第82話 守れた約束

「いってぇぇぇぇぇ!」


って・・・病院?あぁ・・・そっか俺・・・。


「じゃない!志保は?!えっと・・・ナースコール!」


俺は枕元にあるナースコールを直ぐに押して人を呼ぶ、時間的には明け方?だと思うが誰かは居るだろうし状況が分からないのは困る。

志保は勿論、愛央も清華先輩も無事なのか確認しないと・・・。


「悠馬くん?!目が覚めたの?!」


「その声は柚希さん・・・?今さっき起きました、あっちこっち痛いですけど・・・。申し訳無いですけど来て貰っても良いですか?状況が知りたいので・・・。」


「直ぐに行きます。」その言葉を最後に通話が切れて俺はベッドに身体を投げ出す。


「志保たちが逃げてくれずにこっちきたから途中で予定変えたけど・・・流石に応えたわ・・・。もう二度とやりたくねぇ・・・。」


あー・・・狭山さんにもちゃんと謝っておかないとな・・・大人は信用できない何て言っちまったし寝ててもらう(物理的に)っと脅したし・・・。母さんにも謝らないとだし菜月も激怒してそうだよなぁ~・・・。

それと愛央と清華先輩と志保と・・・有希華さんと足立さんにもだし、うん、今回は謝り倒すのとお説教は真面目に聞く事にしよう・・・。


なんて事を考えてるとコンコンっとドアがノックされたのが耳に届いたのに反応して俺は直ぐに「どうぞ~。」っと声をかけたらドアが開いて柚希さんが入ってきた。


「良かった目を覚まして・・・。身体はどう?」


「あっちこっち痛いくらいですよ、俺どれくらい寝てました?てかお久しぶりです。」


「ぷっ。そうね、お久しぶり。それじゃ熱測ったり色々させてね?それと今日で二日目に入るってところかな、悠馬君、丸一日寝てたのよ。」


「うへぇ・・・、そこまでダメージあったか~・・・。絶対泣かれる、絶対怒られる・・・。」


「皆、時間ギリギリまでお見舞いで居てくれた位だしね、甘んじてお説教は受けなさい。はいっ!熱測ってね?」


柚希さんに渡された体温計を腋に挟みながらばふんっと音を立てながら横になって現実逃避する事にした。


「それにしても・・・悠馬君は何をしてるんだか・・・。」


「うっ・・・。だって・・・俺が助けないとって、俺のせいだって・・・。」


「悠馬君、自己犠牲は素敵な事かもしれない、それが貴方の魅力の一つかも知れない、でもね?それで君が傷つくとか取り返しのつかない事なれば悲しむのも後悔するのも残された人なのよ?ましてや君は今は・・・愛央の・・・。」


「はい、ごめんなさい。柚希さんの妹を、愛央を泣かせました・・・。」


ピピッ、ピピッと電子音がなって俺は体温計を柚希さんに手渡す、測り終わるまでの間に柚希さんに色々と怒られました、はい。美人が起こるとマジで怖いわ・・・。


「熱は無しっと・・・それだけの怪我だから発熱してもおかしくないと思っていたけど大丈夫そうね」


「ですね、恐らく打撲程度でしょ?折れてる感とか無いですし、にしても朝を迎えるのが憂鬱だ・・・。」


「そこは諦めなさい、沢山怒られると良いわっ。それじゃもうひと眠りしてね、また朝になったら来るから、それとお母さん達にも連絡はしておくから。おやすみなさい。」


「お願いします、おやすみなさい。」


眠気はないと思っていたけど寝ようと意識すると俺の意識はすっと消えて行き直ぐに眠りに落ちるのだった。


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そして・・・朝になって柚希さんに起こされて念の為にまた熱を測り問題ない事を確認した後に朝食、一通り落ち着いた所で・・・。


「悠ちゃん!」「兄さん!」「悠馬!」「悠馬さん!」「「悠馬くん!」」


ガラガラガラガラ・・・ガンッ!っとものすっごい勢いで扉が開いて皆の俺を呼ぶ声が室内に響く。


「お?おはようー。」


「「「「「「お・・・おはようじゃなぁぁぁぁぁぁい!!!!」」」」」」


「悠ちゃん!目が覚めたのは良かったけど!何でそんなに自分を犠牲にするの!どれだけ心配したと思ってるの?!」


「兄さん馬鹿じゃ無いの?!自分がどれだけ心配かけたと思ってるの!?」


「悠馬!目が覚めたのは良かったけど!!!どれだけ心配したと思ってるの!!何でどうするか詳しく話さなかったの?!」


「悠馬くんの馬鹿!本当にばっかじゃないの?!何かあったらどうするつもりだったの?!?!」


「志保を助けてくれたのは嬉しいけど!こんなになるまでどうして無理するの?!あれだけ悠馬君が無理したら皆が悲しむって言ったでしょ?!」


っと志保以外から飛んでくる飛んでくる・・・いやほんとごめんって・・・、思わずベッドの上で正座よ正座。


「待って待って!心配かけたのも迷惑かけたのも詳しく色々と話さなかったのもごめん、反省してるから勘弁して・・・。」


絶対嘘だ!っと全く信じて貰えなかったですはい・・・。その中で志保だけは制服のスカートを掴んだままずっと俯いていた。


「どうしたの?志保。何か元気無くない?」


「だって・・・私のせいで・・・。悠馬さんがこんな・・・。こんなっ!」


「全く、別に志保は悪く無いだろ。悪いのはあいつだしあいつを育てた環境だ。志保は被害者じゃんか。」


「ですが!だって・・・。」


ぼろぼろと大粒の涙を流しながら言葉にならないって感じの志保に俺はベッドから降りて近づいてポンっと頭を撫でながら・・・。


「大丈夫、この通り俺は平気だ。そりゃー確かにあっちこっち痛いしぼろぼろっちゃぼろぼろだけど・・。でもさ、志保が取り返しのつかない事にならなくて本当に良かったし志保を守れて俺は嬉しいし大満足だぞ?」


「私だって悠馬さんに助けて貰えて・・・また一緒に過ごせて嬉しいです・・・でも、私は約束も守れなかった・・・。」


「ん~?あぁ!紗季の事?」


「はい・・・そうなりそうになったら私が止めると約束したのに・・・。したのに・・・。」


「うん、それ勘違いだ。志保はちゃんと約束守ったぞ?」


「ぇ・・・?だって・・・。」


「確かに有希華さんに水ぶっかけられて止まったけど、俺が本当に踏みとどまったのはさー有希華さんが言った言葉なんだよね。」


「お母さんの言葉ですか?」


「そそ、志保を悲しませるつもりか?!ってね。だから俺は踏みとどまった。だから志保はちゃんと俺との約束守ったぞっ!」


「そ、そんなの詭弁きべんじゃないですか!たまたまそうなったってだけで!」


「それにさ、志保が約束守ったって思ってくれないと俺が困る!俺も志保との約束守ってちゃんと帰ってきたって言えなくなるじゃん?」


「そ、そんなの・・・。」


「って事で!志保は俺との約束を守ったし俺も志保との約束を守ったって事で!・・・ね?」


「~~~っ!」


悠馬さん悠馬さん!馬鹿です本当に大馬鹿です!っと志保は俺に抱きついて来てそのまま暫く俺の胸の中で泣き続けるのだった。


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