第79話 邂逅
さって、この扉の奥か・・・待ってろ志保、今助けてやる。
ノブを少し回して軽く開けた後、フッと勢いをつけて扉を蹴り飛ばす。ドガンっと大きな音が鳴って扉が開くのと同時にナイフが飛んできた。
「おっと・・・。いきなりとは随分な挨拶じゃね?」
「別に当たるとは思ってねーよ。と言ってもこれで死んでくれたらそれはそれで楽だけどなぁ?」
「へぇ・・狂人だと思ってたけど以外に頭回るじゃん?それとも頑張って空っぽな頭使ってカンペでも書いて練習してたか?」
「スカした野郎だな!YouMa様よぉ~?!入って来いよ!」
「ん?図星突かれて怒ったかぁ?くっそウケるわ。」
笑いながら室内に入ると志保はおらずゴミしか居なかった。
「志保は何処だ?」
「お前には関係無いな、志保は俺の物だからな!!さって始めようかーーー!YouMa様の処刑ライブをよぉぉぉ!!!!」
馬鹿かこいつ、自分の犯罪を配信してやがるわ・・・。
「御託は良い、取り合えずぶっとばす、そして志保は返してもらう。先ずはそれからだ。」
頼むぞ、愛央、清華、狭山さん。
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SIDE 愛央
そろそろ悠馬が対峙してる頃・・・。
私達は裏口から家の中に入って志保さんを探してる、バレない様にするために出来るだけ音を立てる事も出来ないし声を出す事も出来ない。
「志保さんどこ・・・。狭山さんそっち側はどうですか?」
「居ませんね・・・、と言うかですね?あれじゃ唯の脅迫ですよ?」
そう、悠馬の作戦は至ってシンプル、悠馬が囮になって気を引いてる間に志保さんを助け出すってだけ。
「まぁ・・・そこは否定しませんけど悠馬くんはそれで行けるって考えたのは理由があるんでしょう。それに・・・悠馬くんなら下手な小細工もいらないと信じています。さっさとぶっ飛ばしてくれるはずです。」
「だからって、協力しなければここで寝ててもらう(物理的に)はどうかと思いますが・・・。」
あ、あはは・・・作戦を聞いて勿論だけど狭山さんは直ぐに否定して子供は家に帰れここからは大人に任せろっと言ったけど悠馬は直ぐに「それなら邪魔しない様に寝てて貰いますね?あぁ、少し痛いかもしれないので先に謝っておきます、すいません。」っと言いながら拳を握ってボキボキと・・・。つまり寝ててもらう(物理的に)って副音声がついて居たのだ、つまり協力しますか?って質問の返事は「はいっ。」と「YESっ。」のどちらかしか無かった。
「あ、狭山さん。協力をしなかった場合、悠馬を手伝ってたので私。」
「あ、私もよ?狭山さんが邪魔するって言うなら悠馬くんに協力してた。」
「貴女達・・・。」
っと暗いのに引きつった笑顔で冷や汗流してるのが何故か理解出来た。
「愛央ちゃん待って。ここに人の気配ある。」
清華先輩の言葉に私達は一度、息を殺して中の様子をうかがう事にした。
「流石にここは私が先に行きます。異論は認めません。」
大人としての責任感?
「っ!志保さんっ!」
「志保ちゃん!」
「ぁ・・・愛央さん・・・清華先輩・・・。」
「無事ですか?怪我等は・・・?」
「大丈夫です、狭山さん。汚されても居ません・・・。」
「し、志保さん・・・?」
「3人共帰ってください・・・。私はこのままで良いです。全部、私が悪いんです、私があの時拒否した事が原因なんです。受け入れれば悠馬さんを殺すのは止めると言ってくれましたから、私一人が全部諦めればそれで・・・。」
ギリっと奥歯が鳴って・・・私は気付けば志保さんを・・・ばっちーんっと引っ叩いていた・・・。
「ふざけないでっ!志保さんがそんなんでどうするの!悠馬が・・・悠馬が・・・どうなったかも知らないで!何を勝手に諦めてるの!」
「ぇ・・・?悠馬さんは・・・?悠馬さんに何が?!」
「志保ちゃん、悠馬くん・・ね・・・。悠馬くんは・・・。」
清華先輩もわざとなのか私の言い方に付き合って悠馬に何かがあったかの様な話し方をしてくれて、志保さんは一気に焦り出して・・・。
「まさか、私のせいで・・・。愛央さん!何が!何があったんですか!!」
「自分の目で確かめて・・・、っと言いたいところだけど先ずは縛られてるの解かないとね・・・。どうしよう?」
「お任せを。こんな事もあろうかと・・・っ。」
待って?いや助かりますよ?助かりますけど何でポケットからサバイバルキット何て出て来るの?こんな事もあろうかとって何を想定してそんなものポケットに入ってるの?え?まって?サバイバルの取材とかもしてるの?・・・私の疑問を放置して狭山さんはナイフ部分を外して志保さんの縄を斬り始めた。
「何でそんなもの出て来るのかはともかく・・・これで一先ずは志保ちゃんの救出は出来たね。後は・・・。」
清華先輩の声に頷いて次は悠馬の所に・・・お願い無事で居て・・・。
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「オラオラっ!最初の威勢はどこいったぁ?!」
「ふんっ。威張るなら俺に当ててからにしろよ。」
「本当に口だけは達者だな!避けるしか出来てねーだろ?!」
鉄パイプをぶぉんぶぉん振り回したり足を使ったりと意外に喧嘩慣れしてやがる。
でもまぁ・・・見せ筋とでも言えば良いか?使い慣れてはいないから微妙に振り回されてるが・・・。
それに・・・そろそろ志保が助けられたころ合いだろうし攻めるか。
「シッ!おらっ!」
ドゴッと腕を蹴り、カランカランっと音を立てながら鉄パイプが明後日の方向に飛んで行ったのを尻目にぐるんっと身体を回転して勢いをつけたままどてっぱらを蹴りを突き刺してぶっとばした。
「がぁっ!くっそが・・・。てめぇぇ・・殺す殺す殺す殺す殺す!」
「お前は何がしたいんだ?こんな事までして何が目的なんだ。」
「志保は俺のものだ!お前はぁ!俺の志保を誑かして!奪ったんだ!だから俺がぁぁぁ!お前を殺して!志保を!壊す!俺は!壊れた志保が見たいのさ!俺を嫌いだと言ったあいつを!」
スッと・・・意識が凍る、志保を壊す?そんな事、俺が許すわけ無いだろう。
「いつまで寝てる?来いよ、俺を殺すんだろう?まぁ、お前には無理だけどな。」
ハッと鼻で笑いながら人差し指でクイクイっと挑発したら「がぁぁぁぁぁぁ!!!」っと唸り声を上げながら俺に襲い掛かってきた。
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SIDE 清華
「志保さん、行くよ。悠馬の所に行かないと。」
「愛央さん!悠馬さんは?!悠馬さんに何が!?」
「落ち着いて良いよ、単に志保さんを攫った人と戦ってるだけ。」
「え?は?戦って・・・いる・・・?」
「さっきのは全部諦めようとしてる志保さんにムカついただけ、叩いてごめんね。」
愛央ちゃんの言葉に完全に混乱してる志保さんを引っ張って私達は色々な音が鳴ってる部屋の方に歩き出した。
「大丈夫かな?悠馬くん・・・。」
「無事だよ絶対に、悠馬が負ける訳無い。負ける訳無いんだから・・・。」
私の言葉に愛央ちゃんはそう答える・・・けど、声が震えてる・・・。
当たり前だ、いくら信じていると言っても怪我をしてるかもしれない、それ以前に負けそうになってるかも知れない、私だって怖いんだ、愛央ちゃんが、恋人である愛央ちゃんが怖く無い訳無い・・・。
「大丈夫、悠馬くんだもん!」
愛央ちゃんは私の答えに弱弱しく笑顔を向けた後、志保ちゃんを引っ張って私達と一緒に歩いて行くのだった。
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