時あそこにいたって訳か。そうだ、少し話を戻すけど、そんな状態でっと言うか言うならば男女ともに裏切られた状態みたいなものだったろ?それでこっちに来て中学で愛央と知り合って何で心を許せたんだ?」


「あぁ・・・そこは気になりますね。何と言いますか、愛央さんって真っすぐじゃ無いですか。正直に言うとですね、何度も拒否をしたんです、それでもあきらめる事なんて無くて、毎日毎日、話しかけてくれて、誘ってくれて・・・。それでさっきの話もして、関わるつもりはないって言ったんです。でも・・・その話を聞いた愛央さんは・・・泣いてくれたんです、志保さんは何も悪くないじゃんっと、何でそんな目に合わないといけないのかっと、とても悔しいと・・・。何故?何故、貴女が泣くんですか?っと聞いたら・・・。」


「「だって、志保さんが泣いて無いから、泣くのを我慢してるから、それなら私が志保さんの為に泣くよ。」って・・・え?どうして・・・。」


「愛央の言いそうな事言ってみたけど当たったみたいだな。」


くすくすと楽しそうに笑いながら悠馬さんは愛央さんの当時の言葉を一言一句間違わずに当てて見せました。


「はぁ・・愛央さんが羨ましいですね本当に。その言葉を聞いて私も泣いてしまいまして、そして愛央さんを信じてみようと思ったんです。それは正解でした、その結果は親友と私は思えるくらいの友人になれました。」


「そうか、それは本人にも伝えたほうが良いよ。きっと泣いて喜ぶだろうしな・・・。」


悠馬さんはとてもやさしい顔をして私を・・・そして恐らくその光景を想像しているのでしょう、愛央さんを見詰めているときの様な顔をしていました。


「それで、志保に何があったのかは理解した、その上で聞くけど何でその話をしてくれたんだ?」


「はい、悠馬さんには知っておいて欲しかったんです。そしてその上で考えて欲しいんです。」


「考えるって?」


私は大きく深呼吸をして真剣な顔で悠馬さんに言葉を、気持ちを伝えました。


「私は、悠馬さんが好きです。一人の男性として悠馬さんが愛しいです。私を・・・二人目の恋人にして貰えませんか?」


ハッキリと悠馬さんの目を見つめ私は胸に秘めた思いを気持ちを告げた。


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